デジタル・ラジオ・モンディエール

デジタル・ラジオ・モンディエール英語: Digital Radio Mondiale、略称DRM)とは、特に短波を中心とした振幅変調(AM)のデジタルラジオの方式である。また、それを制定するための国際非営利団体の名称でもある。

Official DRM logo

概要 編集

他のラジオ放送方式では音質も高いが短波や中波(通常のAM放送が利用)の中で放送するにはあまりにも帯域を多く必要とした。一方DRMはこれまでのAM変調に対応した送信機に合わせ設計されているため、この放送方式の開始には大きな費用がかからず、送信機にエンコードを行うDSPを内蔵したシステムを加えるだけで済む。

この方式は国際電気標準会議(IEC)からAM標準方式として認可された。国際電気通信連合(ITU)からこの方式の世界での使用を認められた。アメリカなどの地域(ITU region 2)では他の国際的協定を修正するまで承認は待たれている。

2003年7月16日、スイスジュネーヴで開催されたワールドラジオ・カンファレンス(ITU主催)において初めて放送された。

DRMはMPEG-4の内、音楽はAAC、トーク番組はCELPまたはHVXCで圧縮され、またオプションでSpectral Band Replication(SBR)を組み合わせることもできる。変調方式はCOFDM。またDRMにはデジタルのみに加え、これまでのアナログ放送にデジタル信号を多重する仕様もある。実験では9kHzステップで良好な結果が得られた。DRMは受信条件が良好ならばFM放送並みの高音質で受信できるため、従来の短波放送の音質改善に期待されている。

似た規格にIBOC英語版があり、こちらはAM放送FM放送でアナログ放送に多重する方式である。

参加・実施局 編集

北米 編集

南米 編集

ヨーロッパ 編集

アジア 編集

オセアニア 編集

日本での取り扱い 編集

受信機 編集

日本では現在販売されていないが海外で入手する場合が多い。中には受信機を改造して聴取する人もいる。おもな改造方法としては、スーパーヘテロダイン方式の受信機回路から中間周波数信号(一般的には455kHzなど)を取り出し、これを音声帯域である12kHzに変換する回路に接続する。変換された12kHzの信号をパソコンサウンドカードライン入力端子またはマイク入力端子に接続する。パソコンではDream[1]等DRMのCOFDM復調できるソフトウェア受信機を実行すると、パソコンのスピーカーでDRM放送を聴くことができる。

DRM導入について 編集

日本の放送局では実施予定はない(2007年11月現在)。

ステータス 編集

この技術標準はETSIから無料で入手でき[2]、ITUは世界のほとんどの国でその使用を承認している。 ITU第2地域の承認(既存の国際協定の改正待ち 最初の放送は2003年6月16日、スイスのジュネーブで開催されたITU世界無線会議で行われた。

現在放送されているのは、アカシュバニ(旧オールインディア・ラジオ)、BBCワールドサービス、ファンクラスト(旧BitXpress)、ラジオ・エクステリア・デ・エスパーニャ、ラジオ・ニュージーランド・インターナショナル、バチカン放送、ラジオ・ルーマニア・インターナショナル、ラジオ・クウェートなど[3]

これまでのDRMレシーバーでは、一般的にパーソナル・コンピューターが使用されてきた。 いくつかのメーカーがDRM受信機を発売しているが、放送の選択肢が限られているため、今のところニッチな製品にとどまっている。 国営放送局、特にAll India RadioのDRMベースのデジタルサービスへの移行は、手頃な価格で効率的な新世代の受信機の生産を刺激すると予想される。

成都NewStar Electronicsは2012年5月からDR111を提供しており、DRMコンソーシアムが定めたDRM受信機の最低要件を満たし、世界中で販売されている[4][5]

アカシュバニ共通放送は、995MHzで毎日17:45から22:30(UTC)まで西ヨーロッパ向けにDRM放送している[6][7]。オール・インディア・ラジオは、国内のAM送信機の多くをDRMに置き換え、アップグレードしているところである。 2012年に始まったこのプロジェクトは、2015年中に完了する予定である[8]

脚注 編集

  1. ^ Download - Elektronik und Mikrocontroller (Burkhard Kainka)公式
  2. ^ ES 201 980 - V4.2.1 - Digital Radio Mondiale (DRM); System Specification”. www.etsi.org. 2024年3月24日閲覧。
  3. ^ Broadcast Schedule”. www.drm.org. 2024年3月24日閲覧。
  4. ^ Chengdu NewStar Electronics DR111 DRM Radio”. swling.com. 2024年3月24日閲覧。
  5. ^ Newstar DR-111 – Review”. www.drm.org. 2024年3月24日閲覧。
  6. ^ All India Radio (Akashvani), Cuttack - Daily Programme Broadcast Schedule (Time Table)”. www.odiaportal.in. 2024年3月24日閲覧。
  7. ^ デジタルラジオ放送システム”. radiostay.com. 2024年3月24日閲覧。
  8. ^ DRM In India”. www.drm.org. 2024年3月24日閲覧。

外部リンク 編集

DRM in general 編集

DRM 技術 編集

DRM radio techniques digital decoding 編集

DRMの変調方式、COFDM 編集

受信機 編集

Index 編集