アストンマーティン・ヴァンテージ

アストンマーティン・ヴァンテージは、イギリス自動車メーカー、アストンマーティンが製造しているスポーツカー。以前はメインモデルの高性能バージョン名だった。

V12 ヴァンテージ(2022年)

初代(1977年-1989年) 編集

 
V8 ヴァンテージ(1982年)

1977年からメインモデルであったアストンマーティン・V8の高性能モデル、V8ヴァンテージが生産された。このV8ヴァンテージは、0~60mph(約96km/h)加速でフェラーリ・デイトナを凌駕し、170mph(約274km/h)に達する最高速で、「英国初のスーパーカー」と称賛された。

2代目(1993年-2000年) 編集

アストンマーティン・ヴァンテージ
 
ヴァンテージ
 
リア
概要
販売期間 1993年 - 2000年
ボディ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 5.3L V型8気筒DOHCツインスーパーチャージャー
最高出力 550PS/6,500rpm
最大トルク 76.0kgm/4,000rpm
変速機 6速MT
サスペンション
ダブルウィッシュボーン式
ド・ディオンアクスル
車両寸法
ホイールベース 2,611mm
全長 4,755mm
全幅 1,945mm
全高 1,330mm
車両重量 1,970kg
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メインモデルであったヴィラージュのハイパフォーマンスモデルとして1992年バーミンガムショーで発表され、翌年の1993年に発売された。

ヴィラージュのボディをベースに、イートン・コーポレーション製のスーパーチャージャーを2基装着し、アメリカキャラウェイがチューニングした最高出力558PS/6,500rpm、最大トルク76.0kgm/4,000rpmを発揮する5.3LV型8気筒DOHCエンジンが搭載されている。

トランスミッションにはシボレー・コルベットZR-1に採用された6速MTが用いられ、後輪駆動となっている。

サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがド・ディオンアクスル

フェンダーが大きく拡大され285/45ZR18という太いタイヤが組み合わせられた。

0-60mph加速は4.6秒、最高速度は300km/hと、車重を感じさせないパフォーマンスを発揮する。

3代目(2005年-2018年) 編集

アストンマーティン・ヴァンテージ
 
クーペ(フロント)
 
クーペ(リア)
概要
販売期間 2005年 - 2018年
ボディ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 4.3L V型8気筒DOHC
(2005年-2008年)
4.7L V型8気筒DOHC
(2008年-)
最高出力 385PS/7,300rpm
(2005年-2008年)
426PS/7,300rpm
(2008年-)
最大トルク 41.8kgm/5,000rpm
変速機 6速MT
6速AT
サスペンション
ダブルウィッシュボーン式
ダブルウィッシュボーン式
車両寸法
ホイールベース 2,600mm
全長 4,382mm
全幅 1,866mm
全高 1,255mm
車両重量 1,570kg
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今までと異なり3代目はポルシェ・911などをライバルとするローエンドモデルの「ベイビー・アストン」となり、歴代ヴァンテージの中では最も馬力が低い。しかしアストンの中では安価な下位モデルだとしても、日本円で約1,500万円からという価格であり、高級車ということに変わりはない。

エンジンはジャガー・XKと同じV型8気筒AJ-V8)を採用しているが、XKとの共通部分はシリンダーブロックの外側の形状のみで、ボアアップ排気量を4Lから4.3Lに拡大し、ドライサンプ化によって全高を切り詰め低重心化を図るなど、ケルンの専用工場でさまざまな手が加えられている。出力は380hp(385PS)/410Nmである。

同社のV型12気筒モデル、アストンマーティン・DB9と同じ総アルミ応力担体VHプラットフォームを使う。V型8気筒エンジンは、V12が収まっていたエンジンコンパートメントの前車軸の後ろに押し込まれ、前後の重量配分を理想化しているが、剛性は確保されているものの、軽合金シャシというにはかなり重いものである。

内装もDB9と似たようなイメージで、まさにDB9の縮小版といった感じだが、DB9は2+2シーターのGTであることに対して、V8ヴァンテージは2シーターのスポーツカーであり、後輪駆動のスポーツカーとして理想的なバランスを実現している。

3ドアハッチバックのクーペとロードスターと呼ばれるオープンカーがある。

レース専用車としてN24という車両がアストンマーティン・レーシングより発売されている。

2007年には限定車「N400」を発表。排気量は変わらないが、吸気のチューニングによりエンジンパワーが400hpに向上した。

また2009年モデルとして4.7Lの新型エンジンを発表、420hp(426PS)/470Nm(346lb.ft)にパワーアップした。

ヴァンテージの名称を持つ車両として、6LV型12気筒を搭載するアストンマーティン・DB7ヴァンテージの最高出力に並んだ。

4代目(2018年-) 編集

アストンマーティン・ヴァンテージ
 
 
概要
販売期間 2018年 -
ボディ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン M177型 4.0L V型8気筒 ツインターボ
最高出力 510PS/6,000rpm
665PS/6,000rpm
(2024年-)
最大トルク 69.8kgm/5,000rpm
800Nm/2,750-6,000rpm(2024年-)
変速機 7速MT
8速AT
サスペンション
ダブルウィッシュボーン式
マルチリンク式
車両寸法
ホイールベース 2,705mm
全長 4,465mm
全幅 1,943mm
全高 1,273mm
車両重量 1,530kg
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2017年11月21日、およそ12年ぶりのモデルチェンジとなる4世代目ヴァンテージが日本を含む世界6か国で同時に発表された[1]。エンジンは従来の自然吸気4.7L V8に代わり、メルセデスAMG由来の4L V型8気筒ツインターボを搭載する。最高出力は510PS。最大トルクは685Nm。0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は314km/hに達する。

2022年3月16日、V12ヴァンテージを世界限定333台で欧州で発表した。エンジンは5.2L V型12気筒ツインターボ。アストンマーティンにとってV12ヴァンテージ新型が最後のV12内燃機関車となる。最大出力700PS/6,500rpm、最大トルク76.8kgm/1,800~6,000rpmを発生する。0~96km/hを3.4秒、最高速は320km/hに到達する。軽量化のために、フロントバンパー、ボンネット、フロントフェンダー、サイドシルにカーボンファイバー、リアバンパーとデッキリッドにはコンポジットを使用。ZF製8速ATと機械式LSDを介して後輪駆動となる[2]

2024年2月13日、マイナーチェンジが施されたヴァンテージが国内初披露された[3]。4.0 L V型8気筒ツインターボエンジンは、カムプロファイルの変更、圧縮比の最適化、タービンの大径化などにより、従来に比べ155PS/115Nm向上した最高出力665PS、最大トルク800N・mを発生する。結果、0-100km/h加速3.5秒、最高速325km/hというパフォーマンスを実現している。改良型ヴァンテージの国内価格は2690万円。

モータースポーツ 編集

GTE 編集

2008年、ヴァンテージ GT2(のちにGTEに変更)がデビュー。

2018年、新型ヴァンテージ GTEが登場

ヴァンテージ GTEは、FIA 世界耐久選手権(WEC)、ル・マン24時間レースに出場するために作られた、LM-GTEのレーシングカー。GTEは、6速エクストラックシーケンシャルギアボックスとロードカーと同様にメルセデスAMG V8エンジンを使用。パワーを上げるためにエンジンに追加の変更が加えられる[4]。車はGT3仕様に変更が可能[5]

アストンマーティン・レーシングによって、WEC、ル・マン24時間レースに参戦した。

DTM 編集

HWA AGは、アストンマーティンおよびR-モータースポーツと提携して、2019年ドイツツーリングカー選手権にヴァンテージ DTMを発表した。ヴァンテージはフォーミュラEに集中するために撤退した、メルセデス・ベンツに代わりエントリーした[6]。いわゆるクラス1規定に沿い製作されたマシンで、全5台が製造された[7]。だが2019年1シーズン限りで撤退した。

撤退後のマシンはコレクターなどに売却されているが、そのうちの1台は2023年にフェルナンド・アロンソが入手し、助手席を取り付けるなどの改造を受けファンイベント等で使用されている[7]

GT3 編集

ヴァンテージ GT3は、エンジン出力は542PS、トルクは700N⋅m。クイックシフトのエクストラック6速シーケンシャルギアボックス、アルコン製モータースポーツマルチプレートクラッチ、オーリンズ4方向調整可能ダンパー、アルコン製ブレーキ、ボッシュアンチロックブレーキシステムを備える。乾燥重量は1,245kg[8]

2024年2月12日、アップデートが施された、エボ(Evo)仕様のヴァンテージGT3を正式発表した。新しい空力パッケージと改良されたサスペンションを備えている。この車両は、アストンマーティン・レーシング(AMR)と、ヴァルキリーLMHプログラムにも取り組んでいるシルバーストンに本拠を置くアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)部門との共同作業の一環として開発された。ノーズ部分はカーボンファイバーで作られた一体型のクラムシェルで、最新世代のGT3マシンでは一般的になってきているクイックリリース設計を備え、前後のカウル類をアッセンブリー交換可能な構造になっている。基本価格は57万5000ポンド(約1億836万円)[9]

GT4 編集

ヴァンテージ GT4は、モータースポーツのエントリーレベルのドライバーを対象としている[8]。ヴァンテージGT4は、2019年ニュルブルクリンク24時間レースでデビューした[10]

セーフティカー 編集

またレース用車両ではないが、2021年よりF1で使用されるセーフティカーとしてヴァンテージのカスタム仕様車が供給されている[11]

脚注 編集

  1. ^ アストンマーティン ヴァンテージ 新型、青山の夜に登場!!…イギリス、日本など6か国同時に発表”. レスポンス(Response.jp). 2017年11月21日閲覧。
  2. ^ アストンマーティン『ヴァンテージ』、V12エンジン復活…世界限定333台はすでに完売”. レスポンス. 2022年3月17日閲覧。
  3. ^ 一気に155PSアップ! 改良型「アストンマーティン・ヴァンテージ」日本上陸”. webCG. 2024年2月13日閲覧。
  4. ^ アストンマーティン ヴァンテージ 新型、「GTE」発表…2018/2019年のWECレーサー”. レスポンス. 2017年11月22日閲覧。
  5. ^ Converting The GT3 Aston Martin Vantage To GTE Spec & Back! – dailysportscar.com”. www.dailysportscar.com. 2019年6月5日閲覧。
  6. ^ R-Motorsport Aston Martin to replace Mercedes in the DTM”. Autosport. 2020年10月2日閲覧。
  7. ^ a b アロンソ、スーパーGT・GT500と“同規定”のアストンマーティン・ヴァンテージを購入。その背景とは? - motorsport.com 2024年1月3日
  8. ^ a b Check out the new Aston Martin Vantage GT3 and GT4 race cars”. Top Gear. 2020年9月19日閲覧。
  9. ^ アストンマーティン、新型バンテージGT3を正式発表。基本価格は1億円超え”. autosport web. 2024年2月12日閲覧。
  10. ^ ASTON MARTIN ALL SET FOR VANTAGE GT4 DEBUT IN NÜRBURGRING 24H”. Aston Martin. 2020年9月19日閲覧。
  11. ^ F1、2021年シーズンよりアストンマーティンのセーフティカー&メディカルカーを使用。メルセデスも継続 - オートスポーツ・2021年3月9日

外部リンク 編集