コーヒー牛乳(コーヒーぎゅうにゅう、: Coffee milk)は、牛乳などの乳製品コーヒー[注釈 1]および砂糖などで味付けした飲料通称である。

コーヒー牛乳

歴史 編集

日本 編集

日本では、1917年頃、和泉市伯太町にある、伯太小学校の三代目校長でもあった澤田信治の発案で、コーヒー牛乳やオレンジ牛乳をつくったのが最初である[1]。瓶入りで店頭に並んだ最初のコーヒー牛乳は、1923年大正12年)4月20日神奈川県守山乳業が製造した製品を、東海道本線国府津駅駅弁店である東華軒売店で販売したものである[2]。まだ日本で普及していなかった牛乳とコーヒーを広めるべく、守山乳業の創業者が試行錯誤の末に開発した経緯があり、上等駅弁が35の時代に20銭の高価な商品であったが、評判を呼んで各地の駅に並べられるようになった[3]銭湯温泉では瓶詰の牛乳、フルーツ牛乳とともに定番となっていた。

制度上の位置づけ 編集

1960年代には「・・・・牛乳」が乱立して玉石混交状態となった。1968年昭和43年)、牛乳業界は消費者団体から意見を聞きながら牛乳表示の公正競争規約を策定。コーヒー牛乳をはじめとした牛乳の名を冠する乳飲料乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上を含むものとした。さらに人工甘味料着色料香料を使用している場合には表示することとした[4]

2000年平成12年)に日本で起きた雪印集団食中毒事件以後、2001年(平成13年)に飲用乳の表示に関する公正競争規約が変更[5]され、2003年(平成15年)以降は生乳100%のものしか「牛乳」と表記してはならないことになった。そのため、コーヒー牛乳は正確には「コーヒー入り乳飲料」となり、商品名は「カフェ・オ・レ」、「カフェ・ラッテ」、「ミルクコーヒー」などの外来語や、単に「コーヒー」といった表記に変更されている。

アメリカ 編集

 
マサチューセッツ州のスーパーマーケットで販売されているコーヒー牛乳

アメリカでは、1930年代のはじめにロードアイランド州で、新しい飲み物で客を引き付けようとする簡易食堂やドラッグストアでコーヒー牛乳が出されるようになった。それらの経営者の1人は牛乳と砂糖でコーヒーを甘くし、糖蜜のようなシロップをつくった。コーヒー牛乳は、ロードアイランド州とマサチューセッツ州南東部の住民に好まれ、このコーヒー・シロップは売れた。1993年に、コーヒー牛乳はロードアイランド州の公式飲料となった[6][7]

著名な愛飲者 編集

アメリカのプロレス団体「WWE」のレスラージョン・シナは来日した際にかなり気に入ったらしく、マイクパフォーマンスに取り入れるなどした。

製造上の特性 編集

乳成分の凝固、沈殿を防ぐためpH 5.0程度のコーヒー抽出液を、pH 6.5からpH 7.0に調整した後に乳成分を加え殺菌処理が行われる。しかし、そのpH調整過程でコーヒーの香気成分は失われてしまう[8]

主なコーヒー牛乳 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 日本での市販品は、過去においては全くコーヒーを使わず、麦芽などによる代用コーヒー使用のものも多数存在し、むしろそちらのほうが一般的であった時期が長い。

出典 編集

  1. ^ 私たちの町伯太”. 2022年6月11日閲覧。
  2. ^ はじめて物語”. 守山乳業株式会社. 2018年10月25日閲覧。
  3. ^ あのメニューが生まれた店 P.37
  4. ^ 成分表示をはっきり 業界、自主規制に踏み出す『朝日新聞』1968年(昭和43年)3月19日朝刊 12版 15面
  5. ^ 飲用乳の表示に関する公正競争規約(認定 2001年7月10日 2001年公正取引委員会告示第17号)
  6. ^ RI.gov. “State of Rhode Island website "Facts and Figures"”. Ri.gov. 2011年11月28日閲覧。
  7. ^ TITLE 42, State Affairs and Government, CHAPTER 42-4, State Emblems, SECTION 42-4-15”. Rilin.state.ri.us. 2011年11月28日閲覧。
  8. ^ 阿部和也、川井清史、赤地利幸、加藤寛之「アロマプロテクト®製法の開発」『日本食品工学会誌』第15巻第4号、2014年、267-269頁、doi:10.11301/jsfe.15.267 

参考文献 編集

  • 菊地武顕『あのメニューが生まれた店』平凡社、2013年11月。ISBN 978-4582634860 

関連項目 編集