「ザビ家」の版間の差分

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→‎ガルマ・ザビ: 永井一郎が、ガルマ・ザビはシャアの人気を上回るほどではないか、と述べている点について出典と共に追加。
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声:[[永井一郎]](テレビ版)/ [[藤本譲]](劇場版I)/ [[柴田秀勝]](劇場版III・特別版) / [[浦山迅]]([[機動戦士ガンダム THE ORIGIN|THE ORIGIN]]) / [[松山鷹志]]([[機動戦士ガンダムさん|ガンダムさん]])
 
ジオン公国公王。年齢は62歳で身長は170cm<ref>『機動戦士ガンダム 記録全集1』日本サンライズ、1979年12月、107頁。</ref>。[[機動戦士ガンダムの登場人物 ジオン公国軍 (あ行-さ行)#ジオン・ズム・ダイクン|ジオン・ズム・ダイクン]]の死後、[[ジオン共和国]]に公王制を敷くが、『機動戦士ガンダム』劇中の時点では実質的に[[隠居]]状態にある。政治的には[[穏健|穏健派]]の立場を取り、急進的なギレンと対立する。座乗艦は[[グワジン]]級戦艦[[グワジン#グレート・デギン|グレート・デギン]]。
 
ギレン(長男)、キシリア(長女)、サスロ(次男)、ドズル(三男)、ガルマ(四男)の5人の子をもうける(テレビ版の初期設定ではミハルという次女もいた<ref>第12話の作画打ち合わせの段階まで設定は生きており、そのため『アニメージュ』1979年8月号に「ミハル・ザビ」の名が掲載されてしまったいる。</ref><ref name="animage7912">[[尾形英夫]]編「機動戦士ガンダム きみはこれを見て生きのびることができるか? ファンからのここが聞きたいガンダム67の質問」『アニメージュ 1979年12月号』[[徳間書店]]、昭和54年(1979年)12月10日。雑誌 01577-12、28-29頁。</ref><ref name="genba">[[氷川竜介]]・[[藤津亮太]]編「第二章 TV版と音楽と ファンからのここが聞きたいガンダム67の質問(1979)」『ガンダムの現場から 富野由悠季発言集』[[キネマ旬報社]]、2000年10月16日。ISBN 4-87376-537-4、74-76頁。</ref>。妻はナルスだが、子の母親に関しては諸説ある<ref>漫画『[[機動戦士ガンダム MSV-R 宇宙世紀英雄伝説 虹霓のシン・マツナガ]]』第5巻、151頁では母親がそれぞれ異なることをデギンがドズルに語っている。</ref>)。
 
かつてはダイクンと盟友関係にあり、宇宙世紀0058年のジオン共和国宣言時には地球連邦軍駐留部隊の切り崩しに尽力したほか、連邦軍への対抗から共和国宣言時に成立したジオン国防隊を0062年にジオン共和国軍に昇格させ、軍事力の強化に努めた。デギンの軍事拡張路線はダイクンにとって認め難いことだったが、連邦へ対抗するために容認せざるを得なかった(一方、『[[機動戦士ガンダム THE ORIGIN]]』では、連邦政府との軍事衝突も辞さない強硬姿勢をとっていたのはダイクンの方であり、デギンは非戦派だったとされる)。
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10月1日には、サイド3の9バンチコロニーで市民団体を中心におこなわれた戦没者慰霊祭に出席したとされる。冥福を祈るとともに「連邦軍に勝利するため、今しばらく力を貸してほしい」と国民に訴えている<ref>『機動戦士ガンダム ジオン新報-秘匿された記憶』ティーツー出版、1999年1月、75頁。</ref>。
 
デギンは猛々しい性格のギレンやキシリア、ドズルを疎み、ガルマを溺愛しているが、戦争が予想外の長期にわたりガルマは地球で戦死してしまう。その一報を聞いた際、持っていた杖を使者の前で取り落とすほどの衝撃を受けたと言われる。デギンはガルマの密葬を望むが、ギレンは国葬として[[プロパガンダ]]に利用し、両者は対立を深めていく。これ以降、デギンはギレンの独裁を抑えるため、首相の[[機動戦士ガンダムの登場人物 ジオン公国軍 (た行-わ行)#ダルシア・バハロ|ダルシア・バハロ]]に命じ、ひそかに連邦との講和を図る。
 
その後、ソロモン陥落に際してドズルまでも失うが、このときは「ドズルにしてもっともなことであるよ」と呟くのみだった(『THE ORIGIN』(漫画)ではギレンに対し、劣勢ながらよく戦ったドズルを援軍も出さず見捨てたと非難する)。ギレンによる軍事最優先主義が、ついには数百万人を超えるコロニー住民の強制疎開にまで過剰化し、コロニー国家にとって国土そのものである宇宙コロニーを超大口径レーザー兵器「[[コロニーレーザー#ソーラ・レイ(機動戦士ガンダム)|ソーラ・レイ]]」に改造したこと、それを使用した強引な[[ア・バオア・クー]]最終決戦を目論んだことなどで亡国の危機感を強め、ギレンを旧世紀の独裁者[[アドルフ・ヒトラー|アドルフ・ヒットラー]]になぞらえて「ヒットラーの尻尾」と揶揄している<ref>なお、この後のセリフがテレビ版では「ヒットラーは敗北したのだぞ」から、劇場版『めぐりあい宇宙編』では「ヒットラーは身内に殺されたのだぞ」と制作当時の現実世界の現代(20世紀末 - 21世紀初頭)の標準的な学説、歴史観とは食い違うものに改変されたが、この改変により身内であるキシリアに殺されるという、ギレンの末路をより明確に示すものとなった。『THE ORIGIN』(漫画)では、充分に義務を果たしたドズルの件を無視して作戦を上申するギレンの態度に激昂するなど、落ち着き払っていた劇場版と異なり、より人間臭く描写されている。</ref>。「ヒットラー」については「所詮、敗者」「世界を読み切れなかった男」との観点から発言している。
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その死後も、ギレンの思想を熱烈に信奉する集団によって動乱は続いている。宇宙世紀0083年には、[[エギーユ・デラーズ]]率いるジオン軍残党勢力[[デラーズ・フリート]]が決起し、コンペイトウ([[ソロモン (ガンダムシリーズ)|ソロモン]])宙域で挙行された観艦式の核兵器による襲撃に続いて北米へのコロニー落とし(星の屑作戦)を決行する(『[[機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY]]』)。また、地球圏は選ばれた民により支配されなければならないとする考えは、後の[[ティターンズ]]指導者[[ジャミトフ・ハイマン]]などにも多大な影響を及ぼしている。
 
妻はいるが、ギレンが公の場に出すことを嫌っており<ref name="animage7912" /><ref name="genba"/>、記録もまったく残っていない。小説版では妻のことを「家政婦のような存在」「能力のない女」と見下している。また小説版では秘書の[[機動戦士ガンダムの登場人物 ジオン公国軍 (あ行-さ行)#セシリア・アイリーン|セシリア・アイリーン]]と愛人関係にあり、またかつては[[クラウレ・ハモン]]とも愛人関係にあったとされる。

趣味嗜好については、『THE ORIGIN』(漫画)の「シャア・セイラ編」にて自ら高所ばさみを手に庭園の手入れを行っているシーンや、刀剣(特に[[日本刀]])を手に物思いにふけるシーンがある。OVA版では庭園の手入れに代わって[[囲碁]]を嗜むが、いずれも日本的な趣味に耽溺している。
 
『[[ぴあ]]MOOK 愛と戦いのロボット 完全保存版』に掲載された読者アンケートにおける「一番極悪な悪役・敵役は?」の項目で、堂々の1位に選ばれている。出番は序盤と終盤のみの従来の悪役キャラの域を出ず、当時のシャアに比べれば突出した人気はなかった。ゲーム『[[機動戦士ガンダム ギレンの野望]]』シリーズでは、その名をタイトルに冠されている。
 
監督の[[富野由悠季|富野喜幸]]は[[アフレコ]]の際に声優の田中崇(銀河万丈)へ「ヒトラーのように喋ってくれ」と注文を付けている。また、ギレンがガルマ国葬やア・バオア・クー防衛戦時の演説で、国民や将兵の士気を鼓舞するために叫んだ言葉「ジーク・ジオン(Sieg Zeon)」は、かつてヒトラー率いる[[ナチス]]のスローガンだった「[[ジークハイル]](Sieg Heil:[[ドイツ語]]で「勝利万歳」の意)」にちなんだものである。OVA『[[機動戦士ガンダム 第08MS小隊]]』、OVA『[[機動戦士ガンダム MS IGLOO]]』でも出演し、前述の演説が新規収録されている。
 
なお、主人公アムロとは直接の接点や対峙がまったくないまま終わるという、当時のロボットアニメにおいてきわめて珍しい敵役であった。ただし、「トミノメモ」に語られる52話想定の最終回にあっては、追い詰められてアムロの銃撃によって倒される結末が用意されてはいた<ref>日本サンライズ「機動戦士ガンダム記録全集・5」197頁</ref>。
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戦局が絶望的となった時点で、司令部の[[機動戦士ガンダムの登場人物 ジオン公国軍 (た行-わ行)#トワニング|トワニング]]大佐(准将、少将説もあり)に事後処理を任せ、ザンジバル級機動巡洋艦で脱出を図るが、発進寸前にシャアがブリッジに向けて放ったバズーカ砲の直撃によって首を飛ばされ即死、死体もバズーカの着弾で四散した。最期の瞬間、自分に砲口を向けるシャアを確認したときの表情は驚愕に充ちたものだった。これはこのとき、キシリアはシャアが搭乗していたMS[[ジオング]]からの識別信号が途絶した報告を受けており、彼を戦死したものとみなしていたためである。乗艦していたザンジバルもその直後に連邦軍艦の集中砲撃を受けて轟沈し、公式記録ではこれによる戦死とされている。
 
『THE ORIGIN』(漫画)ではギレン抹殺後もア・バオア・クーでのジオン軍の優勢は揺るがなかったが、アルテイシア一派とそれに合流したギレン派を一気に排除すべく、要塞司令室に爆弾を仕掛けた上で総撤退を決定。これは連邦の宇宙戦力がほぼ損耗しているため、本国とグラナダ戦力を有するジオンが今後の戦局でも優勢を握れると判断しているためである(この際に旧ギレン派の将校が要塞堅守を主張したが容赦なく粛清している)。チベ級重巡洋艦パープルウィドウに搭乗してドロスへ移ろうとしたが、本編同様にシャアが放ったバズーカ砲で頭部を吹き飛ばされ、死亡。本作ではモニター越しで大破したジオングをキシリアが直に確認していたため、テレビ版以上にシャアの戦死を確信していたようである。結果、制御を失ったパープルウィドウはドロスの格納庫に突っ込んで爆発し、大損傷を受けたドロスはそのままア・バオア・クー要塞上部の司令塔を押しつぶしながら崩壊。要塞内部の広範囲が炎上してしまう。更にキシリアに降ったギレン派の要塞司令部首脳も同乗していたため、戦争指導者と現場指揮官を一気に失ったジオンは目前の勝利から一転して敗戦するという結末を迎える。
結果、制御を失ったパープルウィドウはドロスの格納庫に突っ込んで爆発し、大損傷を受けたドロスはそのままア・バオア・クー要塞上部の司令塔を押しつぶしながら崩壊。要塞内部の広範囲が炎上してしまう。更にキシリアに降ったギレン派の要塞司令部首脳も同乗していたため、戦争指導者と現場指揮官を一気に失ったジオンは目前の勝利から一転して敗戦するという結末を迎える。
 
小説版では、ソロモンではなくグラナダが連邦軍の進攻ルートとして狙われ、キシリアの采配のまずさもあってあっさりとグラナダを奪われ、ア・バオア・クーに合流。その後の防衛戦ではランバ・ラルとハモンから受けた警告に従ってア・バオア・クーの宙域をただちに離脱したことにより、ギレンが連邦軍とキシリアを同時に屠ろうとしたソーラ・レイの直撃を辛くも逃れている。その後、シャアや[[カイ・シデン]]らペガサスのクルーと共にズム・シティへ乗り込み、追い詰めたギレンをシャア専用リック・ドムの掌上から「ビーム・ライフル」で射殺。しかし、その直後にシャアが文字通りリック・ドムの「掌を返し」たため、地上に墜落死するという最期を遂げている。なお、小説版ではキシリア自身にもニュータイプの素養があったとされている。昔、幼いころのキャスバルとアルテイシアを見て「自分も金髪碧眼の男性と結婚し、こういう子供を授かってみたい」と感じていたという心境も描写されている。
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声:[[藤真秀]]([[機動戦士ガンダム THE ORIGIN|THE ORIGIN]])
 
デギンの次男。年齢などの詳細は不明(宇宙世紀0068年没説あり)。アニメの準備稿に設定として存在し、世間一般には小説版で初めて名前が登場した。一年戦争時にはすでに死亡しているため、アニメ『機動戦士ガンダム』作中には登場せず、小説版でも[[文官]]としての資質が高かった旨が語られるのみである。また、小説版ではギレンがダイクン派との抗争で暗殺されたサスロの死を惜しむ場面があることから、兄弟の中で唯一ギレンが評価していた人物と言える。
 
『THE ORIGIN』の「シャア・セイラ編」で、ザビ家の次男として初めて本格的に描かれた。その作中での容姿は、デギン譲りの顔立ち(特に鼻)にギレンの目つきの悪さ、ドズルの屈強な体格を併せ持っていた。激情家で気性は荒く、感情を率直に表現する表裏のない性格<ref name="Sasro">機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック2巻90p。</ref>。ジオン・ズム・ダイクンの非合法活動期には、兄ギレンやランバ・ラルとともに地下活動家としてダイクンに従い暗躍している。勃興期のジオンではムンゾ国民運動部長としてマスコミを牛耳り、ザビ家の支配拡大のための世論操作などを行っており、その仕事ぶりの良さは兄弟も評価するところであった。その一方で、ダイクンの遺児たちを軽視して野放しに取り逃がした妹キシリアを容赦なく咎めて平手打ちにし、弟ドズルにはやりすぎではとたしなめられる一幕もある。しかしサスロとしてはキシリアの慢心を諌めるための行動との意識をもち、逆にドズルへお人好しすぎると叱責するなど、不器用ながらに家族を気遣っている<ref name="Sasro" />。
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ジオン国民からの人気が高かった事もあり、戦死後、『[[機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊]]』では「ガルマ・ザビ事件」と呼ばれるジオン軍による陽動作戦が実行され、『[[機動戦士クロスボーン・ガンダム|機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST]]』においても戦死後90年近くが経過した宇宙世紀0169年に、ガルマ・ザビ三世を名乗る独裁者が登場する等、その影響力は残されている。
 
放送当時、その容姿から女性ファンにはシャアと並ぶ人気があり、死亡した第10話の放送後、[[剃刀]]入りの手紙が[[サンライズ (アニメ制作会社)|サンライズ]]に送られたり、葬式がファン一同で[[教会]]で営まれた<ref>「[[アニメック]]」7号</ref>という逸話がある。声優の[[永井一郎]]は[[富野由悠季]]との対談でガルマ・ザビはシャアの人気を上回るほどではないかと述べている{{Sfn|ロマンアルバム|1980|p=181}}。士官学校でシャアとルームメイトであったという設定は、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に先駆けて[[同人誌|ファンジン]]の後付設定として一人歩きしていたことが、当時のアニメ誌などで窺い知れる。
 
小説版ではあくまでも純粋にホワイトベースとの戦いの中で戦死する。その際のシャアの独白から、シャアに謀殺の意図はなかったことが伺える。セイラもアムロとの会話の中で(結果としてザビ家の人間を一人殺せたとは思ったかもしれないが)意図的に親友のガルマを殺そうとするはずがないと述べている(セイラはシャアから手紙でガルマとの深い友情を知っていた)。