パワーコンディショナー

インバータの一つ

パワーコンディショナー(パワコン)は、太陽光発電システムや家庭用燃料電池を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換する機器であり、インバータの一種である。ソーラーパネルなどから流れる電気は通常「直流」であり、これを日本の一般家庭で用いられている「交流」に変換することで、通常利用が可能な電気にすることができる。なお、外国ではインバータやラインコンディショナーと呼ばれることもある。

太陽光発電システムにおける役割 編集

太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールで発生した直流電力接続箱に集められ、逆流防止ダイオード・直流側開閉器を介して、パワーコンディショナーへと供給される。パワーコンディショナーに入力される回路毎の電圧を一定にするために、昇圧器(ストリングスコンバータ)を各回路間に入れる場合もあれば、昇圧機能自体がパワーコンディショナーに内蔵されている場合もある。これにより、屋根等に設置する太陽電池モジュールの枚数や出力にある程度の幅をもたせて、システムを組むことが可能となっている。

日本の場合、戸建て住宅に供給されている電力単相三線200 Vの交流が標準となっている。単相三線200 V方式では、単相100 Vと単相200 Vの機器が使用できる。当然、家電製品もそれを前提に設計されており、ここに電圧電流の不安定な電気が流れると家電製品にも悪影響を与えてしまう。そこで、安定した電圧・周波数で交流出力できるように調整するのがパワーコンディショナーの役割である。いわゆる自家用発電機と同じ役割を果たしていると言える。パワーコンディショナーからの電力は「屋内分電盤」に送られ、家庭内へ送られていく。なお、産業用用途は大電力のため、三相三線式200 Vまたは400 V級の交流が標準である。パワーコンディショナーの交流定格出力は住宅用では3 kW - 5.9 kWが主流で、産業用は9.9 kW - 2,500 kWと幅広い。2,000 kW以上のパワーコンディショナーは特別高圧メガソーラーに用いられる。

電力会社と電力の売買を行う系統連系型配線接続されている場合、パワーコンディショナーから出力された電力は家庭内に供給され、家庭内で消費しきれない余剰分が売電電力量計を通じて電力系統に送られて「売電」される。また、停電時でも日射があれば、パワーコンディショナーの自立運転機能で、完全な停電状態を回避することができる。

なお、停電時は規則により、自家発電装置から系統に電力を流せないので、自立運転機能は単相100Vで、家庭内コンセントとは独立したコンセントから電力を供給する。なお、自立運転機能を持つパワーコンディショナーは住宅用の9.9kW以下のモデルがほとんどである。

変換効率 編集

変換効率とは、太陽電池モジュールで発電された電力(kW)を、パワーコンディショナーが交流の系統電力(kW)に変換する際の変換効率のことである(出力電力/入力電力の比率)。単純に言えば、同じ太陽電池モジュールなら、パワーコンディショナーの変換効率が高いほど、家庭内で使える電力量(kWh)や売電電力量(kWh)は増える。

注意を要するのは、電力(kW)と電力量(kWh)の違いである。前者は瞬時値であり、後者は前者を時間的に積分したものということである。例えば、1kWの電気ストーブを1時間使用すると1kWhになるが、30分使用した場合は0.5kWhである。電気料金はkWhあたりの単価で規定される。
一般にパワーコンディショナーの変換効率は、定格出力時(最大出力時:kW)の変換効率がカタログに記載されている。しかし、実際の変換効率は、入力電力によって変動する(後述の「#太陽光発電の特性」を参照)。内部の回路方式にもよるが、最大出力時に最大効率となり、出力低下と供に変換効率が低下する機種が多いが、低入力電力時にどこまで変換効率が下がるかはカタログには記載されない。また、中間出力が最大効率となるパワーコンディショナーも存在する。従って、カタログの変換効率のみで発電量の大小を判断することは、少々乱暴な考えだろう。実際、入力電力の低い状態でも、変換効率が落ちない機種を販売しているメーカー(パナソニックTMEICなど)もあり、年間を通じての発電量はそのようなモデルの方が高い。

太陽光発電の特性 編集

太陽電池モジュールの出力特性を理解することは、トータル発電量を知る上で重要である。太陽光発電では、日射量によって発電量が変化することを理解してもらいたい。

  • 天候による日射量の変化
    • 太陽電池モジュールの出力電力(W)は、日射量1000W/平方メートル、エアマス1.5、気温25℃での瞬時電力を表している。日射量1000W/平方メートルとは、日本に於ける快晴時の日射量である。快晴とはひとつない青空の状態である。エアマス1.5とは、正午に太陽光が太陽電池モジュールへに垂直に入射する条件である。気温25℃は標準状態で、結晶系太陽電池の場合、気温が50℃上昇すると、出力が20%程度低下するという特性がある。瞬時出力というのは、太陽電池モジュールが日射を受けると、電力に変換できるのは、精々25%程度で、殆どが熱になり、太陽電池の表面温度を上げてしまうためである。従い、実際の太陽電池モジュールが使用される環境では、ほんの一瞬(数十秒)しか公称出力(カタログ上の出力)は得られない。実際に出力として取り出せる電力は、天候晴れ曇り)や気温によって大きく左右される。例えば、快晴時の日射量を100%とした時、晴れの日で80%程度、曇りの日は30%程度、雨の日は10%程度となり、発電電力もこれに準ずる。(天候は日射量ではなく全雲量によって定義されているため、快晴以外の定義は難しい)。
  • 一日の日射角の変化
    • トラッキングシステム(太陽追尾式)を除き、太陽電池モジュールは定置に定角度、定方向で設置される。当然ながら太陽光の入射角は時間と伴に変化する。例えば、真南に設置された太陽電池モジュールであれば、その発電量は天候の影響を除けば、サインカーブになる。厳密には、空気による拡散の影響(エアマス)によって、入射角の低い位置ほど発電量は減る。
  • 年間の日射角の変化
    • これは太陽電池モジュールの設置角度や設置場所の緯度によっても異なるが、一般的には年間を通じての発電量(kWh)が最も多くなる設置角度(東京であれば30度付近)で固定する。住宅屋根は基本、瓦に沿わせる。このような一般的な設置では、太陽光の入射角が季節によって変化する。毎月の発電量も変化する。

選択の基準 編集

年間を通じての太陽光発電による発電量は、地域により若干の差があるが、日本では南面30度設置にて約1100kWh/kWである。即ち、公称容量1kWの太陽電池モジュールを設置した場合、年間を通じて得られる電力量は1100kWhになる。1年を365日とすれば、1日僅か3kWh程度しか発電しないという理屈になる。1日の平均日射時間が12時間と考えた場合、太陽電池モジュールは平均して僅か25%しか出力していない計算になる。

誤解が多いのは、例えば、210W(0.21kW)の電池モジュール20枚、計4.2kWを変換効率が94.5%のパワーコンディショナーにつないだ場合、4.2kWX94.5%=3.969kWとなる。と単純に考えてしまうことだ。それは一瞬の話で、太陽電池モジュールは、いつも4.2kW出力しているのではない。大半は半分以下の出力しかしていない。だから、最新のパワーコンディショナーは最大出力時だけでなく、低出力時の変換効率も重要視している。

パワーコンディショナーを選ぶときは、カタログの最大変換効率ではなく、低入力電力時(低出力時)の変換効率にも着目したい。設置工事事業者が提示してくる発電量シミュレーションも、最大値で計算されていないか注意して欲しい。年間を通じての平均変換効率で計算するのが、正しい計算の仕方である。

余談ではあるが、太陽電池モジュールからの入力は、パワーコンディショナーの容量で制限されてしまう。例えば、パワーコンディショナーの容量が4.0kWの場合、太陽電池モジュールが4.2kWのものを設置しても、4.0kW以上は発電できない。

太陽光発電システムでより多くの電力を得るためには、光エネルギーを直流の電気エネルギーに変換(発電)する太陽電池セルの効率向上と、発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーの効率・容量すべての向上が必要なのである。

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集