ブレット則(ブレットそく、Bredt's rule)とは架橋原子を持つ多環性化合物において橋頭位に二重結合を持つ化合物は存在できないという経験則である。

1924年にコンラット・ユリウス・ブレット(Konrad Julius Bredt)により発表された。

二重結合は平面構造をとるのが安定な配置である。 しかしトランス配置の二重結合を持つ7員環以下の環状アルケンにおいては、平面構造をとることができないため非常に反応性が高くなり安定に存在できない。 橋頭位に二重結合を持つ化合物においては、その二重結合を含む環の片方についてトランス配置をとらざるを得ないため、反応性が高くなり単離できないのである。

しかし、8員環以上の環においてはトランス配置の環状アルケンも安定に存在する。 そのため環が大きい場合にはブレット則は成立しなくなる。 例えばbicyclo[3.3.1]non-1-eneは二重結合を含む環の6員環側についてシス配置、8員環側についてトランス配置となっており安定に存在する。 このようなブレット則に反するtrans-シクロアルケンの部分構造が7員環以下の化合物をアンチブレットアルケンと呼ぶ[1]

脚注 編集

  1. ^ Kozo yuki kagaku : Kiso kara bussei eno apurochi made.. Nakasuji, Kazuhiro., Kubo, Takashi., Suzuki, Takanori., 中筋, 一弘, 久保, 孝史, 鈴木, 孝紀. Tokyokagakudojin. (2020.1). ISBN 978-4-8079-0957-5. OCLC 1139725462. https://www.worldcat.org/oclc/1139725462