ゾーハル

ユダヤ教の書物

セフェール・ハ・ゾーハルまたはゾーハルזֹהר, הַזֹּהַר, סֵפֶר־הַזֹּהַר sēpher hazZōhar, Zohar)は、ユダヤ教神秘思想(カバラ)の中心となる基本文献で、トーラー(五書)の註解書であり、アラム語で書かれている。『光輝の書』『ゾハール』ともいわれる。

ゾーハルの初出版のもの
(1558年・マントヴァ

概要 編集

その存在は、1280年から1286年にかけて、スペイン北東部カタルーニャ地方で、古代アラム語の手稿が発見されたことで、初めて明らかとなった。

ゲルショム・ショーレムによれば2世紀にイスラエル地方で話されていたアラム語のスタイルが用いられている。

しかし、2世紀のタンナーであるシモン・バル・ヨハイ(シメオン・ベン・ヨーハイ)の(講話記録形態の)編纂に擬されているが、実際には、13世紀のスペインのカバリスト、ラビ・モーシェ・デ・レオン(モーゼス・デ・レオン)の創作とされる。

ユダヤ神秘思想の中に出てくる、セフィロトアダム・カドモン、様々な天使、膨大な数を取り巻く多くの天国などの諸々の神秘思想などがまとめられたユダヤ神秘思想関係の重要文献である。

「ゾーハル」については、16世紀のモーゼス・コルドベロなど、後世の多くのカバリストが註解を書いている。

なお、セフィロトにも善悪の二つの理論体系があるとして「ゾーハル」に影響をもたらした、ラビ・イツハクが参考にした『光明の書(バヒル)』には悪の起源の問題があり、他、両性具有理論やセフィロトの発生過程などの説明も記されているとされる。

「ゾーハル」以前の「バヒル」は、カバラ神秘思想の道を切り開いた、カバラ神秘思想の最初期の文献といえるであろう。

ゾーハルの二つの主題 編集

「ゾーハル」の主題は二つある。

一つは世界の創造に関わる「セフィロト」の神秘的解釈である。

太陽から太陽光線が輝き出るように、「アイン・ソフ(エイン・ソフ、エン・ソフとも)」と呼ばれる神から連続して流出するものが「セフィロト」で、原初の人間は完全なる人間として、全部で10のセフィラから成り立っていた。

この、本来は完全なる人間の活動を阻害し、宇宙的調和を乱すものが「悪」で、悪とは「スィトラ・アフラ(他の側面)」と呼ばれる、創造に際して破壊された旧世界の残存物であり、アダムが「生命の樹」と「善悪の知識の樹」を分離した時に、この世界に入ってきたとする。

もう一つは現世と霊界におけるユダヤ人の状況と運命である。

「ゾーハル」は世界の歴史の始まりから終わりまでの期間を7000年間とし、1000年ごとに六分した6000年間が、旧約聖書の創世記における創世の6日間に当てはまるとし、7日目にあたる7000年期には全ての存在が原初に還るとする。

ゆえに、ユダヤ暦西暦換算で紀元前3761年を紀元とするので、世界の創造から既に6000年近くが経過していることになり、現在を世界の終末だとするのである。

関連項目 編集

外部リンク 編集