ウルフ賞医学部門(ウルフしょういがくぶもん)は、ウルフ賞の一部門。イスラエルウルフ財団によって授与される国際的な医学賞の一つで、医学の分野で優れた業績を上げた研究者を対象とする。

ウルフ賞医学部門
Wolf Prize in Medicine
イスラエルの旗 イスラエル
主催ウルフ財団
初回1978年
最新回2023年
最新受賞者ダニエル・J・ドラッカー
公式サイトhttp://www.wolffund.org.il/index.php?language=eng

歴代受賞者 編集

1970年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
1978年 ジョージ・スネル
George Davis Snell
  アメリカ合衆国 主要組織適合遺伝子複合体をコードするH-2抗原の発見
  ジャン・ドーセ
Jean Dausset
  フランス ヒトの主要な組織適合性抗原であるHLAの発見
  ジョン・ファン・ロッド
Jon J. van Rood
  オランダ 臓器移植および疾患におけるHLAのメカニズム解明に対する貢献
1979年 ロジャー・スペリー
Roger Wolcott Sperry
  アメリカ合衆国 左右の大脳半球の機能分化に関する研究
  アルビド・カールソン
Arvid Carlsson
  スウェーデン 神経伝達物質としてのドーパミンの役割の確立
オレー・ホルニキーヴィクツ
Oleh Hornykiewicz
  オーストリア レボドパ(L-Dopa)を用いたパーキンソン病治療法の開発

1980年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
1980年   セーサル・ミルスタイン
César Milstein
  イギリス
  アルゼンチン出身)
リンパ球免疫学的役割に関する研究、および特異抗体法の開発
  レオ・サックス
Leo Sachs
  イスラエル
ジェイムズ・ゴワンス
James L. Gowans
  イギリス
1981年   バーバラ・マクリントック
Barbara McClintock
  アメリカ合衆国 染色体の構造と機能に対する理解を深めた創造的かつ重要な貢献、およびトランスポゾンの発見
  スタンリー・ノーマン・コーエン
Stanley Norman Cohen
  アメリカ合衆国 生物学的に機能し得る組換えプラスミドの開発、および組換えDNA法による大腸菌への遺伝子導入とその発現の成功
1982年   ジャン=ピエール・シャンジュー
Jean-Pierre Changeux
  フランス アセチルコリン受容体の単離・精製および解析
  ソロモン・スナイダー
Solomon H. Snyder
  アメリカ合衆国 神経伝達物質受容体のラベリング手法の開発
ジェームス・ブラック
James W. Black
  イギリス 交感神経β受容体遮断薬およびヒスタミンH2受容体拮抗薬の開発
1983年 受賞者なし
1984年/1985年 ドナルド・スタイナー
Donald F. Steiner
  アメリカ合衆国 基礎生物学と臨床医学に深く寄与した、インスリン生合成に関する発見
1986年 早石修
Osamu Hayaishi
  日本 酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)の発見とその構造・生化学的重要性の解析
1987年 ペドロ・クアトレカサス
Pedro Cuatrecasas
  アメリカ合衆国 アフィニティークロマトグラフィーの開発ならびに生物医科学への応用
  メイア・ウィルチェック
Meir Wilchek
  イスラエル
1988年 ヘンリ・G・ハーズ
Henri G. Hers
  ベルギー 出生前診断と治療への応用に貢献した、リソソーム蓄積症の生化学的解析
  エリザベス・F・ニューフェルド
Elizabeth F. Neufeld
  アメリカ合衆国
1989年   ジョン・ガードン
John Gurdon
  イギリス アフリカツメガエル卵母細胞分子生物学への導入、および分化した細胞と卵細胞遺伝子は物質的に同一だがその発現が異なることの証明
エドワード・ルイス
Edward B. Lewis
  アメリカ合衆国 ホメオティック遺伝子による体節発達の調節に関する研究

1990年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
1990年 マクリン・マッカーティ
Maclyn McCarty
  アメリカ合衆国 遺伝物質がDNAで構成されていることの証明に寄与した、細菌形質転換がDNAによって生じることの発見
1991年   シーモア・ベンザー
Seymour Benzer
  アメリカ合衆国 遺伝子変異による神経系と行動への影響の詳細な分析を通じた、分子神経遺伝学における新分野の開拓
1992年 ジューダ・フォークマン
M. Judah Folkman
  アメリカ合衆国 血管新生に関する概念と研究分野の確立を導いた諸発見
1993年 受賞者なし
1994年/1995年 マイケル・ベリッジ
Michael Berridge
  イギリス リン脂質カルシウムが関与する細胞膜透過性シグナリング経路の発見
  西塚泰美
Yasutomi Nishizuka
  日本
1995年/1996年   スタンリー・B・プルシナー
Stanley B. Prusiner
  アメリカ合衆国 タンパク質の構造変化によって神経変性疾患を引き起こす新たな病原体、プリオンの発見
1997年   マリー・F・リオン
Mary F. Lyon
  イギリス 哺乳類X染色体におけるランダムな不活性化に関する仮説の提唱
1998年 マイケル・セラ
Michael Sela
  イスラエル 免疫学分野における重要な発見
  ルース・アーノン
Ruth Arnon
  イスラエル
1999年   エリック・カンデル
Eric R. Kandel
  アメリカ合衆国 短期記憶が長期記憶に変換される際の細胞および分子機構の解明

2000年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
2000年 受賞者なし
2001年   アブラム・ハーシュコ
Avram Hershko
  イスラエル 細胞内のタンパク質分解経路であるユビキチンシステムおよび細胞機能調節におけるその決定的役割の発見
アレクサンダー・バーシャフスキー
Alexander Varshavsky
  アメリカ合衆国
  ロシア出身)
2002年/2003年   ラルフ・ブリンスター
Ralph L. Brinster
  アメリカ合衆国 遺伝子組換えならびにそのマウスへの応用を可能にした、卵および胚操作技術の開発
  マリオ・カペッキ
Mario Capecchi
  アメリカ合衆国
  イタリア出身)
マウスにおける遺伝子機能評価を可能にする、遺伝子標的法の開発
  オリヴァー・スミティーズ
Oliver Smithies
  アメリカ合衆国
  イギリス出身)
2004年 ロバート・ワインバーグ
Robert A. Weinberg
  アメリカ合衆国 ヒトがん細胞に悪性増殖を制御する体細胞変異が生じていることの発見
  ロジャー・Y・チエン
Roger Y. Tsien
  アメリカ合衆国 細胞のシグナル伝達経路を解析するための、新たな蛍光分子の設計および応用
2005年   アンソニー・ハンター
Anthony R. Hunter
  イギリス 形質転換を含むさまざまな細胞活動の調節に決定的な役割を果たす酵素チロシンキナーゼの発見
アンソニー・ポーソン
Anthony J. Pawson
  カナダ
  イギリス出身)
細胞のシグナル伝達機構の調節に重要なタンパク質ドメインの発見、および悪性腫瘍との関連についての洞察
  アレクサンダー・レヴィツキ
Alexander Levitzki
  イスラエル 種々の疾患に対する分子標的治療薬としてのチロシンキナーゼ阻害剤の開発
2006年/2007年 受賞者なし
2008年   ハワード・シダー
Howard Cedar
  アメリカ合衆国
  イスラエル
遺伝子発現制御におけるDNAメチル化の役割を明らかにした基礎研究
アーロン・ラージン
Aharon Razin
  イスラエル
2009年 受賞者なし

2010年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
2010年 アクセル・ウルリッヒ
Axel Ullrich
  ドイツ ヒトがん遺伝子の発見および新たながん治療法の開発に対する先駆的貢献
2011年   山中伸弥
Shinya Yamanaka
  日本 皮膚細胞からのiPS細胞の作出(山中)、およびiPS細胞が哺乳類における遺伝病の治療に利用できることの証明(イエーニッシュ)
  ルドルフ・イエーニッシュ
Rudolf Jaenisch
  アメリカ合衆国
  ドイツ出身)
2012年 ロナルド・エヴァンス
Ronald M. Evans
  アメリカ合衆国 核内受容体をコードする遺伝子スーパーファミリーの発見およびその機能の解明
2013年 受賞者なし
2014年 ネイハム・ソネンバーグ
Nahum Sonenberg
  カナダ
  イスラエル出身)
タンパク質の発現と機能を調節する因子(EIF4E)の発見
ゲイリー・ラブカン
Gary Ruvkun
  アメリカ合衆国 定常および病的状態における遺伝子発現の調節に重要な役割を果たす、miRNA(マイクロRNA)の発見
  ヴィクター・アンブロス
Victor Ambros
  アメリカ合衆国
2015年   ジョン・カップラー
John Kappler
  アメリカ合衆国 重要な抗原特異的分子としてのT細胞受容体および抗体と、免疫認識やエフェクター機能における役割の理解に対する主要な貢献
  フィリッパ・マラック
Philippa Marrack
  イギリス
ジェフリー・ラヴェッチ
Jeffrey V. Ravetch
  アメリカ合衆国
2016年   ロナルド・カーン
C. Ronald Kahn
  アメリカ合衆国 インスリンシグナル伝達と疾患における変化を定義づけた先駆的研究
ルイス・カントレー
Lewis Cantley
  アメリカ合衆国 PI3キナーゼとその生理学的機能および疾患における役割の発見
2017年   ジェームズ・P・アリソン
James P. Allison
  アメリカ合衆国 免疫療法の発見によるがん治療における革命
2018年 受賞者なし
2019年   ジェフリー・フリードマン
Jeffrey M. Friedman
  アメリカ合衆国 体重と肥満の調節に関与するホルモンであるレプチンの同定

2020年代 編集

年度 受賞者 国籍 受賞理由
2020年   ジェニファー・ダウドナ
Jennifer Doudna
  アメリカ合衆国 革新的な遺伝子編集ツールであるCRISPRの発見
  エマニュエル・シャルパンティエ
Emmanuelle Charpentier
  フランス
2021年   ジョーン・A・スタイツ
Joan A. Steitz
  アメリカ合衆国 人類の生活を向上させる潜在力をもつRNA生物学における基礎研究
  リン・マクアット
Lynne E. Maquat
  アメリカ合衆国
エイドリアン・クレイナー
Adrian R. Krainer
  アメリカ合衆国
2022年 受賞者なし
2023年   ダニエル・J・ドラッカー
Daniel J. Drucker
  カナダ グルカゴン様ペプチド(GLP)の生理学・薬理学的機序の解明と臨床応用への貢献

関連項目 編集

外部リンク 編集