「ザクロの聖母」の版間の差分

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== 歴史 ==
『ザクロの聖母』は、ボッティチェッリとして一般に知られているアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・ディ・ヴァンニ・デイ・フィリペーピ(1445–1510年)による絵画である<ref>{{Cite web|author=|first=|date=|title=Sandro Botticelli|url=http://totallyhistory.com/sandro-botticelli/|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=TotalHistory|accessdate=2021年8月12日}}</ref>。ボッティチェッリはフィレンツェで生まれ育ち、人生の大部分をフィレンツェのルネサンス期に最も称賛された芸術家の1人として過ごした。ボッティチェッリは10代前半に勉学を放棄し、フィレンツェで最も影響力のあった画家の1人、[[フィリッポ・リッピ]](1406-1469年)の下で芸術家としての修業を開始した。リッピは権力のあった有名な[[メディチ家|メディチ]]家によってフィレンツェで大切に保護されていたが、修道院や教会のために作品を制作し<ref>{{Cite web|author=Mariani|first=Mariani|date=|title=Fra Filippo Lippi|url=https://www.britannica.com/biography/Fra-Filippo-Lippi|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=[[Britannica]]|accessdate=2021年8月12日}}</ref>、線描の明瞭さと女性像の描写でよく知られていた。その芸術は、ボッティチェッリの様式に大きな影響を与えており、重要である。『ザクロの聖母』は、ボッティチェッリがフィレンツェの工房で制作した多くの絵画の1つである。ボッティチェッリは他の多くの著名な作品も描き、『ザクロの聖母』の制作時にはすでに芸術家として確立されていた。絵画が依頼されたものであるのか、また誰によって依頼されたのかはわかっていない。
 
== 概要 ==
絵画の中で、ボッティチェッリは表現されている人物を非常にたやすく識別できるようにした。中央の[[聖母マリア]]として知られている聖母は、その両側に3人ずついる天使に左右対称的に囲まれている。聖母を取り巻く天使たちは、ユリとバラの花輪で聖母を崇拝している<ref>{{Cite web|author=|first=|date=|title=Madonna of the Pomegranate, 1487 by Sandro Botticelli|url=https://www.sandro-botticelli.com/madonna-of-the-pomegranate.jsp|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=Sandro-Botticelli|accessdate=2021年8月12日}}</ref>。イエス・キリストは[[ザクロ]]の上に片手を置いて、聖母マリアの腕の中に穏やかに横たわっているが、聖母マリアとイエスは二人とも悲しそうな表情をしている。聖母マリアとイエスの表現は、神の子イエスが将来耐えるであろう痛みと拷問を鑑賞者に思い起こさせることを目的としたものである。
 
== 様式 ==
ボッティチェッリはその画業を通じて高度な技術を持ち、頻繁に制作を依頼された芸術家であった。『ザクロの聖母』で、ボッティチェッリはイタリアのルネサンス芸術家としての技術を示している。本作の様式は、ルネサンス美術で一般的に見られる「本物さながら」を意味する「自然主義」である。ボッティチェッリは、輝く天の光となっている垂直線を使用して、聖母マリア、イエス、ザクロに鑑賞者の注意を引きつけている<ref>{{Cite web|author=Gabasan|first=Jessica|date=|title=ART HISTORICAL ANALYSIS|url=https://poweroftheomegranate.weebly.com/art.html|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=Power of the Pomegranate|accessdate=2021年8月12日}}</ref>。トンドとして知られている円形式の使用は、聖母子とザクロに注意が向けられるのに役立っている。また、聖母マリアとイエスの両側に同数の天使を描くことによって左右対称の様式を用いている。画家は注意深いフリーハンドによる木炭のデッサンで、人物像をしっかりと描写することから始めた。ボッティチェッリはしばしば最近の革新を採用することを厭わなかったが<ref name=":02">{{Cite web|author=|first=|date=|title=Sandro Botticelli Style and Technique|url=https://www.artble.com/artists/sandro_botticelli/more_information/style_and_technique|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=Artible|accessdate=2021年8月12日}}</ref>、本作の最も重要な革新は[[テンペラ|テンペラグラッサ]]の使用であった。テンペラグラッサは卵黄に油を加えることで変化させた絵具の一種であり、本作に見られるように絵具がより透明になった。ボッティチェッリは、肌の色調と、使用した顔料を塗る際の絵筆の技術でよく知られており、非常に薄い不透明な層に顔料を塗り重ねることがよくあった。これは、画家たちには「スクランブル」としてよく知られている。ボッティチェッリは本作に見られるように、白、黄土色、辰砂、赤い顔料の半透明の層を重ねて使用している。画家が描く女性の顔は淡い色の[[磁器]]のようで、頬、鼻、口の部分に微かなピンク色の筆触が見られる。ボッティチェッリは、神の子などの幼児を辰砂の釉薬や赤い顔料のアクセントなどで、より濃い色で塗っている<ref name=":02"/>。使用されている顔料は非常に冷めた色調であるが、さまざまな豊かな色が混ざっている。天使たちが暗い色調を持っている一方、聖母子の肌の色調と衣服にずっと明るい色を使用することによって、聖母子は際立っている。
 
== 解釈 ==
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=== 心臓の解剖学 ===
絵画中のザクロは、心臓の解剖学的構造の正確な表現として認識されている。 15世紀後半、ボッティチェッリは人体解剖学への関心の再興と古代に失われた医学的知識の再生を知ることとなった<ref>{{Cite web|author=Lazzeri, Al-Mousawi, Nicoli|first=Davide, Ahmed, Fabio|date=April 2019|title=Sandro Botticelli's Madonna of the Pomegranate: the hidden cardiac anatomy|url=https://academic.oup.com/icvts/article/28/4/619/5219001|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=[[Oxford Academic ]]|accessdate=2021年8月12日}}</ref>。ルネサンスの芸術家は、死体の解剖を通してこの失われた知識を取り戻すことができた。ルネサンス時代、芸術家は解剖学者になることは非常に価値があると感じて、人体をよりよく理解するようになり、芸術作品をより生き生きとしたものに改善することがでた。作品の題名''、『ザクロの聖母』は''、聖母マリアの手に握られている果物に由来している。ザクロはキリストの苦難と[[復活 (キリスト教)|復活]]の象徴としての役割を果たしており、キリスト教では生から死への移行と復活を象徴している。ザクロは、残された種から最終的にふたたび生まれるからである<ref>{{Cite web|author=Riddle|first=John M|date=February 15, 2010|title=Goddesses, Elixirs, and Witches Plants and Sexuality Throughout Human History|url=https://www.google.com/books/edition/Goddesses_Elixirs_and_Witches/o3_GAAAAQBAJ?hl=en&gbpv=0|archiveurl=|archivedate=|accessdate=|website=[[Google Books]]|accessdate=2021年8月12日}}</ref>。開いたザクロに見える赤い種は、人類を救ったイエスの流血を鑑賞者に想起させるためのものである。ザクロの皮を剥いた部分は、[[心臓|心臓の心室]]と同じく非対称の心室を表している。ボッティチェッリは内側の海綿状の膜を表示し、仮種皮(シードポッド)を5つの空間に放出している。これらの空間は、心房、心室、および主な肺動脈幹を表している。最上部は2つの部分に分かれており、上大静脈と3本の枝がある大動脈弓を模倣したものとなっている。ザクロはまた、イエスの心臓の位置を覆う胸の左側の前に位置している。実際の心臓の解剖学的構造と、イエスの胸の上のザクロの描写との、これらの驚くべき類似性は、聖母マリアとイエスが持っているザクロに隠された心臓の仮説がおそらく的を得ていることを示している。
[[ファイル:Cardiac_Anatomy.jpg|サムネイル|358x358ピクセル]]