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ジャパロフ政権の内政運営について加筆
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'''キルギス共和国'''(キルギスきょうわこく、{{lang-ky|Кыргыз Республикасы}}、{{lang-ru-short|Киргизская Республика}})、通称'''キルギス'''は、[[中央アジア]]に位置する[[共和制]][[国家]]。かつての正式国名は'''キルギスタン'''であり、改称以降も別称として公式に認められている。[[内陸国]]で、[[カザフスタン]]、[[中華人民共和国]]、[[タジキスタン]]、[[ウズベキスタン]]と国境を接する。[[首都]]であり最大の都市は[[ビシュケク]]である。
 
[[ソビエト連邦の崩壊]]に伴い[[国家の独立|独立]]した。[[内陸国]]で、[[カザフスタン]]、[[中華人民共和国]]、[[タジキスタン]]、[[ウズベキスタン]]と[[国境]]を接する。
 
== 概要 ==
キルギスは、旧[[ソビエト連邦]]の[[ソビエト連邦構成共和国|構成国]]であり、[[NIS諸国]]の一つに数え上げられる。[[独立国家共同体]](CIS)、[[ユーラシア経済連合]]、[[集団安全保障条約]](CSTO)、[[上海協力機構]]、[[イスラム協力機構]]、[[テュルク評議会]]、{{仮リンク|国際テュルク文化機関|label=テュルクソイ共同体|en|International Organization of Turkic Culture}}および{{仮リンク|TURKPA|en|TURKPA}}、[[国際連合加盟国|国連]]に加盟]]している。
 
人口600万人のうち[[キルギス人]]が過半数を占め、[[少数派の民族]]として[[ウズベク人]]と[[ロシア人]]がこれに続いている。[[キルギス語]]は他の[[チュルク語族|テュルク系言語]]と密接に関連しているが、[[ロシア語]]も[[公用語]]として話されており、これは1世紀にわたる[[ロシア化]]の遺産である。人口の90%は[[イスラム教徒]]で、その大半は[[スンナ派]]である<ref name="CIA Factbook">{{cite web|url=https://www.cia.gov/the-world-factbook/countries/kyrgyzstan/|title=Central Asia:: KYRGYZSTAN|publisher=CIA The World Factbook|accessdate=2021-08-31}}</ref>。
 
また、同国の文化はそのテュルク系の起源に加えて、[[イラン]]中央アジアをかつて支配した[[モンゴル|モンゴル]]、ロシアの影響を受けている。
 
同国の歴史は、様々な文化や帝国に及んでいる。キルギスは山岳地帯にあり、地理的には孤立しているが、[[シルクロード]]やその他の商業ルートの一部として、いくつかの偉大な文明が交差してきた。キルギスにはいくつかの部族が住んでおり、大きな支配を受けたこともある。[[突厥]]、[[回鶻|ウイグル帝国]]と[[契丹]]に支配され、13世紀には[[モンゴル帝国]]に征服された。その後、独立を回復したが、[[カルムイク人]]、[[満州民族|満州]]([[清]])、[[ウズベク人]]に侵略された。1876年に[[ロシア帝国]]の一部となり、[[ロシア革命]]後は[[キルギス・ソビエト社会主義共和国]]としてソビエト連邦に残った。[[ミハイル・ゴルバチョフ]]によるソ連の民主化改革を受けて、1990年に独立派の[[アスカル・アカエフ]]が[[キルギスの大統領]]に選出された。1991年8月31日、キルギスは[[モスクワ]]からの独立を宣言し、民主的な政府を樹立した。1991年の[[ビエト邦の崩壊|ソビエト連邦崩壊]]後、キルギスは[[国民国家]]としての主権を獲得した。
 
独立後、キルギスは正式に[[単一国家|単一]][[議会共和制|議会制共和国]]となったが、民族紛争<ref>{{Cite news|url=http://www.economist.com/node/18682522|title=Investigating Kyrgyzstan's ethnic violence: Bloody business|newspaper=The Economist|date=12 May 2011|accessdate=26 March 2013}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.eurasianet.org/node/63678|title=Foreigners in Kyrgyzstan: 'Will We Be Banned, Too?'|publisher=EurasiaNet.org|date=15 June 2011|accessdate=26 March 2013}}</ref>、反乱<ref>{{cite web|url=https://www.occrp.org/en/the-matraimov-kingdom/pro-government-election-victory-sparks-overnight-revolution-in-kyrgyzstan|title=Pro-Government Election Victory Sparks Overnight Revolution in Kyrgyzstan|publisher=OCCRP|date=6 October 2020|access-date=10 November 2020}}</ref>、経済問題<ref>{{cite web|url=http://globaledge.msu.edu/countries/Kyrgyzstan/economy|title=Kyrgyzstan: Economy globalEDGE: Your source for Global Business Knowledge|publisher=Globaledge.msu.edu|date=20 December 1998|access-date=26 March 2013}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.heritage.org/index/country/kyrgyzrepublic|title=Kyrgyz Republic Economy: Population, GDP, Inflation, Business, Trade, FDI, Corruption|publisher=Heritage.org|access-date=26 March 2013}}</ref>、移行期の政府<ref>{{cite web|url=https://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16185772|title=BBC News – Kyrgyzstan profile – Timeline|publisher=Bbc.co.uk|date=10 October 2012|access-date=26 March 2013}}</ref>、政治的対立<ref>{{cite web|url=http://www.eurasianet.org/taxonomy/term/2813|title=Kyrgyz Unrest|publisher=EurasiaNet.org|access-date=26 March 2013}}</ref>などが続いている。
 
[[2010年キルギス騒乱]]後は、中央アジアでは珍しい民主的な政権運営が評価されてきたが、[[2020年キルギス反政府運動]]を機に政権を得たサディル・ジャパロフ大統領は貧困層への支援などで高い支持率を得ながら自らへの権力集中も進めていると指摘されている<ref>【ソ連崩壊30年】キルギス、強権へ回帰「民主主義の優等生」一変/中央アジア 根強い権威主義『[[読売新聞]]』朝刊2021年12月19日(国際面)</ref>。
[[人間開発指数]]120位の[[開発途上国|発展途上国]]であり、中央アジアでは2番目に貧しい国である。この国の移行経済は、[[金]]、[[石炭]]、[[ウラン]]の鉱脈に加え、[[石油]]と[[天然ガス]]に大きく依存している。また、近年までは中央アジア5カ国において「最も民主的」といわれる国であったが、度重なる政府の腐敗により混乱が続く状態となっている。
 
[[人間開発指数]]120位の[[開発途上国|発展途上国]]であり、中央アジアでは2番目に貧しい国である。この国の移行経済は、[[金]]、[[石炭]]、[[ウラン]]の鉱脈に加え、[[石油]]と[[天然ガス]]に大きく依存している。また、近年までは中央アジア5カ国において「最も民主的」といわれる国であったが、度重なる政府の腐敗により混乱が続く状態となっている。
 
2021年4月29日に生起したタジキスタンとの国境地帯での軍事衝突により、緊張状態が続いている<ref>{{Cite news|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2021043000263&g=int|title=キルギス、タジクの部隊衝突 国境地帯、死傷者も|newspaper=[[時事通信]]|date=2021-04-30|accessdate=2021-05-09}}</ref><ref>{{Cite news|url= https://www.jiji.com/jc/article?k=2021043000972&g=int|title=キルギスとタジク、軍衝突 国境地帯の水争い、死者31人|newspaper=時事通信|date=2021-04-30|accessdate=2021-05-09}}</ref>
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日本語の表記は'''キルギス共和国'''<ref name="日本外務省">{{Cite web|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kyrgyz/data.html|title=キルギス共和国(Kyrgyz Republic)基礎データ|accessdate=2021年2月24日|publisher=[[日本国外務省]]}}</ref>。通称は'''キルギス'''。
 
クルグズ(キルギス)の語源は「{{lang|ky|кырк}}(クルク)」が40の意味で、40の民族を指し、また[[中国人]]にかつて「{{lang|ky|гунны}}(グンヌィ、[[匈奴]])」と呼ばれていた背景から、それらを合わせてクルグズとなったと言われている。ちなみに、[[テュルク諸語|テュルク系言語]]で40を意味する「クゥルク」に、娘や女の子を意味する「クゥズ」を合わせた「クゥルク・クゥズ」は、“40人の娘”という意味になり、中央アジアに広く伝えられる[[アマゾーン|アマゾネス]]伝承との関連をうかがわせる。したがって、「40の民族」というよりも「40の部族」ないし「40の氏族」という意味のほうが適切である。
 
日本語名のキルギスは、ロシア語表記の「{{lang|ru|Киргиз}}」に由来する。
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* [[1991年]][[12月21日]] - [[ソビエト連邦の崩壊]]で結成された[[独立国家共同体]] (CIS) に参加。
* [[1992年]]{{0}}3月 - [[国際連合]]に加盟。
* [[1992年]]{{0}}5月 - 独自通貨である[[キルギス・ソム|ソム]]を導入、[[国際通貨基金]] (IMF) (IMF)に加盟、独立国家共同体 (CIS) (CIS)の集団安全保障条約に調印。
* [[1993年]] - 新憲法下で現国名('''キルギス共和国''')に改称。
* [[1995年]]12月 - 大統領選挙で[[アスカル・アカエフ]]が再選された。
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国土全体の40%が[[標高]]3000mを超える山国。国土は東西に長く、中国との国境には[[天山山脈]]が延びる。南に位置する[[タジキスタン]]に向かって[[パミール高原]]が広がる。
 
国土の中央など東西に山脈が走り、国土を数多くの峡谷に分断している。最高峰は、中国国境にそびえる[[ポベティ山]](Pobeda または Jengish もしくは 勝利峰、7439m)、ついで[[ハン・テングリ]]({{lang|ky|Khan-Tängri}} または Kan-Too、6995m)である。4000m級の峰は珍しくない。各都市の[[標高]]は首都ビシュケクが800 m、[[フェルガナ盆地]]に位置する[[オシュ]]が963 m、イシク湖畔の[[バルイクチ]]が1610 m、[[カラコル (キルギス)|カラコル]]が1745 mとなっており、[[ナルイン州]]の州都[[ナルイン]]は2044 m、中国やタジキスタンとの国境に近い南部の[[:en:Sary-Tash|サリタシュ]]は3170 mもの高地に位置している。
 
主な河川は、[[シルダリア川]]支流の[[ナルイン川]]。主な湖は国内北東部に位置する[[イシク・クル|イシク湖]] ({{lang|ky|Isik-Köl}})。東西180km、南北60km、周囲長700kmに及ぶ。湖面の標高は1600m。イシク湖とナルイン川は[[水系]]が異なる。
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=== 気候 ===
隣国の[[カザフスタン]]や中国とは異なり、国内に[[砂漠]]は存在せず、この地方の中では[[気候]]に恵まれている。人の居住に適した東西に伸びる渓谷部分は[[ケッペンの気候区分]]では、夏季に雨が少ない[[温帯]]の[[地中海性気候]] (Cs) (Cs)に相当する。これは、[[イタリア]]の[[ローマ]]や[[アメリカ合衆国]][[サンフランシスコ]]と同じ気候区である。山地は[[亜寒帯湿潤気候]] (Df) 、特に高地は[[高山気候]] (H) となる。天山山脈を挟んで南方の中華人民共和国と、{{仮リンク|テスケイ・アラ・トー山脈|en|Teskey Ala-Too Range}}を挟んで北方の[[カザフスタン]]には、[[ステップ気候]] (BS) と[[砂漠気候]] (BW) が広がる。
 
実際に[[降水量]]を比較すると、天山山脈の100km南方に位置する中国[[新疆ウイグル自治区]][[カシュガル市|喀什]](カシ、カシュガル)の年降水量は60mmだが、ビシュケク(北緯43度、標高800m)の降水量は450mmに達する。これはローマやサンフランシスコと同水準である。ビシュケクの平均気温は、1月に[[氷点下|-]]20[[セルシウス度|度]]、7月に30度で2017年度は7月に最高気温43度、2月に最低気温-31度を記録している。
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ソ連から独立後は、[[観光産業]]に早くから注力する。旧ソ連邦でも先駆けてヨーロッパや日本からの観光目的の入国に際し、[[査証]]不要を打ち出した。査証免除協定の対象国は日本など60を超える<ref name="日経産業20210830"/>。
 
キルギスは[[石油]]製品、[[天然ガス]]を輸入し、[[水力発電]]による電力、[[葉タバコ]]、[[綿]]を輸出している。天然ガスは[[トルクメニスタン]]からキルギスを経由して中国へ輸送する[[パイプライン]]が建設中である<ref name="日経産業20210830">【この人に聞く】国際ビジネス評議会理事長アスカル・スィドィコフ:独立30年、キルギス産業の針路 サービス業軸に投資誘致『[[日経産業新聞]]』2021年8月30日グローバル面</ref>。水の利用率はまだ10%程度で、水力発電を増強してユーラシア経済同盟諸国や[[アフガニスタン]]、[[パキスタン]]への電力輸出も計画されている<ref name="日経産業20210830"/>。このほか、金の輸出が急速に伸びている。2000年における輸入相手国は、ロシア、ウズベキスタン、カザフスタン、アメリカ合衆国、中華人民共和国の順。輸出相手国は、[[ドイツ]]、ウズベキスタン、ロシア、中華人民共和国、[[スイス]]。キルギスの対日本への貿易は2012年の[[財務省]]貿易統計によると輸入57.6億円(機械類及び輸送用機器、自動車、建設用・鉱山用機械)、輸出0.8億円([[アルミニウム]]及びアルミ合金)となっている。
 
キルギスに対する2000年における主要援助国・[[国際組織]]は、[[日本]]、[[アジア開発銀行]]、[[世界銀行]]、[[アメリカ合衆国]]、[[国際通貨基金]]の順である。日本の援助額は5500万米ドル。
 
通貨は[[キルギス・ソム]]である。