オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜

オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』(All Is Lost)は、J・C・チャンダー監督・脚本による2013年のアメリカ合衆国サバイバル映画である。キャストは海難者である「我らの男」を演じるロバート・レッドフォードのみであり、会話箇所もほとんど存在しない。2011年の『マージン・コール』に続いてチャンダーの長編映画2作目である。第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション外でプレミア上映された。

オール・イズ・ロスト
〜最後の手紙〜
All Is Lost
監督 J・C・チャンダー
脚本 J・C・チャンダー
製作 ニール・ドッドソン
アンナ・ガーバー
ジャスティン・ナッピ
テディ・シュワルツマン
製作総指揮 ロバート・オグデン・バーナム
グレン・バスナー
ジョシュア・ブラム
ハワード・コーエン
エリック・ダルベロフ
カシアン・エルウィズ
コーリー・ムーサ
ザカリー・クイント
ローラ・リスター
ケヴィン・チューレン
出演者 ロバート・レッドフォード
音楽 アレックス・イーバート英語版
撮影 フランク・G・デマルコ
ピーター・ズッカリーニ
編集 ピート・ボドロー
製作会社 ビフォア・ザ・ドア・ピクチャーズ
ワシントン・スクエア・フィルムズ
配給 アメリカ合衆国の旗 ライオンズゲート,ロードサイド・アトラクションズ
日本の旗 ポニーキャニオン
公開 アメリカ合衆国の旗 2013年5月22日CIFF
アメリカ合衆国の旗 2013年10月18日
日本の旗 2014年3月14日
上映時間 100分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $8,500,000[1]
興行収入 $2,797,888[2]
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あらすじ 編集

インド洋ヨットで単独航海中の男は水音と衝撃で眠りから覚める。気が付けば、船室に浸水が起こっていた。海上を漂流していた40ft形の赤いドライコンテナの上部角が激突し、ヨットに横穴が開いてしまった。航法装置は故障し、無線もラップトップ(ノートPC)も水浸して使い物にならなかった。

やがて雨雲が迫り、雷鳴がとどろき、暴風雨が襲い掛かる。嵐によってヨットは決定的なダメージを受け、止めようの無い浸水が起こってしまった。しかし男は必死に水をかき出し、何とか沈没を免れた。その後、しばらくの間は衝突したコンテナにヨットをロープで繋ぎ、破損していたコンテナの外壁から積荷のダンボール箱を引っ張り出し、食料等が無いかと必死に探すが、中身はただの運動靴だけだった。その直後に突然壊れたコンテナから大量の運動靴が荷崩れを起こしながら洋上に散乱し、期待の外れた男をさらに精神的に追い込むことになってしまった。

最初の穴は修理したが、ふたたびヨットは嵐に遭遇し大規模な浸水を起こす。最終的にヨットを捨てることを決意した男は、わずかな食糧とサバイバルキットを持って救命ボートに避難する。ボートへの浸水、サメの襲撃に加え、飲み水や食糧は底を突き、危機的な状況は続く。そして運命に見放されようとしたとき、男は初めて自分自身の本当の気持ちと向き合う事になる。そして、一番大切な人に向けて読まれるかどうかもわからない手紙に、気持ちを綴り始める。

キャスト 編集

製作 編集

企画 編集

『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』はJ・C・チャンダーが監督・脚本を務めており、2011年の『マージン・コール』に続いて2本目の長編映画となる。チャンダーはロードアイランド州プロビデンスからニューヨーク州の通勤の際にアイデアを思いついた[5]2011年サンダンス映画祭英語版での『マージン・コール』のプレミアの際にロバート・レッドフォードと会った後にチャンダーは彼にオファーした。2012年2月9日、唯一のキャストメンバーとしてレッドフォードのキャスティングが明らかとなった[6]。さらに唯一の出演者であるレッドフォードは、いくつかの台詞があるものの、会話が存在しないと述べた[7]。このために撮影台本はわずか31ページであった[5]

撮影 編集

主要撮影は2012年半ばにメキシコのロザリト・ビーチ英語版のバジャ・スタジオで行われた。バジャ・スタジオは元々は1997年の映画『タイタニック』のために建てられたものである[6]。撮影は水槽を使って2ヶ月行われた[8]。カンヌ国際映画祭での上演後の記者会見の際にレッドフォードは撮影中に耳を怪我したことを明かした[9]

音楽 編集

映画音楽はアレックス・イーバート英語版が作曲した[10]。サウンドトラック盤は2013年10月1日にコミュニティ・ミュージックより発売された[11]。それに先駆けて2013年9月12日にサウンドトラックから楽曲「Amen」がストリーミングで視聴可能となった[12]

公開 編集

2013年5月22日に第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション外で上映された[13]。アメリカ合衆国ではライオンズゲート[14]、国際市場ではユニバーサル・ピクチャーズが配給権を獲得した[15]。アメリカ合衆国では2013年10月18日に限定公開が始まった。

評価 編集

Rotten Tomatoesでは135件の批評家レビューで支持率は94%、平均点は8/10となっている[16]Metacriticでは43件のレビューで加重平均値は87/100となっている[17]

カンヌ国際映画祭での上映後にはレッドフォードはスタンディングオベーションを受けた[18]。『インデペンデント』のジェフリー・マクナップは「すごく説得力ある見もの」と述べた[19]。『ガーディアン』のアンドリュー・パルバーは「レッドフォードの並外れた演技は、一切の助演無しでたやすく画面を保持している」と評した[20]。『バラエティ』のジャスティン・チャンはレッドフォードの演技について「顔をしかめ、にらみ、トラブルに対処し、時折罵声を上げることで観賞者の興味を維持している」と評した[21]。『デイリー・テレグラフ』のロビー・コリンは「映画の範囲は限定されているが、きちんとしたアイデアがとても機敏に実行されたため、『オール・イズ・ロスト』はその範囲内で非常に良質となっている」と評した[22]

タイム』は本作におけるロバート・レッドフォードの演技を「2013年に公開された映画の俳優による演技トップ10」の1位とした[23]

ロバート・レッドフォードの演技はアカデミー主演男優賞に値するものであると評価されたが、選外となった[24]。このことに関してレッドフォードは「気にもしていない」と前置きしたうえで、「どんな理由なのかは分からないが、配給元がノミネートのためのキャンペーンを行わなかった」と語った[25][26]

参考文献 編集

  1. ^ Lawless, Jill (2013年5月24日). “JC Chandor gains a Cannes hit with 'All Is Lost'”. Yahoo! News. Yahoo!. 2013年10月23日閲覧。
  2. ^ All Is Lost (2013)”. Box Office Mojo. IMDB. 2013年11月13日閲覧。
  3. ^ Crompton, Sarah (2013年12月19日). “The making of All is Lost: 'Robert Redford lied to me'”. The Daily Telegraph. http://www.telegraph.co.uk/culture/film/10527553/The-making-of-All-is-Lost-Robert-Redford-lied-to-me.html 2014年6月23日閲覧。 
  4. ^ “市川海老蔵、ロバート・レッドフォードの声で洋画吹き替えに初挑戦!”. シネマトゥデイ. (2014年2月27日). https://www.cinematoday.jp/news/N0060885 2014年2月27日閲覧。 
  5. ^ a b Dowd, Maureen (2013年10月9日). “The Sun-Dried Kid: Robert Redford Goes to Sea in ‘All Is Lost’”. The New York Times. The New York Times Company. p. 2. 2013年10月16日閲覧。
  6. ^ a b McClintock, Pamela (2012-02-09). “Berlin 2012: Robert Redford Confirmed for J.C. Chandor's 'All Is Lost'”. The Hollywood Reporter. http://www.hollywoodreporter.com/news/berlin-2012-robert-redford-confirmed-288431. 
  7. ^ Jagernauth, Keith (2013年1月17日). “Robert Redford Says 'Margin Call' Director J.C. Chandor's 'All Is Lost' Is Dialogue Free”. The Playlist (indieWire). http://blogs.indiewire.com/theplaylist/robert-redford-says-margin-call-director-j-c-chandors-all-is-lost-is-dialogue-free-20130117 2013年1月28日閲覧。 
  8. ^ Savage, Sophia (2012年8月7日). “First Look at J.C. Chandor's 'All is Lost' with Robert Redford”. indieWire. http://blogs.indiewire.com/thompsononhollywood/first-look-at-j-c-chandors-all-is-lost-with-robert-redford 2012年9月24日閲覧。 
  9. ^ UK Screen, 30th May 2013 | Cannes Shows Redford Has Lost Nothing
  10. ^ Barker, Andrew (2012年11月20日). “Edward Sharpe’s Alex Ebert to score J.C. Chandor pic”. Variety. Penske Media Corporation. 2013年10月16日閲覧。
  11. ^ Community Music Announces Release of All Is Lost”. Community Music (2013年9月10日). 2013年10月16日閲覧。
  12. ^ Rahman, Ray (2013年9月12日). “Hear Alexander Ebert's song 'Amen' from the Robert Redford 'All Is Lost' soundtrack”. Entertainment Weekly. CNN. 2013年10月16日閲覧。
  13. ^ 2013 Official Selection”. festival-cannes.fr. Cannes Film Festival (2013年4月21日). 2013年4月21日閲覧。
  14. ^ Lodderhose, Diana (2012-02-09). “Lionsgate nabs Redford starrer 'All Is Lost'”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1118049952. 
  15. ^ McClintock, Pamela (2012-02-02). “Berlin 2012: FilmNation sells Robert Redford starrer 'All Is Lost' to Universal”. The Hollywood Reporter. http://www.hollywoodreporter.com/news/berlin-2012-robert-redford-all-is-lost-289683. 
  16. ^ All Is Lost (2013)”. Rotten Tomatoes. Flixster. 2013年11月13日閲覧。
  17. ^ All Is Lost”. Metacritic. 2013年11月13日閲覧。
  18. ^ Cannes: Robert Redford gets ovation for All Is Lost”. BBC News (2013年5月23日). 2013年5月23日閲覧。
  19. ^ Cannes Film Festival 2013 review: All Is Lost starring Robert Redford is almost dialogue-free, but exceptionally compelling nevertheless”. The Independent (2013年5月23日). 2013年5月23日閲覧。
  20. ^ Cannes 2013: All Is Lost – first look review”. The Guardian (2013年5月23日). 2013年5月23日閲覧。
  21. ^ Cannes Film Review: ‘All Is Lost’”. Variety (2013年5月23日). 2013年5月23日閲覧。
  22. ^ Cannes 2013: All Is Lost, review”. The Telegraph (2013年5月23日). 2013年5月23日閲覧。
  23. ^ 米タイム誌が選ぶ2013年俳優による演技トップ10”. 2013年12月27日閲覧。
  24. ^ アカデミー賞ノミネーション全結果!今年は三つどもえの戦いに!【第86回アカデミー賞】”. 2014年1月17日閲覧。
  25. ^ 名優ロバート・レッドフォード、オスカーの冷遇気にせず”. 2014年1月17日閲覧。
  26. ^ Robert Redford Blames 'All Is Lost' Distributors for Oscar Snub”. 2014年1月17日閲覧。

外部リンク 編集