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'''ヒトパピローマウイルスワクチン'''('''HPVワクチン'''、HPV予防ワクチン、'''子宮頸癌ワクチン''')は、特定の[[ヒトパピローマウイルス]](Human papillomavirus:HPV)の持続感染を予防する[[ワクチン]]である<ref name="CDC-HPV" /><ref name="CDC-HPV-Fact">{{Cite web|publisher=Centers for Disease Control and Prevention (CDC) |url=http://www.cdc.gov/std/HPV/STDFact-HPV.htm |title=Genital HPV Infection - CDC Fact Sheet |date=2009-11-24 |accessdate=2010-02-13}}</ref>。[[WHO]]は、2006年から2017年までに、2億ドーズ以上のHPVワクチンが世界中で幅広く使用され、ワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)では当ワクチンの安全性に関して評価を行い、これまでのところ推奨の位置付けを変更する安全上の問題は判明していないと表明している<ref>{{Cite web|title= 参考資料3-2 諸外国の公的機関及び国際機関が公表しているHPVHPVワクチンに関する報告書(同審議会 資料15)|url=https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000838243.pdf|website=厚生労働省|accessdate=2021-10-2|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|title= Global Advisory Committee on Vaccine safety Statement on Safety of HPV vaccines 17 December 2015|url=https://www.who.int/vaccine_safety/committee/GACVS_HPV_statement_17Dec2015.pdf|website=WHO|accessdate=2021-10-2|language=en}}</ref>。
 
HPVは、[[尖圭コンジローマ]]または[[子宮頸癌]]、[[肛門癌]]、[[中咽頭癌]]などの[[癌]]や,喉頭気管乳頭腫症の発生に関係する。HPV罹患は性行為及び分娩時のHPV産道感染の可能性が指摘されているが母子の遺伝子系が異なるなど未知の感染経路もあり、また レーザー治療煙で医療者の感染も場合もある<ref>{{citeweb|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/117/5/117_614/_pdf|title=ヒト乳頭腫ウイルス感染の現状と新しい展開―喉頭乳頭腫を巡る現状と現実的なアプローチ2013―|publisher=第114回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会|author= 齋藤康一郎|accessdate=2021-11-15}}</ref>。アメリカ合衆国では、[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)が、45歳までの男女に予防接種を推奨している<ref name=fda2018oct05>[https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-expanded-use-gardasil-9-include-individuals-27-through-45-years-old FDA approves expanded use of Gardasil 9 to include individuhttps://www.who.int/vaccine_safety/committee/GACVS_HPV_statement_17Dec2015.pdf</ref>とされている。アメリカでは中咽頭癌における HPV陽性率は1980年代の16%から2000年代初頭には72%まで増加している。ワクチン接種率は2020年代の欧米で70-80%であるのに対し、日本では小学校6年~高校1年相当の女子を対象に定期接種が行われている<ref>{{Cite web|title=ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|url=https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/|website=厚生労働省|accessdate=2021-09-21|language=ja}}</ref>が、2013年3月から[[朝日新聞]]がHPVワクチンを一方的に問題視するアンチキャンペーンを展開して<ref>{{Cite web|title=HPVワクチン騒動は朝日新聞が作った「冤罪」か - (旧)先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 Information|url=http://expres.umin.jp/info/acv/2015/12/hpv.html|website=expres.umin.jp|accessdate=2021-07-09}}</ref>以降、同年6月に[[厚生労働省]]による接種の積極的勧奨が中止となり、2020年代には接種率が0.3%に減少した。2021年時点で毎年約3000人が子宮頸がんで死亡している<ref>{{Cite web|url=https://www.daiwa-grp.jp/dsh/results/42/pdf/17.pdf|title=咽頭における高リスク型HPVの感染と中咽頭癌バイオマーカーとしての意義|publisher=H29_第40集_大和証券_研究業績|author=福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座教授 室野重之|accessdate=2021-6-7}}</ref><ref>{{Cite web|title=「反省文を掲載しなさい」堀江貴文氏がHPVワクチンをめぐる朝日新聞に言及|url=https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3281397/|website=東スポWeb |publisher=東京スポーツ新聞社|accessdate=2021-07-03|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|title=HPVワクチンへの誤解を解きたい、子宮頸がんの犠牲者を減らしたい──専門医の訴え|url=https://wezz-y.com/archives/91284|website=wezzy|ウェジー|publisher=[[サイゾー]]|accessdate=2021-06-10|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|title=新型コロナ「反ワクチン報道」にある根深いメディアの問題(ニッポン放送)|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/05165f510b41511289978b450d92b847d1c14502|website=Yahoo!ニュース|accessdate=2021-06-10|language=ja}}</ref>。2021年10月、厚労省の検討部会が同ワクチンの安全性や効果などを踏まえ「積極的勧奨」再開の方向で検討を始めた<ref>{{Cite web|title=子宮頸がんワクチン、「積極的勧奨」再開の方向 厚労省検討部会|url=https://www.asahi.com/articles/ASPB15RWGPB1ULBJ00N.html|website=朝日新聞|date=2021-10-01|accessdate=2021-10-02|language=ja}}</ref>。11月、同省の「副反応検討部会」と「薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」が11月12日に合同開催において、HPVワクチンの積極的勧奨を再開することを了承され、将来的に打ち逃した世代への救済措置も検討について言及された<ref>{{Cite web|title=【詳報】HPVワクチン、積極的勧奨の再開を了承 厚労省の副反応検討部会|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpvv-varrc-2-shouhou|website=BUZZ FEED JAPAN|author=岩永直子|date=2021-11-12|accessdate=2021-11-15|language=ja}}</ref>。<br />子宮頸がんに罹患した場合その影響は本人だけに留まらず、罹患した母から出生した新生児に羊水を通じてがんが移行した事案も判明している<ref>{{Cite web|author=国立研究開発法人国立がん研究センター 東京慈恵会医科大学 学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 国立研究開発法人国立成育医療研究センター 東邦大学 国立大学法人北海道大学 北海道大学病院 国立研究開発法人日本医療研究開発機構|title=母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見 |url=https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/20210107/index.html|website=国立がん研究センター|date=2021-01-07|accessdate=2021-07-12|language=ja}}</ref>。オーストラリアの4価ワクチン接種後の研究では母親から移るHPV再発性気道乳頭腫症(RRP)の発症を大幅に減少させてことが公表されている<ref>{{Cite web|title=Prevention of HPV-Related Diseases Following 4-Valent Vaccination in Australia|url=https://www.hpvworld.com/articles/prevention-of-hpv-related-diseases-following-4-valent-vaccination-in-australia/|website=HPV World|accessdate=2021-10-1|language=en}}</ref>。同疾患の乳児は平均18.1回全身麻酔切除手術を行う<ref>{{Cite web|title=HPV母子感染 知られざるリスク|author=谷口恭 |url=https://mainichi.jp/premier/health/articles/20160610/med/00m/010/009000c|website=毎日新聞|date=2016-6-12|accessdate=2021-10-07|language=ja}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=塩谷彰浩 |author2=大久保啓介 |author3=福田宏之 |author4=小川郁 |title=小児喉頭乳頭腫:-手術療法および補助療法としての漢方療法- |journal=喉頭 |publisher=日本喉頭科学会 |year=2002 |volume=14 |issue=2 |page=69-73 |naid=130004709873 |doi=10.5426/larynx1989.14.2_69 |ISSN=0915-6127}}</ref>。また妊娠中に子宮頸がんが発覚することはまれではなく、胎児ごと子宮を摘出する<ref>{{Cite web|url=https://www.news-postseven.com/archives/20190829_1441134.html?DETAIL|title=「代理出産」から16年、高田延彦&向井亜紀の双子の子が米へ|publisher=NEWSポストセブン|date=2019-8-29|accessdate=2021-10-16}}</ref>。2014年現在で胎児を残したままの患部切除手術は世界で10例しか存在しかない<ref>{{Cite web|title=当院産科婦人科において、早期浸潤子宮頸がんの妊婦さんに、子宮と胎児を残したまま患部を切除する手術を成功 |url=https://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/information/publicinformation/2014info.html|website==琉球大学病院|date=2014-02-28|accessdate=2021-9-25|language=ja}}</ref>。北海道大学「HPVワクチン副反応支援センター」の医師は子宮頸部円錐切除経験者は早産・流産を起こしやすいため、子が低出生体重児として誕生し脳性麻痺など重度障害を負うケースに小児科が数多く遭遇することを述べ、また不調がワクチン原因説に固執すると他の要因を見落とす事例を挙げている<ref>{{Cite web|author=岩永直子|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/yagyu-kazuyori-1|title=「身体が原因でなければ心の問題でしょ?」 HPVワクチン接種後に訴えられる症状を悪化させてきたもの|website=buzzfeed japan|date=2019-9-8|accessdate=2021-10-4|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|author=岩永直子|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/yagyu-kazuyori-2?bfsource=relatedmanual|title=「HPVワクチンのせい」として深刻な問題を見逃す恐れも 原因究明だけにこだわるのは危険|website=buzzfeed japan|date=2019-9-9|accessdate=2021-10-4|language=ja}}</ref>。現在は新宿のクリニックでは9価ワクチンの接種者の半数は中国人という実態がある<ref>{{Cite web|author=濱木 珠恵
|title=中国人が日本でワクチンを大量接種する訳 |url=https://president.jp/articles/-/27778?page=2|website=PRESIDENT Online|date=2019-3-12|accessdate=2021-7-12|language=ja}}</ref>。また、HPVワクチンの一連の騒動は日本人のワクチン全般に対する信頼性を下げる要因となったとされる<ref>{{Cite web|title=群馬県が20~30代に「2回接種で車」特典 ワクチン不安を考慮|url=https://mainichi.jp/articles/20210821/k00/00m/040/029000c|website=毎日新聞|accessdate=2021-08-21|language=ja}}</ref>。
 
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2014年9月には、HPV 31・33・45・52・58型に追加対応とした9価ワクチンの「[[ガーダシル#ガーダシル9|ガーダシル9]]」が、アメリカ合衆国で9-26歳の男女への接種が認可された。ガーダシル9によって、HPVの原因となるウイルス型の90%がカバーされる<ref name="ミクス2015"/>。2015年カナダ、EU、オーストラリアで承認され<ref>[https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=51896 MSD 9価HPVワクチンを国内申請 子宮頸がんの原因の約90%をカバー] 2019年10月28日閲覧</ref>、2018年までに世界77か国で承認された。2016年以降、米国では9価ワクチンのみが使われている<ref>{{Cite web|title=米国がん協会 “HPVがんのない世界へ”  HPVワクチン接種率80%を目指すキャンペーン|author=片瀬ケイ|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/katasekei/20200826-00195147|website=yahoo news|date=2020-8-26||accessdate=2021-10-4}}</ref>。
 
[[日本]]では[[メルク・アンド・カンパニー#日本法人|MSD]]によって、2015年7月3日付で9価HPVワクチンの承認申請が行われ<ref name="ミクス2015">[https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/51896/Default.aspx MSD 9価HPVワクチンを国内申請 子宮頸がんの原因の約90%をカバー] 公開日時 ミクスオンライン、2015年7月29日 2017年12月20日閲覧</ref>、5年後の2020年7月21日、「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ」として製造販売承認を取得した<ref>{{Cite web|title=ニュースリリース|ニュースルーム|MSD|url=https://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2020/product_news_0721_2.xhtml|website=www.msd.co.jp|accessdate=2020-07-24}}</ref>。 2016年には、グラクソ・スミスクラインは、9つのHPVウイルスに適応応する象となってもガーダシル9に市場は自費接種であるが、これ譲り、アメリカ合衆国から撤退無料化することを決をした期接種の検討も行われている<ref name="Med2016:0" />{{Cite<ref news |authorname=Nick Mulcahy |title=GSK’s HPV Vaccine, Cervarix, No Longer Available in US |url=https"://www.medscape.com/viewarticle/8708532" |date=2016-10-24 |newspaper=Medscape |accessdate=2018-03-10}}</ref>。日本での販売承認が遅延したため、日本や[[中華人民共和国]]では、ガーダシル9の認可を待たず、世界から個人輸入して接種する[[診療所]]が現れた<ref name=jbp20191024/><ref>[https"://yobolife.jp/column/7151" HPV9価ワクチン 接種可能 医療機関リスト一般社団法人 予防医療普及協会] 2019年10月28日閲覧</ref>。
 
2015年のHPVワクチンの国際的な売上高は、HPVの4つ(あるいは9)の型を対象とするガーダシルで19億[[アメリカ合衆国ドル|米ドル]]であり、2つの型を対象とするサーバリックスは、1億700万米ドルであった<ref name="Med2016"/>。
2016年、グラクソ・スミスクラインはサーバリックスについて、9つのHPVウイルスに対応するガーダシル9に市場を譲り、アメリカ合衆国から撤退することを決定をした<ref name="Med2016">{{Cite news |author=Nick Mulcahy |title=GSK’s HPV Vaccine, Cervarix, No Longer Available in US |url=https://www.medscape.com/viewarticle/870853 |date=2016-10-24 |newspaper=Medscape |accessdate=2018-03-10}}</ref>。日本や[[中華人民共和国]]では販売承認が遅延したため、ガーダシル9の認可を待たず海外から個人輸入して接種する[[診療所]]が現れた<ref name=jbp20191024/><ref>[https://yobolife.jp/column/715 HPV9価ワクチン 接種可能 医療機関リスト一般社団法人 予防医療普及協会] 2019年10月28日閲覧</ref>。
 
== 適応 ==
すでに感染しているHPVの排除や、すでに進行しているHPV関連の病変を抑制する効果はないため、初めての[[性行為]]の前までに接種することが推奨されるが、HPVに既に感染した既往がある人でも新たなHPVウイルスの感染を防ぐメリットや、別の部位の感染を予防する効果がある<ref name="accr20150421"/>。アメリカ合衆国では26歳までの未接種の人々に予防接種を推奨していたものを<ref name="accr20150421"/>、2018年には45歳までの男女への接種推奨に切り替えた<ref name=fda2018oct05/>。
 
接種回数は当初3回が推奨されていたが、2回接種でも十分な効果があることが確認されたために、世界では2回接種が主流になっている<ref name="産婦人科学会2017声明"/>。例えばイギリスでは女子の接種時期は12歳と13歳の2回であり、義務教育中に受けられなくても、25歳まで国民保健サービスで無料で接種可能となっている<ref>{{citeweb|url=https://www.bbc.com/japanese/48795883|title=子宮頸がんワクチン、14カ国の調査で効果明らかに 撲滅の可能性も|publisher=BBC NEWS IN JAPAN|date=2019-6-28|accessdate=2021-11-15}}</ref>。ノルウェーの研究では2回接種を受けた9~149-14歳男女でのHPV抗体反応は、3回接種を受けた16~2616-26歳女性に非劣性であった<ref>{{citeweb|url=https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2588254|title=Immunogenicity of the 9-Valent HPV Vaccine Using 2-Dose Regimens in Girls and Boys vs a 3-Dose Regimen in Women|publisher=The Journal of the American Medical Association|date=2016-12-13|accessdate=2021-11-15}}</ref>。また、国際がん研究機関(IRAC)の研究では、2010年4月にインド政府がHPVワクチンを用いる臨床試験の中止を行ったが参加者の追跡調査ではワクチンを1回接種の者も16型18型の感染予防効果は劣っていなかった<ref>{{citeweb|url=https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/202111/572502.html|title=HPVワクチン1回接種でも感染予防効果は3回接種に劣らない|publisher=日経メディカル|date=2021-11-8|accessdate=2021-11-15}}</ref>。日本では[[処方箋医薬品]]として認可されている[[サーバリックス]]は、10歳以上の女性に3回接種<ref name=sarv/>、[[ガーダシル]]は9歳以上の女性に3回接種と記載している<ref name=garda/>。
{{Quotation|'''サーバリックス'''<ref name=sarv>[https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058209.pdf サーバリックス添付文書]2019年4月改訂(第12版)</ref>:
「効能・効果に関連する接種上の注意」として
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#接種時に感染が成立しているHPVの排除及び既に生じているHPV関連の病変の進行予防効果は期待できない。
#本剤の接種は定期的な子宮頸癌検診の代わりとなるものではない。本剤接種に加え、子宮頸癌検診の受診やHPVへの曝露、性感染症に対し注意することが重要である。
#本剤の予防効果の持続期間確立していない20-30年間継続するとされる<ref name="厚生省2013資料12"/>
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=== 男性への接種の適応 ===
男性もかかるHPVワクチンは、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、尖圭コンジローマなどの抑制効果も明らかになっているため、世界的に男性への導入も進んでいる<ref>{{Cite web|title=HPVワクチン、日本でも男性、肛門がんにも適応拡大へ 厚労省の審議会が適応拡大を了承|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpvv-gender-neutral-3|website=BuzzFeed|accessdate=2021-01-23|language=ja|first=Naoko|last=Iwanaga}}</ref>。{{As of|2020|12}}、男性への接種を認める国と地域は100以上におよび、40以上の国と地域では男性も公費助成の対象となっている<ref name=":0">{{Cite web|title=HPVワクチン 男性接種を厚生労働相が承認|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpvv-gender-neutral-4|website=BuzzFeed|accessdate=2021-01-23|language=ja|first=Naoko|last=Iwanaga}}</ref>。
 
日本では長年、男性は適応の対象外だったため、不具合による保証を受けることができなかった<ref name=":0" />。2020年12月4日、厚生労働省は4価ワクチンのガーダシルの男性への適応を了承したため、保証を受けられるようになった<ref name=":1">{{Cite web|title=「子宮頸がんワクチン」男も打つべき2つの理由 {{!}} 健康|url=https://toyokeizai.net/articles/-/392662|website=東洋経済オンライン|date=2020-12-06|accessdate=2021-01-23|language=ja}}</ref><ref name=":2">{{Cite web|title=HPVワクチン、日本でも男性、肛門がんにも適応拡大へ 厚労省の審議会が適応拡大を了承|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpvv-gender-neutral-3|website=BuzzFeed|accessdate=2021-01-23|language=ja|first=Naoko|last=Iwanaga}}</ref>。ただし、欧米で主流となっている9価ワクチンの接種は未定とされている<ref name=":1" /><ref{{Cite nameweb|url=":2" />。適応対象となっても、3回の接種で約5万円の自費がかかるが、これを無料化する定期接種の検討も行われている<ref name=":0" /><ref name=":2" /><ref name=":1" />。
 
また、同性愛者の肛門がん予防にも効果がある<ref>{{Cite web|url=
https://www.afpbb.com/articles/-/2837808|title=男子にも子宮頸がんワクチン推奨、男性がん予防に効果 |website=AFPBB News|date=2011年10月27日|accessdate=2021-09-25|language=ja}}</ref>。
 
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一方、年齢別死亡者数では、子宮頸癌による主な死亡層は高齢者であり、2008年時点で24歳までの死亡はほとんどなく、30代の10万人あたり1人から50代の同5人前後へと上昇していったまま推移し、80代近くになると急激に10人に達する<ref name="厚生ファクト2010">国立感染症研究所、「[https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000byb3.pdf 資料3-3 ヒトパヒローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート]」、[https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23.html 第11回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会]、厚生労働省、2010年7月7日。</ref>。
 
子宮頸がんについては罹患影響は本人だけに留まらない。2021年1月、国立研究開発法人国立がん研究センターは、母から子供にがんが移行することを公表した。出産直後の赤子が母親の子宮頸がんのがん細胞が混じった羊水を肺に吸い込むことによって、母親の子宮頸がんがん細胞が子どもの肺に移行して小児での肺がんを発症した2事例を発表した<ref>{{Cite web|url=https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/20210107/index.html|title=母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見|publisher=国立研究開発法人国立がん研究センター|date=2021-01-7|accessdate=2021-01-07}}</ref>。1組目の男児は免疫療法薬で治療できたが、2組目の男児は手術で肺がんを切除した。母親2人は出産後や出産時にがんと診断され、その出産死亡したと報道されている<ref>{{citenews|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2021010700322&g=soc|title=母の子宮頸がん、子に移行 羊水に混入、肺がんに―世界初・国立がん研究センター|publisher=時事ドットコムニュース|date=2021-01-7|accessdate=2021-01-07}}</ref>。
 
 
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定期的な検診で、子宮頸癌による死亡率は最大80%減少するとされているが<ref>{{Cite book|和書|author=がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究班、がん検診嗚評価とあり方に関する研究班(共に厚生労働省 がん研究助成金)|chapter=子宮頸がん検診ガイドライン・ガイドブック|title=有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン|url=https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0071/G0000193/0049|publisher=|date=2009-10|isbn=|page=}}</ref>、現実には日本の子宮頚癌患者は年々増加しており<ref name=hpv_q-a2018/>、子宮癌検診による患者削減は成功していない<ref name=hpv_q-a2018/>。20-39歳の癌患者の約8割が女性で、特に25歳から飛躍的に癌になる可能性が増える<ref name=jmedi-13285/>。これは子宮頸癌と乳癌の増加によるものである<ref name=jmedi-13285>[https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=13285 ■NEWS 20~39歳のがん、約8割が女性―国立がん研究センター・国立成育医療研究センター No.4984 (2019年11月02日発行) P.65 登録日: 2019-10-18] 日本醫事新報 2019年10月29日閲覧</ref>。
 
 
なお、妊娠中の細胞診は脱落膜細胞や異型化生細胞など鑑別を要する細胞がしばしば出現すること、採取の際の出血を避けるため十分な細胞採取が行われないことなどにより正確な診断が困難となることが専門医師により指摘されている<ref>{{Cite web|url=https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%91%A8%E7%94%A3%E6%9C%9F%E3%81%AE%E7%AB%8B%E5%A0%B4%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%88%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E3%80%80%E7%9B%B4%EF%BC%89/|author=松本 直|title=ホーム 研修ノート No.101 婦人科がん医療の近未来 (2)周産期の立場から(松本 直)|publisher=公益社団法人日本産婦人科医会|accessdate=202110-4}}</ref>。
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== 有効性 ==
=== 有効性の研究 ===
2013年の[[厚生労働省]]の2013年資料では、ワクチンの予防効果はまだ明確には見出されていないとされるが<ref name="厚生省2013資料12"/><ref name="pmid28512072"/>、日本での解析では、ワクチン接種によって、子宮癌の年間累積罹患率を半減できるとする推計が出ており、また世界での解析モデルによる推測でも、子宮頚癌罹患と死亡を70-80%程減らすという結果が出ている<ref name="厚生省2013資料12"/>。
 
2017頃より、非接種群と比較して、子宮頸癌の発癌率に差が出てきたことが報告され始めている<ref name="Luostarinen2017Dec"/>。効果の判定を慎重にしているのは、予防効果を検出するには、大規模で長期間の試験が必要なためである。前癌病変であるCIN2については、2018年5月に感染予防を確認したとされる報告書が公開されている{{sfn|コクラン・システマティックレビュー|2018年5月}}。
 
しかし前述のとおり、CIN2ががんへと進行する確率は低い{{sfn|コクラン・システマティックレビュー|2018年5月}}。ランダム化比較試験のシステマティック・レビューでは、最長7年の研究を含む26研究から、子宮頸癌について評価するには十分な研究規模、また期間ではない{{sfn|コクラン・システマティックレビュー|2018年5月}}。16型・18型に未感染であることを確認した15-26歳女性では、種類を問わず前がん性病変が生じるリスクは、ワクチン接種群で10,000人中106人に病変があり、偽薬では287人であった{{sfn|コクラン・システマティックレビュー|2018年5月}}。
 
感染不明では、同リスクは、ワクチン接種群で391人、偽薬では559人である{{sfn|コクラン・システマティックレビュー|2018年5月}}。CIN2の指標は、診断の一致率の低さや、自然退行率が高いため、CIN2をワクチンの有効性を図る指標として使用することを疑問視する声もある<ref name="pmid23369430">{{Cite journal|last1=Tomljenovic|first1=Lucija|last2=Wilyman|first2=Judy|last3=Vanamee|first3=Eva|coauthors=et al.|title=HPV vaccines and cancer prevention, science versus activism|journal=Infectious Agents and Cancer|volume=8|issue=1|page=6|year=2013|pmid=23369430|pmc=3565961|doi=10.1186/1750-9378-8-6|url=https://doi.org/10.1186%2F1750-9378-8-6}}</ref>。
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[[2019年]]4月、英国[[エディンバラ大学]]のTim Palmerらは、1988-96年にスコットランドで生まれた女性を対象に、20歳時点の子宮頸部病変スクリーニング検査の結果を調べ、12-13歳時点で'''HPVワクチン'''の'''定期接種'''を受けた1995-96年生まれの女性では、ワクチンの接種機会がなかった1988年生まれの女性に比べ、グレード3以上の子宮頸部上皮異形成が89%減少していたと『[[ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル]]』で報告した<ref>{{Cite journal|last=Palmer|first=Tim|last2=Wallace|first2=Lynn|last3=Pollock|first3=Kevin G|last4=Cuschieri|first4=Kate|last5=Robertson|first5=Chris|last6=Kavanagh|first6=Kim|last7=Cruickshank|first7=Margaret|date=2019-04-03|title=Prevalence of cervical disease at age 20 after immunisation with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study|url=http://www.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmj.l1161|journal=BMJ|page=1161|language=en|doi=10.1136/bmj.l1161|issn=0959-8138|pmid=30944092|pmc=PMC6446188}}</ref><ref>{{Cite web|title=HPVワクチンが20歳時の子宮頸部異形成を激減|url=https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201904/560718.html|website=日経メディカル|accessdate=2019-04-26|language=ja|last=日経メディカル}}</ref>。
 
2019年6月、「HPVワクチンの影響の共同研究(HPV Vaccination Impact Study Group)」が2014年から4年間の14カ国の研究を総評するレビューを『[[ランセット]]』誌に掲載し、このなかで子宮頸がんワクチンの効果が明らかになったとした<ref>2014年2月1日から2018年10月11日に出版された研究報告を対象とするレビュー([[総説]])。{{Cite journal |first=Mélanie |last=Drolet |first2=Élodie |last2=Bénard |first3=Norma |last3=Pérez |first4=Marc |last4=Brisson |date=June 26, 2019 |author = HPV Vaccination Impact Study Group |title=Population-level impact and herd effects following the introduction of human papillomavirus vaccination programmes: updated systematic review and meta-analysis |journal=The Lancet |doi =10.1016/S0140-6736(19)30298-3 |url =https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)30298-3/fulltext |accessdate = 2019-06-29}}</ref>。
 
同レビューでは、ワクチン接種が始まる前と8年後を比べた際に、以下のような結果が出た<ref name="bbc190626">{{Cite news |url=https://www.bbc.com/japanese/48795883 |title=子宮頸がんワクチン、14カ国の調査で効果明らかに 撲滅の可能性も |date=2019-06-26 |accessdate=2019-06-29 |work=BBC News Japan}}</ref>。
* 16型と18型のHPV感染件数は、15-19歳の女性で83%、20-24歳の女性で66%減少
* [[尖圭コンジローマ]]の発症件数は、15-19歳の女性で67%、20-24歳の女性で54%減少
* [[CIN2+]](前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍)の発症件数は、15-19歳の女性で51%、20~2420-24歳の女性で31%減少
* ワクチンを受けていない15~1915-19歳の男子の尖圭コンジローマ発症件数は50%近く減り、同じく30歳以上の女性の発症件数も大きく下がった。
* より幅広い年齢層がHPVワクチンを接種し、接種率が高い国ほど、減少率は高かった。
 
共同著者のカナダ・[[ラヴァル大学]]Marc Brisson教授は「向こう10年で、20~3020-30代の女性の子宮頸癌罹患率が下がっていくだろう」と指摘し、子宮頸癌撲滅の可能性にも触れた<ref name="bbc190626" />。英国・ジョーズ子宮頸癌基金(Jo's Cervical Cancer Trust)会長は「この研究は、ワクチンの効果を信じない人に対する反証をさらに強めるもので、とても勇気付けられる」と評した<ref name="bbc190626" />。BBCは「'Real-world' evidence(「現実世界」での証拠)と題して報じた<ref name="bbc190626" />。
 
2021年11月、医学誌「ランセット」に公費によるHPVワクチン接種プログラムを2008年9月から導入しているイギリスでは12~1312-13歳でワクチン(2価ワクチン)を接種した学年は、子宮頸がんを87%減少させる報告が掲載された<ref>{{citeweb|url=https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hpvv-cervical-cancer-uk|title=12〜13歳で接種した学年は87%子宮頸がんのリスクを減少 イギリスからもHPVワクチンのがん予防効果を報告|author=岩永直子|publisher=BUZZ feed japan|date=2021-11-5|accessdate=2021-11-15}}</ref><ref>{{citeweb|url=https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02178-4/fulltext|title=The effects of the national HPV vaccination programme in England, UK, on cervical cancer and grade 3 cervical intraepithelial neoplasia incidence: a register-based observational study|author=Milena Falcaro, PhD Alejandra Castañon, PhDBusani Ndlela, PhDMarta Checchi, MScKate Soldan, PhDJamie Lopez-Bernal, PhDet al.
Show all authors|publisher=THE LANCET|date=2021-11-3|accessdate=2021-11-15}}</ref>。
 
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2015年12月、これらを元に名古屋市は「接種者と非接種者で統計的に明確な差は確認できない」との'''速報'''を発表した<ref name=buz3-30suzk/>。12月17日に[[薬害オンブズパースン会議]]は、名古屋スタディに対して「実態調査であることの限界から、分析疫学の解析手法を適用して、接種群と非接種群の統計学的有意性の検定を行い、因果関係を推論するには適さない」という意見書を提出した<ref>[http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=906 「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査 解析結果(速報)』に関する意見書」を提出] 薬害オンブズパースン会議(2015年12月17日)</ref>。
 
2016年6月、名古屋市の'''最終報告書'''では、生データの公開と数値の集計にとどめ、因果関係に言及することを避けた<ref name="sakeru">[http://mainichi.jp/articles/20160627/ddh/041/040/004000c 子宮頸がんワクチン 副反応、因果関係判断せず 名古屋市]『毎日新聞』2016年6月27日中部夕刊、同日閲覧</ref>。また最終報告では、鈴木が24症状全てで、接種者に発症の多い症状は見られなかったことを、オッズ比を含めて報告したにも関わらず、非接種者を1とした場合に、接種者はどれぐらい症状が起こっているのかを比較する'''[[オッズ比]]を削除した'''<ref name=buz3-30suzk/>。削除の理由として名古屋市健康医療課は、被害者連絡会や薬害オンブズパースン会議からの圧力を踏まえたことを認め、「集団訴訟の被告となっている製薬会社が、名古屋市の調査速報をワクチンとの因果関係を否定する証拠として、訴訟に利用していることも知り、公正中立の立場から、市としては最終解析までは公表しないことを決めた」と説明した<ref name=buz3-30suzk/>。
 
削除の理由として名古屋市健康医療課は、被害者連絡会や薬害オンブズパースン会議からの圧力を踏まえたことを認め、「集団訴訟の被告となっている製薬会社が、名古屋市の調査速報をワクチンとの因果関係を否定する証拠として、訴訟に利用していることも知り、公正中立の立場から、市としては最終解析までは公表しないことを決めた」と説明した<ref name=buz3-30suzk/>。
 
====鈴木貞夫論文への批判と反論 ====
2018年に名古屋市の報告は、名古屋市立大学の鈴木貞夫教授らによって、英文論文として出版されHPVワクチンと症状との間に因果関係がないことを示唆するような結果が得られたと結論した<ref name="pmid29481964">{{Cite journal|last1=Suzuki|first1=Sadao|last2=Hosono|first2=Akihiro|title=No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study|journal=Papillomavirus Research|volume=5|page=96-103|year=2018|pmid=29481964|pmc=5887012|doi=10.1016/j.pvr.2018.02.002|url=https://doi.org/10.1016/j.pvr.2018.02.002}}</ref><ref>{{Cite journal|author=鈴木貞夫|year=2018|title=「名古屋スタディ」調査結果の解説とHPVワクチンへの疫学的評価|journal=日本医事新報|volume=4939|page=50-55}}</ref>。
 
研究では、症状の最多は「生理不順」(回答者26.3%)で、次に「足が冷たい」(12.3%)が続き、「頭痛」「だるい」「疲労」「めまい」「皮膚荒れ」が回答者の1割以上で、24症状のいずれもワクチン接種者と非接種者との間で統計的に意味のある差はなかった<ref name=buz3-30suzk/>。しかし、病院への受診に条件を変えて解析すると、うった方がリスクが高く見える傾向があった<ref name=buz3-30suzk/>。
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{{quotation|様々な条件で解析しましたが、受診したかどうかだけが違うパターンを示していました。これは、ワクチンの成分が症状に関連したと考えるよりも、接種した人が『自分の症状はワクチンのせいではないか』と不安になったことが受診に繋がったと考える方が自然です。全体で見ても、ワクチンにネガティブな意見が年を追うごとに増えたため、その心理的影響を受けたと思われるデータも見られました。|名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授・鈴木貞夫、2018年3月<ref name=buz3-30suzk/>}}
 
この鈴木論文について[[薬害オンブズパースン会議]]が、年齢調整が不適切であったなど批判した<ref>{{Cite web|url=http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/HPVnagoyachousa_suzukironbun_kenkai.pdf|title=「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」に関する鈴木貞夫論文についての見解|accessdate=2019/1/17|publisher=|date=2018-06-11}}</ref>。薬害オンブズパースン会議の批判について、鈴木は[[査読]]論文に反論があるときには、[[レター]]を当該雑誌に投稿するのが、医科学分野では一般的であり、レターは出版社が査読する<ref name=suzhanron/><ref name=jijinagomedi/>。査読を経ていない反論に対し,科学者は答える必要はないとしたうえで、「因果関係を推論するには適さない」というなら、結果公表前にするのが科学的態度で、指摘は可能であったのに、速報の公表時点までに指摘はなかったと反論した<ref name=suzhanron/>。さらに、「選択バイアス」について会議は根拠を示すことなく[[オッズ比]]が低くなる方への可能性を述べているが、数学的な意味での[[バイアス]]の方向性は決まっておらず、鈴木論文でも特定方向への可能性については述べていないし、記入者のばらつきは、結果と交絡しておらず調整も行っていないとした<ref name=suzhanron/>。また[[利益相反]]との指摘について、名古屋市から研究費約20万円は受け取ったが、論文校正等の費用として全て使い、いかなる意味でも「報酬」は一切受け取っておらず、利益相反はないと反論した<ref name=suzhanron>{{Cite web|url=http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kouei.dir/ns_kaito%200808%20by%20Dr.Suzuki.pdf|title=『「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」に関する鈴木貞夫論文についての見解』に対する回答|accessdate=2019/1/17|publisher=}}名古屋市立大学公衆衛生学分野</ref><ref name=m3-18>{{Cite web|url=https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/595227/|title=HPVワクチン接種、「多様な症状」発症との関連なし - 鈴木貞夫・名市大公衆衛生学教授に聞く◆Vol.1|date=2018-04-04|accessdate=2020-03-30|publisher=m3.com}}</ref>。
この鈴木論文について[[薬害オンブズパースン会議]]が、年齢調整が不適切であったなど批判した<ref>{{Cite web|url=http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/HPVnagoyachousa_suzukironbun_kenkai.pdf|title=「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」に関する鈴木貞夫論文についての見解|accessdate=2019/1/17|publisher=|date=2018-06-11}}</ref>。
 
薬害オンブズパースン会議の批判について、鈴木は[[査読]]論文に反論があるときには、[[レター]]を当該雑誌に投稿するのが、医科学分野では一般的であり、レターは出版社が査読する<ref name=suzhanron/><ref name=jijinagomedi/>。査読を経ていない反論に対し,科学者は答える必要はないとしたうえで、「因果関係を推論するには適さない」というなら、結果公表前にするのが科学的態度で、指摘は可能であったのに、速報の公表時点までに指摘はなかったと反論した<ref name=suzhanron/>。
 
さらに、「選択バイアス」について会議は根拠を示すことなく[[オッズ比]]が低くなる方への可能性を述べているが、数学的な意味での[[バイアス]]の方向性は決まっておらず、鈴木論文でも特定方向への可能性については述べていないし、記入者のばらつきは、結果と交絡しておらず調整も行っていないとした<ref name=suzhanron/>。また[[利益相反]]との指摘について、名古屋市から研究費約20万円は受け取ったが、論文校正等の費用として全て使い、いかなる意味でも「報酬」は一切受け取っておらず、利益相反はないと反論した<ref name=suzhanron>{{Cite web|url=http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kouei.dir/ns_kaito%200808%20by%20Dr.Suzuki.pdf|title=『「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」に関する鈴木貞夫論文についての見解』に対する回答|accessdate=2019/1/17|publisher=}}名古屋市立大学公衆衛生学分野</ref><ref name=m3-18>{{Cite web|url=https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/595227/|title=HPVワクチン接種、「多様な症状」発症との関連なし - 鈴木貞夫・名市大公衆衛生学教授に聞く◆Vol.1|date=2018-04-04|accessdate=2020-03-30|publisher=m3.com}}</ref>。
 
また、2018年に[[特定非営利活動法人]]医薬ビジランスセンターの[[浜六郎]]は、13症状に現れた統計的なバイアスの影響が無視されているが、認知機能や運動機能の異常が高率であると指摘した<ref>{{Cite journal |和書|author=[[浜六郎]]|date=2018|title=鈴木論文はHPVワクチンの害を示す|url=http://www.npojip.org/chk_tip/No77-f07.pdf|format=pdf|journal=薬のチェックTIP|volume=77|issue=18|page=66}}</ref><ref>浜六郎「[http://npojip.org/sokuho/No177-bessi.pdf HPVワクチン接種後の症状とワクチンとの関係 鈴木らの名古屋市調査論文はむしろワクチンの害を示している]」速報No177、医薬ビジランスセンター、2018年3月8日</ref>。しかし、2019年6月時点で鈴木教授への反論レターは出版社に提出されていない<ref name=jijinagomedi/>。
 
鈴木教授は「現在の状況は、正義感や価値観が動きすぎていて、根底にある科学性が無視されている」とし、「HPVワクチンを接種した世代だけ子宮頸がんによる死亡率が下がり、その後の世代はそれ以前と同じように、毎年3000人死亡する状況に戻るだろう」と、2019年に警鐘を鳴らした<ref name=jijinagomedi/>。
 
=== 薬害オンブズパースン ===
医師・薬剤師・弁護士・高校教師などで構成された[[薬害オンブズパースン会議]]は2014年2月24日、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会がワクチの接種後に起きている全身の痛みや運動障害などの症例について、いずれも ”心身の反応” であるという方向で結論をまとめようとしていることについて、恣意的で非科学的であると批判した<ref name="Ombudsperson2">[http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=860 「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に関する厚生労働省の審議結果批判 -接種の積極的勧奨の再開に強く反対する」を提出] 薬物オンブズパースン会議、2014年2月24日</ref>。
#HPVワクチンの副作用が、単一の機序によって生じるという科学的根拠のない前提に立って分析している。
#「心身の反応」仮説に対しては一部に説明困難な症例等があってもそれを認めるという恣意的な論法を駆使し、結論ありきの検討をしている。
#「通常の医学的見地」をもとに判断し、新しい医薬品では既知の知見では説明できない副作用が起きる可能性があることを無視している。過去の薬害の教訓を忘れたものだと批判した <ref name="Ombudsperson2"/>。またこのHPVワクチンには、実際に接種によって子宮がんの発生を防いだという医学的エビデンスはないと主張した<ref name="Ombudsperson2"/>。2019年現在、スウェーデンやオーストラリアなどから、子宮頸癌の抑制効果があったという報告が出されている<ref name=j-cast21370637/>。
 
2017年、薬害オンブズパースン会議は[[インド医療倫理雑誌]](Indian journal of medical ethics)に英文論文を発表した<ref name="pmid28512072"/>。
 
== WHOの推奨と普及 ==
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GACVSによる2015年12月22日の声明では、日本だけが接種中止の勧告を出していることを名指して、
{{Quotation |専門家の副反応検討委員会は、子宮頸がんワクチンと副反応の因果関係は無いと結論を出したにもかかわらず、[[政府]]は予防接種を再開できないでいる。以前からGASVSが指摘しているとおり、薄弱な[[エビデンス]]に基づく政治判断は、安全で効果ある[[ワクチン]]の接種を妨げ、真の被害をもたらす。若い女性が本来なら避けられる筈の[[子宮頚がん]]の被害と脅威に暴露され続けている。|世界保健機関 ワクチンの安全性に関する国際委員会|2015年12月22日}}
と日本の対応を批判した{{sfn|GACVS|2015}}<ref name="iji201512222">烏美紀子 [https://www.cbnews.jp/news/entry/47689 子宮頸がんワクチン、WHOが再び安全声明-日本の状況に言及、「真の被害もたらす」] 医療介護CBニュース 2015年12月22日</ref>。
 
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=== 日本医師会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会のワクチン再開要望 ===
* [[日本医師会]]は2015年8月19日に『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』を発行、47都道府県に協力医療機関を設置し、HPVワクチン接種後の症状に対する診療体制を整えたなど、接種希望者がより安心してワクチン接種を受けられる診療環境が整ってきたことを指摘した。
* [[日本産科婦人科学会]]は、2015年にHPVワクチン早期再開を訴えた<ref>[http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46913.html HPVワクチン早期再開、英語で訴え- 日産婦、ホームページに掲載] CB NEWS 2015年10月0日</ref>。さらに、2017年12月9日の声明で、ワクチン接種を導入した国々では、接種世代におけるHPV感染率の劇的な減少と前がん病変の有意な減少が示され、9価ワクチンは子宮頸がんの原因となるHPV型の90%以上をブロックしている。日本では「一部の研究者の科学的根拠のないデータや報道等により、国民の正しい理解を得られないまま、長期にわたり勧奨が再開されないままとなっている」が、現在女性の74人に1人が罹患し、340人に1人が子宮頸がんで死亡している<ref name="産婦人科学会2017声明"/>。日本でもワクチン接種により子宮頸がん罹患者数は10万人あたり859~595人、死亡者数は10万人あたり209~144人の減少が期待され<ref>平成29年11月の第31回副反応検討部会において発表された厚生労働省のHPVワクチンの効果に関する推計</ref>、「このまま勧奨を再開せず、接種率がゼロに近い世代が拡大し続ければ、将来、ワクチン接種を勧奨しなかったことに対して、不作為責任を問われることも危惧される」として、接種再開を訴えた<ref name="産婦人科学会2017声明">[http://www.jsog.or.jp/modules/statement/index.php?content_id=5 HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明][[日本産科婦人科学会]]2017年12月9日</ref>。2017年12月までに4度にわたって、接種推奨の再開を求めた<ref>[http://www.sankei.com/life/news/171209/lif1712090047-n1.html 子宮頸がんワクチン勧奨再開求め学会が声明] 産経ニュース 2017年12月9日 2017年12月20日閲覧</ref>。
* [[日本小児科学会]]など17の学術団体は2016年4月、子宮頸癌予防ワクチンの積極的な接種を推奨する共同声明を発表した<ref name="jiji20160421"/>。既に世界130か国で使用されているが<ref name="jiji130">[https://archive.fo/8OIyM 「副作用」の立証ポイント=子宮頸がんワクチン集団訴訟] [[時事ドットコム]] 2006年3月30日(2016年8月17日時点でのアーカイブ)</ref>、障害を残す副反応は0.002%に過ぎず、ヨーロッパでの調査でもワクチン接種群と非接種群で副反応とされる症状の発生頻度に差が見られないことを根拠として、これ以上の積極勧奨中止の継続は「極めて憂慮すべき事態だ」と表明した<ref name="jiji20160421">[http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042100393&g=soc 子宮頸がんワクチン「接種を推奨」=17学術団体が見解] 時事ドットコム 2016年4月21日、2016年8月17日閲覧</ref>。
* 2016年8月、日本医学会会長、日本産婦人科医会会長ら学識経験者の有志が、厚生労働省健康局長に書簡を提出した。書簡には「EUROGIN 2016」(ヨーロッパ生殖器感染および腫瘍に関する専門家研究会議)に参加した、世界50カ国以上341人の研究者の署名が添えられ、「日本で問題になっている諸症状は、HPVワクチンとの因果関係が認められておらず、日本の不適切な政策決定が、世界中に与えている悪影響を承知されるべきである」という、世界中の研究者の苦言が伝えられた<ref>[https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160830-OYTET50037/ 子宮頸がんワクチン勧奨の再開を求める 世界の研究者341人] 読売新聞 2016年8月30日 東京夕刊 12頁 (全277字)</ref>。
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* 2016年3月30日、日本で「HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団」が結成され、半身麻痺などが残った女性ら原告124人が、日本政府とグラクソ・スミスクライン社、MSD社に損害賠償を求める集団提訴を行うと発表し、東京、大阪、名古屋、福岡の4つの地方裁判所で1人あたり1500万円の賠償金を求める集団訴訟が起こされた<ref>「子宮頸がん 集団提訴へ―ワクチン『副作用』国・製薬2社相手に」『朝日新聞』2016年3月31日、39面。</ref><ref name="prm1712160022"/><ref>[http://vpoint.jp/feature/cervical_cancer/69579.html 子宮頸がんワクチン集団訴訟、後手に回った国の対応に怒り] viewpoint、2016年7月31日、2017年12月20日閲覧</ref>。2020年3月現在、係争中<ref>[https://www.hpv-yakugai.net HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団]</ref>。
* 2017年、[[コロンビア]]で700人以上からの政府と製薬会社に対する集団訴訟が行われた<ref>{{Cite news |author=Carlos Guevara |title=Class Action Lawsuit Against HPV Vaccine Filed in Colombia |url=https://www.medscape.com/viewarticle/883873 |date=2017-08-07 |newspaper=Medscape |accessdate=2018-04-20}}</ref>。
 
== ワクチン忌避の類似例 ==
{{Main|ワクチン忌避}}
[[ワクチン忌避]]は歴史的にもまた、世界中でも発生している。ワクチンの副反応に関する同様の話題は、過去にも知られている<ref name="WEDGE2015前編P2"/>。
* '''[[新三種混合ワクチン|MMR]]([[麻疹|はしか]]・[[流行性耳下腺炎|おたふくかぜ]]・[[風疹]])ワクチン'''に関して、医師[[アンドリュー・ウェイクフィールド]]が、MMRワクチンを接種すると[[自閉症]]になると主張した論文をイギリスの医学誌『[[ランセット]]』1998年2月に発表した<ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name="WakefieldMMRPaper"/>。子供の保護者らに懸念が広まり、イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでワクチン接種の差し控えが広がり、その結果、麻疹に感染する子供が増加していった<ref name=afpFake/><ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name="WakefieldMMRPaper">{{Cite journal |author=Wakefield AJ |title=Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children |journal=Lancet |volume=351 |issue=9103 |page=637-641 |date= 28 February 1998|pmid=9500320|url=http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673697110960/fulltext|doi=10.1016/S0140-6736(97)11096-0 |author-separator=, |author2=Murch SH |author3=Anthony A |display-authors=3 |last4=Linnell |first4=J |last5=Casson |first5=DM |last6=Malik |first6=M |last7=Berelowitz |first7=M |last8=Dhillon |first8=AP |last9=Thomson |first9=MA}}{{Retracted paper|intentional=yes}}</ref>。
** MMRワクチンによって自閉症になったとして訴訟も起こったが、巨額の費用を投入して実施された調査では、MMRワクチンと自閉症には因果関係が認められなかった<ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name=afpFake>{{Cite news|url=http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2690341/5270873|title=英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回|work=AFPBB News|publisher=フランス通信社|date=2010-02-03|accessdate=2013-01-18}}</ref>。医事委員会(General Medical Council、GMC)は2010年1月28日、ウェークフィールド医師らの研究は「倫理に反する方法」で行われていたとの裁定を下し、『[[ランセット]]』は2010年2月2日に論文を完全に撤回すると発表した<ref name=afpFake/><ref name="WEDGE2015前編P2"/>。さらに2010年5月、アンドリュー・ウェイクフィールドは、イギリスの医師免許を剥奪された<ref name="MeikleBoseley">{{Cite news|url=http://www.guardian.co.uk/society/2010/may/24/mmr-doctor-andrew-wakefield-struck-off|title=MMR row doctor Andrew Wakefield struck off register|newspaper=The Guardian|date=24 May 2010|accessdate=2010-05-24|location=London|last1=Meikle|first1=James|first2=Sarah|last2=Boseley|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100527003931/http://www.guardian.co.uk/society/2010/may/24/mmr-doctor-andrew-wakefield-struck-off|archivedate=2010年5月27日|deadurl=no|deadurldate=2017年9月}}</ref>。
* '''[[百日咳ワクチン]]'''について、1970-80年代には接種に否定的な報道が、世界中のマスコミで行われ、日本・スウェーデン・イギリス・ソビエト社会主義共和国連邦で接種率が低下した<ref name="Lancet1998-351"/>。日本でも国の予防接種事故救済制度が発足し、厚生省は1975年(昭和50年)に乳児への百日咳ワクチン接種を中止し、百日咳ワクチンを含む[[三種混合ワクチン]]の接種開始年齢を、2歳以上に引き上げた<ref name="n2242_03"/>。
** その結果、[[百日咳]]の流行が起きてしまい、1979年(昭和54年)には年間1万3,000人の患者が発生し、うち20人以上が[[死亡]]した<ref name="n2242_03"/><ref name="Lancet1998-351">Lancet 1998; 351:356-61.</ref>。[[厚生省]]が百日咳ワクチンの接種開始年齢を3か月に戻したのは、14年後の1989年(平成元年)になってからであった<ref name="n2242_03"/>。1981年(昭和56年)ごろより感染者数が減少に転じるもの、1970年代前半のレベルに戻ったのは1995年(平成7年)であった<ref name="n2242_03">[http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1997dir/n2242dir/n2242_03.htm 堺 春美(東海大助教授・小児科学)連載 現代の感染症 百日咳,ジフテリア [[週刊医学界新聞]] 詳細 第2242号 1997年6月2日</ref>。
* '''[[インフルエンザワクチン]]集団予防接種'''が、日本では1987年([[昭和]]62年)度まで、小中学生を対象に行われていた<ref name=inf23344626/>。この集団予防接種は、約300万人が感染し約8000人(推計)が死亡した、1957年(昭和32年)の[[アジアかぜ]]大流行の教訓から生まれたもので、1962年(昭和37年)から小児への接種が推奨され、1977年(昭和52年)に[[予防接種法]]で小中学生の接種が義務化された<ref name=inf23344626/>。しかし、接種後に高熱を出して後遺症が残ったと国を訴えて、裁判で日本国政府が敗訴するケースも続出したため、1987年(昭和62年)に、保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更され、 1994年([[平成]]6年)には、学校での集団予防接種が廃止され、診療所や病院での任意接種に変わった<ref name=inf23344626/>。また、インフルエンザワクチンの効果に対する疑念も世論に広まり、100%近かった小中学生の接種率は、1990年代には数%に低下した<ref name=inf23344626/>。
** その結果、[[インフルエンザ脳症]]によって死亡する児童が増加しただけではなく、インフルエンザに対する[[集団免疫]]の低下により、高齢者施設の入所者がインフルエンザで相次いで死亡することになった<ref name=inf23344626/>。後に、日本での小中学生に対するインフルエンザワクチンの集団予防接種は、年間約3万7000-4万9000人の命を救っていたことが指摘された<ref name=inf23344626>[https://www.huffingtonpost.jp/2018/01/26/infuruenzacommunity_a_23344626/ インフルエンザ大流行。日本から失われた「集団免疫」とは?] ハフポスト日本版</ref><ref>[https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM200103223441204 The Japanese Experience with Vaccinating Schoolchildren against Influenza] March 22, 2001 N Engl J Med 2001; 344:889-896 DOI: 10.1056/NEJM200103223441204</ref>。多くの犠牲者を生んだこの教訓は、ワクチンの集団免疫という概念を知らしめ、各国のワクチン政策に影響を与えた<ref name=inf23344626/>。
 
== 厚労省HPVワクチン副反応研究班「池田班」における副反応ミスリード騒動 ==
2016年3月、厚生労働省のHPVワクチン副反応に関連する研究班(池田班;[[信州大学]]と[[鹿児島大学]]の共同研究グループ)は、脳機能障害が起きた患者の8割弱で、[[免疫]]システムに関わる[[遺伝子]]が同じ型だったと報告した<ref>{{Cite web|title=子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード|url=https://wedge.ismedia.jp/articles/-/6418|website=WEDGE Infinity(ウェッジ)|date=2016-03-24|accessdate=2021-06-10}}</ref>(その遺伝子の型は、日本や[[中華人民共和国]]、[[オセアニア]]に多く、[[ヨーロッパ]]や[[北アメリカ]]に少ない)<ref name="mai201603">斎藤広子「[http://mainichi.jp/articles/20160317/k00/00m/040/109000c 子宮頸がんワクチン 脳機能障害、患者8割が同じ遺伝子]」毎日新聞、2016年3月17日、同日閲覧。</ref>。33名の被験者のHLA-DPB1が調査され、通常日本人では4割程の頻度で存在する「0501」という型が、8割程度の頻度であることがわかった<ref name="mai201603"/>。ワクチンの成分と症状の因果関係は不明だが、接種前に遺伝子を調べることが、副反応を回避することができる可能性があると発表した<ref name="mai201603"/>。
 
33名の被験者のHLA-DPB1が調査され、通常日本人で[[村中璃子]]4割程の頻度で存在する「0501」という型が8割程度の頻度であるとがわかった<ref name="mai201603"/>。ワクチン成分と症状の因果関係調査不明だが、接種前に遺伝子を調べること査対象、副反応少ないなど様々な問題点回避することができる可能性があると発表指摘した<ref name="mai201603"/>しかしこの調査は、調査対象が少なすぎること指摘されていた<ref name="mai201603" />。この指摘を受けて厚生労働省は[[2016年]][[4月16日]]に、池田班が示したデータによって特定の遺伝子多型を持つ人にHPVワクチンを接種した場合、記憶障害を起こす可能性が高いということは示せておらず、HPVワクチンと脳の症状との因果関係を示したものではないとし、'''「HPVワクチン接種後脳障害などの発症者の8割に、特定の遺伝子多型が見つかるとの報道は誤りである'''と発表した<ref>「HPVワクチンで脳障害」は誤り、厚労省 一部報道に対し異例の見解示す 厚生労働省 2016年4月20日</ref><ref>[https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp160316.html 平成28年3月16日の成果発表会における発表内容について 厚生労働省]</ref>。また池田班は、マウスに複数のワクチンを接種する実験を行い、HPVワクチンを注射したマウスの脳のみに、神経細胞に対する[[抗体]]が産生されたとも報告した<ref name="mai201603"/>。6月、[[信州大学]]は、不正を疑う通報を受けて調査委員会を設置し<ref>[http://mainichi.jp/articles/20160628/ddn/012/040/048000c 子宮頸がんワクチン 研究不正疑いで信州大が調査委]『毎日新聞』大阪朝刊2016年6月28日、同日閲覧</ref>、11月に「マウス実験の結果が科学的に証明されたような情報として社会に広まってしまったことは否定できない」と発表した<ref name="qlifepro20161124"/>。
 
これを受けて、厚生労働省は[[2016年]][[11月24日]]、「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております」「この度の池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状が、HPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない」とコメントした<ref>{{Cite web|title=平成28年3月16日の成果発表会における池田修一氏の発表内容に関する厚生労働省の見解について|厚生労働省|url=https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp161124.html|website=www.mhlw.go.jp|accessdate=2019-03-28}}</ref><ref name="qlifepro20161124">[http://www.qlifepro.com/news/20161124/mhlw-dr-ikeda-very-regrettable-on-hpv-vaccine-reports.html HPVワクチン、不適切発表問題に厚労省「池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾」] QLifePro、2016年11月24日 2016年12月14日閲覧</ref><ref name="読売2016">{{Cite news |author= |title=子宮頸がんワクチンデータ捏造疑惑「科学的議論不足」…信大に研究再実験要求 : ヨミドクター|url=https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161116-OYTET50005/ |date=2016-11-16 |newspaper=読売新聞 |accessdate=2018-04-20}}</ref>。池田は一連の問題提起のなかで名誉棄損されとして、[[村中璃子]]に対し損害賠償のための訴訟を起こした<ref name="読売2016"/>。{{main|村中璃子}}
また池田班は、マウスに複数のワクチンを接種する実験を行い、HPVワクチンを注射したマウスの脳のみに、神経細胞に対する[[抗体]]が産生されたとも報告した<ref name="mai201603"/>。6月、[[信州大学]]は、不正を疑う通報を受けて調査委員会を設置し<ref>[http://mainichi.jp/articles/20160628/ddn/012/040/048000c 子宮頸がんワクチン 研究不正疑いで信州大が調査委]『毎日新聞』大阪朝刊2016年6月28日、同日閲覧</ref>、11月に「マウス実験の結果が科学的に証明されたような情報として社会に広まってしまったことは否定できない」と発表した<ref name="qlifepro20161124"/>。
 
これを受けて、厚生労働省は[[2016年]][[11月24日]]、「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております」「この度の池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状が、HPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない」とコメントした<ref>{{Cite web|title=平成28年3月16日の成果発表会における池田修一氏の発表内容に関する厚生労働省の見解について|厚生労働省|url=https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp161124.html|website=www.mhlw.go.jp|accessdate=2019-03-28}}</ref><ref name="qlifepro20161124">[http://www.qlifepro.com/news/20161124/mhlw-dr-ikeda-very-regrettable-on-hpv-vaccine-reports.html HPVワクチン、不適切発表問題に厚労省「池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾」] QLifePro、2016年11月24日 2016年12月14日閲覧</ref><ref name="読売2016">{{Cite news |author= |title=子宮頸がんワクチンデータ捏造疑惑「科学的議論不足」…信大に研究再実験要求 : ヨミドクター|url=https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161116-OYTET50005/ |date=2016-11-16 |newspaper=読売新聞 |accessdate=2018-04-20}}</ref>。池田は「名誉を棄損した」として、[[村中璃子]]に対し損害賠償のための訴訟を起こした<ref name="読売2016"/>。
 
== その他の反ワクチン論 ==
* [[Japan Skeptics]]監査委員の平岡厚は2014年の論文で副反応の検証を期待していた<ref>{{Cite journal |和書|author=平岡厚 |title=HPVワクチン(子宮頸癌予防ワクチン)の副反応の問題について-文献調査から見えて来ること |date=2014 |publisher= |journal=JAPAN SKEPTICS |volume= |issue=23 |page=5-13 |url=http://journal.skeptics.jp/journal23_hiraoka.pdf |format=PDF}}</ref>。当初は、反対派には査読を通過した論文がないのでWHOを信頼することで良いのではと考えていたが、実際に文献を調査してみると推進派は都合の悪い論文を無視しているだけだということが2017年の二度目の調査も通して判明し、今では、査読を通過した論文によって検証を怠っていないのはワクチンの推進派ではなく反対派だと見ており、接種の中止が無難だと判断している<ref>{{Cite journal |和書|author=平岡厚 |title=HPVワクチン(子宮頸癌予防ワクチン)の副作用の問題について-文献調査から見えて来ること(続報) |date=2017 |publisher= |journal=JAPAN SKEPTICS |volume= |issue=26 |page=23-37 |url=https://drive.google.com/file/d/0B9RQ9swYc-zUNGlibDZpLUdhWU9pSEl1dG5vMGNsUEJBcGNZ/view |format=PDF}}</ref>。
* 民主党の[[はたともこ]]は、2010年にブログにて、HPVワクチンを接種しなくても、検診を怠らないことで子宮頸癌に対応できるとして、HPVワクチンの集団接種はワクチン接種のリスクにさらすだけの行為で、自治体が高額な予算をつけて推奨するような話ではないとして反対している<ref>[http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/e20a38c2b991d514c59fcf958644094d 「子宮頸がん予防ワクチン」への疑問:重大な副作用] ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ、2010年5月16日</ref>。2016年にはワクチン接種再開の圧力には、メルク社などアメリカの製薬会社の利益のために国民を犠牲にする構造が問題で、日本は「[[人体実験]]パラダイス」だと『[[月刊日本]]』発表文で主張した<ref name="実験天国">{{Cite journal |和書|author=はたともこ|date=2016-08-30|title=「人体実験パラダイス」から脱却せよ|journal=月刊日本|volume=2016|issue=9月号増刊|page=65-67}}</ref>。
* 政治家の[[山本太郎]]は[[2019年]][[10月18日]]の街頭演説で、子宮頸がんワクチンは重篤となる割合が高く、これを強制接種することに疑問を呈し、さらにワクチンによるがんの予防効果は証明されていないとする厚生労働省の資料を示した上で「[[人体実験]]」だと批判した<ref name=j-cast21370637>[https://www.j-cast.com/2019/10/21370637.html?p=all 「子宮頸がんワクチン」接種めぐり議論 山本太郎氏演説で注目、関係各所の見解は... j-cast news 2019/10/21 19:48]</ref>。これに対して産婦人科医らから批判の声が寄せられた<ref name=j-cast21370637/>。厚労省は、予防と早期発見は全く別のものであると説明している<ref name=j-cast21370637/>。日本産婦人科学会も、がん検診ではワクチンの代わりにならないことを説明している<ref name=hpv_q-a2018>[http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Q%26A.pdf 子宮頸がんと HPV ワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために 2018年 日本産婦人科学会 リーフレット]</ref>。
* {{仮リンク|ナショナル・ワクチン情報センター|en|National Vaccine Information Center}}(NVIC:[[反ワクチン]]を掲げるアメリカの民間団体)は、2011年5月5日時点の報告で、全世界でHPVワクチン(ガーダシルおよびサーバリックス)接種後1年以内に94件の死亡事例と、21,722件の副作用の事例があったと主張している<ref>[http://www.medalerts.org/vaersdb/findfield.php?TABLE=ON&GROUP1=AGE&EVENTS=ON&VAX%5B%5D=HPV&VAX%5B%5D=HPV2&VAX%5B%5D=HPV4&DIED=Yes HPV or HPV2 or HPV4 and Patient Died], [http://www.medalerts.org/vaersdb/findfield.php?TABLE=ON&GROUP1=AGE&EVENTS=ON&VAX%5B%5D=HPV&VAX%5B%5D=HPV2&VAX%5B%5D=HPV4 HPV or HPV2 or HPV4] National Vaccine Information Center</ref>。
* [[薬害オンブズパースン]]の[[弁護士]]関口正人は、2014年に厚生省の審議会のメンバーの15人中11人に[[利益相反]]があり、金額が500万円を超える3名は決議に参加できなかったと指摘した<ref name="ワクチン被害からの">{{Cite journal |和書|author=宮司典子|date=|title=子宮頸がんワクチン被害からの問題提起|url=http://pha.jp/shin-yakugaku/doc/43_9_187-192.pdf|format=pdf|journal=新しい薬学をめざして|issue=47|page=187-192}}</ref>。2016年11月1日には、厚生労働省による副反応追跡調査の結果(10万接種あたり2人の症状)について、「医療機関に報告が届いていない症状がある可能性もある。また追跡不能例1/3が除外されているのも問題である。」として、17もの学術団体の委員たちが真剣に検討したとはとても考えられない、お粗末な内容と批判した<ref>[http://www.yakugai.gr.jp/bulletin/rep.php?id=441 あまりにお粗末な『学術団体』の見解](薬害オンブズパースン、2016年11月1日)</ref>。
 
== ワクチン忌避の類似例 ==
{{Main|ワクチン忌避}}
HPVワクチンに限らず、[[ワクチン忌避]]は歴史的にもまた、世界中でも発生している。ワクチンの副反応に関する同様の話題は、過去に以下のようなのが知られている<ref name="WEDGE2015前編P2"/>。
* '''[[新三種混合ワクチン|MMR]]([[麻疹|はしか]]・[[流行性耳下腺炎|おたふくかぜ]]・[[風疹]])ワクチン'''に関して、医師[[アンドリュー・ウェイクフィールド]]が、MMRワクチンを接種すると[[自閉症]]になると主張した論文をイギリスの医学誌『[[ランセット]]』1998年2月に発表した<ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name="WakefieldMMRPaper"/>。子供の保護者らに懸念が広まり、イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでワクチン接種の差し控えが広がり、その結果、麻疹に感染する子供が増加していった<ref name=afpFake/><ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name="WakefieldMMRPaper">{{Cite journal |author=Wakefield AJ |title=Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children |journal=Lancet |volume=351 |issue=9103 |page=637-641 |date= 28 February 1998|pmid=9500320|url=http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673697110960/fulltext|doi=10.1016/S0140-6736(97)11096-0 |author-separator=, |author2=Murch SH |author3=Anthony A |display-authors=3 |last4=Linnell |first4=J |last5=Casson |first5=DM |last6=Malik |first6=M |last7=Berelowitz |first7=M |last8=Dhillon |first8=AP |last9=Thomson |first9=MA}}{{Retracted paper|intentional=yes}}</ref>。
** MMRワクチンによって自閉症になったとして訴訟も起こったが、巨額の費用を投入して実施された調査では、MMRワクチンと自閉症には因果関係が認められなかった<ref name="WEDGE2015前編P2"/><ref name=afpFake>{{Cite news|url=http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2690341/5270873|title=英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回|work=AFPBB News|publisher=フランス通信社|date=2010-02-03|accessdate=2013-01-18}}</ref>。医事委員会(General Medical Council、GMC)は2010年1月28日、ウェークフィールド医師らの研究は「倫理に反する方法」で行われていたとの裁定を下し、『[[ランセット]]』は2010年2月2日に論文を完全に撤回すると発表した<ref name=afpFake/><ref name="WEDGE2015前編P2"/>。さらに2010年5月、アンドリュー・ウェイクフィールドは、イギリスの医師免許を剥奪された<ref name="MeikleBoseley">{{Cite news|url=http://www.guardian.co.uk/society/2010/may/24/mmr-doctor-andrew-wakefield-struck-off|title=MMR row doctor Andrew Wakefield struck off register|newspaper=The Guardian|date=24 May 2010|accessdate=2010-05-24|location=London|last1=Meikle|first1=James|first2=Sarah|last2=Boseley|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100527003931/http://www.guardian.co.uk/society/2010/may/24/mmr-doctor-andrew-wakefield-struck-off|archivedate=2010年5月27日|deadurl=no|deadurldate=2017年9月}}</ref>。
* '''[[百日咳ワクチン]]'''について、1970-80年代には接種に否定的な報道が、世界中のマスコミで行われ、日本・スウェーデン・イギリス・ソビエト社会主義共和国連邦で接種率が低下した<ref name="Lancet1998-351"/>。日本でも国の予防接種事故救済制度が発足し、厚生省は1975年(昭和50年)に乳児への百日咳ワクチン接種を中止し、百日咳ワクチンを含む[[三種混合ワクチン]]の接種開始年齢を、2歳以上に引き上げた<ref name="n2242_03"/>。
** その結果、[[百日咳]]の流行が起きてしまい、1979年(昭和54年)には年間1万3,000人の患者が発生し、うち20人以上が[[死亡]]した<ref name="n2242_03"/><ref name="Lancet1998-351">Lancet 1998; 351:356-61.</ref>。[[厚生省]]が百日咳ワクチンの接種開始年齢を3か月に戻したのは、14年後の1989年(平成元年)になってからであった<ref name="n2242_03"/>。1981年(昭和56年)ごろより感染者数が減少に転じるもの、1970年代前半のレベルに戻ったのは1995年(平成7年)であった<ref name="n2242_03">[http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1997dir/n2242dir/n2242_03.htm 堺 春美(東海大助教授・小児科学)連載 現代の感染症 百日咳,ジフテリア [[週刊医学界新聞]] 詳細 第2242号 1997年6月2日</ref>。
* '''[[インフルエンザワクチン]]集団予防接種'''が、日本では1987年([[昭和]]62年)度まで、小中学生を対象に行われていた<ref name=inf23344626/>。この集団予防接種は、約300万人が感染し約8000人(推計)が死亡した、1957年(昭和32年)の[[アジアかぜ]]大流行の教訓から生まれたもので、1962年(昭和37年)から小児への接種が推奨され、1977年(昭和52年)に[[予防接種法]]で小中学生の接種が義務化された<ref name=inf23344626/>。しかし、接種後に高熱を出して後遺症が残ったと国を訴えて、裁判で日本国政府が敗訴するケースも続出したため、1987年(昭和62年)に、保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更され、 1994年([[平成]]6年)には、学校での集団予防接種が廃止され、診療所や病院での任意接種に変わった<ref name=inf23344626/>。また、インフルエンザワクチンの効果に対する疑念も世論に広まり、100%近かった小中学生の接種率は、1990年代には数%に低下した<ref name=inf23344626/>。
** その結果、[[インフルエンザ脳症]]によって死亡する児童が増加しただけではなく、インフルエンザに対する[[集団免疫]]の低下により、高齢者施設の入所者がインフルエンザで相次いで死亡することになった<ref name=inf23344626/>。後に、日本での小中学生に対するインフルエンザワクチンの集団予防接種は、年間約3万7000-4万9000人の命を救っていたことが指摘された<ref name=inf23344626>[https://www.huffingtonpost.jp/2018/01/26/infuruenzacommunity_a_23344626/ インフルエンザ大流行。日本から失われた「集団免疫」とは?] ハフポスト日本版</ref><ref>[https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM200103223441204 The Japanese Experience with Vaccinating Schoolchildren against Influenza] March 22, 2001 N Engl J Med 2001; 344:889-896 DOI: 10.1056/NEJM200103223441204</ref>。多くの犠牲者を生んだこの教訓は、ワクチンの集団免疫という概念を知らしめ、各国のワクチン政策に影響を与えた<ref name=inf23344626/>。
 
 
== 脚注 ==