「奇蹄目」の版間の差分

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よみ、ref、xlなど。
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|和名 = 奇蹄目<ref name="kawada_et_al">[[川田伸一郎]]他 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.58.S1 世界哺乳類標準和名目録]」『哺乳類科学』58巻 別冊、[[日本哺乳類学会]]、2018年、1 - 53頁。</ref>
}}
'''奇蹄目''' (きていもく、Perissodactyla) は、哺乳綱に分類される目。別名'''ウマ目'''<ref>田隅本生 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.40.83 哺乳類の日本語分類群名,特に目名の取扱いについて 文部省の“目安”にどう対応するか]」『哺乳類科学』第40巻 1号、日本哺乳類学会、2000年、83 - 99頁。</ref>。
 
'''奇蹄目''' (Perissodactyla) は、哺乳綱に分類される目。別名'''ウマ目'''<ref>田隅本生 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.40.83 哺乳類の日本語分類群名,特に目名の取扱いについて 文部省の“目安”にどう対応するか]」『哺乳類科学』第40巻 1号、日本哺乳類学会、2000年、83 - 99頁。</ref>。
 
== 進化 ==
従来の説においては、ウマ目とウシ目([[偶蹄目]])は約6,000万年前に[[顆節目]]を祖として分岐、進化したとされてきた<ref>『脊椎動物の進化』 {{sfn|コルバート|モラレス|ミンコフ|2004|page=400頁</ref>}}。しかし[[2006年]]、[[分子生物学]]の見地から異なる見解が提示された。[[レトロトランスポゾン]]の挿入位置の解析の結果、ウマ目は[[食肉目]]、[[コウモリ目]]などと近縁であることが判明し、[[ペガサス野獣類]]{{sname||Pegasoferae}}という[[クレード]]にまとめられると発表された。ウシ目とウマ目は同じ[[ローラシア獣上目]]に属すものの系統的にはやや離れており、両者の蹄はそれぞれ独自に進化したある種の[[収斂進化]]である<ref>『動物の起源と進化』 43 - 44頁</ref>。ただし、ウシ目([[クジラ目]]も含む)が、ウマ目のほかコウモリ目やネコ目も含むクレードに属し、中でもコウモリ目やネコ目よりもウマ目に一番近いとする研究結果もある<ref>http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature14249.html Figure 2 を参照</ref>。
 
ウマ目は[[始新世]]から[[漸新世]]にかけて繁栄し、特に[[漸新世]]には[[サイ|サイ類]]から陸上哺乳類史上最大級の種([[パラケラテリウム]]またはインドリコテリウム)が現れるなど、その繁栄の絶頂にあったが、[[中新世]]以降は地球の寒冷化による環境の変化によって多くの種が絶滅し、更に[[ウシ亜目]]などの反芻類の進化に押されて衰退を始める。地質時代には240属と多様性を誇ったこのグループも現在はわずかに3科6属20種しか生き残っていない<ref>『哺乳類の進化』 {{sfn|遠藤秀紀|2002|pages=98 - 99頁</ref>}}<ref name="絶滅哺乳類図鑑">『絶滅哺乳類図鑑』 140頁</ref>。
 
== 形態特徴 ==
脚指の先端は[[蹄]](ひづめ)で覆われており、指先のみを地面につけ、人間などのかかとに相当する部分は地面につけない[[蹄行]]性の歩行をする。各脚の指の数は、ウマでは1本、サイでは3本、バクでは前脚が4本、後脚が3本となっている。これらの指のうち、中指を肢端の中心線が通っていることがこのグループを定義付ける特徴である<ref name{{sfn|コルバート|モラレス|ミンコフ|2004|page="脊椎動物の進化 450">『脊椎動物の進化』 450頁</ref><ref>『哺乳類の進化』 }}{{sfn|遠藤秀紀|2002|page=92頁</ref>}}<ref name="絶滅哺乳類図鑑" />。かつてウマ目の祖先は5本の指を持っていたが、草原を走るため体重を支える第3指が発達し、他の指は退化している。
 
それ以外の四肢の特徴としては、大腿骨の外側に、第三小転子と呼ばれる、筋肉の付着点となる突起を持ち、また[[距骨]]上端が滑車型、下端が平面または窪み型となっている点である。この距骨は、鯨偶蹄類では上下端とも滑車状になっている<ref name{{sfn|コルバート|モラレス|ミンコフ|2004|page="脊椎動物の進化 450"/>}}
 
いずれも草食性で、[[切歯]]と[[臼歯]]がよく発達しており、食べ物を噛み切り、すりつぶすのに適している。切歯は大半のものが上下三対とも揃っており、効率よく植物を裁断する。この切歯と臼歯の間には大きな間隙があり、[[犬歯]]を持つものは、この部分に孤立した形で生えていることが多い<ref name{{sfn|コルバート|モラレス|ミンコフ|2004|page="脊椎動物の進化 450"/>}}。臼歯のうち[[大臼歯]]は祖先的なグループでは[[丘状歯]](ブノドント)であるが、より進化したグループでは[[畝状歯]](ロフォドント)となっている。また、進化したグループでは、最前列を除く[[小臼歯]]が大臼歯とほぼ同じ形となっている<ref name{{sfn|コルバート|モラレス|ミンコフ|2004|page="脊椎動物の進化 450"/>}}<ref name="絶滅哺乳類図鑑" />。また進化につれ、高歯冠化が著しい<ref>『哺乳類の進化』 {{sfn|遠藤秀紀|2002|page=187頁</ref>}}
 
[[胃]]は単室であるが、[[イヌ]]や[[ネコ]]、[[ヒト]]など草食への特殊化をしていない単純な形態のものとは異なり、[[食道]]へとつながる入口([[噴門]]部)付近に憩室を備え、発酵室の機能を備えつつある傾向を持つ<ref>『哺乳類の進化』 {{sfn|遠藤秀紀|2002|pages=225 - 227頁</ref>}}。下部消化管に関しては、[[結腸]]が発達し、食物を発酵・分解するためのタンクとしての役割を果たしている。また、結腸ほどではないが[[盲腸]]が長く発達している(ウマで約1.2m)。[[胆嚢]]が無いことも草食に適している。しかしながら[[大腸]]を発酵タンクとする方法は、[[反芻]]が行えない、肛門に近いため面積の確保が難しいなどのデメリットが挙げられる<ref>『哺乳類の進化』 {{sfn|遠藤秀紀|2002|pages=233 - 235頁</ref>}}。また単胃であるための容量不足ゆえに採食を頻繁にしなければならず、反芻獣に比して捕食されるリスクが大きいとの指摘もある<ref>『哺乳類の進化』 {{sfn|遠藤秀紀|2002|page=235頁</ref>}}
 
== 分類 ==
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*** †[[アミノドン科]] {{sname||Amynodontidae}}
*** [[サイ|サイ科]] {{sname||Rhinocerotidae}}
{{sfn|遠藤秀紀|2002|page=92}}
<ref>『哺乳類の進化』 92頁</ref>
 
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== 参考文献 ==
* {{ cite journal | author = Nishihara H, Hasegawa M, Okada N| date = 2006| title = Pegasoferae, an unexpected mammalian clade revealed by tracking ancient retroposon insertions| journal = Proc Natl Acad Sci U S A| volume = 103| issue = 26| pages = 9929-34| doi = 10.1073/pnas.0603797103}}
* {{ cite journal
* {{Cite book|和書|last1 = コルバート|first1 = エドウィン・ハリス|authorlink1 = エドウィン・ハリス・コルバート|last2 = モラレス|first2 = マイケル |last3 = ミンコフ|first3 = イーライ・C. |others = [[田隅本生]]訳|title = 脊椎動物の進化(原著第5版)|origyear = |year = 2004|publisher = [[築地書房]]|series = |isbn = 4-8067-1295-7|pages = 400, 449 - 472頁|ref=harv}}
| author = Nishihara H, Hasegawa M, Okada N
* {{Cite book|和書|author = 遠藤秀紀|authorlink = 遠藤秀紀|title = 哺乳類の進化|year = 2002|publisher = [[東京大学出版会]]|isbn = 978-4-13-060182-5|pages = 92 - 99, 186 - 190, 222 - 235頁|ref=harv}}
| date = 2006
* {{Cite book|和書|author = [[富田幸光]]|others = [[伊藤丙雄]]、[[岡本泰子]]|title = 絶滅哺乳類図鑑|year = 2002|publisher = [[丸善]]|isbn = 4-621-04943-7|pages = 140 - 159頁}}
| title = Pegasoferae, an unexpected mammalian clade revealed by tracking ancient retroposon insertions
* {{Cite book|和書|author = [[長谷川政美]]|title = 新図説 動物の起源と進化 書き換えられた系統樹|year = 2011|publisher = [[八坂書房]]|isbn = 978-4-89694-971-1|pages= 43 - 44頁}}
| journal = Proc Natl Acad Sci U S A
| volume = 103
| issue = 26
| pages = 9929-34
| doi = 10.1073/pnas.0603797103}}
* {{Cite book|和書
|author = [[エドウィン・ハリス・コルバート]]
|coauthors = マイケル・モラレス
|others = 田隅本生
|title = 脊椎動物の進化(原著第5版)
|origyear =
|year = 2004
|publisher = [[築地書房]]
|series =
|isbn = 4-8067-1295-7
|pages = 400, 449 - 472頁
}}
* {{Cite book|和書
|author = [[遠藤秀紀]]
|title = 哺乳類の進化
|year = 2002
|publisher = [[東京大学出版会]]
|isbn = 978-4-13-060182-5
|pages = 92 - 99, 186 - 190, 222 - 235頁
}}
* {{Cite book|和書
|author = [[富田幸光]]
|others = 伊藤丙雄、岡本泰子
|title = 絶滅哺乳類図鑑
|year = 2002
|publisher = [[丸善]]
|isbn = 4-621-04943-7
|pages = 140 - 159頁
}}
* {{Cite book|和書
|author = 長谷川政美
|title = 新図説 動物の起源と進化 書き換えられた系統樹
|year = 2011
|publisher = [[八坂書房]]
|isbn = 978-4-89694-971-1
|pages= 43 - 44頁
}}
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Perissodactyla}}
{{Species|Perissodactyla}}
 
== 外部リンク ==
*{{kotobank|奇蹄類}}
 
{{Animal-stub}}
{{DEFAULTSORT:きていもく}}
[[Category:奇蹄目|*]]