ジル・バレンタイン (地理学者)

ジル・バレンタイン(Gill Valentine)は、イギリス地理学者社会科学者シェフィールド大学教授、副学長。

経歴 編集

バレンタインは、ジャーナリストとしてヘイマーケット・パブリケーションズHaymarket Publications)やBBCウェールズに勤務した後、マンチェスターレディングの大学を経て、1994年シェフィールド大学講師(Lecturer)となり、上級講師(Senior Lecturer)、教授(Professor)と昇進した[1]2004年リーズ大学に転じ、リーズ社会科学研究所(the Leeds Social Science Institute)の所長(Director)を務めた後、副学長(Pro-Vice-Chancellor)としてシェフィールド大学に復帰した[1]

バレンタインの研究上の関心は、社会的アイデンティティ、子どもと家族、都市・消費文化などに及んでいるが[1]、日本では特にLGBTの立場からのジェンダー論、セクシュアリティ論に関わる地理学論文が注目され、日本語へ翻訳されてきた[2]。バレンタインは、異性愛を当然視する力は私的領域のみならず公共空間を支配し、そこから同性愛者が排除されることを指摘し、それに対抗する同性愛者の実践も抑圧的構造の強化に回収されると論じ[3]、同性愛と都市空間について論じた先駆的研究としてマニュエル・カステルの『都市とグラスルーツ』を挙げつつ、それがあたかも同性愛者が異性愛者と隔絶した世界を形成しているかのように議論を展開することを批判して、レズビアンの具体的な生活実態を踏まえた研究を通して、レズビアンの生活世界が異性愛者中心の社会との親密さ故に不可視化されることを指摘した[4]

バレンタインはシェフィールド大学において、LGBTの声を代表する立場にある[1]

脚注 編集

  1. ^ a b c d Pro-Vice-Chancellor - Social Sciences Professor Gill Valentine”. The University of Sheffield. 2014年4月8日閲覧。
  2. ^ 日本語に翻訳された論文として、いずれも『空間・社会・地理思想』に掲載された、バレンタインジル, 福田珠己[訳]「(異)性愛化した空間 : 日常空間に対するレズビアンの知覚と経験」『空間・社会・地理思想』第3巻、大阪市立大学文学部、1998年、77-95頁、CRID 1050001202446628736ISSN 1342-3282 
    ビニージョン, バレンタインジル, 杉山和明[訳]「セクシュアリティの地理 : 進展のレビュー」『空間・社会・地理思想』第5巻、大阪市立大学文学部、2000年、105-117頁、CRID 1050001202451271680ISSN 1342-3282  がある。
  3. ^ 寄藤晶子「フェミニスト地理学の射程と課題」『松本大学研究紀要』第10号、松商学園松本大学、2012年1月、245-256頁、CRID 1050001339211543680ISSN 1348-06182023年12月25日閲覧 
  4. ^ 山田創平「クイア理論を地域研究に応用するための序論 : 地域研究に新たな視点をもたらすための試み、その理論的枠組みの提示」『多元文化』第3巻、名古屋大学国際言語文化研究科国際多元文化専攻、2003年3月、175-187頁、CRID 1390572174609214976doi:10.18999/muls.3.175hdl:2237/8409ISSN 134634622023年12月25日閲覧 

関連項目 編集

外部リンク 編集