「曜変天目茶碗」の版間の差分

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出典archive化、岩崎家稲葉天目出典貼付、山崎一雄プラマー陶片観察補記
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== 概要 ==
漆黒の器で内側には星のようにもみえる大小の斑文が散らばり、斑文の周囲は[[暈]]状の青や青紫で、角度によって玉虫色に光彩が輝き移動する<ref name="山崎1987">{{harvnb|山崎|1987|loc=「曜変天目」|pp=230-243}}</ref><ref>『陶磁体系 第8巻 天目』104-108頁</ref>。「器の中に宇宙が見える」とも評される。曜変天目茶碗は、現在の[[中華人民共和国|中国]][[福建省]][[南平市]][[建陽区]]にあった{{仮リンク|建窯|zh|建窑}}<ref name="nhk20130207">{{Cite news |title=「曜変天目」器に宇宙を見る |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130207/t10015354641000.html |newspaper=NHKニュース |publisher=日本放送協会 |date=2013-02-07 |accessdate=2013-02-07 |archiveurl=https://megalodon.jp/2013-0207-1610-13/www3.nhk.or.jp/news/html/20130207/t10015354641000.html |archivedate=2013-02-07}}</ref>で作られたとされる。現存するものは世界でわずか3点(または4点、[[#MIHO MUSEUM蔵|後述]])しかなく<!--<ref group="注" name=":0">2016年12月20日に『[[開運!なんでも鑑定団]]』によりあらたに発見されたとされるものが取り上げられたが、「''鑑定結果は独自の見解に基づいたもの''([http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20161220/03.html 番組サイト])」であり、放送時点で学術的に「曜変天目」であると確認済みのものではない。</ref>-->、そのすべてが[[日本]]にあり、3点が[[国宝]]、1点が[[重要文化財]]に指定されている。いずれも[[南宋]]時代の作とされるが、作者は不詳である。<!--{{要出典範囲|date=2017年3月|形状、大きさがいずれも酷似していることから、同一人物の作ではないかとも言われる。}}-->日本では室町時代から唐物の天目茶碗の最高峰として位置付けられている<ref name="tenmoku">{{Cite web|title=数奇な伝来、存在自体が謎…国宝の名茶器「曜変天目」|publisher=産経新聞|date=2013-01-30|accessdate=2013-07-23|url=http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/art/626299/|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130202005451/http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/art/626299/|archivedate=2013-02-02}}</ref>。
 
南宋のある時期、建窯で数えるほどわずかな曜変天目茶碗が焼かれ、それから二度と焼かれることは無く、なぜ日本にだけ現存し、焼かれた中国には残っていないのか(器が割れ欠けている完全でない状態のものは発見されている)、大きな謎として残っている。
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曜変とは、建盞<ref group="注">けんさん。中国福建省にあった建窯で焼かれた茶碗。</ref>の見込み、すなわち内側の黒い[[釉薬]]の上に大小の星と呼ばれる斑点(結晶体)が群れをなして浮かび、その周囲に暈天のように、[[瑠璃色]]あるいは[[虹|虹色]]の光彩が取り巻いているものを言う<ref group="注">山崎一雄は「青紫色の光彩は釉上の被膜によって生じた光の干渉色」としている([http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/2760/1/AN10407034-21-6.pdf 「曜変天目と油滴天目」金沢大学考古学紀要21号1994])。</ref>。この茶碗の内側に光を当てるとその角度によって変化自在、七色の虹の輝きとなって跳ね返ってくる。これが曜変天目茶碗にそなわっていなければならない不可欠の条件である。
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本来、「曜変」は「窯変(容変)」と表記され、[[陶磁器]]を焼く際の予期しない色の変化を指すが、その[[星型多角形|星]]のような紋様・美しさから、「星の瞬き」「輝き」を意味する「曜(耀)」の字が当てられるようになった。このような紋様が現れる理由は、未だに完全には解明されていない。また、この紋様が意図的に作り出されたものか、偶然によるものかは議論がわかれている。
 
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==== 静嘉堂文庫蔵 ====
'''稲葉天目'''の通称で知られ、現存する曜変天目茶碗の中でも最高の物とされる。1951年6月9日、国宝指定<ref name=":2">[http://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/203619 文化遺産ベータベース]</ref>。元は[[徳川将軍家]]の所蔵で、[[徳川家光]]が病に伏せる[[春日局]]に下賜した<ref name="nhk20130207" />ことから、その子孫である[[淀藩|淀藩主]][[稲葉氏|稲葉家]]に伝わった。そのため、「稲葉天目」と呼ばれるようになった。その後、1934年に[[三菱財閥]]総帥の[[岩崎小弥太]]が購入し入手したが、岩崎は「天下の名器を私如きが使うべきでない」として<ref name="nhk20130207" />、生涯使うことはなかったという<ref name="tenmoku" />。現在は[[静嘉堂文庫]]所蔵<ref>[http://www.seikado.or.jp/040201.html 静嘉堂文庫美術館] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110726071236/http://www.seikado.or.jp/040201.html |date=2011年7月26日 }}</ref>。なお、近年オープンした東京[[丸の内]]の[[三菱一号館]]内「三菱センター デジタルギャラリー」ではデジタルコンテンツとして常時閲覧することができる。
; 大きさ
* 高さ:6.8cm
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== 杭州出土の陶片 ==
曜変天目は生産地の中国においては文献上の記述もなく、現物はおろか、陶片ですら見つかっていない状態であったが、[[2012年]]5月に中国[[浙江省]][[杭州市]]の[[:zh:杭州南宋官窑博物馆|杭州南宋官窯博物館]]館長、鄧禾穎が発表した論文において、[[2009年]]末に杭州市内の工事現場から曜変天目の陶片が発見されていたことが正式に報告された。出土した陶片は全体の3分の2ほどが残っていた<ref name="yohen">2012年11月30日、中日新聞夕刊「謎解けるか曜変天目 中国で初出土 焼成法にも光」</ref>。現在は[[古越会館]]所蔵<ref name="koshu">[httphttps://web.archive.org/web/20201027025500/https://www.j-ceramicceramics.or.jp/so-mokuji/mokujitosetsu/no-716.html/ 小林仁「曜変天目茶碗片 杭州出土」(『陶説』716号、2012年11月)]</ref>。杭州市は[[南宋]]の都が置かれ、出土場所はかつての宮廷の国使節を宿泊させ、もてなす迎賓館のような所である{{Sfn|水上|2013}}。この時に、宮廷用に献上されたことをうかがわせる言葉が刻まれた陶磁器も一緒に発見された<ref name="tenmoku" /><ref name="nhk20130207" />。
; 大きさ<ref name="koshu" />
* 高さ:6.8cm
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=== テレビ番組に登場した「曜変天目」 ===
{{main|開運!なんでも鑑定団#「曜変天目」}}
2016年12月20日放送のテレビ番組『[[開運!なんでも鑑定団]]』([[テレビ東京]]系列)において、出品された天目茶碗を[[中島誠之助]]が「曜変天目茶碗」「4点目」と鑑定し、鑑定額を2500万円とした<ref name="j-cast">[http://www.j-cast.com/2016/12/21286701.html?p=all 「鑑定団」、曜変天目茶碗に2500万円 「意外と安い」と思われるワケ] J-CASTニュース、2016年12月21日</ref><ref name="mynavi">{{Cite web|url=http://news.mynavi.jp/news/2016/12/20/520/|title=『なんでも鑑定団』で発見された曜変天目茶碗、鑑定額は2,500万円に|accessdate=2016-12-20|date=2016-12-20|publisher=マイナビニュース}}</ref><ref name =nikkeiQ6A221C1000000>{{Cite news|title=国宝級の曜変天目茶碗か テレ東の鑑定番組で発見|newspaper=日本経済新聞|date=2016-12-20|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20HAU_Q6A221C1000000/|accessdate=2016-12-20}}</ref>が、九代目長江惣吉からこの鑑定結果を否定する声が挙がった<ref>[https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12214-343894/ 世界で4つ目の曜変天目茶碗が発見される]</ref><ref>[http://www.news-postseven.com/archives/20170123_486322.html なんでも鑑定団・国宝級茶碗に陶芸家「どう見てもまがい物」]</ref><ref>[http://www.news-postseven.com/archives/20170124_486376.html なんでも鑑定団・2500万円茶碗に陶芸家が疑問の声上げた理由]</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2017/01/25/nandemo-kantei-dan-youhen-03_n_14381954.html 「曜変天目茶碗ではない」陶芸家の長江惣吉氏が訴える なんでも鑑定団に異議] The Huffington Post、2017年1月28日</ref>。中国の陶芸家である李欣紅は2017年12月の福建省のテレビ取材に、自身の作品で、「お土産品として約2年間で大量に作り、100元 - 200元(当時で1500円 - 3000円)ほどで販売したもの」と証言<ref>{{Cite journal|title=『なんでも鑑定団』国宝級!?茶碗 中国のオバちゃん「作ったのは私」|journal =[[FLASH (写真週刊誌)|]]|serial=2018年1月30日号|date=|publisher=光文社}}</ref><ref>https://www.youtube.com/watch?v=YySJGCT4lv0</ref><ref>[https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/01/17/kiji/20180117s00041000081000c.html 鑑定団で「2500万円」国宝級お宝は1400円? 国分、困惑「鑑定でそんなミス…」]</ref><ref>[https://smart-flash.jp/sociopolitics/34411 『なんでも鑑定団』国宝級茶碗に中国人が「作ったのは私!」]</ref>。
 
== 日本国内復元の試み ==
[[1953年]]に発表された[[小山富士夫]]と[[山崎一雄]]による論文「曜変天目の研究」において、[[ミシガン大学]]教授の[[J.Mプラマー]]が[[1935年]]に建窯窯址から採取した光彩の生じた陶片<ref group="注" name="plumer">曜変天目の陶片ではない。</ref>の釉の定量分析と観察により、
:* 光彩発生の原因であると見られていた、釉中に[[鉛]]や[[タングステン]]は存在して含んでいない。
:* 斑点は人工的につけられたとは、斑点の周囲の釉が失透結晶していること、斑点の周囲に青紫色の光彩があることから、考えにくい。
:* 光彩が斑点の周囲に多く、斑点生成と関係があり、薬品で釉を人工的に腐食させた人工的腐食を行ったとは考えにくい。
また、龍光院の曜変天目の観察により、
:* 青紫色の光彩は釉上の薄膜によって生じた[[構造色|光の干渉による色]]である。
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* {{Cite journal|和書|title=曜変への道 |journal=[[陶遊]] |publisher=エスプレス・メディア出版}}
* {{Cite journal|和書|author=出川哲朗|title=茶碗の最高峰「曜変天目」|journal=化学と教育|volume=64|issue=6|pages=296-297|publisher=[[日本化学会]]|date=2016|doi=10.20665/kakyoshi.64.6_296|ref={{SfnRef|出川|2016}}}}
* {{Cite journal|和書|author=水上和則|title=杭州出土の曜変天目|journal=専修大学人文科学年報 |publisher=専修大学 人文科学研究所 |volume=第43号 |issue= |pages=193-220 |doi= |date =2013-03-26|url =https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=7478&item_no=1&page_id=13&block_id=21 |format =PDF|accessdate=2021-09-15|ref={{SfnRef|水上|2013}} }}
 
== 外部リンク ==