オジロワシ(尾白鷲、Haliaeetus albicilla)は、タカ目タカ科オジロワシ属に分類される鳥類。

オジロワシ
オジロワシ
オジロワシ Haliaeetus albicilla
保全状況評価[1][2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: タカ目 Accipitriformes
: タカ科 Accipitridae
: オジロワシ属 Haliaeetus
: オジロワシ H. albicilla
学名
Haliaeetus albicilla
(Linnaeus, 1758)[3]
和名
オジロワシ[3][4]
英名
White-tailed eagle,erneなど[3]
  繁殖地
  越冬地
  周年生息地
オジロワシの分布図

分布 編集

ユーラシア大陸デンマークグリーンランド南部)、日本

ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になると中華人民共和国東部、ペルシャ湾周辺に南下し越冬する。東ヨーロッパや西アジア、中華人民共和国北東部などでは周年生息する。日本では主に基亜種が冬季に北日本に飛来(冬鳥)するが、北海道北部および東部では周年生息する個体もいる(留鳥)。2010年1月に開催された環境省の保護増殖分科会では、北海道内で越冬する個体数は約1,700羽(うち、つがい約140組)という数を示している。また、かつては対馬に定期的に飛来する個体がいた。

形態 編集

全長70 - 98cm。翼開長180 - 240cm。体重3 - 7kg。全身は褐色の羽毛で覆われている。頭部は淡褐色や淡黄色の羽毛で被われる。尾羽は12枚で短く、やや楔形。尾羽の色彩は白い。種小名albicillaは「白い尾の」の意で、和名や英名(white-tailed)と同義。翼の後縁は直線的で飛翔時には長方形に見える。なお同属のオオワシの方が白い部分が多い。

虹彩は淡黄色。嘴や後肢の色彩は淡黄色。

幼鳥は全身が褐色や黒褐色の羽毛で被われ、上面や下雨覆に白い斑紋、尾羽に褐色の斑紋が入る。また虹彩が褐色で、嘴の色彩が黒い。成長に伴い全身の斑紋は消失し、虹彩や嘴の色彩は黄色みを帯びる。

分類 編集

以下の分類は2016年現在IOCで採用されている分類に従う[5]。一方で2016年現在Clements checklistでは亜種を認めていない[6]

Haliaeetus albicilla albicilla (Linnaeus, 1758) オジロワシ[3][7]
上記の分布のうちグリーンランドを除く分布域[3]。日本では北海道で周年生息する(留鳥)[7]。冬季にロシアから主に北海道に飛来し、本州北部から中部に飛来することもあり、まれに九州や南西諸島に飛来することもある(冬鳥)[7]
Haliaeetus albicilla groenlandicus Brehm, CL, 1831
グリーンランド

生態 編集

海岸河川などに生息する。単独もしくはペアで生活するが、冬季になると集団で休む事もある。

食性は動物食で、魚類鳥類、哺乳類、動物の死骸などを食べる。ヒツジの幼獣、タンチョウの雛を襲い食べることもある。水面付近にいる獲物は急降下して捕らえる。

繁殖形態は卵生。高木の樹上や断崖に木の枝を組み合わせた巣を作り、3-4月に1回に2個の卵を産む。主にメスが抱卵し、抱卵期間は約38日。雛は孵化してから70-75日で飛翔できるようになり、さらに35-40日後に独立する。生後5-6年で性成熟し、生後6-7年で成鳥羽に生え換わる。ヨーロッパでの平均寿命は20年以上とされる[7]

人間との関係 編集

H. a. albicilla オジロワシ
日本では1990年以降は確認数は増加傾向にあるが、一方で近年は繁殖率が低下傾向にある[7]。森林伐採・土地造成・道路建設による営巣地の破壊、湖沼・河川・海岸開発による採食場所および獲物の減少、工事やカメラマンによる繁殖の攪乱、狩猟用の銃弾による鉛中毒、電線による感電死、最大の要因である風力発電による衝突事故、人工の繁殖地への依存および過密化などが懸念されている[7]。スコットランドでは絶滅したが、再導入された。日本では1970年に国の天然記念物に指定されている[8]1993年種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている[9]。北海道では1954年に初めて繁殖が確認され、1998年に56ペア、2008年に約150ペアの繁殖が確認されている[7]
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト[7]

日本ではハリアエエトゥス・アルビキルラとして特定動物に指定されている[9]

画像 編集

出典 編集

  1. ^ Appendices I, II and III<http://www.cites.org/>(accessed July 18, 2016)
  2. ^ BirdLife International. 2015. Haliaeetus albicilla. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T22695137A80155303. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T22695137A80155303.en. Downloaded on 18 July 2016.
  3. ^ a b c d e 日本鳥学会 「オジロワシ」『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会(目録編集委員会)編、日本鳥学会、2012年、194-195頁
  4. ^ 白木彩子 「オジロワシ」『日本動物大百科 第3巻 鳥類I』日高敏隆監修 樋口広芳・森岡弘之・山岸哲編 平凡社、1996年、149-151頁。
  5. ^ New World vultures, Secretarybird, kites, hawks & eagles, Gill F & D Donsker (Eds). 2016. IOC World Bird List (v 6.2). doi:10.14344/IOC.ML.6.2 (Retrieved 18 July 2016)
  6. ^ Clements, J.F.; et al. "Clements checklist of birds of the world: v2015 (Excel spreadsheet). (Retrieved 18 July 2016).
  7. ^ a b c d e f g h 白木彩子 「オジロワシ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-2 鳥類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社ぎょうせい2014年、152-153頁。
  8. ^ オジロワシ文化庁・2016年7月18日に利用)
  9. ^ a b 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理) 国内希少野生動植物種一覧環境省・2016年7月18日に利用)

参考文献 編集

  • 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社2008年、90-91頁。
  • 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版2004年、22頁。
  • 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社1986年、118、130、134-136、182頁。
  • 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、166-167頁。
  • 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社1984年、108、181頁。
  • 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、144-145頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、40頁。
  • 高野伸二編 『山溪カラー名鑑 日本の野鳥 2版』 山と溪谷社、1993年、138頁。

関連項目 編集