マトウダイ

マトウダイ目マトウダイ科の魚

マトウダイ(的鯛、学名Zeus faber)は、マトウダイ目マトウダイ科に属する魚類の1種。口が前に伸びて馬面になる[1]が、体側面に弓道のような特徴的な黒色斑をもち、マトダイ(的鯛)などとも呼ばれる[2]

マトウダイ
マトウダイ Zeus faber
保全状況評価
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: マトウダイ目 Zeiformes
: マトウダイ科 Zeidae
: マトウダイ属 Zeus
: マトウダイ Z. faber
学名
Zeus faber
Linnaeus1758
英名
John dory
St. Peter's fish
マトウダイの分布域

名称 編集

地方名に、カガミダイ(福島県千葉県)、ハツバ(千葉県小湊)、カネタタキ(新潟県愛媛県宇和島市)、クルマダイ(新潟県富山県石川県福井県)、モンダイ(石川県能登町宇出津)、バト(福井県)、バトウ(京都府与謝郡[1]島根県)、ツキノワ(鳥取県)、オオバ(山口県萩市)、ホンマト(愛知県豊橋市)、マトウオ(和歌山県太地)、マトハギ(和歌山県串本)、マトウ(兵庫県)、ワシノイオ(福岡県)などがある[3]

漢名は「海魴」、別名に遠東海魴、日本的鯛、月亮魚などがあり、英語のdoryに基づく多利魚という言い方もある。

本種は英語で「John dory」と呼ばれるがその起源ははっきりわかっておらず、フランス語の「jaune d'orée(黄色い辺縁をもつもの)」など、由来については諸説ある[4]。一方、ドイツ語(Petersfisch)・フランス語(Saint-Pierre)・スペイン語(pez de San Pedro)など他の複数の言語では、キリスト教における十二使徒の一人、聖ペトロにちなんだ名前で呼ばれる[4]。聖ペトロは貢物のお金をマトウダイの口から取り出したとする伝承があり、本種の黒色斑はこのときにつけられた聖ペトロの指紋に見立てられている[4]。また、英語でも的に見立てた「target perch」という別名もある。

分布・生態 編集

マトウダイは西部太平洋地中海インド洋・東部大西洋に分布する海水魚である[2]。日本の近海にも多く、本州中部から東シナ海にかけての沿岸域に生息する。温暖な海の海底付近で暮らす底生魚で、群れは作らず単独で遊泳していることが多い[5]

通常の食性魚食性で、ときおり甲殻類頭足類捕食する[5]産卵は冬から春にかけて行われ、具体的な時期は地域によって異なる。は分離性浮性卵で、仔魚および稚魚は浅い海で成長した後[5]、次第に水深50-150mの深みに移行する。成長は比較的遅く、性成熟には4年を要することもある[5]

形態 編集

 
海底近くを遊泳するマトウダイ。細長く伸びた背鰭の鰭膜と、体側の円形黒色斑が明瞭である

マトウダイは左右に平たく、著しく側扁した楕円形の体型をもつ[2]。全長40cmほどの個体が多いが、最大では90cmにまで達する[5]。口は大きく斜め上向きで、前方に素早く突き出すことができ、そうやって餌をとらえる[2][6]。稚魚の体はほぼ円形で、黒色~褐色の不規則な縦縞をもつ[2]

体の両側面には明瞭な縁取りをもつ円形の黒色斑が存在し、本種の大きな特徴となっている[2]。眼に似ていることから眼状斑とも呼ばれ、幼魚のときは鮮明だが成魚になるとやや不鮮明になる[6]。同じマトウダイ科に所属する近縁のカガミダイZenopsis nebulosa)は本種とよく似た姿をしているが、黒色斑が不明瞭であること、頭部背側がやや陥凹することなどで区別される[2]

背鰭の棘条は9-11本で、前方部の鰭膜は糸状に細長く伸びる[2]。背鰭軟条は22-24本で、臀鰭は4本の棘条と20-23本の軟条で構成される[5]は微小で、皮膚に埋もれる[2]

人間との関わり 編集

 
市場に並ぶマトウダイ。本種は世界各地で食用にされ、特に地中海沿岸とオーストラリアで珍重される[4]

マトウダイはいわゆる白身魚で、味が良いため日本を含む世界各地で食用として利用される[2][4]は産卵期の前で、刺身煮付け唐揚げフライ鍋料理などさまざまな方法で調理される。 肝も大きいため食用とされる。[7]

出典・脚注 編集

  1. ^ a b 舟屋の里老人クラブ連絡会、『伊根浦の年寄りたちが伝える海辺の方言』p62、2003年、あまのはしだて出版、ISBN 4-900783-34-X
  2. ^ a b c d e f g h i j 『日本の海水魚』 pp.168-169
  3. ^ 澁澤敬三、『日本魚名集覽 第二部』、p349、1944年、東京、生活社
  4. ^ a b c d e 『海の動物百科3 魚類II』 pp.122-123
  5. ^ a b c d e f Zeus faber”. FishBase. 2010年4月11日閲覧。
  6. ^ a b 「薄いからだの大食漢」、『動物たちの地球』89号157頁。
  7. ^ 『旬の魚 春の魚』

参考文献 編集

  • Andrew Campbell・John Dawes編、松浦啓一監訳 『海の動物百科3 魚類II』 朝倉書店 2007年(原著2004年) ISBN 978-4-254-17697-1
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
  • 落合明「薄いからだの大食漢 マトウダイ」、『週刊朝日百科・動物たちの地球』89(魚類5、タラ・アンコウ・キンメダイほか)、1993年。
  • 『旬の魚 春の魚』講談社 2004年 ISBN 4-06-270131-6

外部リンク 編集

関連項目 編集