「現代宇宙論」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
59行目:
[[宇宙の曲率]]([[:en:Shape of the Universe]])が平坦であるとすると、宇宙の[[エネルギー密度]]には25%のダークマターと4%のバリオンに加えて71%の別の成分が存在しなければならない。この成分をダークエネルギーと呼ぶ。ダークエネルギーの存在がビッグバン元素合成や宇宙マイクロ波背景放射の観測結果と矛盾しないためには、ダークエネルギーはバリオンやダークマターとは異なり、ハロー状に集積しない必要がある。ダークエネルギーの存在については強い観測的証拠がある。すなわち、宇宙の全質量は既に分かっており、また宇宙の曲率は平坦であることが測定から判明しているが、天体として集合している分の質量を精密に測定した結果、その質量は宇宙を平坦にするには少なすぎることが分かっている。ダークエネルギーの存在は[[1999年]]になって、現在の宇宙が(速さは異なるものの)インフレーション期と同様の加速膨張をしていることが観測的に示されたことでさらに強まった。
 
しかし、ダークエネルギーの性質については、そのエネルギー密度や集積しないという性質以外には何も分かっていない。[[量子場理論]]からは[[宇宙定数]]がダークエネルギーとよく似た振る舞いをすることが予言されているが、その大きさは実際のダークエネルギーより約120桁も大きい。[[スティーブン・ワインバーグ]]や多くのひも理論研究者は、この事実を[[人間原理]]の証拠として取り上げてきた。彼らは、宇宙定数がこのように小さいのは、宇宙定数が大きな宇宙には生命(や宇宙を観測する物理学者)が存在できないからである、としている。しかし多くの人々はこの説明はダークエネルギーの説明としては不足であることを指摘している。ダークエネルギーに関する別の説明としては、[[クインテセンス (宇宙論)|クインテッセンス]]や大きなスケールでの重力相互作用の修正などがある。これらのモデルが記述するダークエネルギーの宇宙論的効果はダークエネルギーの[[状態方程式]]で与えられ、理論ごとに異なる状態方程式に従う。ダークエネルギーの正体は宇宙論における最も困難な問題の一つである。
 
ダークエネルギーについての理解が進めば、[[宇宙の終焉]]がどうなるかという問題にも答が得られる可能性がある。宇宙の歴史において、ダークエネルギーによる現在の加速膨張は、超銀河団よりも大きな構造が作られることを妨げていると考えられる。この加速膨張が将来も続くかどうかは分かっていない。ダークエネルギーが時間的に増加して加速膨張の度合が大きくなればやがて[[ビッグリップ]]を迎えるかもしれないし、あるいは時間とともに減少すれば最終的に宇宙は収縮に転じるかもしれない。