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鞘形類の化石グループ、ベレムナイトについて
 
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 '''ベレムナイト'''(ベレムナイト類;[[Belemnoidea]])とは、現世の[[イカ]]類にきわめて[[近縁]]で、[[白亜紀]]末に[[絶滅]]した[[軟体動物門]]、[[頭足綱]]の中の1分類群である。体の背部~先端にかけてやじり型の殻を持っていた。なお、国内では"belemnite"を指す訳語として“矢石”という語が使用される。これは殻の形状に基づく。
 
 
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 ベレムナイトは[[デヴォン紀]]のバクトリテス類([[Bactritoids]])に起源を持ち、その[[化石]]は下部石炭系からにかけて産出する。特に繁栄したのは[[ジュラ紀]]から[[白亜紀]]にかけてであり、時おり[[アンモナイト]]と一緒に海成層から多産する。ベレムナイト類のいくつかの種、特に[[ヨーロッパ]]のチョーク層から産出するものは[[示準化石]]として重要である。ベレムナイトが多産する層準では、[[地質学者]]がその[[地層]]の年代を決定するのによく用いる。
 
 [[日本]]国内では[[北上山地]]の[[ジュラ紀]]~[[白亜紀]]の[[地層]]から産出するが、欧米に比べて産出は極めてまれである。
 
== ベレムナイトの殻 ==
 ベレムナイトの殻は生存時には外套膜に覆われ、実際には内骨格として機能していた。殻は'''鞘'''(phragmoconerostram)、'''房錘'''(rostramphragmocone)、'''前甲'''(pro-ostracum)の3部分よりなる。鞘は体の末端部にあり、化石として残りやすい。房錘は内臓が入った外套腔のすぐ外側にあり、“[[とんがりコーン]]”のような中空の円錐形をした[[骨格]]である。現世の[[オウムガイ]]と同様に、ベレムナイトは房錘の空洞内のガス圧を調整することで[[浮力]]を得ていたらしい。前甲は背中側にうすく延びた[[骨格]]で、現世の[[コウイカ]]の殻と同様に軟体部を支えていた。
 
 ベレムナイトの殻は[[方解石]]からなり、一般に保存状態が良い。殻の断[[項目名]]面では放射状にのびる[[方解石]]の結晶と同心円状の成長線が観察される。また、[[鉱物学]]的特徴から、[[化学]][[分析]]の試料に適しており、[[酸素]][[同位体]]比から生存時の古[[水温]]を復元する研究にもよく用いられる。[[アメリカ]]、[[サウスカロライナ州]]の'''Pee Dee層'''から産出するベレムナイトは[[酸素]][[同位体]]比測定の'''標準試料(PDB)'''として用いられる。
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 [[イギリス]]や[[ドイツ]]などからは軟体部の輪郭まできれいに保存されたベレムナイトの化石が見つかっている。それによると、彼らは殻に比べてはるかに大きな流線型の体と大きな眼を持っていた。また、[[イカ]]類と同様に[[墨]]嚢があったが、触腕がなかった。
 
 また、'''吸盤'''を持っている現世の[[イカ]]類とは異なり、ベレムナイトは小さな'''フック'''を持っていた。ベレムナイトは獰猛な肉食動物で、小さなフックがついた[[触手]]で獲物を捕まえては、[[クチバシ]]状の[[顎]]で食べていた。当時の海棲[[爬虫類]]はベレムナイトを捕食しており、現に[[イクチオサウルス]]の腹部からは彼らのフックが大量に見つかっている。 [[en:Belemnoidea]] [[Category:地球科学]]