エポナEpona)は、ケルト神話ローマ神話における、ロバラバなどの女神ユウェナリス(『風刺詩集』)やアプレイウス(『転身物語』)、テルトゥリアヌス(『弁明』『異教徒について』)、ミヌキウス・フェリクス英語版(『オクタウィウス』)がエポナ信仰に言及している[1]

フランス、モゼル県フレマンで発掘されたエポナの像

その名前は「ウマ科の動物」を指すケルト語 Epu から派生している。馬の守護神であり図象では横に乗った乗馬姿か馬の間で玉座に座った女性の姿で表される。図象にはコルヌコピアや果物の籠を持った姿や子馬を従えた姿もあらわされるため、豊かさや多産といった豊饒の女神の側面も指摘される。エポナは馬や騎手馬丁のみならず旅人や死後の世界の旅の守護者でもあり、死後の世界との関係も指摘される。

エポナはケルトにおける馬や騎兵の社会的位置から厚く信仰され、ガリアだけでなくイベリア半島グレートブリテン島イタリア半島北部、ドナウ川流域などでもその信仰はみられた。

そもそもは馬の姿であったものがガリアへの古代ローマの影響の下で人の姿をした女神として信仰されるようになったといわれる。女神エポナはローマ軍の補助軍の騎兵たちの間でも信仰され、12月18日の祭礼の日はケルト由来の神では唯一ローマ暦に取り入れられた。

図象は現在のフランス東部で多く発見され、このあたりが信仰の中心であったと考えられている。ガイウス・ユリウス・カエサルガリア遠征においてウェルキンゲトリクスとの決戦の舞台となったアレシアもこうした宗教的中心地であった。

エポナの影響はマビノギオンの「リアンノン英語版(リアノン、フリアノン、ライエノン)」の中にも見ることができる。

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  1. ^ マイヤー 2001, p. 46.

参考文献 編集

  • マイヤー, ベルンハルト 著、鶴岡真弓 平島直一郎 訳『ケルト辞典』創元社、2001年。ISBN 4-422-23004-2