ドリアン

ドリアンの代表的な栽培種

ドリアン(学名: Durio zibethinus)は、アオイ科旧パンヤ科ドリアン属する樹木である。ドリアンと呼ばれるドリアン属の種の中で最も一般的な種であり、その食べられる果実ドリアンと呼ばれる。

ドリアン
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ類 malvids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Helicteroideae
: ドリアン属 Durio
: ドリアン D. zibethinus
学名
Durio zibethinus
シノニム
  • Durio acuminatissimus Merr.
  • Durio stercoraceus Noronha nom. inval.
[1]
和名
ドリアン
英名
durian
     D. zibethinusの原生分布[2]     D. zibethinusの帰化分布[3]
ドリアン(生)[4]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 556 kJ (133 kcal)
27.1 g
食物繊維 2.1 g
3.3 g
飽和脂肪酸 1.18 g
一価不飽和 1.18 g
多価不飽和 0.28 g
2.3 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
3 µg
(0%)
36 µg
チアミン (B1)
(29%)
0.33 mg
リボフラビン (B2)
(17%)
0.20 mg
ナイアシン (B3)
(9%)
1.4 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.22 mg
ビタミンB6
(19%)
0.25 mg
葉酸 (B9)
(38%)
150 µg
ビタミンC
(37%)
31 mg
ビタミンE
(15%)
2.3 mg
ミネラル
カリウム
(11%)
510 mg
カルシウム
(1%)
5 mg
マグネシウム
(8%)
27 mg
リン
(5%)
36 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg
(10%)
0.19 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 66.4 g
水溶性食物繊維 0.7 g
不溶性食物繊維 1.4 g
ビオチン(B7 5.9 µg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[5]。試料: 果皮を除いた冷凍品 廃棄部位: 種子 
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

名称 編集

属名のDurioはラテン語のdurianに由来し、もともとマレー語で、刺(duri: ドゥリ)を持つものという意味である。また、種小名のzibethinusは、「麝香の香りを持つ」という意味の形容詞である。合わせて、麝香の香りを持ち、針を持つものという意味になる。マレー語ではドゥリアン。タイ語ではトゥリアン (ทุเรียน)。北京語榴蓮拼音: liúlián、リウリエン)、広東語榴槤(ラウリーン、lau4lin4)。

植物学上の特徴と分布 編集

代表的なドリアンと呼ばれる栽培種の学名はDurio zibethinus、その他にも分かっているだけで30の種が存在する。原産地は東南アジアマレー半島。果実は強い甘味を持ち、栄養豊富で特にビタミンB1を多く含有する。果物の王様と呼ばれている。

木・花 編集

ドリアンのは、高さが 20 - 30 m ほどになる(果樹園では10 m程度に抑えられる)常緑樹ピラミッド状の樹冠を作る。は細かく、は互生する。葉の表面は緑暗色で光沢があり、長さ10 - 18 cm、幅 5 cmほどの長楕円形。

は、黄白色で5つの花弁を持ち、果梗に数個から数十個ほど群生させる。

果実 編集

果実は、受粉後3カ月ほどで成熟し、大きさは20 - 30 cmほど、重さは1 - 5 kgほどになる。植樹後、5年程で収穫できるようになる。1本の木から1年で100 - 200個が収穫される。灰緑色をしており、外皮は革質で全体が硬いに覆われている。内部は5室からなり、各室に2-3個の種子がある。

食べられるのは、種子の周りのクリーム状の部分で、果実全体に占める可食部分の割合は少ない。種子焼く茹でることで食べることが可能である。種子の食用はドリアンの産地でごく稀に行われるが、あまり一般的ではないため、ほとんどの場合に廃棄される。

可食部は甘い香りとともに、玉ねぎの腐敗臭または都市ガスのような強烈な匂いを放つ(ホテル航空会社によっては、部屋機内への持ち込みを禁じている事もある)。ドリアンの香り成分として分かっているだけでも、エステルアルコールアルデヒドに属する26種類の揮発成分、および8種類の硫黄化合物が存在する。強烈な臭いの元は臭い成分の一つ硫黄化合物1-プロパンチオールC3H8Sが核となり、その他さまざまな臭い成分が複雑に絡み合い作り出されている。

2017年、ドイツの研究者らは、ドリアンの特徴的な芳香がethyl (2S)-2-methylbutanoate(フルーティーな匂い)および1-(ethylsulfanyl)ethane-1-thiol(炒めた玉ねぎのような匂い)の2つの成分をドリアン中に存在する比率で混ぜ合わせることで再現できることを明らかにした[6]。2017年、シンガポールを中心とした研究グループが、ドリアンのドラフトゲノムを解読した[7]

日本での栽培 編集

沖縄県にドリアンの木が植栽されている。開花することはあるものの、結実にまで至ることは非常に稀である。

京都府の京都府立植物園にもドリアンの木が植栽されている。

脚注 編集

  1. ^ The Plant List: A Working List of All Plant Species”. 2014年7月3日閲覧。
  2. ^ Durio zibethinus at worldagroforestry.org
  3. ^ A traveler´s guide to Durian Season at yearofthedurian.com
  4. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  5. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  6. ^ Li, J.-X.; Schieberle, P.; Steinhaus, M. (2017). “Insights into the Key Compounds of Durian (Durio zibethinus L. ‘Monthong’) Pulp Odor by Odorant Quantitation and Aroma Simulation Experiments”. J. Agric. Food Chem. 65 (3): 639–647. doi:10.1021/acs.jafc.6b05299. PMID 28024392. 
  7. ^ Teh, Bin Tean; Lim, Kevin; Yong, Chern Han; Ng, Cedric Chuan Young; Rao, Sushma Ramesh; Rajasegaran, Vikneswari; Lim, Weng Khong; Ong, Choon Kiat et al. (2017). “The draft genome of tropical fruit durian (Durio zibethinus)”. Nature Genetics 49 (11): 1633–1641. doi:10.1038/ng.3972. PMID 28991254. 

参考文献 編集

関連項目 編集