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用語整理
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[[Image:Indonesia Wallacea.svg|thumb|right|350px|赤い部分がワラセアである。 [[ウェーバー線]]を青線で示す。]]
'''ワラセア'''(Wallacea)<ref>{{Cite Kotobank|word=ワラス線|author=[[日本大百科全書]]|accessdate=2021-08-30}}</ref>は、[[生物地理学]]的な区分で、深い[[海峡]]によって[[アジア]]とも[[オーストラリア]][[大陸]]の[[大陸棚]]とも隔てられた[[インドネシア]]の島嶼の一群を指す語。'''ウォーレシア'''<ref>{{Cite web|url=https://www.nhk.or.jp/hotspot/schedule/episode03.html|title=[[ホット・スポット 最後の楽園]]第3シリーズ 第3回 進化の魔法 息づく島々 ~東南アジア ウォーレシア~ 総合テレビ/BS4K 2020年3月29日(日)午後9時00分|date=|accessdate=2021-08-30|work=[[NHKスペシャル]]|publisher=[[日本放送協会]]}}</ref>、'''ウォレシア'''<ref>{{Cite Kotobank|word=ウェーバー線|author=[[百科事典マイペディア]]|accessdate=2021-08-30}}</ref>などともよばれる
 
ワラセアは、[[スンダランド]]([[マレー半島]], [[スマトラ]], [[ボルネオ]], [[ジャワ島]], [[バリ]]) の東側で[[オーストラリア]]や[[ニューギニア]]を含む[[{{仮リンク|ニアー・オセアニア]]|en|Near Oceania}}の北側、西側に位置する。ワラセアの陸地面積の合計は347,000&nbsp;km²である。
 
==地理==
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{| class="wikitable" style="text-align:center;"
|+ワラセアを構成する[[インドネシアの地方行政区画]]と主な[[島]]
|rowspan="2"|[[スラウェシ島]]<br>([[北スラウェシ州]],[[ゴロンタロ州]],<br />[[中部スラウェシ州]],[[南東スラウェシ州]],<br />[[南スラウェシ州]],[[西スラウェシ州]])
|rowspan="2"|[[スラウェシ]]州
|[[ハルマヘラ島]]を含む[[北マルク州]]
|-
|[[アルー諸島]]を除く[[マルク州]]
|-
|[[西ヌサ・トゥンガラ州]]<br> ([[ロンボク島]], [[スンバワ島]])|| [[東ヌサ・トゥンガラ州]], <br>([[コモド島]], [[フローレス島 (インドネシア)|フローレス島]], [[スンバ島]],<br> [[西ティモール]])<br />[[東ティモール]] (独立国)を含む
|}
スンダランドとワラセアの境界は、その両側での[[哺乳類]]と[[鳥類]]の[[動物相]]の違いについて記述した[[アルフレッド・ラッセル・ウォレス]]にちなみ、[[ウォレス線]]と呼ばれる。[[スマトラ]]、[[ジャワ]]、[[バリ]]、[[ボルネオ]]を含むウォレス線の西側のスンダランドの島々は、アジアとよく似た、[[トラ]]、[[猿]]、[[サイ]]を含む[[哺乳類]]の動物層をもっていることで共通している。
 
[[氷期]]の間、[[海面]]は低下し、[[{{仮リンク|スンダ棚]]|en|Sunda Shelf}}(スンダ陸棚、スンダ大陸棚)が露出しておりワラセアの島々とアジアは繋がっていた。<ref>http://www.fieldmuseum.org/research_collections/zoology/zoo_sites/seamaps/mapindex1.htm Pleistocene Sea Level Maps</ref>その間に、アジアの陸棲動物がこれらの島々に移り住むことが可能になった。ワラセアの島々には、大陸由来と考えられ、しかし海を自力で渡ることは困難と考えられるいくつかの種の陸棲哺乳類、地上棲鳥類、[[淡水魚]]が生息している。
多くの鳥、[[爬虫類]][[昆虫]]は、比較的困難を伴わずに海峡を越えることも可能であり、そのようなオーストラリアやアジア由来の種が、ワラセアで発見されている。[[植生]]は、圧倒的にアジア由来のものが支配的であり、[[植物学]]的には[[スンダランド]]、ワラセア、[[ニューギニア]]を含む領域を[[マレシア植物区系区|マレシア植物地理区]]と呼ぶ。<ref>マレシア(Malesia)はしばしば国名のマレーシア(Malaysia)と混同されるが、植物地理学上の呼称である。マレシア植物区、マレシア植物区系区とも訳される。</ref>
 
同様に、東側のオーストラリアとニューギニアは、浅い[[大陸棚]]によって接続されている。これも過去の氷期の時代には、[[陸橋 (生物地理)|陸橋]]によってつながっており、各分野の[[科学者]]がオーストラリア-ニューギニア、マガネシア、または'''[[サフル大陸|サフルランド]]'''などと呼ぶ単一の大陸を構成していた。その結果、オーストラリア、ニューギニア、[[アルー諸島]]には、ワラセアに生息しない多くの[[有袋類]]、陸棲の鳥、淡水魚が生息している。ワラセアと、オーストラリア、ニューギニアを分ける線は[[リチャード・ライデッカー]]にちなみ、[['''ライデッカー線]]'''と呼ばれる。[[フィリピン]](スンダランドの一部とされる[[パラワン]]を除く)は通常、ワラセアとは切り離された領域と考えられているが、ワラセアに含めることもある。<ref>http://actazool.nhmus.hu/48Suppl2/newwallace.pdf</ref>
[[ウェーバー線]]は、アジアとオーストラリアの[[動物相]][[植物相]]をおおよそ同程度に分ける中間線であり、[[インドネシア諸島]]を横断する最も深い[[海峡]]と重なっている。
 
==生物地理学==
ワラセアは、単に隣接する地域からやってくる[[種 (分類学)|生物種]]による遷移領域とみなされていることも多いが、実は、ワラセアは多くの固有の[[種分化]]とそれに比例して多くの[[固有種]]が存在するユニークな領域でもある。そのことがインドネシア諸島の巨大な[[生物学的多様性]]に寄与している。<ref>http://www.irgltd.com/Resources/Publications/ANE/2004-02%20Indonesia%20Biodiversity%20and%20Tropical%20Forest.pdf page 3-2</ref>
 
ワラセアの動植物の離れた[[祖先]]は、アジアまたはオーストラリア-ニューギニアからやってきたにも関わらず、ワラセアには、現在多くの固有種が土着している。多くの島がそれぞれ深い海によって隔てられているため、途方もなく大きい[[種多様性|種の多様性]]が存在している。[[自然保護団体]]{{仮リンク|コンサベーション・インターナショナル|en|Conservation International}}は、ワラセアを[[生物多様性ホットスポット]]に指定している。
[[コンサベーション・インターナショナル]]は、ワラセアを[[生物多様性ホットスポット]]に指定している。
 
ワラセアは、もともとほとんど完全に[[森林]]地帯であり、ほぼ全域が[[熱帯亜熱帯湿性広葉樹林]]で、いくらかの地域が[[熱帯亜熱帯乾性広葉樹林]]であった。高地には [[低山性]]と[[亜高山性]]の森林があり、[[海岸]]では[[マングローブ]]林がある。
 
コンサベーション・インターナショナルによれば、ワラセアに生息する10000種の植物のうちおよそ1500種(15%)が固有種である。固有率は、陸性[[脊椎動物]]において高く、1142種の発見された陸性脊椎動物のうちおよそ半数の529種が固有種である。
 
ワラセアのほとんどの領域は森林であった; 45%の領域はなんらかの森林被覆があり、52,017&nbsp;km(15%)がほぼ[[原生林]]となっている。
ワラセアの全領域は347,000&nbsp;kmであり、そのうち、およそ20,000&nbsp;kmだけが保護されている。絶滅危惧IA類、絶滅危惧IB類、絶滅危惧II類に分類される82種と絶滅危惧IA類に分類される6種の陸性脊椎動物が、ワラセアに生息している。
 
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*[[Halmahera rain forests]] ([[ハルマヘラ島]], [[モロタイ島]], [[オビ諸島]], [[バカン島]])
*[[Seram rain forests]] ([[セラム島]], [[アンボン島]], [[サパルア]])
*[[Sulawesi lowland rain forests]] ([[スラウェシ島]], [[バンガイ諸島]], [[{{仮リンク|スラ諸島]]|id|Kabupaten Kepulauan Sula|en|Sula Islands Regency}}, [[サンギヘ諸島]], [[タラウド諸島]])
*[[Sulawesi montane rain forests]] ([[スラウェシ島]])
[[熱帯亜熱帯乾性広葉樹林]]
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Birds have expanded their range to and from Australia. Crows and shrikes invaded south into New Guinea and some into the Australian continent. [[Bustards]] and [[megapode]]s must have somehow colonized Australia. Cockateels similar to those from Australia inhabit Komodo Island in Wallacea.
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オーストラリアは海によって隔離されているが、理論的にはワラセアを通して動物学的に広がることができる。ワラセアが形成されたときの形跡の例は、オーストラリア北部に位置する[[:en:Bluff Downs fossil site|Bluff Downs fossil site]]にある。[[玄武岩]][[溶岩]]の残骸は、過去のオーストラリアの海洋[[プレート]]の沈み込みを示している。ここでは、最古のオーストラリアの[[齧歯類]]の[[化石]]の一つが発見された。オーストラリアの齧歯類は、大陸の[[真獣下綱]]の多くの動物の祖先となった。また、{{仮リンク|コヤカケネズミ属|en|stick-nest rats}}、{{仮リンク|ホップマウス属|en|Hopping mouse}}、giant beaver ratsなど様々な種がある。
他の哺乳類は西へ侵入した。スラウェシの2種の[[クスクス科|クスクス]]は世界で最も原始的な[[ポッサム]]で、アジアで唯一の有袋類である。
 
鳥類は、オーストラリアとの間で生息域を拡大している。[[カラス]]と[[モズ]]は南へ侵入しニューギニアに入った。オーストラリア大陸へ侵入するものもあった。[[ノガン科|ノガン]]と[[ツカツクリ科|ツカツクリ]]はオーストラリアで営巣する事になった。[[オカメインコ]]は、オーストラリアとワラセアの[[コモド島]]に生息するものは似ている。
 
数種の[[ユーカリ|ユーカリ属]](オーストラリアの木の優勢属)がワラセアで発見された([[スラウェシ]]:[[:en:Eucalyptus deglupta]]。[[東ヌサ・トゥンガラ州]]:[[:en:Eucalyptus urophylla]]と[[:en:Eucalyptus alba]])。<ref>Irfan Budi Pramono and Ag. Pudjiharta (1996). "Research Experiences on Eucalyptus in Indonesia," in Reports submitted to the regional expert consultation on eucalyptus, Vol. II. Food and Agriculture Organization, Regional Office for Asia and the Pacific, Bangladesh.</ref>。
 
==脚注==
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==参考文献==
* Abdullah MT. (2003). Biogeography and variation of ''Cynopterus brachyotis'' in Southeast Asia. PhD thesis. [[University of QueenslandQueensland([[クイーンズランド大学]], St Lucia, Australia.
* Corbet, GB, Hill JE. (1992). The mammals of the Indomalayan region: a systematic review. Oxford University Press([[オックスフォード大学出版局|Oxford University Press]], Oxford.
* Hall LS, Gordon G. Grigg, Craig Moritz, Besar Ketol, Isa Sait, Wahab Marni and M.T. Abdullah. (2004). Biogeography of fruit bats in Southeast Asia. ''Sarawak Museum Journal'' LX(81):191–284.
* Wilson DE, Reeder DM. (2005). Mammal species of the world. [[Smithsonian InstitutionInstitution([[スミソニアン協会]] Press, [[Washington DCDC([[ワシントンD.C.]].
 
==外部リンク==
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{{portal|東南アジア}}
* http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/rep20thc.html 日本オセアニア学会20周年記念シンポジウム「南太平洋のフロンティア」
{{Commonscat}}
 
{{DEFAULTSORT:わらせあ}}
[[Category:生物多様性]]