「ヤマモモ」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
一部加筆、出典補強
34行目:
 
== 分布・生育環境 ==
[[中国大陸]]や[[日本]]を原産とし、暖地に生育し、暑さには強い。日本では[[関東]]以南([[房総半島]]南部、[[福井県]]以西)、[[四国]]、[[九州]]、[[沖縄]]の[[低地]]や[[山地]]に自生する{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}{{sfn|正木覚|2012|p=109}}。本州南部以南では、[[海岸]]や低山の乾燥した[[尾根]]など、痩せ地で[[森林]]を構成する重要樹種である。
 
日本国外では、[[朝鮮半島]]南部、[[中華人民共和国|中国]]、[[台湾]]、[[フィリピン]]に分布する{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}。中国では[[江蘇省]]、[[浙江省]]が有名な産地で、とりわけ[[寧波市]]に属する[[余姚市]]や[[慈渓市]]、あるいは[[温州市]][[甌海区]]は古くから知られた産地であり、千年に及ぶとされる古木も多く残る。他に[[福建省]]、[[広東省]]、[[広西チワン族自治区]]、[[台湾]]なども産地である。
 
== 形態・生態 ==
[[ファイル:Myrica_rubra3.jpg|thumb|ヤマモモの樹]]
[[常緑]][[広葉樹]]の[[高木|大高木]]で、成木は樹高20[[メートル]] (m) ほどになる。樹冠は円形となる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}。生長は遅く、幼木は日陰を好むが、成木は日なたを好む{{sfn|正木覚|2012|p=109}}。[[幹]]は太くなると灰白色の[[樹皮]]に覆われ、多数の[[楕円形]]の皮目を持つ。古くなると縦の裂け目が出ることが多い。
 
[[葉]]は密に[[互生]]し、多くは枝先に[[束生]]する{{sfn|正木覚|2012|p=109}}{{sfn|山﨑誠子|2019|p=92}}。[[葉身]]は[[革]]質、[[つや]]のない深緑で、5 - 12[[センチメートル]] (cm) の倒被針形か長楕円形、もしくは[[倒卵形]]をしており、成木では葉は滑らかな縁([[全縁]])だが、若木では不規則な[[鋸歯]]が出ることが多い{{sfn|山﨑誠子|2019|p=92}}。葉の裏側に芳香を出す[[油点]](ゆてん)がある{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}。[[葉柄]]は5 - 10[[ミリメートル]] (mm) 程度と短い。
 
[[雌雄異株]]で、花期は4 - 5中旬{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}葉の付け根から[[花序]]を伸ばして{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}、[[数珠]]つなぎに小さな[[桃色]]の[[花弁]]4枚の目立たない[[花]]をつける。
 
雌株につく[[果実]]は直径1.5 - 2 cmnのほぼ球形で、6月頃に紅色から暗赤色に熟し、食べられる{{sfn|山﨑誠子|2019|p=92}}。表面に粒状突起を密生する{{sfn|正木覚|2012|p=109}}。この突起はつやがあるので、外見的には小粒の赤い[[ビーズ]]を一面に並べたように見える。
63行目:
 
== 人間との関わり ==
[[大気汚染]]に強く{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}、[[緑化]]を目的とする[[植樹]]に用いられることがある。古くはヤマモモがよく利用されたという。現在では[[街路樹庭木]]として[[公園]][[街路]]にもとして植えられる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}。葉が密生していることから、建物の風よけや目隠しに列植されることもある{{sfn|正木覚|2012|p=109}}。
 
殖やし方は[[接木]]のほか[[取り木]]がある。雌雄異株のため結実には雄株が必要であるが、[[都市部]]では街路樹として植栽されている雄株が随所にあるため、雌株の結実性は比較的高い。ヤマモモの果実は[[鳥]]などに食べられ、[[消化]]された後に[[発芽]]する性質がある。
70行目:
また、[[ジャム]]、[[缶詰]]、砂糖漬け、[[リキュール]]等に[[加工]]される。中国では[[白酒 (中国酒)|白酒]]に[[砂糖]]を加え、ヤマモモの果実を漬け込んだリキュールの「楊梅酒」が広く作られている。
 
樹皮は[[染料]]にしたり{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=99}}、あるいは'''楊梅皮'''(ようばいひ)という[[生薬]]になって、[[タンニン]]に富むので[[止瀉薬|止瀉作用]]がある。消炎作用もあるので[[筋肉痛]]や[[腰痛]]用の膏薬に配合されることもある。
 
日本では静岡県伊東市の[[伊豆高原]]地区が実のなる最北端と言われているため、[[伊豆急行線]]の伊豆高原駅の商業施設を「やまもプラザ」と命名する他、各駅では伊豆急グループの伊豆急コミュニティ(旧・伊豆急物産)によって[[自動販売機]]で「やまももドリンク」というヤマモモの[[清涼飲料水]]が売られている。
92行目:
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =平野隆久監修 永岡書店編|title =樹木ガイドブック|date=1997-05-10|publisher =[[永岡書店]]|isbn=4-522-21557-6|page =99|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=正木覚 |title=ナチュラルガーデン樹木図鑑|publisher=[[講談社]] |date=2012-04-26 |pages=109 |isbn=978-4-06-217528-9 |ref=harv }}
* {{Cite book|和書|author=山﨑誠子 |title=植栽大図鑑[改訂版]|publisher=[[エクスナレッジ]] |date=2019-06-07 |pages=92 - 93 |isbn=978-4-7678-2625-7 |ref=harv }}