ロータスF1チーム

かつて存在したイギリスのレーシングチーム

ロータスF1チームLotus F1 Team)は、2012年から2015年までF1世界選手権に参戦していたイギリスのレーシングチーム。ルノーを前身とし、2011年ロータス・ルノーGPの名で参戦していた。

ロータス
エントリー名 Lotus F1 Team
チーム国籍 イギリスの旗 イギリス
チーム本拠地 イギリスの旗 イギリスオックスフォード州
エンストン
主なチーム関係者 ルクセンブルクの旗 ジェラール・ロペス
フランスの旗 エリック・ブーリエ
イギリスの旗 ジェームズ・アリソン
アルゼンチンの旗 フェデリコ・ガスタルディ
イギリスの旗 マシュー・カーター
イギリスの旗 アラン・パーメイン
イギリスの旗 ニック・チェスター
日本の旗 小松礼雄
主なドライバー フィンランドの旗 キミ・ライコネン
フランスの旗 ロマン・グロージャン
ベルギーの旗 ジェローム・ダンブロシオ
フィンランドの旗 ヘイキ・コバライネン
ベネズエラの旗 パストール・マルドナド
以前のチーム名称 ロータス・ルノーGP
(ルノーF1チーム)
撤退後 ルノー・スポール・フォーミュラワン・チーム
F1世界選手権におけるチーム履歴
参戦年度 2012 - 2015
出走回数 77 (154台)
コンストラクターズ
タイトル
-
ドライバーズ
タイトル
-
優勝回数 2
通算獲得ポイント 706
表彰台(3位以内)回数 25
ポールポジション 0
ファステストラップ 5
F1デビュー戦 2012年オーストラリアGP
初勝利 2012年アブダビGP
最後のレース 2015年アブダビGP
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概要 編集

イギリスオックスフォードシャー州エンストン(en)に本拠地を置くこのチームは、遡ればトールマン(1981 - 1985年)、ベネトン(1986 - 2001年)、ルノー(2002 - 2010年)という歴史を持つ。2009年シーズンに発覚したクラッシュゲートのスキャンダルによりフラビオ・ブリアトーレパット・シモンズら幹部がチームを去り、ルノーがジニー・キャピタル(en)に株式の大半を売却。2010年よりエリック・ブーリエを代表とする新体制で再出発を図った。同年末にはプロトン傘下のグループ・ロータスが命名権を取得し、新たに「ロータス」のブランドを背負うことになった。

2011年はチーム名をロータス・ルノーGPに変更。コンコルド協定の都合上、コンストラクター名は依然「ルノー」のままだが、ルノーのカスタマーエンジンを搭載するという関係のみとなった(ルノーエンジンのワークス待遇は実質的にレッドブルとなった)。

2011年はマレーシアロータス・レーシングチーム・ロータスを名乗ることになり、「ロータス」の名を持つふたつのチームが参戦する事態となった。「ロータス」の名称使用を巡る訴訟が結審したのち、双方は国際自動車連盟にチーム名変更を申請し、2012年よりチーム・ロータスはケータハムF1チーム(コンストラクター名「ケータハム」)、ロータス・ルノーGPはロータスF1チーム(コンストラクター名「ロータス」)として参戦することになった[1]

2012年4月にはグループ・ロータスとの契約内容を変更し、資金的支援は終了するが、チーム名に関しては少なくとも2017年まではロータスの名を使用することになった[2]。しかし、年を追うごとに資金難が深刻になり、2015年のシーズン終了後ルノーに再買収されたため、「ロータス」の名称は再びF1から消えることになった。

シーズン 編集

2012年 編集

ドライバーは2007年のF1チャンピオンであるキミ・ライコネンと、GP2現役チャンピオンのロマン・グロージャンという前年からドライバーを入れ替えたランナップになった。ライコネンは2010年から2011年は世界ラリー選手権に参戦、グロージャンはルノー時代に2009年の後半戦を走って以来であり、2人とも2年ぶりのF1復帰となった。去年ヴァージン・レーシングのレギュラードライバーだったジェローム・ダンブロシオがサードドライバーとして契約した。ラリー参戦中の事故のため2011年シーズンを欠場したロバート・クビサとは関係が終了した[3]

ライコネンの復帰で大きな注目を集めたが、前年から大きく躍進したシーズンとなり、アブダビGPではライコネンがチームの初優勝を上げるなど、2人のドライバーで8回表彰台に上がった。またライコネンは全20戦すべて完走しそのうち19戦でポイントを獲得した結果、ドライバーズランキング3位に入る活躍を見せた。この年のE20はタイヤにやさしく決勝でのタイヤの持ちが良く、その特性を活かし上位入賞を果たしたレースも多かったが、予選一発の速さには欠けていた。またこの年は悪い意味でも注目を集めた。グロージャンが他のドライバーと絡んでのクラッシュを開幕直後から度々起こしていたが、ベルギーGPではスタート直後の大クラッシュの原因となり、次戦イタリアGPの欠場と罰金が科せられた。これを起因として他のドライバーやマスコミからもバッシングを受けるようになってしまった。グロージャンが欠場したイタリアGPではダンブロシオが出走した。

2013年 編集

ドライバーはキミ・ライコネンとロマン・グロージャンのコンビが前年から継続。マシンも2014年からの大幅変更を鑑み前年度の進化版で挑むこととなった。タイヤにやさしい特性はそのままだったのが幸いし、開幕戦であるオーストラリアGPはライコネンがチームとしては初の開幕戦勝利を挙げた。 ライコネンは1勝を上げたほか表彰台を7回獲得。前年同様予選ではやや一発の速さは劣るがそれでも決勝はタイヤにやさしいマシン特性とドライビングを活用し、一時はレッドブルベッテルとチャンピオンシップ首位争いを繰り広げた。第11戦ベルギーGPでリタイアするまで30戦連続完走、27戦連続入賞を記録し、いずれもミハエル・シューマッハを抜き最多記録を塗り替えた。しかしシンガポールGPで古傷である背中の痛みが再発し、手術のため第18戦アブダビGPと最終戦ブラジルGPの欠場を余儀なくされてしまった。 ライコネンの欠場した2レースでは、代わりにケータハムのリザーブドライバーだったヘイキ・コバライネンが出走した。 また前年「クラッシュキング」「問題児」等と呼ばれ、非難にさらされたグロージャンだったが第5戦モナコGPでトロ・ロッソリカルド相手に派手なクラッシュをしてしまった以降は自身が原因のクラッシュはみられなくなっていく。シーズン前半はあまり速さは見せられなかったが、ピレリタイヤが変更されたシーズン後半は調子を上げていき、第14戦韓国GPから16戦インドGPまで3戦連続で3位表彰台、さらに18戦アメリカGPでは終盤までトップのベッテルを追い詰め自己最高の2位表彰台に上がり、前年とは変わり別人のような安定感を見せた。

サーキットでの活躍とは裏腹にテクニカルディレクターのジェームス・アリソンの離脱や、チームの財政難によりドライバーや従業員への給与未払い及びサプライヤーへ未払い[4]が起こるなど、翌シーズンへの不安点もみられた。

2014年 編集

前年からの財政難の影響によりシーズンオフには多くのスタッフがチームから離脱し、チーム代表エリック・ブーリエまでもがロータスを辞職しマクラーレンへ移籍した[5]。新しいチーム代表にはオーナーのジェラール・ロペス が就いている[6][7]。 ドライバーは2年間チームに貢献してきたライコネンがフェラーリに移籍し、代わってウィリアムズからパストール・マルドナドが加入[8]してグロージャンとコンビを組むことになった。マルドナドの持ち込むベネズエラ国営石油会社(PDVSA)など多額のスポンサーフィーは、財政難のロータスには重要なものとなった。 新車の作成は遅れてしまい最初の冬期テストを欠席しテスト期間が短くなってしまったほか、それに加え新しいルノーのパワーユニットがまともに走行できる状態ではなかったため、冬期テスト中のマシンの熟成はほぼ出来ない状態でのシーズンスタートとなった。 シーズンが始まると案の定苦戦の連続となってしまったが、グロージャンが中国GPでは予選10位、スペインGPでは予選5位から8位入賞し、モナコでも8位入賞と徐々に復活してきたかのように見えた。しかし、スペインGPとモナコGPでの決勝8位が今シーズンのチーム最高順位となってしまう。これ以降は入賞からしばらく遠ざかり、シーズン後半第17戦アメリカGPでマルドナドが9位に入り3度目の入賞を果たすに留まった。 結局シーズンを通して活躍することは出来ず、低迷の1年となってしまった。ルノーのPUはシーズンが進むにつれ徐々にまともなものになっていったがルノーはレッドブルと共に開発を推し進めたため、ロータスは開発の恩恵をなかなか受けることができなかった。また、この年のマシン自体も良くなかったが、シーズン途中のドイツGPからはロータスの武器の一つであったFRICサスペンションが使用禁止になった[9]ことで、追い打ちをかけられた形になってしまった。

2015年 編集

エンジンを1995年以来長年使い続けたルノーからメルセデスに変更。昨年までグロージャンの担当エンジニアだった小松礼雄がチーフエンジニアに昇格した[10]。レースドライバーはグロージャンとマルドナドのまま変更なし。2月26日にスペイン出身の女性レーシングドライバーカルメン・ホルダが開発ドライバーと指定契約を発表した[11]

資金難はさらに深刻さを増し、債務者からの訴訟を受け裁判所の会社清算リストにも記載され破産寸前の状況に陥る[12]。グロージャンが2年ぶりの表彰台に上がったベルギーGP終了後、元リザーブドライバーのシャルル・ピックが契約不履行で訴訟。これによりスパのパドックでレース器材が差し押さえられる事態となった[13]。9月初旬、チームスタッフ400人への給与未払い分(8月分)をバーニー・エクレストンが肩代わりした[14]。さらに日本GPでは、支払い問題のため貨物の到着が遅れた影響で、初日フリー走行までにホスピタリティー施設の準備が整わず、スタッフの食事をバーニー・エクレストンに手配してもらう始末となった[15]

上記のようにチーム消滅の危機に瀕したこともあり、ルノーによるチーム再買収交渉が行われていた[16]が、9月28日基本合意に至り[17]、12月3日正式発表[18]、同月21日にロータスが抱えていた負債を完済し買収契約を完了した[19]。なお、この年の収支はスポンサーの減少などの要因で5700万ポンド(約80億円)の赤字だったことが翌2016年明らかにされている[20]

変遷表 編集

エントリー名 車体型番 タイヤ エンジン 燃料・オイル ドライバー ランキング 優勝数
2012年 ロータスF1チーム E20 P ルノーRS27-2012 トタル キミ・ライコネン
ロマン・グロージャン
ジェローム・ダンブロシオ
4 (303pts) 1
2013年 ロータスF1チーム E21 P ルノーRS27-2013 トタル キミ・ライコネン
ロマン・グロージャン
ヘイキ・コバライネン
4 (315pts) 1
2014年 ロータスF1チーム E22 P ルノー・エナジー F1-2014 トタル ロマン・グロージャン
パストール・マルドナド
8 (10pts) 0
2015年 ロータスF1チーム E23 Hybrid P メルセデス PU106B Hybrid PDVSA ロマン・グロージャン
パストール・マルドナド
6 (78pts) 0
  • 斜体になっているドライバーは正ドライバーの欠場による代走、スポット参戦など

脚注 編集

  1. ^ “ロータス・ルノーGP、2012年からロータスへの名称変更を正式発表”. F1-Gate.com. (2011年11月7日). http://f1-gate.com/renault/f1_13475.html 2013年2月2日閲覧。 
  2. ^ "ロータスF1、2017年まで「ロータス」の名を残す". topnews.(2012年4月11日)2013年2月18日閲覧。
  3. ^ “ロータス、ロバート・クビサとの関係を終了”. F1-Gate.com. (2012年9月5日). http://f1-gate.com/kubica/f1_16411.html 2013年7月22日閲覧。 
  4. ^ “ロータス、依然としてキミ・ライコネンに未払いあり”. F1-Gate.com. (2013年12月18日). http://f1-gate.com/lotus/f1_22010.html 2014年12月23日閲覧。 
  5. ^ “エリック・ブーリエ、マクラーレンのレーシングディレクターに就任”. F1-Gate.com. (2014年1月29日). http://f1-gate.com/mclaren/f1_22271.html 2014年12月23日閲覧。 
  6. ^ “Eric Boullier leaves Lotus to be replaced by Gerard Lopez as Team Principal”. Sky Sports. (2014年1月24日). http://www1.skysports.com/f1/news/12433/9130742 2014年1月24日閲覧。 
  7. ^ “STATEMENT”. Lotus F1 Team. (2014年1月24日). http://lotusf1team.com/statement-12737.html?lang=en 2014年1月24日閲覧。 
  8. ^ “ロータス、パストール・マルドナドとの契約を正式発表”. F1-Gate.com. (2013年11月30日). http://f1-gate.com/lotus/f1_21867.html 2013年12月6日閲覧。 
  9. ^ “FIAがFRICを公式に禁止”. F1-Gate.com. (2014年8月21日). http://ja.espnf1.com/f1/motorsport/story/171573.html 2014年12月23日閲覧。 
  10. ^ “ロータスの小松礼雄がチーフエンジニアに昇格”. AUTOSPORTweb. (2015年1月14日). https://www.as-web.jp/past/%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b0%8f%e6%9d%be%e7%a4%bc%e9%9b%84%e3%81%8c%e3%83%81%e3%83%bc%e3%83%95%e3%82%a8%e3%83%b3%e3%82%b8%e3%83%8b%e3%82%a2%e3%81%ab%e6%98%87%e6%a0%bc 2015年6月11日閲覧。 
  11. ^ F1通信(2015年2月27日)
  12. ^ “ロータス、訴訟を起こしたサプライヤーと和解”. F1-Gate.com. (2015年7月21日). http://f1-gate.com/lotus/f1_27889.html 2015年8月31日閲覧。 
  13. ^ “トヨタとBELL、ロータスに支払いを求める”. F1-Gate.com. (2015年8月28日). http://f1-gate.com/lotus/f1_28254.html 2015年8月31日閲覧。 
  14. ^ “バーニー・エクレストン、ロータスのF1スタッフの8月分の給料を立て替え”. F1-Gate.com. (2015年9月2日). http://f1-gate.com/lotus/f1_28284.html 2015年9月7日閲覧。 
  15. ^ “ロータス、食事を手配してくれたバーニー・エクレストンに感謝”. F1-Gate.com. (2015年9月2日). http://f1-gate.com/lotus/f1_28578.html 2015年9月7日閲覧。 
  16. ^ “ロータス、ルノーとの交渉によってPDVSAからの支払いが保留に”. F1-Gate.com. (2015年9月2日). http://f1-gate.com/lotus/f1_28290.html 2015年9月7日閲覧。 
  17. ^ “ルノー、ロータスF1チームの買収を発表”. F1-Gate.com. (2015年9月28日). http://f1-gate.com/renault/f1_28633.html 2015年9月28日閲覧。 
  18. ^ “ルノー、ロータスF1チーム買収とワークス参戦を正式発表”. F1-Gate.com. (2015年12月4日). http://f1-gate.com/renault/f1_29380.html 2015年12月11日閲覧。 
  19. ^ “ルノー、ロータス買収契約を完了。 新名称は2月に発表へ”. AUTOSPORTweb. (2015年12月22日). https://www.as-web.jp/past/%e3%83%ab%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%80%81%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%82%b9%e8%b2%b7%e5%8f%8e%e5%a5%91%e7%b4%84%e3%82%92%e5%ae%8c%e4%ba%86%e3%80%82-%e6%96%b0%e5%90%8d%e7%a7%b0%e3%81%af2%e6%9c%88%e3%81%ab 2015年12月22日閲覧。 
  20. ^ “ロータスF1、約80億円の赤字が判明。現ルノーの将来には懸念なし”. AUTOSPORTweb. (2016年7月20日). http://www.as-web.jp/f1/31277 2016年7月20日閲覧。 

関連項目 編集

外部リンク 編集