ヤマウルシ(山漆[4]学名: Toxicodendron trichocarpum)は、ウルシ科ウルシ属落葉低木[5][6]。山地などに生える。漆器の染料に用いられるが、樹液に触れると激しくかぶれる。

ヤマウルシ
Rhus trichocarpa(韓国、2008年7月6日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類II Eurosids II
: ムクロジ目 Sapindales
: ウルシ科 Anacardiaceae
: ウルシ属 Toxicodendron
: ヤマウルシ T. trichocarpum
学名
Toxicodendron trichocarpum (Miq.) Kuntze (1891)[1]
シノニム
和名
ヤマウルシ(山漆)、シツゲンヤマウルシ[1]

分布・生育地 編集

中国朝鮮半島日本北海道本州四国九州)などに分布する[6][7]。山地や低地に分布し、山野の明るい場所を好み、道端のヤブに幼木がよく生えることが多い[8][4]

特徴 編集

落葉広葉樹低木から小高木で、高さは2 - 8メートル (m) になる[4][9]樹皮は灰褐色で、皮目が縦に浅く裂けて筋になる[10]。一年枝は太く、短毛があり枝先には密生する[10]

は枝の先に集まって四方に広がる[9]。葉は奇数羽状複葉[5][6]互生し、長さ5 - 12センチメートル (cm) [8]小葉は4 - 8対つく。葉は輪生状についており下の葉ほど小さくなる[5]。小葉は卵状楕円形で両面に短が密生する[8]。成木の葉は円く全縁だが、幼木の葉にはしばしば大きな少数の鋸歯がある[4][5][6]葉柄葉軸にも毛が生え赤色を帯びる(葉裏の毛は葉脈上にのみあるのが特徴[5])。には紅葉する[6]。紅葉期は比較的早く、他の樹種がまだ緑色のうちから赤色に染まり始める[4]。条件がよいと赤色に染まり、橙色や黄色になるものも多く見られる[4]

花期は5 - 6月[8]雌雄異株[6]。葉の付け根から長さ15 - 25 cmの円錐花序を出して、黄緑色が集まってつく[8]

果実は直径5 - 6ミリメートル (mm) の扁桃状で、表面にかたい刺毛が密に生える[6][8]。冬でも外果皮が落ちた白い果実が残る[10]

冬芽裸芽で濃褐色の毛に覆われる[10]。枝先の頂芽は幼い葉が円錐状に集まり、側芽は枝に互生する[10]。葉痕は心形や三角形で大きく、維管束痕は形がさまざまで多数が並ぶ[10]

樹液、葉汁にウルシオールを含み、枝や葉に触れるとウルシかぶれの炎症を起こす[5][6][9]。ヤマウルシのほか、同属のハゼノキヤマハゼヌルデなども触れるとかぶれを起こす[9]

利用 編集

葉は染料になるが、皮膚に激しいかぶれを起こす[8]ウルシ同様に漆器の塗料として用いられる[5]。 また、果実からを産する[6]

近縁種 編集

よく似ている樹種に中国産のウルシToxicodendron vernicifluum)があり、ウルシの紅葉はヤマウルシよりも地味に染まる[4]。また葉の形や枝ぶりが、山菜の「タラの芽」で知られるタラノキAralia elata)と似ているが、ヤマウルシにはタラノキのようなトゲはない[9]

脚注 編集

参考文献 編集

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、102頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、249頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:離弁花 2』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 4〉、2000年10月、274-277頁。ISBN 4-635-07004-2 
  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、186頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日、41頁。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  • 林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年、249頁。ISBN 978-4-09-208023-2 

関連項目 編集

外部リンク 編集