「初風 (エンジン)」の版間の差分

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本エンジンは[[ドイツ]]の練習機用小型エンジン「[[:en:Hirth HM 504|ヒルト HM 504A]]」を日本で[[ライセンス生産]]する予定だったものが、ヒルト社設計の巧緻複雑さから、ライセンス生産を打診された[[日立航空機]](1937年に開発着手した時点では[[東京瓦斯電気工業]]。通称「瓦斯電」)が、日本での製造運用に適合すべく設計に大変更を施した結果の産物で、ヒルトとは事実上、別物となった発動機である<ref>日野自動車の100年 48~49ページ</ref>。
 
ヒルトHM504は、機体への搭載性を配慮した倒立式空冷直列4気筒という独特のレイアウトを採っていたが、クランクシャフトは高精度だが製作に技術力を要する組立式、[[軸受|ベアリング]]類は精密な[[転がり軸受|ローラーベアリング]]を多用するなど、航空用としては小型のエンジンながらも、ドイツの高度な工作技術を前提とした複雑な設計が用いられていた。この設計をそのまま日本で実現しようとすれば、やはりローラーベアリングを多用し高度精密加工された[[ダイムラー|ダイムラー・ベンツ]][[ DB 601|DB601]]の国産化<ref>当時の日本における大手・中堅航空機メーカーである[[川崎重工業|川崎航空機]]・[[愛知航空機]]の両社がライセンス生産での国産化を図ったが、加工技術や材質の制約からどうしてもドイツ本国並みの工作精度や量産を達成できず、搭載する機体の実戦投入に支障をきたす重大事態まで生じた。</ref>同様、極めて困難な事態が予想された。
 
このため瓦斯電では自社制作の練習機用エンジンにつき、ヒルトの空冷倒立直列4気筒レイアウトのみを踏襲、クランクシャフトは一般的な一体鍛造、ベアリング類も当時一般的なメタルによる[[すべり軸受|平軸受]]で済ませるなど、日本での現実的な生産性・整備性に重点を置いた設計に改変した。しかし、動弁系はヒルトがシングルカムシャフトの[[OHV]]で浅い[[ターンフロー]][[燃焼室]]だったのに対し、より高度なツインカムOHVと[[燃焼室#半球型|半球型燃焼室]]による[[クロスフロー]]レイアウトを採用して吸排気・燃焼効率を向上、なおかつ低[[オクタン価|オクタン]]ガソリンでも問題なく運用できるよう図った。更に倒立エンジンで問題になりがちな潤滑システムは、[[ドライサンプ]]方式を導入して万全を期した。これらの手堅い手法で性能確保に努めた結果、結果的にはヒルトに比してわずかな重量・体積増で、これに比肩しうるスペックの信頼性あるエンジンを完成させた。
 
[[大日本帝国海軍|海軍]]名称は「初風一一型」または「GK4A」、[[大日本帝国陸軍|陸軍]]名称は「ハ47」で、陸海軍統合名称は「'''ハ11-11型'''」である。