メッセンジャー (探査機)

アメリカ航空宇宙局による水星探査機

メッセンジャー (MESSENGER; MErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry and Ranging) は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のディスカバリー計画の一環として行われている水星探査ミッション、及び探査機の名前である。2004年8月3日に打ち上げられ、2011年3月18日に水星の周回軌道に投入されて観測が行われ、2015年5月1日に水星表面に落下してミッションを終了した。

メッセンジャー (MESSENGER)
MESSENGER 探査機
水星周回軌道に乗ったメッセンジャーの想像図
所属 アメリカ航空宇宙局 (NASA)
公式ページ MESSENGER Home
国際標識番号 2004-030A
カタログ番号 28391
状態 運用終了
目的 水星の周回観測
観測対象 水星
計画の期間 約8年間
打上げ機 デルタIIロケット
打上げ日時 2004年8月3日
2時15分56秒(EDT
軌道投入日 2011年3月18日
運用終了日 2015年5月1日
物理的特長
本体寸法 1.27 m × 1.42 m × 1.85 m
質量 1,093 kg
発生電力 450 W
(水星周回軌道にて)
主な推進器 2液式化学スラスタ
(645 N, 317 sec)
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概要 編集

 
約2万7000kmの距離からメッセンジャーが撮影した水星

メッセンジャー以前に水星に接近した探査機には1974年から1975年マリナー10号があるが、表面の僅か45%しか撮影されておらず、水星は太陽系で最も探査が遅れている惑星の一つだった。水星の探査が困難な理由に、太陽から受ける膨大な熱、電磁波による通信障害、水星の公転速度が大きいことなどがあったとされる。

2000年代に入って太陽系形成の理解を深めるため、ようやく水星へと興味が注がれてきた。そして、次々に探査機を水星へ送る計画が立てられた。その1つがメッセンジャーである。

マリナー10号の調査では、水星の物理的な性質以外ほとんど分からなかったため、メッセンジャーでは水星を構成する物質磁場、地形、大気の成分、などが調査される。

探査機は燃料節約のため地球、金星、水星と複数回の減速スイングバイを行いながら水星の周回軌道に接近する。その結果、地球から水星まで最短距離では約1億kmのところを、79億kmもの軌道を辿ることになる。

日程 編集

 
メッセンジャーの軌道。6回のフライバイを繰り返しながら水星に近づく。
 
デルタIIロケットによるメッセンジャーの打ち上げ
  • 2004年8月3日ケープカナベラル空軍基地からデルタIIロケットで打ち上げ。
  • 2005年8月2日地球でスイングバイ。2,347 kmまで接近。
  • 2005年12月12日:DSM-1(Deep-Space Maneuver-1:第1回軌道修正噴射)を実施、524 秒間。
  • 2006年10月24日金星でスイングバイ。2,992 kmまで接近。
  • 2007年6月5日:金星でスイングバイ。338 kmまで接近。
  • 2007年10月17日:DSM-2 を実施。
  • 2008年1月14日水星でスイングバイ。200 kmまで接近。その後 DSM-3 を実施。
  • 2008年10月6日:水星でスイングバイ。200 kmまで接近。その後 DSM-4 を実施。
  • 2009年9月29日:水星でスイングバイ。200 kmまで接近。その後 DSM-5 を実施。
  • 2010年11月:ボイジャー1号以来21年ぶりに太陽系家族写真を撮影。
  • 2011年3月18日:水星周回軌道に投入(約200km×15,200km 軌道傾斜角82.5度の軌道)。その後約1年間観測を行う計画だった。
  • 2011年11月14日:予定していた2012年3月17日までの観測運用を1年間延長することを発表[1]
  • 2013年12月に、ミッションを2015年3月までさらに延長することを決定[2]
  • 2014年4月20日に、水星での3,000周目を迎えた。6月17日まで近水点を下げ続け、高度約120kmまで接近させる[3]
  • 2014年7月25日に、初めて高度を100kmにまで下げた。8月19日には高度50kmへ、9月12日には高度25kmまで降りる予定で、25kmまで高度を下げた後は94kmまで高度を上げる予定。その後も何度か近水点高度を上げることにより、水星表面へ落下するのを2015年3月以降まで延ばす[4]
  • 2015年5月1日 水星表面へ落下し、ミッションを終了した。3月から計7回のスラスタ噴射を実施して高度を上げることで落下を1ヶ月以上遅らせた。なお落下直前まで観測は行われた[5]

探査機器 編集

  • 水星撮像システム
  • ガンマ線・中性子スペクトロメータ
  • X線スペクトロメータ
  • 磁力計
  • 水星レーザ高度計
  • 水星大気・表面組成スペクトロメータ
  • エネルギー粒子・プラズマスペクトロメータ
  • 電波科学実験
など

画像 編集

脚注 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集