本稿ではバレーボール(インドア)、ビーチバレー、亜種競技(en:Volleyball variations)の試合で使うボールの概説を行う。

モルテン社製(インドア用18枚パネル)
ミカサ社製(ビーチバレー用)
ミカサ社製「MVA200」を手にするロシアガモワ

歴史 編集

発祥 編集

ウィリアム・G・モーガン(バレーボールの考案者)の述懐によると、1895年のルーツは以下のような流れだった。まずバスケットボール[注 1] の内側のゴム球が用いられたが、軽すぎて球の動きが鈍かった。次にバスケットボールそのものを用いたが、今度は重すぎた。そのため、スポルディング社に発注し、現在用いられているものとほぼ同類のようなバレーボールを作ってもらったという[1]

変遷 編集

外面の素材は当初は天然皮革(牛革)だったが、現在では人工皮革が主流になっている。

1998年には、FIVB(国際バレーボール連盟)が、インドアでも「カラーボール」の使用を解禁(ビーチバレーでは既に導入)[注 2]

長い間、18枚パネル(3×6面)[注 3] によって構成されているものが主流だった。

MVA200 編集

2008年北京五輪から、FIVB(国際バレーボール連盟)が国際公認球としてミカサ社の新製品「MVA200」(8枚パネルでクラレ社のクラリーノを使用)[2] を採用[3] し、以後、この球が世界的に主流になりつつある。

曲線部分の多いパーツが、螺旋渦巻)状に貼り合わされているのが特徴。FIVBから同社に「ラリーが続くボールを作ってほしい」と依頼されたという[4][5]

従来のカラーボールとは異なり、白いパーツが一切無いのも画期的だった。 なお、COSCO社(インド)の国内販売商品にも、完全非対称な貼り方の銘柄がある[6]

変化球

コントロール性を追及した商品[注 4] であるが、むしろ従来よりも(無回転サーブなどで)打球の軌道が変化しやすくなったという印象を持つ選手・関係者もいる[7][8]

2010年全日本女子眞鍋政義監督は、東海大学工学部の研究室に[9] コーチを派遣。MVA200の特徴の研究を依頼した。「秒速10-15m時に最も変化しやすい」[10]「レシーブ側にとっては、青よりも黄色の部分が向かってきた方が、心理的に実際以上の変化を感じる」[11] などの研究結果が出た。

規格 編集

FIVBにおいては、1998年に内気圧の低減(最大値を旧:0.425kgf/cm2から新:0.325kgf/cm2へ)のルール改正が行われた[12]

インドアにおいては、ユース用は、一般用[注 5] より直径が小さい。

ビーチバレー用は、インドア一般用より若干大きく、内圧はかなり異なる。

周囲
cm (インチ)
重量
g (オンス)
内圧
kgf/cm² (psi)
FIVBによる規格[13][14]
インドア
一般用
65-67 (25.5-26.5) 260-280 (9.2-9.9) 0.3-0.325 (4.26-4.61)
ビーチ
バレー用
66-68 (26-27) 260-280 (9.2-9.9) 0.175-0.225
(171-221 mbar)
JVAによる規格[15]
インドア
4号球
62-64 240-260

主なメーカー 編集

公式試合球 編集

脚注 編集

注釈
  1. ^ 1891年、バレーボールのおよそ4年前に考案されたといわれる。
  2. ^ よって、以降は、野球などと同様に呼称されていた「白球」という語は、バレーボールにおいては用いづらいものとなった。
  3. ^ 4号球は12枚パネル(2×6面)。
  4. ^ モルテン社も、ボールコントロール重視のために六角形の突起を表面に設けた「フリスタテック」という商品を発売している。 (モルテンスポーツ事業本部 - インタビュー01「専門家インタビュー」
  5. ^ 日本においては「検定球5号」という名称。
出典
  1. ^ 『最新スポーツ大事典』大修館書店、1987年、p.1026
  2. ^ ミカサ - 新バレーボール MVA200の特徴
  3. ^ New Volleyball Set For Olympics
  4. ^ ニッポン創造 File.48 日本の職人がつくる五輪公式球 - 日本テレビ 2013.3.16 OA
  5. ^ 読売新聞2014年2月2日9面「経済全国便」
  6. ^ SPIKE VOLLEY
  7. ^ 信濃毎日新聞社 - ニュース特集「北京五輪特集」 2008年8月20日掲載
  8. ^ 講談社 現代ビジネス - 虎四ミーティング 吉原知子(元全日本女子バレーボール)<後編1> 2012年2月25日
  9. ^ フジテレビ バボChannet - バボちゃんライターズ・アイ! 「準備だけは完璧に」指揮官・眞鍋政義の執念 2011年10月18日
  10. ^ 東海大学 新聞・雑誌掲載一覧 - 眞鍋政義の「超」準備術。快進撃を呼んだ緻密なデータ分析(『ナンバー』 2011年3月10日)
  11. ^ SPORTS COMMUNICATIONS 二宮清純「唯我独論」 - 第467回 色彩心理を駆使した日本女子バレー(『スポーツニッポン』2011年1月5日付
  12. ^ 吉田康伸「バレーボールにおけるルール改正に伴う戦術の変化についての研究」『法政大学体育・スポーツ研究センター紀要』第21号、法政大学体育・スポーツ研究センター、2003年3月、23-26頁、doi:10.15002/00005064ISSN 2186-2842NAID 110001137488 
  13. ^ FIVB - Refereeing/Rules p.9(pdf)
  14. ^ FIVB - RULES OF THE GAME | BEACH VOLLEYBALL p.12(pdf)
  15. ^ モルテンスポーツ事業本部 - ボール規格一覧 バレーボール

外部リンク 編集