「デモクリトス」の版間の差分

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学説の加筆
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== 学説 ==
 
〈原子〉は不生・不滅・無性質・分割不可能な無数のの最小単位であって、たえず運動し、その存在と運動の場所として〈空虚〉が前提とされる。無限の〈空虚〉の中では上も下もない。形・大きさ・配列・姿勢の違うこれら無数の原子の結合や分離の仕方によって、すべての感覚でとらえられる性質や生滅の現象が生じる。また[[魂]]と火(熱)とを同一視し、原子は無数あるが、あらゆるものに浸透して他を動かす「球形のものが火であり、魂である」とした<ref>岩波『哲学・思想辞典』 p.1306</ref>。デモクリトスは世界の起源については語らなかったが、「いかなることも[[偶然]]によって起こりえない」と述べた。
 
デモクリトスの[[倫理学]]においては、政治の騒がしさや神々への恐怖から解放された魂の安らかさが理想の境地とされ、[[詩学]]においては[[霊感]]の力が説かれている。原子論を中心とする彼の学説は、古代ギリシアにおける[[唯物論]]の完成であると同時に、後代の[[エピクロス]]及び近世の物理学に決定的な影響を与えた。
 
しかし同時代の学者が目的と真実と美を探していたのに比べると夢の無い原子論は支持されず<ref>ウィリアム・F・バイナム(藤井美佐子訳)『歴史で分かる科学入門』 p.29</ref>、彼の著作は断片しか残されていない。[[プラトン]]が手に入る限りのデモクリトスの書物を焼き「彼の著書で多くの言葉を費やす者は、いかなる正しいことをも学ぶ能力がない」と言った伝説もある。プラトンの対話篇には同時代の哲学者が多数登場するが、デモクリトスに関しては一度も言及されていない。それに対して[[ルキウス・アンナエウス・セネカ|セネカ]][[マルクス・トゥッリウス・キケロ|キケロ]]などのローマの知識人にはその鋭敏な知性と魂の偉大さを高く評価されている<ref>{{Cite book|和書|author=[[カルロ・ロヴェッリ|C・ロヴェッリ]]|year=2019|title=すごい物理学講義|publisher=河出文庫|pages=P.26}}</ref>。
 
また、物質の根元についての学説は、[[アリストテレス]]が完成させた[[四大元素]]が優勢であり、[[原子論]]は長らく顧みられる事は無かった。後に[[ジョン・ドルトン]]や[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]によって原子論が優勢となり四大元素説は放棄された。もっともドルトンやラヴォアジエ以降の原子論は、デモクリトスの説と全く同一という訳ではない。「原子」と「空虚」が存在するという意味において、デモクリトスの原子論は現代の原子論とも共通するとされる<ref>[[カール・セーガン]]は[[コスモス (テレビ番組)|コスモス]]において、アリストテレス説とデモクリトス説の違いについて述べている。物質は常に連続していると考えたアリストテレスによれば、[[リンゴ]]を半分に切った場合は、両者の切断面の面積は全く同一であるとされる。一方で物質が「原子」と「空虚」で構成されるとしたデモクリトス説では、リンゴの切断面は僅かながら面積が異なる。そしてデモクリトス説のほうが正しいとコメントしている。</ref>。
 
== 参考資料 ==