リミッター: Limiter)は音の強弱差を一定範囲に限定するダイナミクスエフェクターの一種である。

ラックマウントされた各種Limiter/Compressor
Manley Mastering SLAM Stereo Mastering LimiterとStereo Variable Mu Limiter/Compressor
dbx 160XT Limiter/Compressor
Millennia TCL-2 Twin Topology Opto-Limiter/Compressor

入力音量が予め設定された閾値を超えた場合に、その変化を設定した比率(レシオ、レイシオ、圧縮比)で減少させて、ピークのばらつきを一定範囲に抑える機材である。音量を一定のレベル以下に抑える(過大入力が起こらないようにする)ことを目的としてリミッターを入れる。圧縮比を∞:1に設定することもある[1]。 リミッターを入れることで、録音機の前に入れて録音の歪みを防いだり、放送設備の送信機の前に入れて過変調を防いだり、PA装置の前に入れて機器(特にスピーカー)が破損しないよう保護することができる。

動作からわかるように、コンプレッサーとほぼ同一の電子回路が用いられている。したがって、リミッターとコンプレッサーが統合され、1つの機器で両方の動作が可能な機種もある。圧縮比が10:1以上でリミッターとされている[2]ものの、リミッターとコンプレッサーは、用途によって呼称の使い分けがされていると考えても良いだろう。リミッターはコンプレッサーよりも、閾値を高く、圧縮比を大きく設定してあることが普通である。

なおアタック時に最大音量を発する減衰音系楽器の場合、リミッターで音のアタックを抑えることにより、相対的にアタック以外の音が強調されて音質が変わるので、音質を変えるためのエフェクターとしてリミッターを使用することもある。

Brickwall特性 編集

Brickwall(レンガ塀)リミッターはより厳密な閾値制御をおこなうリミッターの総称である[3]

リミッターは∞:1のレシオを設定することで、広い時間幅で見た出力値を閾値までに抑えることができる。しかしアタック長を設定したリミッターでは効き始めの部分で実効レシオが∞より小さいため、瞬間的に発生した過大入力が閾値を突き抜けてしまう場合がある。これはアタック長を~0に設定することで解消できる[4]。ごく短いアタック長を設定しより厳密な出力上限を実現したリミッターは Brickwall limiter(堅く突き抜けられないレンガ塀、の意)と総称される。

デジタル音源の全サンプルが閾値内でも、D/A変換でアナログのなめらかな連続信号に変換する際にサンプル間で閾値を超える事があり(Inter-sample peakもしくはTrue peak)、それはクリッピングに繋がりかねない。Brickwall limiterの中にはデジタル波形の断続的な信号を補間してInter-sample peakを検出しD/A変換後のクリッピングも予防する機能を持つものがあり、それらはTrue peak limiterと呼ばれる[5]。これらはアナログ機材・再生環境での過大入力をより強く予防することができる。

参考文献 編集

  • 『プロ音響データブック(三訂版)』 株式会社リットーミュージック 2001年12月22日発行 ISBN 4-8456-0730-1

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ "A compressor with a very high ratio, nearing infinite, is referred to as a limiter." Thomas Wilmering, et al. (2020). A History of Audio Effects. Appl. Sci. 2020, 10, 791; p. 14.
  2. ^ 『サウンドレコーディング技術概論(改訂版)』 日本音楽スタジオ協会 2007年 ISBN 4-87462-055-8
  3. ^ "Brickwall Limiter ensures that the output level never exceeds a set limit." Brickwall Limiter. steinberg.
  4. ^ "time constants are set for very fast attack" Brickwall Limiter. IK Multimedia Production.
  5. ^ What Is a True Peak Limiter?”. iZotope. 2024年3月1日閲覧。