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'''法益'''(ほうえき、{{lang-de|Rechtsgut}})とは、[[法]]がある特定の行為を[[規制]]することによって保護、実現しようとしていされる[[利益]]をいう。'''保護法益'''(ほごほうえき、{{lang-de|Schutzgut}})ともいう。
{{出典の明記|date=2019年3月}}
'''法益'''(ほうえき、{{lang-de|Rechtsgut}})とは、[[法令]]がある特定の行為を[[規制]]することによって保護、実現しようとしている[[利益]]をいう。
 
== ==
'''保護法益'''(ほごほうえき、{{lang-de|Schutzgut}})ともいい、主として[[民法学]]及び[[刑法学]]において用いられる法的概念である。
法律が一定の禁止規範を設けるのは、それによって一定の利益の保護を図るという目的があるためである{{sfn|西田|2010|p=30}}。
==概要==
 
===解釈===
この法律によって保護される利益・価値を、「'''法益'''('''保護法益''')」という{{sfn|西田|2010|p=30}}。
 
=== 解釈= ==
{{出典の明記|date=20192021310|section=1}}
規制[[法令]]の法益は何かを考えることは、その法令の[[解釈]]の指針となる。
 
例えば、「[[未成年者]]を[[略取]]し、又は[[誘拐]]した者は、3月以上5年以下の[[懲役]]に処する。」([[刑法 (日本)|刑法]]224条)との法令があったとする。この法令の法益は未成年者の[[保護者]]の[[監護権]]であると考えると、[[親権者]]である[[父]]が、親権者である[[母]]のもとから[[幼児]]を誘拐しても、何ら法益を侵害しておらず、[[違法性]]がない(つまり、犯罪は成立しない。[[犯罪]]を参照。)と解釈する余地がある(最高裁平成15(2003)年3月18日決定[[刑集]]57巻3号371頁参照)。また、仮にこの法令の法益は未成年者の[[移動]]の[[自由]]であると考えると、自由に移動する[[意思]]も能力もまだ持たない[[乳児]]を略取しても、何ら法益を侵害しておらず、違法性がないと解釈する余地がある。
===刑法学===
刑法学においては、法益の帰属主体(誰がその法益の持ち主か)に着目して、[[個人的法益]]、[[社会的法益]]及び[[国家的法益]]に三分するのが通例である。この分類も、その法令の解釈や適用の指針とすることを目的とする。
 
=== 刑法学= ==
例えば、自己の所有建物に放火して全焼させたが、結果的に近隣の家屋に延焼せず、近隣住民にも何の実害もなかったという例を考える。この場合、[[建造物等以外放火罪]]の保護法益が個人の財産権のみであるとすると、他人の権利の目的となっていない自己所有物を破壊しただけだから、そもそも処罰してはならないという解釈も可能である。
[[刑法 (日本)|刑法]]の第一の機能を法益の保護とし、犯罪の本質は法益の侵害にあるという考えを「'''法益保護説'''('''法益侵害説''')」という{{sfn|西田|2010|p=30}}{{sfn|大谷|2019|p=4}}{{Refnest|group="注釈"|一方で、刑法の第一の機能を社会倫理の維持とし、犯罪の本質は反道徳行為に対する処罰という考えを「社会倫理説」、刑法の第一の機能を社会秩序の基本となる規範の保護とし、犯罪の本質は社会規範に違反したことに対する処罰という考えを「社会秩序説(規範侵害説)」という{{sfn|大谷|2019|p=4}}{{sfn|西田|2010|p=31}}。}}。刑法によって保護される法益は、生命、身体、自由などの[[個人的法益]]、公共の安全などの[[社会的法益]]、通貨制度、文書制度などの[[国家的法益]]があり、法益の保護を通じて社会秩序を保護している{{sfn|西田|2010|pp=30-31}}{{sfn|大谷|2019|pp=4-5}}。
 
=== 法益保護主義 ===
しかし、日本の刑法は現に一定の条件の下、自己所有物への放火も処罰している。これは、同罪の保護法益が個人の財産権という個人的法益だけでなく、公共の危険という社会的法益でもあるからである、と説明されるわけである。
いかなる行為が法益の侵害となるかを明示しておかなければ市民の行動が不必要に制限されてしまうため、あらかじめ犯罪と刑罰を法律によって明示して規定することを[[罪刑法定主義]]という{{sfn|今井|小林|島田|橋爪|2012|p=13}}。この罪刑法定主義は、「'''法益保護主義'''」(保護すべき法益が存在する限り刑法の適用が肯定される考え)に制約を課す原理である{{sfn|今井|小林|島田|橋爪|2012|p=13}}。
 
=== 被害者の承諾 ===
{{Main|被害者の承諾}}
個人的法益について、法益主体が自己の法益の侵害に同意している場合には、法益の要保護性が欠如するため、原則として違法性がなくなり、犯罪は成立しなくなる{{sfn|西田|2010|p=187}}。
 
=== 緊急避難の要件 ===
{{Main|緊急避難}}
緊急避難の要件の1つに、「'''[[緊急避難#法益権衡保持の原則|法益権衡保持の原則]]'''」がある{{sfn|西田|2010|p=148}}。これは、保全利益(守ろうとした利益)が侵害された法益と等しいか、侵害された法益より大きいことが必要であるという要件である{{sfn|西田|2010|p=148}}。この2つの大小の比較は、具体的事例に応じて決めるべきであるが、同一の法益についてはその量の大小が、異種の法益についてはその法定刑の軽重が、比較のための一応の基準となる{{sfn|大谷|2019|p=299}}。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<references group="注釈" />
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=[[西田典之]] |title=刑法総論 |edition=第2版 |date=2010-03-30 |publisher=[[弘文堂]] |series=法律学講座双書 |isbn=9784335304439 |ref={{Harvid|西田|2010}}}}
* {{Cite book |和書 |author1=今井猛嘉 |author2=[[小林憲太郎]] |author3=[[島田聡一郎]] |author4=[[橋爪隆]] |title=刑法総論 |edition=第2版 |date=2012-11-25 |publisher=[[有斐閣]] |series=LEGAL QUEST |isbn=9784641179196 |ref={{Harvid|今井|小林|島田|橋爪|2012}}}}
* {{Cite book |和書 |author=[[大谷實]] |title=刑法講義総論 |edition=新版第5版 |date=2019-04-20 |publisher=[[成文堂]] |isbn=9784792352769 |ref={{Harvid|大谷|2019}}}}
 
== 関連項目 ==
* [[刑法]]
* [[被害者なき犯罪]]
 
== 外部リンク ==
* {{Kotobank|法益}}
 
{{Normdaten}}