キャリア・コンサルタント

日本の国家資格の一つ

キャリアコンサルタント(国家資格)とは、学生・求職者・在職者等を対象に職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職である。2016年4月に職業能力開発促進法にキャリアコンサルタントが規定され、国家資格となる。この資格を所得しない者は「キャリアコンサルタント」又は、これに類似した紛らわしい名称を用いることができない[1]。キャリアカウンセラー、キャリアアドバイザーと名乗る者もいるが、名称独占となる正式名称はあくまでも「キャリアコンサルタント」である。主な業務として、就職希望者や労働者を対象に職業の選択や、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談を行う。この相談業務・行為のことをキャリアコンサルティングという[2]

キャリアコンサルタント
略称 キャリコン、CC
実施国 日本の旗 日本
資格種類 国家資格
分野 キャリアコンサルティング
試験形式 講習、学科、実技
認定団体 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会
認定開始年月日 2016年4月
等級・称号 キャリアコンサルタント
根拠法令 職業能力開発促進法
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資格 編集

資格創設の経緯 編集

日本においては、2002年厚生労働省が計画決定した「キャリア・コンサルタント5万人計画」がきっかけとなり、民間資格としての「キャリアコンサルタント」の資格講座や認定試験が開始された。「官民合同で5万人のキャリアコンサルタントを養成すること」を目標とし、独立行政法人雇用・能力開発機構が養成講座を最初に開始した。その後、人材派遣会社、コンサルティング会社、専門学校、カウンセラー養成講座を実施する各種団体などが、それぞれ厚生労働省の認可を受けて養成講座と認定試験を行うようになり、それらの資格の中から後述する標準レベルキャリアコンサルタントが生まれた。

国家資格キャリアコンサルタント(入口レベル) 編集

2016年4月に、キャリアコンサルタント国家資格が創設された。国家資格化までに標準レベルキャリアコンサルタントの資格を取得していた者は、国家資格キャリアコンサルタントとして登録申請を行うことができる[1]。2018年現在、キャリアコンサルタントという名称を名乗るためには、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が実施する国家資格キャリアコンサルタント試験に合格したうえで、その資格登録の申請を行ない、キャリアコンサルタント名簿に登録される必要がある。[3]なお、資格のレベルとしては、国家資格キャリアコンサルタントはあくまでも「入口レベル」と位置付けられており、上位資格として2級キャリアコンサルティング技能士(熟練レベル)、1級キャリアコンサルティング技能士(指導レベル)が存在する。

標準レベルキャリアコンサルタント(入口レベル) 編集

2016年にキャリアコンサルタントが国家資格化される前まで、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会により指定された機関の試験に合格した者等を標準レベルキャリアコンサルタントと呼んでいた。この資格の保有者は、2015年3月末現在で42,131人であった。標準レベルキャリアコンサルタントの対象となる団体の講座を受講し、一定の条件を満たす(試験の合格など)と、各団体が定めた資格を得られると共に、標準レベルキャリアコンサルタントと名乗ることができた。 2016年4月の国家資格化に伴い、標準レベルキャリアコンサルタントであった者は、キャリアコンサルタント名簿に登録されることで「キャリアコンサルタント」と名乗ることができる。この標準レベルキャリアコンサルタントも、資格のレベルとしては国家資格キャリアコンサルタントと同様に「入口レベル」に位置付けられている。

2級キャリアコンサルティング技能士(熟練レベル) 編集

2007年にまとめられたキャリアコンサルティング協議会の報告書「キャリアコンサルティングに関する実態調査結果報告書」[4]は、「過半数の会社で資格呼称や内容に団体のばらつきがあることに疑問が呈された。業界として扱いづらく、キャリアコンサルタントとは何かということになってしまうという恐れも一部では語られた。」と指摘した。また、厚生労働省が発表した「キャリアコンサルタント制度のあり方に関する検討会」報告書[5]は、「『職業能力形成システム(通称「ジョブ・カード制度」)』参加者に対し、実施されるキャリアコンサルティングの担い手としてのキャリアコンサルタントの充実の必要性が生じている。(中略)専門的なキャリアコンサルタントの養成へ向けた質量両面で充実を図る取組みが不可欠となっている。」とする一方で、「キャリアコンサルタントのレベルアップと試験の統一を図ることを目的とするのであれば、参入規制を伴う業務独占資格のような制度ではなく、技能検定のような、一定の能力水準にあることを公証するシステムを用いることが考えられる。」と指摘した。

これらの答申等を踏まえ、国の技能検定制度の一種としてキャリアコンサルティング技能士が2008年に新設された。試験は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会[注 1][6]が実施する[注 2]

2級キャリアコンサルティング技能検定を受検するには、原則として5年以上の実務経験が必要だが、標準レベルキャリアコンサルタントの者は3年、標準レベルキャリアコンサルタント養成研修と同等若しくはそれ以上の養成研修を受講し修了した者は4年の実務経験でよい[7]。そのほかにも、大学や大学院にて規定の単位を取得した者も実務経験年数が短縮される。検定試験は実技試験と筆記試験からなるが、標準レベルキャリアコンサルタントは「特例講習」を受けることで、学科試験が免除される。

1級キャリアコンサルティング技能士(指導レベル) 編集

(作成中)

ジョブ・カード作成アドバイザー 編集

かつてのジョブ・カード制度では、ジョブ・カード講習を受講したうえで、厚生労働省または登録団体に登録された者で、標準レベルキャリアコンサルタントおよび産業カウンセラーなど、一定の資格を保持する者のことを登録キャリアコンサルタントと呼んでいた。なお、ジョブ・カード講習は2019年3月31日で終了することが決定しており、[8] 2015年10月、ジョブ・カード制度は、新ジョブ・カード制度に移行し、それに伴い登録キャリアコンサルタントはジョブ・カード作成アドバイザーに名称が変更された。

活動 編集

主な活動場所 編集

キャリアコンサルタントの主たる活動領域は、大別すると以下の3つである。

  • 需給調整機関領域
公的職業紹介機関および付属施設・機関、およびそれに準ずる施設
(例)ハローワークジョブカフェ地域若者サポートステーションニートひきこもり不登校者の支援が中心)など
  • 教育機関領域
公共職業能力開発施設
(例)職業能力開発促進センター職業能力開発校
学校
(例)中学校高等学校大学大学院専修学校専門学校を含む)など、卒業後の進路に就職がある学校全般。
  • 企業領域
一般企業、人材派遣会社、人材紹介会社、職業紹介会社、パーソナルキャリア支援会社[9] など

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ キャリア・コンサルティング技能検定の試験機関として2008年9月に厚生労働省に認定された。
  2. ^ 2008年12月21日に、第1回「2級キャリア・コンサルティング技能検定」の学科試験と実技試験(論述)が実施された。実技試験(面接)は2009年1月より順次行われる予定である。

出典 編集

参考文献・記事 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集