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'''鉱油'''(こうゆ、{{lang-en-short|mineral oil}})は、[[石油]]([[原油]])、[[天然ガス]]、[[石炭]]など[[地下資源]]由来の[[炭化水素]]化合物もしくは不純物をも含んだ[[混合物]]の総称。'''鉱物油'''(こうぶつゆ)、'''鉱物性油'''(こうぶつせいゆ)とも呼ばれており、一般的には石油由来の油として広く[[工業製品]]等に用いられている。
鉱油でない油とは、例えば(いま抽出したばかりの)[[動物性脂肪|動物の脂肪]]や[[植物油|植物の油脂]]である。
石油由来の物質に、英語の {{En|mineral}}、漢字の「鉱」の字があてられているのは、石油が[[リンネ]]の時代など過去の分類学上、[[鉱物]]扱いされてきたことの名残である。
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''国際鉱物学連合が定める鉱物の定義については、[[鉱物]]の項を参照のこと。''
== 潤滑油 ==
[[潤滑油]]の90 %以上は鉱油である<ref name="各種潤滑油の製造に使われるベースオイルの品質性状">{{Cite web|url=http://www.juntsu.co.jp/qa/qa0111.php |title=各種潤滑油の製造に使われるベースオイルの品質性状 |publisher=ジュンツウネット21 |accessdate=2017-3-28}}</ref>。鉱油系潤滑油の成分のほとんどは[[芳香族化合物|芳香族]]系炭化水素、[[パラフィン]]系炭化水素、ナフテン([[シクロアルカン]])系炭化水素である。一般的に、[[環分析]](n-d-M法)でパラフィンの炭素数が50以上の潤滑油をパラフィン系、ナフテンの炭素数が30
安価である。[[粘度]]範囲は広く、様々な粘度の鉱油が存在する。
[[精製]]では[[不純物]]を完全に除去することはできない。一般に、この不純物により、熱安定性が低く、[[流動点]]が高い。低くとも-
=== パラフィン系 ===
鉱油の潤滑油基油の大半は[[パラフィン]]系である。非常に種類が多い。炭素数はC15 - C50、[[分子量]は200 -
粘度指数と[[引火点]]はナフテン系
原料は、パラフィン系炭化水素を多く含む原油であり、主に[[中東]]([[西アジア]])から産出される。この原油を[[常圧蒸留]]した残油から製造される。通常のパラフィン系潤滑油の製造工程は溶剤精製法と[[水素化]]分解法の二つがある。これとは別に、高精製潤滑油や高粘度指数潤滑油、低流動点潤滑油などの高性能な潤滑油を製造するための特殊な精製工程がある。
=== ナフテン系 ===
ナフテンとは石油に含まれるの[[シクロアルカン]]の総称である<ref>{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%83%95%E3%83%86%E3%83%B3-108389 |title=ナフテン |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2021-06-20}}</ref>。
流動点が低く、パラフィン系 原料は[[ベネズエラ]]、[[アメリカ合衆国]]、[[ロシア]]、[[オーストラリア]]などの一部の[[油田]]から産出される。日本は主にオーストリアのワンドゥー原油(Wandoo Crude)を使用している<ref name="パラフィン系基油とナフテン系基油の相違について">{{Cite web|url=http://www.jalos.jp/jalos/qa/articles/002-L004.htm |title=パラフィン系基油とナフテン系基油の相違について |publisher=日本潤滑油協会 |accessdate=2017-4-5}}</ref>。これらナフテン系原油を常圧蒸留または減圧蒸留処理をした残油を精製して作られる。精製方法は概ね硫酸洗浄 - [[活性白土|白土]]処理、溶剤精製、水素化処理の組み合わせである<ref name="各種潤滑油の製造に使われるベースオイルの品質性状" />。
ナフテン系原油の油田は世界的に[[枯渇性資源|枯渇]]してきており、かつ高級潤滑油にできる良質の原油はさらに少量であると考えられている。また、精製技術の発展と添加剤の開発により、パラフィン系潤滑油でも一部の性能がナフテン系潤滑油と同等とすることが可能となった。このため、ナフテン系はパラフィン系潤滑油に代替されてきている<ref name="パラフィン系基油とナフテン系基油の相違について" />。
=== 歴史 ===
[[File:Motor oil.JPG|thumb|right|250px|エンジンオイル]]
[[紀元前]]より天然アスファルト([[歴青]])が[[潤滑剤]]に用いられた。しかし、(当時の技術力で)容易に利用できる石油資源は偏在していたため、植物や動物由来の油脂と比べて一般化することはなかっ
20世紀に入ると、[[フィッシャー・トロプシュ法]]、[[ベルギウス法]]などの発明により、鉱油を分解・合成して不純物を取り除き、成分を均質化した化学合成油が製造されるようになった<ref>[http://www.juntsu.co.jp/mainte_guide/mainte_guide_old/mainte_guide0508.html 特集記事・「合成潤滑油-その素性と可能性」2005/8(潤滑通信社ホームページ)]</ref>。こうした化学合成油は、コストや供給面から原料を鉱油(天然ガス)を用いることもあり、出発原料を含める形で広義の鉱油として見なすことも可能であるが、鉱油として扱う事は一般的ではない。▼
[[17世紀]]以降、[[燃料]]用として石油の掘削と[[石油精製|精製]]が盛んに行われるようになると、[[分留]]した[[重油|重質油]]が[[潤滑油]]への用途で注目されるようになった。[[1845年]]、[[アメリカ合衆国]]においてカルシウム[[グリース]](鉱油と獣脂、[[石灰]]を混合した潤滑油)が開発された<ref>[http://www.kyodoyushi.co.jp/grease/index.html グリースの歴史(協同油脂ホームページ)]</ref>。動植物油と比べ安定性などに優れ、他の石油製品と同様に安価であったため、一部の用途を除き動植物油から鉱油へと移行した。
なお従来は鉱油として扱われたものを製品段階で差別化を図るために鉱油(鉱物油)と化学合成油の名称を使い分けることがある。代表格は、自動車に用いられる[[エンジンオイル]]であるが、これとて鉱油(鉱物油)と化学合成油の定義や境界に議論を挟む余地があり、過去にはメーカーの間で議論となったことがある。▼
▲[[20世紀]]に入ると、[[フィッシャー・トロプシュ法]]、[[ベルギウス法]]などの発明により、鉱油を分解・合成して不純物を取り除き、成分を均質化した化学合成油が製造されるようになった<ref>[http://www.juntsu.co.jp/mainte_guide/mainte_guide_old/mainte_guide0508.html 特集記事・「合成潤滑油-その素性と可能性」2005/8(潤滑通信社ホームページ)]</ref>。こうした化学合成油は、コストや供給面から原料
▲なお、従来は鉱油として扱われたもの
''鉱油と化学合成油の違いに関する議論の詳細は、[[カストロール#化学合成油の概念を変えた]]の項を参照のこと。''
== 燃料油 ==
[[エネルギー革命]]以前に、植物性、動物性油脂も燃料油として用いられていた時代には、[[ガソリン]]を鉱油として区別していた。日本では
== 化粧品等 ==
[[ファイル:White Petrolatum1.jpg|thumb|right|
鉱油は、[[化粧品]]や[[医薬品]]等にも広く利用されている。代表格は、[[日本薬局方]]で処方が定義されている白色[[ワセリン]]である。これは性質や性状の安定性を保つため、あえて鉱油を精製した原料を用いて製造しており、ワセリンを二次的に利用した化粧品等も多く流通している。値段が安いことでも知られており、多くの化粧品会社が使用している。
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