「スティーヴン・ミルハウザー」の版間の差分

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==作風==
[[エドガー・アラン・ポー]]や[[ナサニエル・ホーソーン]]などのアメリカ浪漫派の流れを汲み、[[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]や[[イタロ・カルヴィーノ]]や[[ウラジミール・ナボコフ]]的な知的遊戯も見られるが、むしろドイツ浪漫派に最大の影響を受けている。[[トーマス・マン]]、[[E.T.A.ホフマン]]、[[ハインリヒ・フォン・クライスト]]などの影響は特に色濃く、中でもトーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』、『ヴェニスに死す』はその最たる例である。ミルハウザー作品に常に登場する“天才的な才能を持ちながら、現実および商業主義に敗退し、破滅する芸術家”はおそらくこの二作から取られている。また、ひたすら現実に目を背ける天才と、現実的かつ才能もありながら決して天才ではないキャラクター、という対比が頻出するため、しばし映画『[[アマデウス]]』における[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]と[[サリエリ]]を絡めて語られる。
 
評論家の[[三浦雅士]]によると、ミルハウザー作品は二タイプに分けることが出来るという。現実の細密画を作ることに憑かれた男の物語と、ミルハウザーが空想した架空の世界を細やかに描写して提示する構築的な散文詩の作品だ。大方はこれで説明がつきそうだが、ミルハウザーにはその他に女性を主人公とした作品がある。これは大抵の場合、堅固に見えた現実の中に潜む危機的な状況の前でなすすべもなく立ちすくむ、といったリアリズム小説の体裁を取る。ミルハウザー作品の中で女性が芸術家であることは決してなく、「王妃・小人・土牢」といった作品の中では臆面も無く女性蔑視的な発言も見られる。また、一見芸術家風の「J. フランクリン・ペインの小さな王国」の主人公の妻コーラでさえも、その俗物性を主人公と比較されるに過ぎない。