ヒト型爬虫類(ヒトがたはちゅうるい、レプティリアン・ヒューマノイド、Reptilian humanoids)[1]とは、人間と似た形態の爬虫類(トカゲ)に似た生物という想像上の概念である。現代では、ファンタジー作品において描かれることがある。また、実在を信じ、爬虫類型の異星人地球におり、人間に擬態し社会に紛れている、陰謀を企てている等と考える人もいる。

ヒト型爬虫類の想像図。

名称 編集

レプティリアン・ヒューマノイド、リザードマン(Lizardmen、Lizard Peorple、Lizardfolk)[2]、サウリアン、ドラコニアン[3][4]。リザードマン(Lizardmen、Lizard Peorple、Lizardfolk)[5]、サウリアン、ドラコニアン[3][6][7]スネークピープル(Snakepeople)、レプトイド(Reptoids)、ディノサウロイド(Dinosauroids)、チタウリ(Chitauri)、などとも呼称されている。創作物に登場する場合にはその中で独自の呼び名を与えられることも多い。和名に一般的なものはないが、「レプティリアン」(reptilian)は、「爬虫類」を意味する「レプタイル」(reptile)の形容詞形であり、本項目では「爬虫類に属する」という意味[8]で解釈する。また、「ヒューマノイド」(humanoid)は、名詞で「人間の形をしたもの」という意味[8]がある。以上より本項目では、英名を「人間のような姿をしているが、爬虫類的要素をもつ正体不明の生物」と解釈し、「ヒト(人間の学名)型の爬虫類」と呼ぶことにする。

なお冒頭で挙げたヒト型爬虫類の別名は、文献によって次のような訳語が与えられることがある。

  • Reptilian:レプティリアン[9]、爬虫類型ヒューマノイド[9]、人間類似爬虫類[9]、爬虫類人[10]
  • Reptoid:レプトイド:ハチュウモドキ[11]("-oid"には「…もどき」という意味がある[8])、知的爬虫類人
  • Dinosauroid:ディノサウロイド[12]、ダイノサウロイド[13]、恐竜人[13]、恐竜人間[14]
  • Lizardfolk:リザードフォーク[15]:トカゲ人[15]("lizard"は「トカゲ、爬虫類」、"folk"「人々、種族」を意味する[8]
  • Lizardman:リザードマン[16]、トカゲ人間[16]、爬虫人[16]、トカゲ男[17]
  • Chitauri:チタウリ[18]、蛇悪の子たち[18]ズールー語であるとされる)、爬蟲類的人間[19]

神話における蛇のシンボリズム 編集

蛇という象徴英語版は、最も古く、広く普及している神話の象徴のひとつであり、様々な文化で、蛇と人間の要素が混じった神話的存在がみられる。(なお、爬虫類だけでなく、動物や鳥類、魚類と人間の要素が混じった神話的存在の伝説・伝承も存在する。)

現代の爬虫類人類のモチーフとなっている爬虫類は、おおむね蛇ではなくトカゲである。

ヨーロッパ 編集

アテナイの初代王(King of Ahens)であるケクロプスは、半人半蛇とされる。例として、これはペルガモン大祭壇Altar)にあるフリーズFrieze)と呼ばれる装飾壁に描かれている。ギガース(巨人族)などの描写もみられる、これらのペルガモンの彫刻のひとつに、両脚の間に巨大な蛇がいるクリュテロス(Klyteros)という巨人がみられる。北風をつかさどるギリシャ神であるアネモイも、ギリシャの地理学者であるパウサニアスによって両脚の間に蛇がいる、翼をもった男として描かれている[20]。古代ギリシャの一部で崇拝の対象であったグリュコーンGlycon)は、顔が人間である、蛇の神である。

インド 編集

インドの経典や伝説に登場するナーガは、蛇の精霊あるいは蛇神のことである。上半身を人間、下半身を蛇として描かれることもあるが、単に蛇の姿で描かれることの方が一般的である。

現代におけるエピソード 編集

未確認動物学 編集

未確認動物学として、アメリカ合衆国サウスカロライナ州におけるスケープオア沼のトカゲ男(Lizard Man of Scape Ore Swamp)の目撃例は、長年の間流布し続けた。

未確認飛行物体と宇宙人 編集

現代において、ヒト型爬虫類に遭遇したことがあると主張する人々がいる。このような場合、事件の多くが未確認飛行物体(UFO)がその一端を担っており、エイリアンによる誘拐事件alien abduction)の証言には、ときおりヒト型爬虫類との接触が言及される[21]。 いわゆるグレイについても、実は爬虫類であるだとか、「レプトイド(爬虫類的生物)」に分類されるはずだと信じる者もいれば、グレイはそれらとは全く別種の生物だとする者もいる。

最も古い報告のひとつに、アメリカネブラスカ州アシュランドAshland)の警察官であるハーバート・シェルマーの誘拐事件(Schirmer Abduction)がある。1967年12月3日、アシュランド近郊に出現したUFOによって連れ去られたとシェルマーは主張している。そこで出会ったヒト型の生物は、身長が140~150cmほどで、ぴっちりとした銀色の服と靴と手袋を身に着けていたという。頭は薄く、人間の頭よりも長く、顔の皮膚は銀白色で、平らの鼻、切れ長の目をもち、口は切れ込み状で、会話しているときもほとんど動かなかったという。彼らは外に出るときだけ、翼のある蛇の紋章を左胸につけていたという。彼らは別の銀河から来て、すでに地球に基地を築いているとシェルマーは主張している[22]

reptoids.com 編集

ジョン・ロードは、「reptoids.com」[23]というウェブサイトを設置し、ヒト型爬虫類の目撃例や遭遇例を収集・検討し、発表した。彼は、テレビやラジオ番組にも出演し、ヒト型爬虫類について自らの見解についてインタビューに答えている。

その主張によると、ヒト型爬虫類のうちの大多数は、恐竜の子孫であり、進化論における生物学的副産物であるという。ロードは、科学的試みの一例としての1980年代における上記のデイル・ラッセルの思考実験を引用し、自説の「進化したレプトイド」理論と相互に関連するものとした。今までは、人々の注意が、地底ではなく、地球からはるか遠い宇宙にそらされていたので、地底に潜むヒト型爬虫類や失われた古代文明というテーマが未だに謎のままなのだとロードは述べている。

訳注:ここでのジョン・ロードは、イギリスのミュージシャンであるジョン・ロードやイギリスのミステリー作家のジョン・ロードとは別人である。

科学的見地 編集

オタワにあるカナダ国立自然博物館Canadian Museum of Nature)の脊椎動物化石に関する学芸員である古生物学者デイル・ラッセルは、6500万年前に恐竜が絶滅していなければ、トロオドンのような二足歩行をする肉食恐竜(獣脚類)は、ヒトによく似た形質をもつ知的な生物に進化したかもしれないと推測した。

これに対し、グレゴリー・S・ポールGregory S. Paul)とトーマス・R・ホルツ・ジュニアThomas R. Holtz Jr.)は、ヒト型ではなく獣脚類の姿を残した外見になるだろうと主張した。

ディノサウロイドを再解釈し、小枝を用いて描かれた「ディノサウロイド洞窟アート」なるものをつくりあげたトルコ人芸術家のネモ・ラムジェットのような者もいる。洞窟アートには、トロオドンのほか、知的な恐竜や翼竜が描かれている[24]

フィクション 編集

ヒト型爬虫類はフィクションにさまざまな形で登場し、短編長編小説、マンガ、テレビ、映画、ゲームなどで人気の題材のひとつであり、特にファンタジーSFにおいてよく扱われるテーマとなっている。多くの人々が一般的に抱く、爬虫類への嫌悪感のため、このようなキャラクターは、悪役として登場することが多い。リザードマンディノサウロイドも参照のこと。クトゥルフ神話ではヴァルーシアの蛇人間がワン種族としてジャンル化している。

ある識者は以下のように述べている。

SF作家や映画監督は、キャラクターが私たち読者や視聴者にどのような影響を与えるかよく理解しているので、劇的な効果が十分得られるようキャラクターをつくりあげることができるのです。可愛らしい子供やペットを連想させるようなものは、私たちの目には好感をもってうつりますが、トカゲ…そう、「ルックス」に問題のある生き物たちには、ちっとも好感が持てませんね。多くの動物は、大きな目や目のような模様によって、恐怖感や逃避反応を引き起こされがちです。これの納得のいく説明のひとつに、大きくてギョロっとした目は多くの場合、肉食動物がもっているから、ということが挙げられます。大きな目や目のような模様は、人間にも恐怖を与えるでしょうし、この恐怖感のおかげで、「ギョロ目のモンスター」に対して嫌悪感を抱いてしまうのでしょう。[25]

「ネバネバ」が恐怖感の原因であるという説明もある。アルバータ大学英語学科名誉教授のR・ロードン・ウィルソンは、『ハイドラの尾、反感のイメージ』の中で以下のようなテーマを研究している。

グロテスクな描写を強調するジャンルのおかげで、ホラー映画は、じとっとして、どろどろした場面が多くなり……映画「エイリアン」における異形の怪物が信じられない様子で口から得体の知れない液体をしたたらせ……。このようなネバネバによって連想される、より根本的なものは、エイリアンがまだ発達途上の段階にあるということである。これは、下等な生物から人間へと変化していく進化の法則にあらがう、「リンネの悪夢」というものである。[26]

ただし、実際には「ネバネバ、ジトジト」は両生類の特徴であり、ほとんどの爬虫類の表皮は、むしろ哺乳類より乾燥しており、爬虫類と両生類の特徴の混同が見られる。

日本では、1993年から1994年に、NHK教育テレビのアニメ『恐竜惑星』で、バーチャルの大陸で進化した恐竜人類が描かれているが、恐竜人類にはヒロインと共闘する者もおり、一方的な悪役としては描かれていない。2013年に連載が開始したなろう系ライトノベルの『転生したらスライムだった件』や『異世界食堂』でも、リザードマンは一つの種族として、特に嫌悪感もなく描かれており、悪役ではない。

陰謀論 編集

ヒト型爬虫類に関する陰謀論は多岐にわたる。デイビッド・アイクに代表される陰謀論者は、ヒト型爬虫類は姿を消したり変身したりすることができるとも主張しており、疑似科学オカルトの愛好家に好まれているが、科学的に肯定する証拠のない仮説である。

デイビット・アイク 編集

作家のデイビッド・アイクは、スピリチュアリズムに着想を得て、ヒト型爬虫類[27]りゅう座にあるアルファ星系からやってきた身長2mで血を好む半霊的存在であると主張する。そして、ヒト型爬虫類は人間社会を巧妙に操作する世界的陰謀プロブレム・リアクション・ソリューションの黒幕的存在であるとした。

彼は、イギリスの王族や多くのアメリカ大統領を含む世界の指導者の大半はヒト型爬虫類が正体であると主張しており、アメリカ同時多発テロ事件以降のアメリカの外交政策も人間たちを奴隷化しようと目論むヒト型爬虫類の仕業で、ブッシュ大統領もその手先であるという。

アイクは、ゼカリア・シッチンの小説『謎の第12惑星』(原題 "12th Planet")で描かれたアヌンナキと自説のヒト型爬虫類との関係を指摘している[28]。『謎の第12惑星』によって、ヒト型爬虫類をアヌンアキと同一視して言及する他の陰謀論者が出てくるにいたった[29][リンク切れ]。しかし、著者のシッチン自身は、アヌンナキを爬虫類ではない純粋なヒト型存在として描いている。

クレド・ムトワ 編集

1990年代南アフリカシャーマンであるクレド・ムトワは、自身の遭遇したアブダクション体験から、ズールー族の伝説に現れる「奇妙な連中」を異星からの来訪者と解釈した[30]。その中の一種であるヒト型爬虫類チタウリ(Chitauri)は人に害を与える危険な種としており、宗教的狂信者に好んで接触し、宗教を通じて人類を分裂させ地球征服を目論んでいると述べた[30]

ムトワはデイビット・アイクと交流があり、引用やコラボレーションが多数行われている。アイクの製作したビデオ作品『爬虫類問題』のなかでムトワは、レプティリアンとチタウリを同一のものとし、チタウリが数千年にわたり人類を支配してきた姿を変えるヒト型爬虫類であると主張した[30]

脚注 編集

  1. ^ Joyce, Judith (2011). The Weiser field guide to the paranormal abductions, apparitions, ESP, synchronicity, and more unexplained phenomena from other realms. San Francisco, CA: Weiser Books. pp. 80–81. ISBN 9781609252984. https://books.google.com/books?id=9aYqjnjDzBQC 2014年8月3日閲覧。 
  2. ^ How to Spot the Reptilians Running the U.S. Government”. TheAtlantic.com (2013年10月31日). 2018年5月28日閲覧。
  3. ^ a b Marty Crump; Danté Bruce Fenolio (16 November 2015). Eye of Newt and Toe of Frog, Adder's Fork and Lizard's Leg: The Lore and Mythology of Amphibians and Reptiles. University of Chicago Press. p. 56. ISBN 978-0-226-11600-6. https://books.google.com/books?id=ENYpCwAAQBAJ&pg=PA56 
  4. ^ Frel, Jan (2010年9月1日). “Inside the Great Reptilian Conspiracy: From Queen Elizabeth to Barack Obama -- They Live!”. Alternet. 2010年9月1日閲覧。
  5. ^ How to Spot the Reptilians Running the U.S. Government”. TheAtlantic.com (2013年10月31日). 2018年5月28日閲覧。
  6. ^ Alfred Lambremont Webre (17 November 2015). The Omniverse: Transdimensional Intelligence, Time Travel, the Afterlife, and the Secret Colony on Mars. Simon and Schuster. p. 53. ISBN 978-1-59143-216-6. https://books.google.com/books?id=4FgoDwAAQBAJ&pg=PT53 
  7. ^ Leo Lyon Zagami (24 April 2016). Confessions of an Illuminati, VOLUME II: The Time of Revelation and Tribulation Leading Up to 2020. CCC Publishing. p. 131. ISBN 978-1-888729-62-7. https://books.google.com/books?id=1SbwCwAAQBAJ&pg=PA131 
  8. ^ a b c d 小西友七・南出康世『ジーニアス英和大辞典』大修館書店、2001-2002
  9. ^ a b c 前田進. “日本と地球の命運「チベットでのテロ暴動事件の真相」”. 2008年10月18日閲覧。
  10. ^ デイビッド・アイク『大いなる秘密「爬虫類人」(レプティリアン)〈上〉超長期的人類支配計画アジェンダ全暴露!!』太田龍訳、三交社など
  11. ^ 川崎悟司. “古世界の住人未来の動物編「レプトイド(ハチュウモドキ)」”. 2008年10月18日閲覧。
  12. ^ 群馬県立自然博物館「収集情報-ディノサウロイド」”. 2008年10月18日閲覧。
  13. ^ a b UMAファン「恐竜人(ダイノサウロイド)」”. 2008年10月18日閲覧。
  14. ^ イーコラム_地球と生物の不思議「恐竜人間とは?」”. 2008年10月18日閲覧。
  15. ^ a b ダンジョンズ&ドラゴンズ公式ホームページ「リザードフォーク」”. 2008年10月18日閲覧。
  16. ^ a b c ファンタジィ事典「リザードマン【Lizardman】」”. 2008年10月18日閲覧。
  17. ^ 超摩訶不思議Xファイル「FILE079:トカゲ男」”. 2008年10月18日閲覧。
  18. ^ a b デイビット・アイク; 太田龍. “デーヴィッド・アイク公式日本語情報ブログ「今も続く・・・吸血鬼の呪文・・・(第二部)」”. 2008年10月18日閲覧。
  19. ^ 太田龍「南アフリカ、ズールー族長老、クレド・ムトヴァのメッセージ」宇宙戰略放送(一、二二八號)『週刊日本新聞
  20. ^ エンサイクロペディア・ミシカ「風の神々」” (英語). 2007年7月11日閲覧。
  21. ^ ザ・シャドウランド「リザードマン」” (英語). 2007年7月11日閲覧。
  22. ^ UFOの証言「ハーバードシェルマー警察官誘拐事件」” (英語). 2007年7月11日閲覧。
  23. ^ レプトイド.com” (英語). 2007年7月11日閲覧。
  24. ^ ラムジェットの公式サイト” (英語). 2007年7月11日閲覧。
  25. ^ Albert A. Harrison, After Contact: The Human Response to Extraterrestrial Life (Basic Books, 2002), p.216
  26. ^ R. Rawdon Wilson, The Hydra's Tale (University of Alberta Press, 2002), p227
  27. ^ 訳注:デイビット・アイクの著書の日本語版では「reptilian」という単語は、「爬虫類人」と訳されているが、ここでは「ヒト型爬虫類」で統一する。
  28. ^ David Icke (1999). The Biggest Secret. David Icke Books 
  29. ^ truthism.com”. 2008年2月15日閲覧。
  30. ^ a b c デイヴィッド・チデスター 荒木美智雄(編) 「ズールーのシャーマン、クレド・ムツワ」 『世界の民衆宗教』 ミネルヴァ書房 <人文・社会科学叢書> 2004年、ISBN 4623037797 pp.288-290.

関連文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集