「ネオノミコン」の版間の差分

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== あらすじ ==
{{Hidden begin|titlestyle = background:lightgray;|title= あらすじを表示}}
[[連邦捜査局|FBI]]捜査官メリル・ブリアーズとゴードン・ランパーは精神病院に収容されている元FBIの殺人者アルドー・サックスを訪ね、捜査中の事件について助言を求める。サックスはまったく意味をなさない奇妙な言語で回答し、訪問は無為に終わる。サックスが最後に内偵捜査に当たっていた連続殺人事件を調査するうち、ジョニー・カルコサという人物が浮かび上がってくる。その身柄確保は不可解な成り行きで失敗する<ref>Vol.{{cite comic|title=Neonomicon|issue=1|date=2013-10-09|id={{ASIN|B0741GM756}}|publisher=Avatar|writer=Alan Moore|artist=Jacen Burrows}}</ref>。
 
カルコサが残した奇怪な[[張形|ディルド]]を手掛かりに、ブリアーズらは[[マサチューセッツ州]][[セイラム (マサチューセッツ州)|セイラム]]に向かう。一般人を装ってセックスショップに赴いた二人は店主によってオカルト信者の親睦会に誘われる。それは地下の汽水プールで行われる[[乱交]]パーティーだった。ランパーは不意を突かれて殺され、ブリアーズは[[輪姦]]される。川とつながった水路から一体の巨大な[[深きものども|魚人]]が招き入れられ、列席者と交わり始める<ref>Vol.{{cite comic|title=Neonomicon|issue=2|date=2013-10-09|publisher=Avatar|writer=Alan Moore|artist=Jacen Burrows}}</ref>。
 
ブリアーズは幽閉され、魚人によって繰り返し[[強姦|犯され]]続ける。薬物で昏睡したブリアーズの夢にカルコサが現れ、[[ナイアーラトテップ]]の化身を名乗り、聞き取りにくい言葉で祝福を告げると「ここが[[ルルイエ]]だ」という。目覚めたブリアーズは魚人と会話を試み、その助けで地下から解放される<ref>Vol.{{cite comic|title=Neonomicon|issue=3|date=2013-10-09|id={{ASIN|B0741G5PY9}}|publisher=Avatar|writer=Alan Moore|artist=Jacen Burrows}}</ref>。
 
[[SWAT]]隊の突入によりカルトの拠点は一掃される。数カ月が経ち、ブリアーズはサックスと語り合うため再び精神病院を訪れる。二人は今や{{仮リンク|アクロ (架空の言語)|en|Aklo|label=同じ言語}}を話す。世界の感覚は変容し、過去・現在・未来の区別は意味を失う。ラヴクラフトの著作はこれから起きることの記録に過ぎなかった。ブリアーズは自らの子宮に宿った[[クトゥルフ]]が夢から覚め、人間の世界に終末をもたらすのを待ち望んでいる<ref>Vol.{{cite comic|title=Neonomicon|issue=4|date=2013-10-09|id={{ASIN|B0741Q347F}}|publisher=Avatar|writer=Alan Moore|artist=Jacen Burrows}}</ref>。{{Hidden end}}
== 登場人物 ==
;メリル・ブリアーズ
== 制作背景 ==
=== 原作 ===
原作者のムーアは本作について「これまで書いた中で一番不愉快な内容<ref name=wired/>」「最もどす黒く、最も厭世的な作品の一つ<ref name=skinny/>」と語っている。ムーアによると、それには執筆当時の精神状態が影響していた。強く反対していた『[[ウォッチメン]]』の[[ウォッチメン (映画)|ハリウッド映画化]](2009年)を版元[[DCコミックス]]によって強行され、憤懣の余り{{仮リンク|アメリカズ・ベスト・コミックス|en|America's Best Comics}} (ABC) ラインを打ち切ってDCと(1980年代に続き二度目に)絶縁したところだった<ref name=skinny/>。ムーアはそれ以前からDCとの間に遺恨を抱えており、他社のために企画していたABCが企業買収によってDC社に取得されたこともまったく本意ではなかった<ref>{{cite book|author=Lance Parkin|title=Magic Words: The Extraordinary Life of Alan Moore|publisher=Aurum Press|edition=Kindle|year=2013|asin=B00H855FCI|pages=297-298/427}}}</ref>。「巨大エンターテインメント産業コングロマリット」への怒りは、妥協なきホラー要素の追求として本作に現れているという<ref name=skinny/>。
 
DCからの離脱は経済的な苦境をもたらした。「税金の支払い」に迫られたムーアは<ref name=wired/>、[[アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利|作品の著作権]]を要求しない小出版社アヴァター・プレスからのオファーを受けた<ref name=skinny/>。「4号のシリーズを書くつもりがあるならいくらか出せると言われたんで、そうした」<ref name=wired>{{Cite web|first=Scott|author=Thill|url=https://www.wired.com/underwire/2010/08/alan-moore/all/1|title=Alan Moore Gets Psychogeographical With Unearthing|publisher=[[Wired (magazine)|Wired]]|date=9 August 2010|accessdate=24 March 2011}}</ref>。アヴァターは題材に制約を課さなかったが、ムーアはさらに踏み込んで「[[勃起]]や[[性的挿入|挿入]]」を描いても構わないという言質を取った<ref name=skinny/>。
単なるラヴクラフトの[[パスティーシュ|模作]]にとどまらないものを書くためのアイディアは二つあった。一つは作品から1930年代の雰囲気を排除して現代的なリアリズムを持ち込むことである。ムーアは現代的な描写の例としてテレビドラマ『[[THE WIRE/ザ・ワイヤー|The Wire]]』の「受け入れやすさ、[[自然主義|ナチュラリズム]]」を挙げている。もう一つは、ラヴクラフト自身が抑圧し、模作者たちが避けて通ってきた要素を正面から扱うことだった。「[[人種差別主義]]、[[反ユダヤ主義]]、[[性差別|性差別主義]]、[[性嫌悪]]」である<ref name=skinny/>。ムーアはラヴクラフトの作品集(2014年)に寄せた序文でこう書いている。
 
{{Quote|ラヴクラフトの作品や信条を生み出したのは、この世のものならぬ怪への恐怖などではなく、現代世界における権力関係や価値観の推移を何より恐れる白人・中産階級・異性愛者・プロテスタント・男性のそれにほかならない<ref name=tcj/>。}}
 
『[[インスマウスの影]]』などが異種族混交を扱っているのは明らかであるにもかかわらず、ラヴクラフト作品で性行為が具体的に描かれることはなく<ref name=greve>{{cite book|title=American Weird: Concept and Medium|author=Julius Greve, Florian Zappe|publisher=Bloomsbury Publishing|year=2020|pages=202-203|url={{Google books|UswAEAAAQBAJ|The American Weird: Concept and Medium|page=202|plainurl=yes}}|accessdate=2021-10-11}}</ref>、「名付けえぬ儀式」「冒涜的な儀式」のような婉曲な表現が用いられる。「そこでこう考えた。人種がらみの不快な要素をぜんぶ取り戻してやる。セックスも取り戻してやる。本物の「名付けえぬ儀式」を作り出して、それに名前を付けてやる」<ref name=skinny>{{Cite web|first=Bram|author=Gieben|url=http://www.theskinny.co.uk/article/100258-choose-your-reality-alan-moore-unearthed|title=Choose Your Reality: Alan Moore Unearthed|publisher=[[The Skinny (magazine)|The Skinny]]|date=1 September 2010|accessdate=24 March 2011}}</ref>。
* {{cite web|url= https://www.hmv.co.jp/artist_%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2_000000000259649/item_%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%B3%E3%83%B3_5877040?siteview=pc&|title=ネオノミコン|publisher=HMV&BOOKS online|accessdate=2021-10-05}}
* {{cite web|url=https://honto.jp/netstore/pd-book_26280877.html |title=ネオノミコンの通販|publisher=honto|accessdate=2021-10-05}}
</ref>、発売前に中止された。2021年10月に[[国書刊行会]]から刊行が実現した。全4巻のシリーズで、第1巻は「ネオノミコン」とコミック版「中庭」からなる。翻訳は[[柳下毅一郎]]による<ref name=kokusyo/>。第2~4巻には続編『プロヴィデンス』が収録される<ref>{{cite web|url=https://www.kokusho.co.jp/special/2021/09/4.html|accessdate=2021-10-18|title=アラン・ムーア版〈ネオノミコン〉シリーズ全4巻 刊行開始!|publisher=国書刊行会|date=2021-09-28}}</ref>
 
* 〈ネオノミコン〉シリーズ第1巻『ネオノミコン』 (184ページ、2021年10月、{{ISBN2|978-4-336-07268-9}})
 
== 脚注 ==