「クジャタ」の版間の差分

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ダミリ→ダミーリーに統一
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クユーサーや{{Efn2|name=qazwini-quote}}、異表記'''キーユーバーン'''({{Lang-ar-short|کیوبان}}, Kīyūbān)、'''キブーサーン'''({{Lang-ar-short|کبوثان}}, Kibūthān)は、イスラーム原典のひとつである[[ザカリーヤー・カズウィーニー|カズウィーニー]]の[[宇宙誌]]『{{仮リンク|被造物の驚異と万物の珍奇|en|ʿAjā'ib al-makhlūqāt wa gharā'ib al-mawjūdāt}}』に見られる<ref name=chaylan-daffner-kiyuban/>。
 
'''クユーター'''(Kuyootà)という表記は<ref name="Lane"/>、19世紀のイギリス人東洋学者{{仮リンク|エドワード・ウィリアム・レイン|en|Edward William Lane|label=エドワード・レイン}}によるもので、出典はレインによるが著した『[[千夜一夜物語]]』の注釈書、『中世のアラブ社会』である{{Efn2|仮訳日本語題名。フル題名は『中世のアラブ社会:千夜一夜物語の学究』(''Arabian Society in the Middle Ages: Studies from the Thousand and One Nights'')}}。レインがこの表記をどの原典から得たのか明確に区別できないが、'''クユーサーン'''("Kuyoothán")という異表記が、{{要検証|イブン=エシュ・シフネフ|date=2017年10月|title=カナ表記が要検証}}{{Efn2|Ibn-Esh-Shiḥneh}}<ref>{{harvp|Lane|1883}}、p. 106、注 1。</ref>(レイン所蔵の写本)にみつかるとしている<ref name="lane-1001nights-v1"/>。
 
'''クヤタ/クジャタ'''({{lang-es|Kuyata}}{{Efn2|スペイン語の場合、”ya"は「ヤ」とも「ジャ」とも発音される。後者のように発音することを[[ジェイスモ]]と称する。もちろんアラビア語の原文からすれば「ヤ」音であるべきである。}})というスペイン語表記は、現代作家[[ホルヘ・ルイス・ボルヘス|ボルヘス]]の『[[幻獣辞典]]』(1957年)にあるもので<ref name="borges0"/><ref>{{harvp|Borges|Guerrero|2005|pp=25, 164}}</ref>、レインよりの転載である<ref>ボルヘスの"Kuyata"の項の主な資料はレインであることが知られており、英訳"Bahamut"と"Quyata"の項の、Hurleyによる巻末注({{harvnb|Borges|2005}}, pp. 221, 234)で、Lane, ''Arabian Society''を資料とすると注釈される。</ref>。次いでクジャタ({{lang-en-short|Kujata}})という表記で『幻獣辞典』の旧英訳本(1969年)に現れ<ref name="borges1"/>、クヤタ({{lang-en-short|Quyata}})という表記に新英訳では訂正がおこなわれている<ref name="borges2"/>。
 
'''ラカブーナー''' [?]({{lang-fr-short|"Rakaboûnâ"}}、{{仮リンク|アル=ダミ|en|Al-Damiri}}の宇宙誌に拠る)や<ref name=perron>ニコラス・ペロン仏訳、アル=ダミの宇宙誌:{{citation|last=Ibn al-Mundir |first=Abū Bakr b. Badr |author-link=:en:Ibn al-Mundhir |others=[[:fr:Nicolas Perron|Perron, Nicolas]] (tr.) |title=Le Nâċérî: La perfection des deux arts ou traité complet d'hippologie et d'hippiatrie arabes |volume=3|publisher=Bouchard-Huzard |year=1860 |page=615 |url=https://books.google.com/books?id=SBk-AAAAcAAJ&pg=PA481 |pages=481}}: p. 457の箇所に対する巻末注14に所収。</ref>{{Refn|group="注"|ペロン訳のこの牛名は原文と一致しない(誤読か?)。原文は「牡牛のクーユーサ」 ''al-thawr Kuyūtha'' ({{lang-ar|الثور كيوثا}})とみえる(アル=ダミ、1819年カイロ市の出版本)<ref name=al-damiri/>。<!--cf. A Book of Creatures というサイトでは、「牡牛」意味する「サウル」の語尾"r"を次の語にくっつけてしまい"ラ"となり、"ヤー([[ي]])"を"バー([[ب]])"、"サー([[ث]])"を"ヌーン([[ن]])"の字と取り違えたことで生じたと解説されていた。-->}} 、'''アルラーヤン'''(Al-Rayann、ムハンマド・アル=キーサーイ『諸預言者伝』に拠る)<ref name=muhammad-al-kisai-qisas>ムハンマド・アル=キーサーイ『諸預言者伝』、 {{harvp|Thackston|1997|p=10}}</ref>などの異名・異表記も、他のイスラーム文献に散見できる。
 
==起源==
 
===4万本足===
4千の目、鼻、耳、口、舌、足であると、倍数の違った記載が、レインの要約にみられる<ref name="Lane"/>。出典があいまいだが、レインが典拠としている{{仮リンク|アル=ダミ|en|Al-Damiri}}(1405年没)の記述とおおよそ合致する{{Efn2|ペロン訳では「一対の脚にまた一対の脚がついており、足と足の間は徒歩で500年かかる距離である」とする}}。このアル=ダミの宇宙誌というのは、ダミの刊行本の欄外にカズウィーニーの記述が転載がされたものに過ぎないとされている<ref>{{harvp|Streck|1936}}, "al-Ḳazwīnī", ''Ency. of Islām'', p. 844。</ref>。
 
4万本の角と足(アル=サラビー編){{Refn|<!--アル=サラビー編『諸預言者伝』-->{{仮リンク|アフマド・イブン・ムハンマド・アル=サラビー|en|Ahmad ibn Muhammad al-Tha'labi|label=アル=サラビー}}編{{仮リンク|諸預言者伝|en|Qisas Al-Anbiya|label=『諸預言者伝』}}{{sfnp|Brinner|2002|p=6}}。}}{{Efn2|Brinner英訳では4万本:"So God sent down from the heights of Paradise an ox with seventy thousand horns and forty thousand leg"だが、アル=サラビーで"7万本"となっている稿本もあるという<ref name=jawaideh-note-qisas/>。}}、または4万個の目、耳、口、舌(アル=キサーイー編){{Refn|<!--アル=キサーイー編『諸預言者伝』-->{{仮リンク|アリー・アル=キサーイー|en|Al-Kisa'i}}(804年没)編『諸預言者伝』<ref name=jawaideh-note-qisas/>}}を持つと、最古級の文献である2編の『諸預言者伝』に伝わっている<ref name=jawaideh-note-qisas>{{harvp|Jwaideh|1987|p=34}}、注 1、注2。</ref>。ただし、こちらには牛の名は見えない{{Efn2|そのかわり牛の下の巨魚に複数の名(本名、添え名、あだ名)が出ているのだが{{sfnp|Brinner|2002|p=6}}。}}。
 
===牡牛が担う宝石盤===
牡牛が支える岩盤はレインによれば "[[ルビー]]"であるが{{sfnp|Lane|1883|p=106}}{{Refn|group="注"|ペロン仏訳のアル=ダミの宇宙誌でもルビーである:"immense roc de rubis"<ref name=perron/>。}}、アラビア語の各資料で使われる原語「ヤークート」(ياقوت, yāqūt)は意味曖昧で、宝石の種類もいくつかの可能性が考えられる<ref>{{cite book|ref=harv|last=Rustomji |first=Nerina |title=The Garden and the Fire: Heaven and Hell in Islamic Culture |publisher=Columbia University Press |year=2013 |url=https://books.google.com/books?id=YVasAgAAQBAJ&pg=PT95 |page=71}}</ref>。
 
原典の多くは緑色の宝石だと明言しており、例えばカズウィーニによる当該箇所も「緑色の[[ジルコン|ヒヤシンス石]]」となっていることがドイツ訳で確認できる<ref name=ethe-hyacinth>"''Felsen aus grünem Hyacinth''"、エテによるカズウィーニーのドイツ訳、{{harvp|Ethé|1868|p=298}}。</ref><ref>英語では"green jacinth"。 シュトレックが担当した『イスラーム百科事典』「カズウィーニー」の項の文中、カズウィーニの宇宙誌の英文要約、{{harvp|Streck|1936|p=615}}。</ref>。他の文献の訳出例では、「緑の[[コランダム]]」(英訳)<ref name=yaqut-p34/>、「緑の[[エメラルド]]」(ラテン訳){{Efn2|[[対格]] {{lang-la-short|smaragdum viridem}}。イブン・アル=ワルディー『驚異の真珠』のラテン訳。}}{{sfnp|Ibn al-Wardi|1835|pp=36–37}}、「緑の岩」(英訳){{Efn2|"green rock"。アル=サラビー『諸預言者伝』英訳}}{{sfnp|Brinner|2002|p=7}}等がみられる。
===潮の満干===
 
巨牛の呼吸は、海の[[潮汐|潮の満干]]に作用すると伝わる<ref name=chaylan-daffner-wardi/>。最古級の文献アル=サラビー編本)にもあるが、それによると牡牛は鼻を海洋に浸からせており、1日1度呼吸をするが、吐息で海面は上がり、吸息で海面は下がる(潮が引く)とする<ref name=talabi-p7/>。別の文献では1日2回呼吸とする<ref name=yaqut-p34/>{{Refn|group="注"|イブン・アル=ワルディーも牡牛の1日2度の呼吸が、海の流れと引きに関連するとしており、レインに脚注される<ref>{{harvp|Lane|1883|p=106、注1。}}</ref>。}}。
 
また、牛と魚は、大地から海に流れるすべて水量の飲み込んで、海の水位を保っていると伝えられる。しかし牛と魚はいったん満腹となると興奮しだし(イブン・アル=ワルディー)<ref>{{harvp|Chalyan-Daffner|2013|loc=pp. 215–216 and note 200}}: Ibn al-Wardī, Kharīdat al-ʿajāʾib, p. 15.</ref>、それは[[最後の審判]]の日の前兆だとされる(ヤークート)<ref name=yaqut-p34/>。