フェブラリーステークス

日本中央競馬会が東京競馬場で施行する中央競馬の重賞競走

フェブラリーステークスは、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬重賞競走GI)である。

フェブラリーステークス
February Stakes
第41回フェブラリーステークス(2024年2月18日) (優勝馬:ペプチドナイル)
開催国 日本の旗日本
主催者 日本中央競馬会
競馬場 東京競馬場
創設 1984年2月18日
2024年の情報
距離 ダート1600m
格付け GI
賞金 1着賞金1億2000万円
出走条件 サラ系4歳以上(国際)(指定)
負担重量 定量(58kg、牝馬2kg減)
出典 [1][2]
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競走名の「フェブラリー(February)」は、2月を意味する英語[3]。この名が示す通り毎年2月、具体的には2月の第3もしくは第4日曜日に開催される[注 1]。JRA主催でGIに格付けされる競走としては毎年最初に行われる競走である。

正賞は日本馬主協会連合会会長賞、地方競馬全国協会理事長賞、全国公営競馬主催者協議会会長賞、日本地方競馬馬主振興協会会長賞、ブリーダーズカップ・チャレンジ[1][2]

概要 編集

 
第35回優勝馬ノンコノユメ
 
第37回優勝馬モズアスコット
 
第39回優勝馬カフェファラオ
 
第40回優勝馬レモンポップ

JRAが施行するダート重賞競走では、最も古い歴史を持つ競走である[4]

1984年に前身となる「フェブラリーハンデキャップ」が創設[4]、東京競馬場のダート1600mで施行され、当初はGIIIの格付けだった[4]。1994年にGIIへ昇格するとともに負担重量も別定に変更、名称も「フェブラリーステークス」に改称された[4]

その後、中央競馬と地方競馬の交流競走が拡大されるなか、1997年には中央競馬のダート重賞競走として初めてGIに格付け[4]され、負担重量も定量に変更、国内の上半期のダート最強馬決定戦に位置付けられた[4][注 2]。2007年からは国際競走に指定され、外国馬の出走も可能になった[6]

2016年からブリーダーズカップ・チャレンジの対象競走に指定され、優勝馬には当該年のブリーダーズカップ・クラシックへの優先出走権と出走登録料・輸送費用の一部負担の特権が付与される[7]

本競走で上位を争った馬からは、アラブ首長国連邦ドバイで行われる国際招待競走ドバイワールドカップミーティング」へ遠征するものも出るようになった[4]。2011年の優勝馬トランセンドは、ドバイワールドカップで優勝したヴィクトワールピサと接戦の末、2着に入っている[4]。また、1999年にはメイセイオペラ(岩手)が地方競馬所属馬として初めて優勝した[8]

競走条件 編集

以下の内容は、2024年現在[1][2]のもの。

出走資格:サラ系4歳以上(出走可能頭数:最大16頭)

  • JRA所属馬
  • 地方競馬所属馬(収得賞金が1601万円以上[9]、かつJRAが別に定める出走馬選定基準により選定された馬[10]
  • 外国調教馬(優先出走)

負担重量:定量(58kg、牝馬2kg減)

  • 第1回から第10回まではハンデキャップ、第11回から第13回までは別定[11]

出馬投票を行った馬のうち、優先出走権(次節参照)のある馬から優先して割り当て、その他の馬は「通算収得賞金」+「過去1年間の収得賞金」+「過去2年間のGI(JpnI)競走の収得賞金」の総計が多い順に割り当てる。

優先出走権 編集

外国馬、およびレーティング順位の上位5頭(2012年より。牡馬・セン馬は110ポンド、牝馬は106ポンド以上であることが条件)[1]は優先出走できる。

2014年より以下の競走における1着馬に、優先出走権が付与される[12]

優先出走権付与競走
競走名 格付 施行競馬場 施行距離
東海ステークス GII  中京競馬場 ダート1800m
根岸ステークス GIII  東京競馬場 ダート1400m

賞金 編集

2024年の1着賞金は1億2000万円で、以下2着4800万円、3着3000万円、4着1800万円、5着1200万円[1][2]

コース 編集

東京競馬場のダートコース、1600mを使用。

スタート地点は芝コース上にあり、スタート直後は芝コースを走行、第2コーナー付近からダートコースに入る[13]。バックストレッチとホームストレッチに2つの坂が設けられており、このうち長さが501mあるスタンド前のホームストレッチには高低差2.4mの上り坂がある[13]

歴史 編集

  • 1984年 - 5歳以上の馬によるハンデキャップの重賞競走「フェブラリーハンデキャップ」を新設。東京競馬場のダート1600mで施行、GIII[注 3]に格付け[4]
  • 1989年 - 混合競走に指定[4]
  • 1994年
    • GII[注 3]に昇格[4]
    • 名称を「フェブラリーステークス」に変更[4]
  • 1995年 - 指定交流競走に指定され、地方競馬所属馬が出走可能となる。
  • 1997年
    • GI[注 3]に昇格[4]
    • ダート競走格付け委員会により、GI[注 4]に格付け(適用は1998年から)。
  • 2001年 - 馬齢表示を国際基準へ変更したことに伴い、出走資格を「4歳以上」に変更。
  • 2007年
    • 国際競走に指定され、外国調教馬は8頭まで出走可能となる[6]
    • G1(国際GI)に格付け。
    • 地方競馬所属馬の出走枠が5頭から4頭に縮小。
  • 2009年 - この年より地方競馬所属馬の出走資格はJRAが別に定める出走馬選定基準により選定された競走馬のみとなる。
  • 2012年 - 出走馬選定方法が変わり、レーティング上位5頭に優先出走を認める。
  • 2014年 - トライアル制を確立し、指定された競走の1着馬に優先出走を認める。
  • 2016年 - 「ブリーダーズカップ・チャレンジ」指定競走となる。
  • 2018年 - 関東馬が20年ぶりに勝利。(2000年から18年連続で関西馬が勝利していた。)
  • 2019年 - 藤田菜七子がJRA所属の女性騎手として初めてGIレースに騎乗(騎乗馬はコパノキッキング、5着)[14]
  • 2021年 - 新型コロナウイルス感染拡大防止のため「無観客競馬」として実施[15]
  • 2023年 - 本競走史上初めて海外調教馬が参戦した(カナダシャールズスパイト、9着)。

歴代優勝馬 編集

距離はすべてダートコース。

優勝馬の馬齢は、2000年以前も現行表記に揃えている。

競走名は第1回から第10回までが「フェブラリーハンデキャップ」[4]、第11回以降は「フェブラリーステークス」。

回数 施行日 競馬場 距離 優勝馬 性齢 所属 タイム 優勝騎手 管理調教師 馬主 1着本賞金
第1回 1984年2月18日 東京 1600m ロバリアアモン 牡5 JRA 1:40.1 吉永正人 松山吉三郎 菅浦一 2700万円
第2回 1985年2月16日 東京 1600m アンドレアモン 牡6 JRA 1:36.9 中島啓之 松山康久 (株)アモン
第3回 1986年2月15日 東京 1600m ハツノアモイ 牡5 JRA 1:36.7 大塚栄三郎 仲住芳雄 仲川初太郎 2800万円
第4回 1987年2月21日 東京 1600m リキサンパワー 牡6 JRA 1:36.5 柴田政人 高松邦男 岩井三郎 3000万円
第5回 1988年2月20日 東京 1600m ローマンプリンス 牡7 JRA 1:37.7 増沢末夫 佐藤征助 (有)ロング商事 3200万円
第6回 1989年2月18日 東京 1600m ベルベットグローブ 牡6 JRA 1:37.2 郷原洋行 大久保房松 栗林英雄 3400万円
第7回 1990年2月17日 東京 1600m カリブソング 牡4 JRA 1:36.7 柴田政人 加藤修甫 (株)荻伏牧場レーシング・クラブ 3700万円
第8回 1991年2月16日 東京 1600m ナリタハヤブサ 牡4 JRA 1:34.9 横山典弘 中尾謙太郎 山路秀則 4000万円
第9回 1992年2月22日 東京 1600m ラシアンゴールド 牡4 JRA 1:35.4 蛯名正義 大久保洋吉 大原詔宏 4200万円
第10回 1993年2月20日 東京 1600m メイショウホムラ 牡5 JRA 1:35.7 柴田政人 高橋成忠 松本好雄
第11回 1994年2月19日 東京 1600m チアズアトム 牡5 JRA 1:37.8 本田優 星川薫 北村キヨ子 6000万円
第12回 1995年2月18日 東京 1600m ライブリマウント 牡4 JRA 1:36.4 石橋守 柴田不二男 加藤哲郎 6400万円
第13回 1996年2月17日 東京 1600m ホクトベガ 牝6 JRA 1:36.5 横山典弘 中野隆良 金森森商事(株)
第14回 1997年2月16日 東京 1600m シンコウウインディ 牡4 JRA 1:36.0 岡部幸雄 田中清隆 安田修 8000万円
第15回 1998年2月1日 東京 1600m グルメフロンティア 牡6 JRA 1:37.5 岡部幸雄 田中清隆 石井政義 9400万円
第16回 1999年1月31日 東京 1600m メイセイオペラ 牡5 岩手 1:36.3 菅原勲 佐々木修一 (有)明正商事
第17回 2000年2月20日 東京 1600m ウイングアロー 牡5 JRA 1:35.6 O.ペリエ 工藤嘉見 池田實
第18回 2001年2月18日 東京 1600m ノボトゥルー 牡5 JRA 1:35.6 O.ペリエ 森秀行 (有)池ばた
第19回 2002年2月17日 東京 1600m アグネスデジタル 牡5 JRA 1:35.1 四位洋文 白井寿昭 渡辺孝男
第20回 2003年2月23日 中山 1800m ゴールドアリュール 牡4 JRA 1:50.9 武豊 池江泰郎 (有)社台レースホース
第21回 2004年2月22日 東京 1600m アドマイヤドン 牡5 JRA 1:36.8 安藤勝己 松田博資 近藤利一
第22回 2005年2月20日 東京 1600m メイショウボーラー 牡4 JRA 1:34.7 福永祐一 白井寿昭 松本好雄
第23回 2006年2月19日 東京 1600m カネヒキリ 牡4 JRA 1:34.9 武豊 角居勝彦 金子真人ホールディングス(株)
第24回 2007年2月18日 東京 1600m サンライズバッカス 牡5 JRA 1:34.8 安藤勝己 音無秀孝 松岡隆雄
第25回 2008年2月24日 東京 1600m ヴァーミリアン 牡6 JRA 1:35.3 武豊 石坂正 (有)サンデーレーシング
第26回 2009年2月22日 東京 1600m サクセスブロッケン 牡4 JRA 1:34.6 内田博幸 藤原英昭 高嶋哲
第27回 2010年2月21日 東京 1600m エスポワールシチー 牡5 JRA 1:34.9 佐藤哲三 安達昭夫 (株)友駿ホースクラブ
第28回 2011年2月20日 東京 1600m トランセンド 牡5 JRA 1:36.4 藤田伸二 安田隆行 前田幸治
第29回 2012年2月19日 東京 1600m テスタマッタ 牡6 JRA 1:35.4 岩田康誠 村山明 吉田和美
第30回 2013年2月17日 東京 1600m グレープブランデー 牡5 JRA 1:35.1 浜中俊 安田隆行 (有)社台レースホース
第31回 2014年2月23日 東京 1600m コパノリッキー 牡4 JRA 1:36.0 田辺裕信 村山明 小林祥晃
第32回 2015年2月22日 東京 1600m コパノリッキー 牡5 JRA 1:36.3 武豊 村山明 小林祥晃
第33回 2016年2月21日 東京 1600m モーニン 牡4 JRA 1:34.0 M.デムーロ 石坂正 馬場幸夫 9700万円
第34回 2017年2月19日 東京 1600m ゴールドドリーム 牡4 JRA 1:35.1 M.デムーロ 平田修 吉田勝己
第35回 2018年2月18日 東京 1600m ノンコノユメ 騸6 JRA 1:36.0 内田博幸 加藤征弘 山田和正 1億円
第36回 2019年2月17日 東京 1600m インティ 牡5 JRA 1:35.6 武豊 野中賢二 武田茂男
第37回 2020年2月23日 東京 1600m モズアスコット 牡6 JRA 1:35.2 C.ルメール 矢作芳人 (株)キャピタル・システム
第38回 2021年2月21日 東京 1600m カフェファラオ 牡4 JRA 1:34.4 C.ルメール 堀宣行 西川光一
第39回 2022年2月20日 東京 1600m カフェファラオ 牡5 JRA 1:33.8 福永祐一 堀宣行 西川光一 1億2000万円
第40回 2023年2月19日 東京 1600m レモンポップ 牡5 JRA 1:35.7 坂井瑠星 田中博康 ゴドルフィン
第41回 2024年2月18日 東京 1600m ペプチドナイル 牡6 JRA 1:35.7 藤岡佑介 武英智 沼川一彦

フェブラリーステークスの記録 編集

  • レースレコード - 1:33.8(第39回優勝馬カフェファラオ)[16]
    • 優勝タイム最遅記録 - 1:40.1(第1回優勝馬 ロバリアアモン)[17]
  • 最年長優勝馬 - 7歳(第5回優勝馬ローマンプリンス)
  • 最多優勝馬 - 2勝(第31回・第32回優勝馬コパノリッキー、第38回・第39回優勝馬カフェファラオ)
  • 最多優勝騎手 - 5勝
  • 最多優勝調教師 - 3勝
  • 最多勝利種牡馬 - 4勝
    • ゴールドアリュール(第27回・第31回・第32回・第34回)
  • 親子制覇
    • ゴールドアリュール - エスポワールシチー・コパノリッキー・ゴールドドリーム

外国調教馬の成績 編集

脚注・出典 編集

参考文献 編集

  • 「フェブラリーステークス」『中央競馬全重賞成績集【GI編】』日本中央競馬会、2006年、1397-1433頁。 

注釈 編集

  1. ^ 1998年と1999年のみ開催時期が前倒しされ例外となっている。特に1999年は1月31日に開催され、2月以外に開催された唯一の事例となっている。
  2. ^ 2024年川崎記念が春季に移設することに伴い、上半期に古馬中距離路線の有力馬が集まる競走へは同競走と帝王賞が位置づけられた。フェブラリーステークスは古馬短距離・マイル路線における上半期の有力馬が集まる競走の一つとして位置づけられた。[5]
  3. ^ a b c 当時の格付表記は、JRAの独自グレード。
  4. ^ ダートグレード競走の格付表記は、国内限定の独自グレード扱い。

出典 編集

  1. ^ a b c d e 重賞競走一覧(レース別・関東)” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6 (2024年). 2024年1月11日閲覧。
  2. ^ a b c d 令和6年第1回東京競馬番組” (PDF). 日本中央競馬会. 2024年1月11日閲覧。
  3. ^ 2023年度第1回東京競馬特別レース名解説” (PDF). 日本中央競馬会. p. 5. 2022年1月28日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 歴史・コース:フェブラリーステークス 今週の注目レース”. 日本中央競馬会. 2023年2月11日閲覧。
  5. ^ 競走体系概略図”. 日本中央競馬会. 2023年10月8日閲覧。
  6. ^ a b 第1回 東京競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 415-416 (2007年). 2021年2月24日閲覧。(索引番号:03095)
  7. ^ ブリーダーズカップチャレンジ競走の追加指定について日本中央競馬会、2016年6月27日閲覧
  8. ^ 第27回フェブラリーステークス特集(メイセイオペラ 地方所属馬初の中央GI制覇)”. JRA-VAN. 2016年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月24日閲覧。
  9. ^ GI競走およびそのステップ競走に出走する地方競馬所属馬の決定方法”. 日本中央競馬会 (2024年). 2024年1月11日閲覧。
  10. ^ [地](地方競馬所属の馬)が出走できるGI競走等とそのステップ競走について”. 日本中央競馬会 (2024年). 2024年1月11日閲覧。
  11. ^ 中央競馬全重賞成績集【GI編】
  12. ^ 平成26年度競馬番組等について” (PDF). 日本中央競馬会. 2014年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月24日閲覧。
  13. ^ a b 東京競馬場(コース紹介)”. 日本中央競馬会. 2021年2月24日閲覧。
  14. ^ Number Web、2019年2月18日付、沸騰! 日本サラブ列島「藤田菜七子に沸いたフェブラリーS。勝った武豊が「ぼくの初GIは6着」。」、1of42of43of44of4、2019年3月24日閲覧。
  15. ^ 2月13日(土曜)からの競馬場・ウインズ等の営業(無観客競馬・発売取りやめ)”. 日本中央競馬会 (2021年2月4日). 2021年2月5日閲覧。
  16. ^ 2022年の成績表参照。
  17. ^ GⅠ昇格後は1:37.5(第15回優勝馬グルメフロンティア)
  18. ^ 岡部幸雄(第14回・第15回)、オリビエ・ペリエ(第17回・第18回)、ミルコ・デムーロ(第33回・第34回)、クリストフ・ルメール(第37回・第38回)が連覇を記録
  19. ^ 連覇は他に田中清隆(第14回・第15回)、堀宣行(第38回・第39回)が記録

各回競走結果の出典 編集

ほかに日本で行われるダートの国際GI競走 編集

外部リンク 編集