シンドゥゴーシュ級潜水艦

シンドゥゴーシュ級潜水艦(シンドゥゴーシュきゅうせんすいかん、英語:Sindhughosh class submarine)はインド海軍が運用する通常動力型潜水艦ソ連/ロシア海軍キロ型潜水艦のインド海軍向け輸出型(Project 877EKM)であり、建造もソ連ないしロシアで行われた。本級の型式についてはProject 877EMないしProject 877Eであり、また10番艦についてはProject 8773とする説もある。

シンドゥゴーシュ級潜水艦
INS Sindhughosh
シンドゥゴーシュ(INS Sindhughosh)
基本情報
種別 通常動力型潜水艦
建造所 アドミラルティ造船所(ソ連/ロシア)
運用者  インド海軍
就役期間 1986年 - 現在
建造数 10隻 (引退1隻、現役9隻)
要目
排水量 2,325t (水上)
3,076 t (水中)
長さ 72.6 m
9.9 m
吃水 6.6 m
推進器 ディーゼル・エレクトリック方式; 5,900馬力(6,600 kW); 6枚プロペラ1軸推進
4-2DL42M型ディーゼル発電機2基
ディーゼルエンジン (1,825 shp 1,500 kW)2基
電動機1基
蓄電池120セル×2 3,650 hp (2,722 kW)
5,900 hp (4,400 kW)
低速用電動機 × 2基, 204 hp (152 kW)
燃料172 t
速力 10 kt (浮上時)
17 kt (潜航時)
航続距離 6,000海里 (7 kt, シュノーケル使用時)
400海里 (3 kt, 潜行時)
航海日数 45日
潜航深度 通常240 m
最大300 m
乗員 53名 (士官13名)
兵装 533mm 魚雷発射管×6基(魚雷ないし対艦巡航ミサイル計18本またはDM-1機雷24個)
Klub-S (3M-54E) ASCM (改装艦のみ装備可能)
53-65型 パッシブ・ウェーキ誘導魚雷
TEST 71/76 対潜、アクティブ/パッシブ誘導魚雷
Fasta-4 SAMシステム(9M36M Strela-3 (SA-N-8) 携帯SAM8発)
C4ISTAR Uzel MVU-119EM魚雷管制システム
ソナー MG-519ソナー(アクティブ捜索用、高周波)
MGK-400 Rubikon ソナー(アクティブ/パッシブ捜索・攻撃用、中周波)改装艦はMGK-400EMへ換装
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10番艦は新造時より、他の艦は就役後の改装により3M-54 Klub(SS-N-27)対艦巡航ミサイルの運用能力を有する。

設計 編集

船体・動力 編集

船体は、涙滴型船形、完全複殻構造である。6区画の水密区画から構成され、1区画の浸水に対する耐性がある。

静粛性向上の為、機関はラフトを介し船体に取り付けられている。船体及びセイルの表面は、ソナーの反響低減効果があるゴム製の吸音タイルで覆われている。同タイルは、熱帯海域における太陽光線による劣化対策として表面をオゾンにより加工処理されている。

潜舵は、ソナーへの影響を考慮し、船体中部、セイル基部前方に設置され、水平引込式となっている。

全艦、電池をロシア製からドイツ製をインドライセンス生産したものに就役後交換している。

センサー 編集

MGK-400EMソナーは、MGK-400ソナーの基本的な寸法を維持しつつ、通常動力潜水艦のために最適化されている。

アンテナは高度な受信要素を包括している。システム機器は現代的で、高速でデータ処理可能なコンピュータと多機能表示から構成される。システムの戦術的、技術的特性(特にソナー操作範囲と目標測定精度)は、相当改良されている。システムには、雑音と妨害状態の測定と制御、主なモードによるソナー操作範囲の予測という新しい機能がある。自己診断装置は品質、信頼性、およびシステムの操作の容易さを高めている。

省力化のため、MGK-400EMソナーは情報を共通表示するコンソールが用いられ、MG-519EM機雷掃討システムが組み込みまれている。

戦闘システム 編集

MVU-110EM Murena戦術情報処理装置を装備し、同時に3つの異なる目標の捜索、内2つの目標への攻撃が可能である。尚、有線誘導魚雷が発射可能な魚雷発射管は2基のみである。

改装 編集

10番艦シンドゥシャストラを除く各艦は、順次改装の為ロシアへ回航改装を実施中であり、2009年現在9隻の内6隻が改装を済ませており、1隻が改装中である。

改装内容は、前述の通り3M-54 Klub(SS-N-27)対艦巡航ミサイルの運用能力を付与にあり、3P-14PE火器管制システムを追加搭載、3M-54E Klub-S対艦または91RE-1対潜巡航ミサイルを合計最大10発搭載可能となった。

尚、艦首ソナーに関しても、MGK-400からMGK-400EMへの換装が行われている。

運用 編集

本級はキロ型の中で初期に輸出された事例であり、1983年にソ連へ発注された。当初10隻を予定していたが8隻に削減され、1986年から1991年にかけ引き渡された。1990年に2隻追加発注され、1997年から2000年にかけ引き渡されている。

事故 編集

2008年ムンバイ沖で演習中だった「シンドゥゴーシュ」が商船と衝突した。

2010年、ヴィシャカパトナム港で停泊中の「シンドゥラクシャク」が火災事故を起こした。原因は電池の整備不良で、漏れ出した水素に引火した。損傷した「シンドゥラクシャク」はロシアに回航され、修理と共に巡航ミサイル発射機能の追加やソナーの換装も行った。

2013年8月13日深夜、作戦航海準備中の「シンドゥラクシャク」が、ムンバイ海軍工廠で爆発事故を起こした。爆発で艦体は浸水し、乗組員18名の死亡が確認された。被害は甚大で、「シンドゥラクシャク」は修理されることなく除籍されることになった。なお、隣接して停泊していた「シンドゥラトナ」も爆発に巻き込まれて損傷した[1]

同型艦一覧 編集

艦番号 艦名 起工 進水 就役 状態
S55 シンドゥゴーシュ
(INS Sindhughosh)
1983年
5月29日
1985年
6月29日
1986年
4月30日
改装済
S56 シンドゥヴァジ
( INS Sindhudhvaj)
1986年
4月1日
1986年
7月27日
1987年
6月12日
S57 シンドゥラジ
( INS Sindhuraj)
1987年
10月20日
改装済
S58 シンドゥヴィル
( INS Sindhuvir)
1987年
5月15日
1987年
9月13日
1988年
8月26日
改装済
S59 シンドゥラトナ
( INS Sindhuratna)
1988年
12月22日
改装済
S60 シンドゥケサリ
( INS Sindhukesari)
1988年
4月20日
1988年
8月16日
1989年
2月16日
改装済
S61 シンドゥキルティ
( INS Sindhukirti)
1989年
4月5日
1989年
8月26日
1990年
1月4日
改装中
S62 シンドゥヴィジャイ
( INS Sindhuvijay)
1990年
4月6日
1990年
7月27日
1991年
3月18日
改装済
S63 シンドゥラクシャク
( INS Sindhurakshak)
1997年
6月26日
1997年
12月24日
除籍
S65 シンドゥシャストラ
( INS Sindhushastra
1999年
10月14日
2000年
7月19日

写真 編集

参考文献 編集

  1. ^ 「海外艦艇ニュース インド潜水艦が事故で廃棄か」 『世界の艦船』787集(2013年11月特大号) 海人社

関連項目 編集

外部リンク 編集