レスリー・ニールセン

カナダの俳優 (1926-2010)

レスリー・ニールセンLeslie Nielsen, 本名:Leslie William Nielsen OC, 1926年2月11日 - 2010年11月28日)は、カナダ出身の俳優。『裸の銃を持つ男』シリーズなどのコメディ映画で知られる。カナダ勲章受章者。

レスリー・ニールセン
Leslie Nielsen
Leslie Nielsen
1970年宣伝写真
本名 Leslie William Nielsen
生年月日 (1926-02-11) 1926年2月11日
没年月日 (2010-11-28) 2010年11月28日(84歳没)
出生地 カナダの旗 カナダレジャイナ
死没地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国フロリダ州
ジャンル 俳優
コメディアン
活動期間 1950年 - 2010年
主な作品
禁断の惑星
ポセイドン・アドベンチャー
フライングハイ
プロムナイト
裸の銃を持つ男』シリーズ
レスリー・ニールセンのドラキュラ
Mr.マグー
絶叫計画』シリーズ
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経歴 編集

カナダのサスカチュワン州レジャイナ生まれ[1]。母親のメイベルはウェールズ系、父親イングバードはデンマーク系の警察官であった[2][3][4]。3人兄弟であり、兄のエリク・ニールセン英語版は政治家として1984年から1986年までカナダ副首相Deputy Prime Minister of Canadaを務めた[5]。親戚に俳優のジーン・ハーショルト英語版がいる[6][7]

聴覚に問題があったが17歳で軍に入り[8][9]第二次世界大戦中にカナダ空軍で銃手として訓練を受け、退役後はトロントの演劇学校で学ぶ。ラジオのDJを経て[6][10]アメリカに渡り、奨学金を得てネイバーフッド・プレイハウスや、アクターズ・スタジオでも学んだ[11][12]

1948年にテレビデビュー[13]。当初はアクション映画を中心に出演する一方、シリアスな作品においても活躍していた。この頃の出演作に『禁断の惑星』『ポセイドン・アドベンチャー』などがある。1960年代以降はテレビ映画でも活躍する。コメディ作品の初出演は、1980年公開の映画『フライングハイ』である。これによって、ニールセンに新たな魅力が加わった。

『フライングハイ』でニールセンが演じたのは、ストーリー半ばから登場する搭乗客「ルーマック医師」役である。同作でニールセンは、冷静な表情でナンセンスなジョークを言ったり、とんちんかんな勘違いをして顔色を変えるなどといったコメディシーンを見事に演じ切った。『フライングハイ』制作スタッフによると、この映画への出演をニールセンに打診した際、ニールセンは思うところがあったらしく、OKともNOとも言わずに発言を保留した。そこでスタッフは、1950年代に制作・公開された『Zero Hour』のビデオをニールセンに渡した。ニールセンは『Zero Hour』を観終えて、自分の役回りや台本のあちらこちらに散りばめられた台詞の意味を理解し、この作品において彼ならではとも言える演技を見事に披露する。これ以降、コメディ作品でのニールセンの存在が確立されたという(2003年発売の同映画DVD特典において、当時の制作スタッフが同趣旨のコメントをしている[14])。

1988年に『裸の銃を持つ男』が大ヒットしてからは、もっぱらコメディ作品に出演するようになる。コメディ作品でのニールセンは、一見銀髪の渋い紳士だが、やることなすことヘマばかりという役どころが定番だった。ドジを踏むときにおかしな表情を見せるかと思えば、周りでは大騒動が起きているのにニールセンだけくつろいだ面持ちで飲食するなどのシーンも見られる。

日本では『裸の銃を持つ男』のイメージがあまりに強烈だったため、以降に日本で公開されたニールセン出演作品の多くに『裸の……』『……を持つ男』という邦題が付けられるようになった。日本の人気番組『加トちゃんケンちゃんごきげんTV』や『志村けんのだいじょうぶだぁ』にも登場し、加藤茶志村けんらと共演したこともある。ゴルフ好き[15]で、ゴルフものの作品への出演(邦題『裸のクラブを持つ男』)や著作もあるが、内容はもちろんおふざけである。

私生活では4度結婚し、2人目の妻との間に娘が二人いる[16]

2010年11月28日フロリダ州フォートローダーデールの病院にて、肺炎とそれに伴う合併症の為に死去した[17][18]。84歳没。

主な出演作 編集

映画 編集

公開年 邦題
原題
役名 備考
1956 誘拐
Ransom!
チャーリー
禁断の惑星
Forbidden Planet
J・J・アダムス
放浪の王者
The Vagabond King
ティボルト
1958 縄張り
The Sheepman
スティーブン・ベッドフォード/ジョニー・ブレッドソー
1964 小さな逃亡者
See How They Run
エリオット・グリーン テレビ映画
1966 ハーロー
Harlow
リチャード
1966 シャイアン砦
The Plainsman
ジョージ・アームストロング・カスター
ボージェスト
Beau Geste
Lt. De Ruse
1967 早射ちガンマン
Gunfight in Abilene
グラント・エヴァーズ
誇り高き戦場
Counterpoint
ヴィクター・ライス
1969 黒の捜査線
Change of Mind
ウェブ保安官
1970 真夜中の目撃者
Night Slaves
ヘンショー保安官 テレビ映画
深海パニック・決死の大爆破
The Aquarians
役人 テレビ映画
二重スパイ・国際謀略作戦
Hauser's Memory
ジョセフ・スローター テレビ映画
1971 ザカリー・ホイラーの復活/機密指令!大統領候補を殺すな
The Resurrection of Zachary Wheeler
ハリー・ウォルシュ
保険金殺人事件
They Call It Murder
フランク テレビ映画
1972 ポセイドン・アドベンチャー
The Poseidon Adventure
ハリソン船長
1973 誘拐
Snatched
ビル テレビ映画
1976 大強奪
Brinks: The Great Robbery
ノーマン・ヒューストン捜査官 テレビ映画
1977 アニマル大戦争
Day of the Animals
ポール・ジェンソン
ビバ・ニーベル
Viva Knievel!
スタンリー・ミラード
アムステルダム・キル
The Amsterdam Kill
ライリー・ナイト
1978 リトル・モー
Little Mo
ネルソン・フィッシャー テレビ映画
1979 シティ・オン・ファイア
City on Fire
ウィリアム・ダドリー
1980 フライングハイ
Airplane!
ドクター・ルマック
プロムナイト
Prom Night
ミスター・ハモンド
1982 フォックスファイヤー・ライト
Foxfire Light
リース・モーガン
シークレット・レンズ
Wrong Is Right
マロリー
クリープショー
Creepshow
リチャード・ヴィッカーズ
1983 夜のブリッジ・ダウン
The Night the Bridge Fell Down
ポール テレビ映画
洞窟探検
Cave In!
ジョー・ジョンソン テレビ映画
レスリー・ニールセンの裸の宇宙銃を持つ男
The Creature Wasn't Nice
ジェイミソン
1985 RECKLESS DISREGARD レックレス・ディスリガード
Reckless Disregard
ボブ・フランクリン テレビ映画
ブレード・イン・香港
Blade in Hong Kong
ハリー テレビ映画
1986 スキューバ・バトル/地獄の爆弾要塞
The Patriot
フレイザー
ミスター・ソウルマン
Soul Man
ダンバー
黙示録1945/ここに核の全てがある
Race for the Bomb
ルイス・ストラウス テレビ映画
メタルフォース/蒼き戦士
Nightstick
エヴァンス テレビ映画
1987 掠奪された億万$の花婿
Home Is Where the Hart Is
ナッシュヴィル・シュワルツ
1988 裸の銃を持つ男
The Naked Gun: From the Files of Police Squad!
フランク・ドレビン
1989 ビキニ・ギャル・パニック
Dangerous Curves
グレッグ
1990 裸の十字架を持つ男/エクソシストフォーエバー
Repossessed
ジェバダイア・メイアイ神父
1991 裸の銃を持つ男PART2 1/2
The Naked Gun 212: The Smell of Fear
フランク・ドレビン
クリスマスに万歳!
All I Want for Christmas
サンタ
1993 鉄の顔を持つ男
Surf Ninjas
Colonel Chi
1994 裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱
Naked Gun 33 1/3: The Final Insult
フランク・ドレビン
レスリー・ニールセン/裸のローマ帝国2000 1/2年前
S.P.Q.R. 2000 e 1/2 anni fa
Lucio Cinico イタリア映画
1995 レンタル・キッズ/お子様貸します!
Rent-a-Kid
ハリー テレビ映画
レスリー・ニールセンのドラキュラ
Dracula: Dead and Loving It
ドラキュラ伯爵
1996 ハーヴィ/裸のウサギを持つ男
Harvey
Dr. Chumley テレビ映画
スパイ・ハード
Spy Hard
ディック・スティール 出演・製作総指揮
1997 Mr.マグー
Mr. Magoo
Mr.マグー
1998 裸の銃を持つ逃亡者
Wrongfully Accused
ライアン・ハリソン
2000 レスリー・ニールセンの2001年宇宙への旅
2001: A Space Travesty
リチャード・ディックス 脚本・出演・製作総指揮
レスリー・ニールセン 裸のサンタクロース
Santa Who?
サンタクロース テレビ映画
2001 アラスカ・ケビン 史上最大の犬ぞり大作戦
Kevin of the North
クライヴ・ソーントン
2002 レスリー・ニールセンの裸の石を持つ男
Men with Brooms
ゴードン・カッター
2003 最'狂'絶叫計画
Scary Movie 3
ハリス大統領
2006 最終絶叫計画4
Scary Movie 4
ハリス大統領
2008 スーパーヒーロームービー!! -最'笑'超人列伝-
Superhero Movie
アルバート
最終突撃取材計画!
An American Carol
オサマ・ビン・ニールセン
2009 最'恐?!'絶叫計画
Stan Helsing
カイ

テレビシリーズ 編集

放映年 邦題
原題
役名 備考
1961-1962 The New Breed プライス・アダムス警部補 34エピソード
1965 Peyton Place ヴィンセント/ケネス 18エピソード
ドクター・キルデア
Dr. Kildare
ハリー・クレバー 9エピソード
1968 0011ナポレオン・ソロ
The Man from U.N.C.L.E.
マクシミリアン・ハーマン将軍 エピソード『地球を盗む男』
1970 Bracken's World ジョン・ブラッケン 15エピソード
1971
1975
刑事コロンボ
Columbo
ピーター・ハミルトン
被害者:ジェロニモ (CIAオペレーター)
『もう一つの鍵』(1972)
『仮面の男』(1975)
1975 燃えよ!カンフー
Kung Fu
ヴィンセント 4エピソード
1979 ホワイト・ハウス
Backstairs at the White House
アイク・フーヴァー ミニシリーズ
1982 フライング・コップ
Police Squad!
フランク・ドレビン 全6話
1985
1986
ジェシカおばさんの事件簿
Murder, She Wrote
ダニエルズ
デヴィッド・エヴェレット
『あの世から夫が招く』(1985)
『黄金は海底に眠れ』(1986)
1994-1999 騎馬警官
Due South
バック・フロビシャー 4エピソード
2004-2005 Zeroman ゼロマン 14エピソード

日本語吹き替え 編集

主に担当したのは、以下の二人である。

中村正
ボー・ジェスト』で初担当。ニールセンを持ち役としていたことで知られている[19]
羽佐間道夫
『裸の銃を持つ男 PART2 1/2』(テレビ朝日版)で初担当。上記の中村の次に多く吹き替えている。

このほかにも、小林修小島敏彦大木民夫広川太一郎なども声を当てている。

脚注 編集

  1. ^ Ross, Bob (1996年5月24日). “Worth the Rent” (Fee required). The Tampa Tribune. http://pqasb.pqarchiver.com/tampatribune/access/38300832.html?dids=38300832:38300832&FMT=ABS&FMTS=ABS:FT&type=current&date=May+24%2C+1996&author=Bob+Ross&pub=Tampa+Tribune&desc=WORTH+THE+RENT&pqatl=google 2010年11月28日閲覧。 
  2. ^ Simpson, Kieran (1980). Canadian Who's Who, Volume 15. University of Toronto Press. pp. 736. ISBN 0-8020-4579-0 
  3. ^ Lumley, Elizabeth (2003). Canadian Who's Who 2003, Volume 38. University of Toronto Press. p. 1,103. ISBN 0-8020-8865-1. https://books.google.co.jp/books?id=aNuphN-Vh_oC&lpg=PA1013&ots=AJTSeqBeRs&dq=Ingvard+and+Maybelle+Nielsen&pg=PA1013&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=&f=false 
  4. ^ “Leslie Nielsen, the comic with the Danish roots: "Comedy is what endures"” (Registration required; Proquest Document ID: 494375361). Scandinavian Press 4 (1). (1997年3月31日). http://libproxy.sdsu.edu/login?url=http://proquest.umi.com.libproxy.sdsu.edu/pqdweb?did=494375361&sid=3&Fmt=3&clientId=17862&RQT=309&VName=PQD 2009年12月16日閲覧。 
  5. ^ “Erik Nielsen dies at B.C. at 84”. The Globe and Mail (Toronto). (2008年9月5日). オリジナルの2010年12月1日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/5ue10NK1X?url=http://www.theglobeandmail.com/news/national/article707221.ece 
  6. ^ a b Carr, Jay (1994年3月13日). “If Leslie Nielsen has learned anything, it's how to play slapstick with a ... straight face” (Fee required). The Boston Globe. http://pqasb.pqarchiver.com/boston/access/61932233.html?dids=61932233:61932233&FMT=ABS&FMTS=ABS:FT&type=current&date=Mar+13%2C+1994&author=Jay+Carr%2C+Globe+Staff&pub=Boston+Globe+%28pre-1997+Fulltext%29&desc=If+Leslie+Nielsen+has+learned+anything%2C+it%27s+how+to+play+slapstick+with+a.+.+.+straight+face&pqatl=google 2010年12月1日閲覧。 
  7. ^ Nielsen, Leslie; David Fisher (1994). Leslie Nielsen the naked truth. Pocket Books. pp. 289. ISBN 0-671-79578-3 
  8. ^ Biodata about Nielsen's abusive father
  9. ^ “Leslie Nielsen, RIP. "And don't call me Shirley"”. Chicago Sun-Times. Associated Press. (2010年11月29日). オリジナルの2010年12月1日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/5ue1DBA3P?url=http://blogs.suntimes.com/ebert/people/leslie-nielsen-rip-and-dont-ca.html 
  10. ^ Churchill, Bonnie (1997年12月20日). “Leslie Nielsen Doesn't Take Himself Seriously, Nor Does Anyone Else” (Fee required). St. Louis Post-Dispatch. http://nl.newsbank.com/nl-search/we/Archives?p_product=SL&p_theme=sl&p_action=search&p_maxdocs=200&p_topdoc=1&p_text_direct-0=0EB050AC86F77B7D&p_field_direct-0=document_id&p_perpage=10&p_sort=YMD_date:D&s_trackval=GooglePM 2010年12月1日閲覧。 
  11. ^ Hopper, Hedda (1957年1月6日). “These New Faces Will Go Places in 1957!”. Chicago Tribune: p. H16 
  12. ^ Wise, James E. Jr.; Baron, Scott (2002). International Stars at War. Annapolis, MD: Naval Institute Press. p. 221. ISBN 1-55750-965-4 
  13. ^ Arnold, William (1988年12月6日). “Shy actor loves his life as a comic”. Seattle Post-Intelligencer. オリジナルの2010年12月1日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/5ue1WOp7h?url=http://www.seattlepi.com/archives/1988/8802020770.asp 
  14. ^ 『フライングハイ』では、かつて制作されたシリアスな作品や恋愛作品、本作品制作当時に放映されていたテレビCMなど、様々な作品がパロディにされている。『Zero Hour』でのシーンも、『フライングハイ』のあちこちに、笑いを誘うシーンと化して取り込まれている
  15. ^ Leslie Nielsen”. Tribute.ca. 2010年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月25日閲覧。
  16. ^ Leslie Nielsen”. Yahoo! Movies. 2010年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月25日閲覧。
  17. ^ 「裸の銃(ガン)を持つ男」のL.ニールセン氏死去 スポーツニッポン 2010年11月29日閲覧
  18. ^ 『裸の銃(ガン)を持つ男』レスリー・ニールセンさん肺炎による合併症で死去 シネマトゥデイ 2010年11月29日閲覧
  19. ^ 東京俳優生活協同組合による公式プロフィール

外部リンク 編集