メジャーリーグベースボールのポストシーズン

メジャーリーグベースボールポストシーズンは、レギュラーシーズンの終了後の10月に開催されており、最終的にアメリカンリーグ(AL) とナショナルリーグ(NL)の優勝チームがワールドシリーズで対戦してチャンピオンを決定する。

概要 編集

2023年シーズン以降は、10月にアメリカンリーグナショナルリーグそれぞれ6チームずつ、合計12チームがプレーオフへ進出する。レギュラーシーズンにおいて東地区、中地区、西地区で1位の成績で地区優勝した3チームと、ワイルドカードの3チームが進出する。ワイルドカードは地区優勝を除いたリーグ12チームの内で、最も勝率の高い3つのチームに与えられる。地区優勝チームを勝率順に第1、第2、第3シード、ワイルドカードも勝率順に第4、第5、第6シードとする。レギュラーシーズン終了後にポストシーズンは「ワイルドカードシリーズ」→「ディビジョンシリーズ」→「リーグチャンピオンシップシリーズ」→「ワールドシリーズ」と進行する。

シード順を決めるにあたって、あるいは地区優勝を決めるにあたって、あるいはワイルドカードチームを選ぶにあたって、複数チームが同一勝率の場合は後述のタイブレーカーが順に適用される。

ワイルドカードシリーズは各リーグ2カードが組まれ、第3シードと第6シード、第4シードと第5シードがそれぞれ対戦する。試合は3戦制で行われ、先に2勝したチームがディビジョンシリーズへ進出する。すべてシード順の高いチームの本拠地で行われる。

ディビジョンシリーズは両リーグ2カードずつ組まれる。ワイルドカードゲーム第4シード対第5シードの勝者と第1シード、ワイルドカードゲーム第3シード対第6シードの勝者と第2シードがそれぞれ対戦する。試合は最大5戦の予定で行われ、先に3勝した勝者2チームがリーグチャンピオンシップシリーズへ進むことになる。

リーグチャンピオンシップシリーズは7戦制で行われ、先に4勝したチームが出た時点でリーグ優勝となり、ワールドシリーズへの出場権を獲得する。

ワールドシリーズはアメリカンリーグ、ナショナルリーグの優勝チームが対戦する。7戦制で行われ、4勝したチームがワールドシリーズチャンピオンとなる。1903年1919年1920年1921年は9戦5勝制で行われている。

タイブレーカー 編集

当該チームの成績に差が出るまで、以下のルールが順に適用される。

  1. 直接の対戦成績(3チーム以上の場合は、当該チーム同士の全対戦の勝率比較)
  2. ディビジョン内の成績
  3. リーグ内の成績
  4. リーグ内の試合のうち、最終81試合の成績
  5. 上記すべてで同一成績の場合はさらに最終82試合、83試合と順次拡大して成績を比較する

[1]

歴史 編集

1902年以前 編集

メジャーリーグベースボール初の年間王者決定シリーズは1884年に実施された。ナショナルリーグと当時あったアメリカン・アソシエーションの各優勝チーム同士で行われ、1890年まで続いた。

アメリカン・アソシエーション解体後も、1892年には2シーズン制、1894年から1897年まではテンプル・カップ(Temple Cup)、1900年にはクロニクル=テレグラフ・カップ(Chronicle-Telegraph Cup)が開催された。

1903-1968年の1ラウンド制 編集

1903年にメジャーリーグベースボールの2つのリーグ、アメリカンリーグとナショナルリーグは第1回ワールドシリーズを開催している。しかし、翌1904年にナショナルリーグ優勝チームのニューヨーク・ジャイアンツがアメリカンリーグ優勝チームのボストン・アメリカンズとの対戦を拒否したために第2回ワールドシリーズは中止となった。ジャイアンツへの批判が集中したために1905年以降は毎年ワールドシリーズが開催されることになった。この時代はナショナルリーグに限り同率首位が出た場合は3戦2勝制の優勝決定戦を行っていた(アメリカンリーグは現行と同じ1試合決着)。

1969-1993年の2ラウンド制 編集

リーグ優勝決定戦
(5戦3勝制→7戦4勝制)
ワールドシリーズ
(7戦4勝制)
アメリカンリーグ
 東地区1位
0
 西地区1位
 アメリカンリーグ優勝
ナショナルリーグ
 ナショナルリーグ優勝
 東地区1位
 西地区1位  
    
    

1969年には、両リーグ共に12チーム(全24球団)にまで拡大した。この拡張に伴い、各球団のフランチャイズの地理的条件に基づいて地区制を導入し、両リーグともに東西6球団ずつに分かれた。これにより、前年までの公式戦優勝がそのままワールドシリーズ出場権を得る形ではなくなり、東西両地区の優勝チームがリーグ制覇を決めるリーグチャンピオンシップシリーズが導入され、プレーオフ制度が成立した。当初は5戦3勝制で行われていた。またこれに伴いナショナルリーグは同率首位が出た場合のプレーオフを1試合決着に変更した。ニューヨーク・メッツ1962年の創設以来、最高9位の弱小球団だったが、この1969年に驚異的な快進撃を見せて地区優勝。リーグチャンピオンシップシリーズでもアトランタ・ブレーブスに3連勝、ワールドシリーズでもボルチモア・オリオールズを4勝1敗で下し、その奇跡的な勝利からミラクル・メッツと呼ばれた。1981年50日間に及ぶストライキでシーズンが長期中断したために、前期と後期の最高勝率チームによる地区優勝決定シリーズを戦い、その後にリーグチャンピオンシップシリーズを行った。

1985年からはリーグチャンピオンシップシリーズもワールドシリーズと同じ7戦4勝制に移行した。ピーター・ユベロスコミッショナーがテレビの放映権収入を増やすことを目的として変更したものであった。この年のカンザスシティ・ロイヤルズが早くも新システムの恩恵を享受した。リーグチャンピオンシップシリーズトロント・ブルージェイズに4試合で1勝3敗と苦戦しており、前年のシステムであればこの時点で敗退していた。ここから一気に3連勝してリーグ制覇。ワールドシリーズでもセントルイス・カージナルスに1勝3敗から3連勝でワールドシリーズチャンピオンに輝いた。

1994-2011年の3ラウンド制 編集

(下記トーナメント表は基本形(1998-2011年)。1994-1997年及びワイルドカードと地区1位中の勝率1位が同じ地区の場合は組み合わせが変わる。後述)

ディビジョンシリーズ
(5戦3勝制)
リーグチャンピオンシップ
(7戦4勝制)
ワールドシリーズ
(7戦4勝制)
                   
アメリカンリーグA
 地区1位中の勝率1位
アメリカンリーグC
 ワイルドカード
 アメリカンリーグAの勝者
アメリカンリーグB
 アメリカンリーグBの勝者
 地区1位中の勝率2位
0
 地区1位中の勝率3位
 アメリカンリーグCの勝者
ナショナルリーグA
 ナショナルリーグCの勝者
 地区1位中の勝率1位
ナショナルリーグC
 ワイルドカード
 ナショナルリーグAの勝者
ナショナルリーグB  
 ナショナルリーグBの勝者
 地区1位中の勝率2位     
 地区1位中の勝率3位     

人気低迷や選手の年俸高騰によって財政難に陥るチームが出てきた。1993年には2球団増えて両リーグ共に14球団(全28球団)になっており、シーズン終盤戦の観客動員数やテレビ放映権料の増大を目的として1994年から両リーグともに従来の東部・西部の2地区制から東部・中部・西部の3地区制に再編された。それに伴い、NFLを参考にして3つの地区優勝チームのみではなく、3地区の2位のうち最も勝率の高いチーム(ワイルドカード)も含めたディビジョンシリーズ(地区シリーズ)が新たに導入された。勝率1位のチームがワイルドカードと、勝率2位のチームと勝率3位のチームが5回戦制を行うものだが、最高勝率チームとワイルドカードが同一地区の場合に限り、勝率2位のチームがワイルドカードと対戦するようになっていた。このディビジョンシリーズの勝者2チームがリーグ優勝を決める7戦4勝制のリーグチャンピオンシップシリーズへ進出する。尚1994-1997年は勝率順位は考慮されず、「勝率1位対勝率2位、勝率3位対ワイルドカード」の組み合わせになることもあった。

導入初年は、この年に発生した232日間に及ぶ長期ストライキの影響でワールドシリーズ含めてポストシーズンゲームは行われなかった。1997年フロリダ・マーリンズはこのワイルドカードでディビジョンシリーズへの進出を果たし、ディビジョンシリーズリーグチャンピオンシップシリーズを勝ち進み、ワールドシリーズクリーブランド・インディアンスを4勝3敗で下して球団創設からわずか5年でワールドシリーズチャンピオンに輝いた。一方で、1996年ナショナルリーグ西地区におけるロサンゼルス・ドジャースサンディエゴ・パドレスのように、リーグ史上88年ぶりに最終日に優勝を決める直接対決になったが、既に両チームとも勝敗関係無しにディビジョンシリーズへの進出が決まっていたので、緊張感の欠ける試合展開になってしまうというマイナス面もあった。

2012-2021年の4ラウンド制 編集

2020年の特例については後述

ワイルドカードゲーム
(1戦制)
ディビジョンシリーズ
(5戦3勝制)
リーグチャンピオンシップ
(7戦4勝制)
ワールドシリーズ
(7戦4勝制)
アメリカンリーグA
 地区2位以下の勝率1位
アメリカンリーグB
 地区2位以下の勝率2位
 アメリカンリーグA勝者
 地区1位中の勝率1位
 
アメリカンリーグD
 
 アメリカンリーグB勝者
 アメリカンリーグC勝者
 
アメリカンリーグC
 
 地区1位中の勝率2位
 地区1位中の勝率3位
 
0
 
 アメリカンリーグD勝者
ナショナルリーグA
 ナショナルリーグD勝者
 地区2位以下の勝率1位
ナショナルリーグB
 地区2位以下の勝率2位
 ナショナルリーグA勝者
 地区1位中の勝率1位
 
ナショナルリーグD
 
 ナショナルリーグB勝者
 ナショナルリーグC勝者
 
ナショナルリーグC
 
 地区1位中の勝率2位
 
 地区1位中の勝率3位
      
      

バド・セリグコミッショナーが2011年11月に2年以内に新たなプレーオフシステムを開始すると発表した。このシステムは翌2012年シーズンから1試合限りのワイルドカードゲーム形式で導入された。プレーオフ進出チームを各リーグ5チームに拡大し、レギュラーシーズン終了後に地区優勝チーム3チームを除いた各リーグ12チームの中で勝利数の上位2チームが1試合限りのワイルドカードゲームを行う。その勝者がディビジョンシリーズに進出する。以降は1994-2011年のシステムと同じだが、ワイルドカードと地区1位中の勝率1位が同じ地区であっても組み分けは変更されない。

2022年以降 編集

同一リーグ内でのシード順
第1シード:★地区優勝球団の勝率1位

第2シード:★地区優勝球団の勝率2位

第3シード:★地区優勝球団の勝率3位

第4シード:地区優勝球団以外の勝率1位

第5シード:地区優勝球団以外の勝率2位

第6シード:地区優勝球団以外の勝率3位

ワイルドカードシリーズ
(3戦2勝制)
ディビジョンシリーズ
(5戦3勝制)
リーグチャンピオンシップ
(7戦4勝制)
ワールドシリーズ
(7戦4勝制)
 
アメリカンリーグC
 
 ★地区優勝(勝率1位)
アメリカンリーグA
 アメリカンリーグAの勝者
 優勝球団以外の勝率1位
アメリカンリーグE
 優勝球団以外の勝率2位
 アメリカンリーグC勝者
 アメリカンリーグD勝者
 
アメリカンリーグD
 
 ★地区優勝(勝率2位)
アメリカンリーグB
 アメリカンリーグBの勝者
 ★地区優勝(勝率3位)
0
 優勝球団以外の勝率3位
 アメリカンリーグE勝者
 ナショナルリーグE勝者
 
ナショナルリーグC
 
 ★地区優勝(勝率1位)
ナショナルリーグA
 ナショナルリーグAの勝者
 優勝球団以外の勝率1位
ナショナルリーグE
 優勝球団以外の勝率2位
 ナショナルリーグC勝者
 ナショナルリーグD勝者
 
ナショナルリーグD
 
 ★地区優勝(勝率2位)
ナショナルリーグB  
 ナショナルリーグBの勝者
 ★地区優勝(勝率3位)     
 優勝球団以外の勝率3位     

2022年からは枠が拡大され、各リーグの地区優勝3球団とワイルドカード3球団(各リーグの地区優勝球団以外の勝率上位3球団)、合計12球団が対象になる。地区優勝した球団で各リーグの勝率上位2球団は自動的に地区シリーズ進出決定。残りの4球団でワイルドカードシリーズ(3試合制)を行い、上位シード球団が全試合ホームで開催する。地区優勝球団のうち勝率3位の球団はワイルドカード球団の勝率3位の球団と当たる[2][3]。この勝者は勝率が2位の地区優勝球団とディビジョンシリーズであたる。ワイルドカードのうち勝率1位と2位の球団が対戦し、勝者は勝率が1位の地区優勝球団とあたる。

ホームフィールド・アドバンテージ 編集

ワイルドカードシリーズ 編集

当該2チームのうちシード順の高いチームのホーム開催で行う。

ディビジョンシリーズ 編集

ホーム開催は2試合-2試合-1試合と割り振られ、シード順の高いチームが先にホームとなり、5試合目もホームとなる、ホームフィールド・アドバンテージが与えられる。このために早期に優勝が決まっても残りを消化試合に出来ずに最終的な勝率によって対戦カードが決まるという見所も出てきた。

1995年~1997年はホーム開催は2試合-3試合と割り振られ、ホームゲームを先に開催する権利があるチームもあらかじめ決められていた。1998年~2011年はワイルドカードチームがそれより勝率が低い地区優勝チームと対戦することもあったが、その場合でもアドバンテージは地区優勝チームに与えられた。

2012年はワイルドカードゲームの新設が日程発表後に決定したため、地区シリーズの日程に影響が出ないようにこの年のみホーム開催が2試合-3試合に戻された。また、このシーズンからディビジョンシリーズでは同じ地区に所属している球団同士では対戦しないという決まりは廃止された。

リーグチャンピオンシップシリーズ 編集

2試合-3試合-2試合のアドバンテージはシード順の高いチームにある。

1969年1984年は5戦3勝制で行われ、ホーム開催も2試合-3試合と割り振られていた。

2021年までは、ワイルドカードのチームは勝率・対戦成績にかかわらずアドバンテージは持てなかった。1997年頃まではこの制度は存在せず、シーズン勝率が低いほうにシリーズ開幕権が与えられたケースもあった。

ワールドシリーズ 編集

ホーム開催の割り振りは2試合-3試合-2試合となっており、アドバンテージは2002年までは毎年交代でアドバンテージが与えられていたが、2003年から2016年まではその年のオールスターゲームの勝利リーグに与えられることになり、真剣度の高い大事な試合へと変わっていった。

2020年度シーズンの特例 編集

新型コロナウィルス感染拡大防止対策を理由として、

  • 出場チームを各リーグ・各地区2位までの6チームと、ワイルドカードへのノミネートチームとして3位以下の残り9チームから勝率順に上位2チームの8チームに拡大する。
  • シード順位は、地区優勝3チームを第1-3シード、同2位の3チームを第4-6シード、ワイルドカードは第7・8シードとし、トーナメント方式もたすき掛け方式となっている。
    • 第1シード(地区1位)対第8シード(ワイルドカード)
    • 第2シード(地区1位)対第7シード(ワイルドカード)
    • 第3シード(地区1位)対第6シード(地区2位)
    • 第4シード(地区2位)対第5シード(地区2位)
  • ワイルドカードゲームは上位シードにノミネートされた側(地区優勝3チームと、2位の内輪で最高勝率だったチーム)の本拠地にて3戦2勝方式で行う。
  • ディビジョンシリーズ以後は従来の試合方式を維持しつつ中立地開催とし、
  • ワールドシリーズは従来通り休養日を設けるが、リーグチャンピオンシップまでは休養日なしの連戦で行われる[4]
  • シーズン中と同様に全試合で指名打者制度が採用されている。

脚注 編集