ジェイミー・マリー

イギリスのテニス選手 (1986-)

ジェームズ・ロバート・"ジェイミー"・マリー(James Robert "Jamie" Murray [ˈdʒeɪmi ˈmʌri], 1986年2月13日 - )は、スコットランドダンブレーン英語版出身の男子プロテニス選手。アンディ・マリーの1歳年上の兄で、ダブルスのスペシャリストとして活動している。左利き。シングルスにはほとんど出場せず、4大大会の男子シングルスには1度も出場記録がない。これまでにATPツアーでダブルス25勝を挙げている。彼は様々なダブルス・パートナーと組んで好成績を出しており、弟のアンディと兄弟ペアを組む時もある。趣味のゴルフではハンデキャップ3の力量を持っている。

ジェイミー・マリー
Jamie Murray
2015年ウィンブルドン選手権でのジェイミー・マリー
基本情報
フルネーム James Robert Murray
愛称 ジェイミー(Jamie)
国籍 イギリスの旗 イギリス
出身地 スコットランドの旗 スコットランドダンブレーン
生年月日 (1986-02-13) 1986年2月13日(38歳)
身長 190cm
体重 84kg
利き手
バックハンド 両手打ち
ツアー経歴
デビュー年 2004年
ツアー通算 26勝
シングルス 0勝
ダブルス 26勝
生涯獲得賞金 6,447,000 アメリカ合衆国ドル
4大大会最高成績・ダブルス
全豪 優勝(2016)
全仏 ベスト8(2017・20)
全英 準優勝(2015)
全米 優勝(2016)
優勝回数 2(豪1・米2)
4大大会最高成績・混合ダブルス
全豪 準優勝(2020)
全仏 ベスト4(2011)
全英 優勝(2007・17)
全米 優勝(2017-19)
優勝回数 5(英2・米3)
国別対抗戦最高成績
デビス杯 優勝(2015)
キャリア自己最高ランキング
シングルス 834位(2006年5月22日)
ダブルス 1位(2016年4月4日)
2022年7月24日現在

シングルス・ダブルス通してイギリス人初の世界ランキング1位[1]。イギリス人20年ぶりのウィンブルドン優勝者。グランドスラムダブルス・混合ダブルス優勝7回。イギリス人男子43年ぶりの全米ダブルス決勝進出。またデビスカップ2015ではデビスカップイギリス代表の79年ぶりの優勝に貢献。

選手経歴 編集

ジュニア時代 編集

マリー家の兄弟2人は、スコットランドのナショナル・コーチを務めていた母親の手ほどきでテニスを始めた。一緒にラケットを握った時、兄ジェイミーは4歳、弟アンディは3歳だった。ジェイミーの公式サイトによれば、少年時代に家族でウィンブルドン選手権を観戦した頃「自分はできる限り多くの試合を見ようとしたが、アンディはできる限り(選手たちの)サインをねだることに夢中だった」という。

2004年 全米ダブルスベスト4 編集

ジュニア選手のトーナメントでは、2004年全米オープンの男子ジュニアダブルス部門でアンディと組んだベスト4がある。同年に18歳でプロ入り。最初期はフューチャーズでシングルス戦もこなしたが、2006年4月以後はダブルスのみに専念するようになった。

2007年 ウィンブルドン混合ダブルス初優勝 編集

2007年、ジェイミー・マリーはエリック・ブトラックと組んで男子ツアー大会のダブルスに3勝を挙げ、2007年ウィンブルドン選手権混合ダブルスでエレナ・ヤンコビッチとコンビを組んで優勝した。ジェイミーとヤンコビッチは、決勝でビョルクマン/モリク組を6-4, 3-6, 6-1で破って栄冠を獲得した。イギリス人選手がウィンブルドンを制覇したのは、1987年の混合ダブルスを制したジェレミー・ベイツ/ジョー・デュリー組(この組は2人ともイギリス人ペア)以来20年ぶりの快挙であった。

 
2011年楽天ジャパンオープンでのマリー兄弟

2008年 全米混合ダブルス準優勝 編集

2008年は、2月のデルレイビーチ国際マックス・ミルヌイと組んだ優勝がある。8月の北京五輪には、イギリス代表選手としてジェイミーとアンディの兄弟ペアが男子ダブルスに出場し、2人は2回戦でフランス代表のクレマン/ロドラ組に1-6, 3-6で敗れた。オリンピック終了後、ジェイミーは2008年全米オープン混合ダブルスでリーゼル・フーバーと組み、自身2度目の4大大会混合ダブルス決勝に進出した。ここではパエス/ブラック組に6-7, 4-6で敗れ、混合ダブルス2冠のチャンスを逃している。

2010年 ツアーダブルス7勝目 編集

2010年11月のバレンシア・オープン500でジェイミーは、弟のアンディと組んだダブルスの決勝でブパシ/ミルヌイ組を7–6(8), 5–7, [10–7]で破った。2011年の楽天ジャパンオープンでもアンディと組み優勝し、ダブルスツアー7勝目を挙げた。

2015年 ウィンブルドン・全米ダブルス準優勝 デビス杯初優勝 編集

2015年は躍進の年となった。ジョン・ピアーズと組み、ウィンブルドン選手権で決勝に進出。決勝ではロイヤー/テカウ組に6–7(5), 4–6, 4–6で敗れた。

全米オープンでも再び決勝に進出。決勝ではエルベール/マユ組に4-6, 4-6で敗れた。

デビスカップ2015でもダブルスで活躍。1回戦のアメリカ戦ではドミニク・イングロットと組み、ブライアン兄弟組に敗れたが、準々決勝以降は弟のアンディ・マリーと組み、フランス戦ではツォンガ/マユ組に、オーストラリア戦ではグロス/ヒューイット組に、決勝ベルギー戦ではダルシス/ゴファン組に勝利し、イギリスの優勝に貢献した。

2016年 全豪・全米ダブルス2冠 ダブルス世界1位 編集

2016年はブルーノ・ソアレスと組み、年初のシドニー国際で優勝すると、全豪オープンで2015年のウィンブルドンから3大会連続決勝進出を果たすと、決勝でネスター/ステパネク組に2–6, 6–4, 7–5で勝利し、男子ダブルスでのグランドスラム初タイトルを手に入れた。その後4月4日付の世界ランキングで世界ランク1位になることが確定した[2]全米オープンでは準決勝で前回の決勝で敗れたエルベール/マユ組に勝利し、2年連続の決勝進出を果たす。決勝でパブロ・カレーニョ・ブスタ/ギリェルモ・ガルシア=ロペス組を破り、グランドスラム2勝目を挙げた。

主要大会決勝 編集

グランドスラム決勝 編集

男子ダブルス: 4 (2–2) 編集

結果 大会 サーフェス パートナー 相手 スコア
準優勝 2015 ウィンブルドン選手権   ジョン・ピアーズ   ジャン=ジュリアン・ロジェ
  ホリア・テカウ
6–7(5–7), 4–6, 4–6
準優勝 2015 全米オープン ハード   ジョン・ピアーズ   ニコラ・マユ
  ピエール=ユーグ・エルベール
4-6, 4-6
優勝 2016 全豪オープン ハード   ブルーノ・ソアレス   ダニエル・ネスター
  ラデク・ステパネク
2–6, 6–4, 7–5
優勝 2016 全米オープン ハード   ブルーノ・ソアレス   パブロ・カレーニョ・ブスタ
  ギリェルモ・ガルシア=ロペス
6-2, 6-3

混合ダブルス: 2 (1–1) 編集

結果 大会 サーフェス パートナー 相手 スコア
優勝 2007 ウィンブルドン選手権   エレナ・ヤンコビッチ   アリシア・モリク
  ヨナス・ビョルクマン
6–4, 3–6, 6–1
準優勝 2008 全米オープン ハード   リーゼル・フーバー   カーラ・ブラック
  リーンダー・パエス
6–7(6–8), 4–6

デビスカップ 編集

優勝 (1) 編集

  イギリスチーム ラウンド/相手
2015年 アンディ・マリー
ジェームズ・ウォード
ダニエル・エバンス
カイル・エドマンド
ジェイミー・マリー
ドミニク・イングロット
1R: イギリス 3–2 アメリカ
QF: イギリス 3–1 フランス
SF: イギリス 3–2 オーストラリア
FN: ベルギー 1–3 イギリス

ATPツアー決勝進出結果 編集

大会グレード
グランドスラム
ATPワールドツアー・ファイナル
オリンピック
ATPワールドツアー・マスターズ1000
ATPワールドツアー・500シリーズ
ATPワールドツアー・250シリーズ

ダブルス: 35回 (17勝18敗) 編集

結果 No. 決勝日 大会 サーフェス パートナー 対戦相手 スコア
準優勝 1. 2006年7月30日   ロサンゼルス ハード   エリック・ブトラック   ボブ・ブライアン
  マイク・ブライアン
2–6, 4–6
準優勝 2. 2006年10月1日   バンコク ハード (室内)   アンディ・マリー   ジョナサン・エルリック
  アンディ・ラム
2–6, 6–2, [4–10]
優勝 1. 2007年2月18日   サンノゼ ハード   エリック・ブトラック   クリス・ハガード
  ライナー・シュットラー
7–5, 7–6(8–6)
優勝 2. 2007年2月25日   メンフィス ハード (室内)   エリック・ブトラック   ユルゲン・メルツァー
  ユリアン・ノール
7–5, 6–3
優勝 3. 2007年6月23日   ノッティンガム   エリック・ブトラック   ジョシュア・グードル
  ロス・ハッチンス
4–6, 6–3, [10–5]
優勝 4. 2008年2月17日   デルレイビーチ ハード   マックス・ミルヌイ   ボブ・ブライアン
  マイク・ブライアン
6–4, 3–6, [10–6]
準優勝 3. 2008年4月21日   エストリル クレー   ケビン・ウリエット   ジェフ・クッツェー
  ウェスリー・ムーディ
2–6, 6–4, [8–10]
準優勝 4. 2008年6月16日   ノッティンガム   ジェフ・クッツェー   ブルーノ・ソアレス
  ケビン・ウリエット
2–6, 6–7(5–7)
優勝 5. 2010年11月7日   バレンシア ハード (室内)   アンディ・マリー   マヘシュ・ブパシ
  マックス・ミルヌイ
7–6(10–8), 5–7, [10–7]
優勝 6. 2011年9月25日   メス ハード (室内)   アンドレ・サ   ルーカス・ドロウヒー
  マルセロ・メロ
6–4, 7–6(9–7)
優勝 7. 2011年10月9日   東京 ハード   アンディ・マリー   フランティセク・チェルマク
  フィリップ・ポラーシェク
6–1, 6–4
準優勝 5. 2012年2月5日   モンペリエ ハード (室内)   ポール・ハンリー   ニコラ・マユ
  エドゥアール・ロジェ=バセラン
4–6, 6–7(4)
優勝 8. 2013年4月13日   ヒューストン クレー   ジョン・ピアーズ   ボブ・ブライアン
  マイク・ブライアン
1–6, 7–6(7–3), [12–10]
優勝 9. 2013年7月28日   グシュタード クレー   ジョン・ピアーズ   パブロ・アンドゥハール
  ギリェルモ・ガルシア=ロペス
6–3, 6–4
優勝 10. 2013年9月30日   バンコク ハード
(室内)
  ジョン・ピアーズ   トマシュ・ベドナレク
  ヨハン・ブランシュトロム
6-3, 3-6, [10-6]
準優勝 6. 2013年10月6日   東京 ハード   ジョン・ピアーズ   エドゥアール・ロジェ=バセラン
  ロハン・ボパンナ
6–7(7), 4–6
優勝 11. 2014年5月4日   ミュンヘン クレー   ジョン・ピアーズ   コリン・フレミング
  ロス・ハッチンス
6–4, 6–2
準優勝 7. 2014年6月16日   ロンドン   ジョン・ピアーズ   アレクサンダー・ペヤ
  ブルーノ・ソアレス
6–4, 6–7(4), [4–10]
準優勝 8. 2014年8月23日   ウィンストン・セーラム ハード   ジョン・ピアーズ   フアン・セバスティアン・カバル
  ロベルト・ファラ
3–6, 4–6
準優勝 9. 2014年9月27日   クアラルンプール ハード
(室内)
  ジョン・ピアーズ   マルチン・マトコフスキ
  リーンダー・パエス
6–3, 6–7(5), [5–10]
優勝 12. 2015年1月11日   ブリスベン国際 ハード   ジョン・ピアーズ   錦織圭
  アレクサンドル・ドルゴポロフ
6–3, 7–6(4)
準優勝 10. 2015年2月15日   ロッテルダム ハード
(室内)
  ジョン・ピアーズ   ホリア・テカウ
  ジャン=ジュリアン・ロジェ
6–3, 3–6, [8–10]
準優勝 11. 2015年4月26日   バルセロナ クレー   ジョン・ピアーズ   マリン・ドラガニャ
  ヘンリ・コンティネン
3–6, 7–6(6), [9–11]
準優勝 12. 2015年7月11日   ウィンブルドン   ジョン・ピアーズ   ホリア・テカウ
  ジャン=ジュリアン・ロジェ
6-7(5), 4-6, 4-6
優勝 13. 2015年8月2日   ハンブルク クレー   ジョン・ピアーズ   フアン・セバスティアン・カバル
  ロベルト・ファラ
2–6, 6–3, [10–8]
準優勝 13. 2015年9月13日   全米オープン ハード   ジョン・ピアーズ   ニコラ・マユ
  ピエール=ユーグ・エルベール
4–6, 4–6
準優勝 14. 2015年10月25日   ウィーン ハード (室内)   ジョン・ピアーズ   ルカシュ・クボット
  マルセロ・メロ
6-4, 6-7(3), [6-10]
準優勝 15. 2015年11月1日   バーゼル ハード (室内)   ジョン・ピアーズ   アレクサンダー・ペヤ
  ブルーノ・ソアレス
5-7, 5-7
優勝 14. 2016年1月16日   シドニー ハード   ブルーノ・ソアレス   ロハン・ボパンナ
  フロリン・メルジャ
6–3, 7–6(8–6)
優勝 15. 2016年1月30日   全豪オープン ハード   ブルーノ・ソアレス   ダニエル・ネスター
  ラデク・ステパネク
2–6, 6–4, 7–5
準優勝 16. 2016年4月17日   モンテカルロ クレー   ブルーノ・ソアレス   ピエール=ユーグ・エルベール
  ニコラ・マユ
6–4, 0–6, [6–10]
準優勝 17. 2016年7月31日   トロント ハード   ブルーノ・ソアレス   イワン・ドディグ
  マルセロ・メロ
4–6, 4–6
優勝 16. 2016年9月10日   全米オープン ハード   ブルーノ・ソアレス   パブロ・カレーニョ・ブスタ
  ギリェルモ・ガルシア=ロペス
6-2, 6-3
準優勝 18. 2017年1月14日   シドニー ハード   ブルーノ・ソアレス   ヴェスレイ・コールホフ
  マトウェー・ミッデルコープ
3–6, 5–7
優勝 17. 2017年3月4日   アカプルコ ハード   ブルーノ・ソアレス   ジョン・イズナー
  フェリシアーノ・ロペス
6–3, 6–3

ダブルス成績 編集

男子ダブルス 編集

略語の説明
 W   F  SF QF #R RR Q# LQ  A  Z# PO  G   S   B  NMS  P  NH

W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.

大会 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 通算成績
全豪オープン A 1R 1R 1R A 2R 1R 1R 2R 3R W 1R 21-14
全仏オープン A 1R 1R 1R 1R 2R 1R 2R 3R 3R 3R 18-16
ウィンブルドン 1R 3R 3R 1R 1R 2R 2R 1R 3R F QF 23-16
全米オープン A 2R 1R A A 1R 1R QF 1R F W 32-12
Win-Loss 0–1 3–4 2–4 0–3 0–2 3–4 1–4 4–4 5–4 14–4 17–2 0–1 49–37

大会最高成績 編集

大会 成績
ATPファイナルズ SF 2016-2018
インディアンウェルズ SF 2008, 2017
マイアミ QF 2017
モンテカルロ F 2016
マドリード SF 2021
ローマ SF 2018
カナダ F 2016
シンシナティ W 2018
上海 F 2018
パリ SF 2017, 2021
オリンピック 2R 2008, 2021
デビスカップ W 2015
ATPカップ QF 2020

混合ダブルス 編集

大会 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 通算
全豪オープン A 2R 2R A 1R 1R A 1R 1R QF A 2R QF 7–9
全仏オープン A QF A A SF A A 1R 2R QF A 1R A 7–6
ウィンブルドン W SF SF 1R 2R A 1R QF A A W F 2R 26–8
全米オープン SF F A A 1R A A A 2R A W W W 23–4
Win-Loss 9–1 9–4 4–2 0–1 4–4 0–1 0–1 2–3 2–3 2–1 10–0 11–3 8-2 63–27

出典 編集

  1. ^ マレー兄が複世界1位 英国初”. tennis365.net. 2017年3月1日閲覧。
  2. ^ マレーの兄ジェイミー、男子ダブルスの世界ランク1位へ”. AFPBB News. 2016年4月1日閲覧。

外部リンク 編集