ワン・モア・フロム・ザ・ロード

ワン・モア・フロム・ザ・ロード』(原題:One More from the Road[注釈 1])は、アメリカ合衆国ロックバンドレーナード・スキナード1976年に録音・発表した、キャリア初のライブ・アルバム。1976年7月のアトランタ公演のライブ音源が収録され、2枚組LPとして発売された[4]

ワン・モア・フロム・ザ・ロード
レーナード・スキナードライブ・アルバム
リリース
録音 1976年7月7日 - 9日 ジョージア州アトランタ フォックス・シアター英語版[1]
ジャンル サザン・ロック
時間
レーベル MCAレコード
プロデュース トム・ダウド
ロン・オブライエン(2001年デラックス・エディション盤)
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 9位(アメリカ[2]
  • 17位(イギリス[3]
  • レーナード・スキナード アルバム 年表
    ギミー・バック・マイ・ブレッツ
    (1976年)
    ワン・モア・フロム・ザ・ロード
    (1976年)
    ストリート・サヴァイヴァーズ
    (1977年)
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    背景 編集

    エド・キングの後任として加入した新ギタリスト、スティーヴ・ゲインズの初参加アルバムに当たり、本作に収録されたライブの初日に当たる7月7日の公演は、ゲインズ加入後からわずか3度目のライブであった[5]。ロニー・ヴァン・ザントは1976年10月24日付の『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載されたインタビューにおいて「俺達はギタリストが3人の編成で、嘘偽りのないライブ・アルバムをすぐに作ろうと決めた」と語っている[6]。本作に収録されたアトランタ公演は3日連続で行われ、プロデューサーのトム・ダウドによれば、バンドとダウドは2日目の公演の終了後にライブ録音を聴き直し、最終日のセットリストはダウドが「この曲はもう一度やってみるべきだ」と判断した曲が重視されたという[7]

    過去4作のアルバムからの11曲、新曲「トラヴェリン・マン」、それに本作が初出のカヴァー2曲から成る。「トラヴェリン・マン」は、ベーシストのレオン・ウィルクソンが初めてソングライターとしてクレジットされた曲で、ウィルクソンによれば、ベースの弦を張り替えた時に曲を思いつき、その後ロニー・ヴァン・ザントが歌っていたフレーズを聴いて、自分の考えたベース・ラインに合うと考え、曲が完成したという[7]。この曲は再結成後のアルバム『トゥエンティ』(1997年)に初のスタジオ・ヴァージョンが収録され、ボーカル・パートの一部は本作に収録されたロニー・ヴァン・ザントの声が流用された[8]

    「T・フォー・テキサス」はジミー・ロジャーズのカヴァーで、エド・キング在籍時からのレパートリーであった[7]。「クロスロード」はロバート・ジョンソンの曲だが、アレンジはクリームのヴァージョンに基づいている[7][9]

    アレン・コリンズは、本作に収録された「フリー・バード」のギター・ソロに不満を持ち、オリジナルLPでは自分のソロの一部をオーバー・ダビングしたが、この時のマスター・テープは後に紛失し、2001年発売のデラックス・エディション盤では実際のライブ演奏の録音が使用された[7]

    反響 編集

    アメリカのBillboard 200では9位を記録し、自身2作目の全米トップ10アルバムとなった[2]全英アルバムチャートでは17位に達し、初の全英トップ20入りを果たした[3]

    評価 編集

    Stephen Thomas Erlewineはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け「レーナード・スキナードは良いコンサートを行いトラヴェリン・バンドとして名利を得てきたので、4作目のアルバム『ギミー・バック・マイ・ブレッツ』からわずか数か月後に当たる1976年に『ワン・モア・フロム・ザ・ロード』という2枚組ライブ・アルバムを出したことは理にかなっている」と評している[10]。ジョン・ミルワードは1976年11月4日付の『ローリング・ストーン』誌のレビューにおいて、「クロスロード」のカヴァーを「南部のブルース・ロックと鋭利なブリティッシュ・ロックという、レーナード・スキナードの音楽的影響を巧みに封入している」、アルバム全体に関して「極上のギター・ロックを提示している」と評している[9]。また、『ギター・ワールド』誌の編集者Ted Drozdowskiは、「ザ・フーの『ライヴ・アット・リーズ』、オールマン・ブラザーズ・バンドの『フィルモア・イースト・ライヴ』、ジミ・ヘンドリックスの『バンド・オブ・ジプシーズ』、レッド・ツェッペリンの『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』と並んで神殿入りに値する、最も偉大なロック・コンサート・アルバムの一つ」「フロリダ州ジャクソンビルから来たならず者バンドの、演奏面でのピークを記録している」と評している[5]

    Michael GallucciはUltimate Classic Rockの企画「Top 10 Lynyrd Skynyrd Songs」において、本作の「フリー・バード」を「もし時間があれば、『ワン・モア・フロム・ザ・ロード』に収録された秀逸な14分のライブ・テイクが、スタジオ・ヴァージョンの代用品となり得る」と評している[11]

    リイシュー 編集

    初期の再発CDは、収録時間の制約から「トラヴェリン・マン」と「T・フォー・テキサス」が外されて12曲入りとなった[12]。1996年の再発CDは2枚組で発売され、オリジナルLPには未収録だった「シンプル・マン」と「ギミー・バック・マイ・ブレッツ」、それに「スウィート・ホーム・アラバマ」の別テイクを加えた17曲入りとなり、曲順も変更された[13]

    2001年に発売されたデラックス・エディション盤は、前述の3トラックに加えて、未発表の別テイク3トラックやコンピレーション・アルバム『Skynyrd Collectybles』(2000年)が初出の別テイク4トラックも含む24曲入りとなり、ケヴィン・エルソン英語版とマイク・ウィーヴァーがリミックスを行った[1]。2007年9月12日には、ユニバーサル・ミュージック・ジャパンから2001年デラックス・エディション盤と同内容の紙ジャケットCDも発売された[14]

    収録曲 編集

    オリジナルLP 編集

    サイド1 編集

    1. ワーキン・フォー・MCA - "Workin' for MCA" (Ed King, Ronnie Van Zant) - 4:38
    2. アイ・エイント・ザ・ワン - "I Ain't the One" (Gary Rossington, R. Van Zant) - 3:37
    3. サーチング - "Searching" (Allen Collins, R. Van Zant) - 3:51
    4. チューズデイズ・ゴーン - "Tuesday's Gone" (A. Collins, R. Van Zant) - 7:39

    サイド2 編集

    1. サタデイ・ナイト・スペシャル - "Saturday Night Special" (E. King, R. Van Zant) - 5:30
    2. トラヴェリン・マン - "Travelin' Man" (R. Van Zant, Leon Wilkeson) - 4:08
    3. ウィスキー・ロック・ア・ローラー - "Whiskey Rock-a-Roller" (E. King, Billy Powell, R. Van Zant) - 4:14
    4. スウィート・ホーム・アラバマ - "Sweet Home Alabama" (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) - 6:49

    サイド3 編集

    1. ギミー・スリー・ステップス - "Gimme Three Steps" (A. Collins, R. Van Zant) - 5:00
    2. コール・ミー・ザ・ブリーズ - "Call Me the Breeze" (J.J. Cale) - 5:27
    3. T・フォー・テキサス - "T for Texas" (Jimmie Rodgers) - 8:26

    サイド4 編集

    1. ザ・ニードル・アンド・ザ・スプーン - "The Needle and the Spoon" (A. Collins, R. Van Zant) - 4:17
    2. クロスロード - "Crossroads" (Robert Johnson) - 3:44
    3. フリー・バード - "Free Bird" (A. Collins, R. Van Zant) - 11:30

    デラックス・エディション盤 編集

    各曲の録音日は下記の通り[1]

    • 7月7日 - #1, #6, #7(ディスク1)/#5, #6, #7, #8(ディスク2)
    • 7月8日 - #2, #3, #5, #8, #9, #12, #13(ディスク1)/#3, #4, #9, #10(ディスク2)
    • 7月9日 - #4, #10, #11(ディスク1)/#1, #2, #11(ディスク2)

    ディスク1 編集

    1. イントロダクション〜ワーキン・フォー・MCA - "Introduction by Alex Cooley/Workin' for MCA" (E. King, R. Van Zant) - 5:32
    2. アイ・エイント・ザ・ワン - "I Ain't the One" (G. Rossington, R. Van Zant) - 3:47
    3. サタデイ・ナイト・スペシャル - "Saturday Night Special" (E. King, R. Van Zant) - 5:39
    4. サーチング - "Searching" (A. Collins, R. Van Zant) - 4:00
    5. トラヴェリン・マン - "Travelin' Man" (R. Van Zant, L. Wilkeson) - 4:37
    6. シンプル・マン - "Simple Man" (G. Rossington, R. Van Zant) - 6:56
    7. ウィスキー・ロック・ア・ローラー - "Whiskey Rock-a-Roller" (E. King, A. Powell, R. Van Zant) - 4:48
    8. ザ・ニードル・アンド・ザ・スプーン - "The Needle and the Spoon" (A. Collins, R. Van Zant) - 4:35
    9. ギミー・バック・マイ・ブレッツ - "Gimme Back My Bullets" (G. Rossington, R. Van Zant) - 4:01
    10. チューズデイズ・ゴーン - "Tuesday's Gone" (A. Collins, R. Van Zant) - 8:25
    11. ギミー・スリー・ステップス - "Gimme Three Steps" (A. Collins, R. Van Zant) - 5:11
    12. コール・ミー・ザ・ブリーズ - "Call Me the Breeze" (J.J. Cale) - 5:51
    13. T・フォー・テキサス - "T for Texas (Blue Yodel #1)" (Rodgers) - 9:14

    ディスク2 編集

    1. スウィート・ホーム・アラバマ - "Sweet Home Alabama" (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) - 7:29
    2. クロスロード - "Crossroads" (R. Johnson) - 4:16
    3. フリー・バード - "Free Bird" (A. Collins, R. Van Zant) - 14:25
    4. ワーキン・フォー・MCA(オルタネイト・テイク)"Introduction by Alex Cooley/Workin' for MCA" (E. King, R. Van Zant) - 5:37
    5. アイ・エイント・ザ・ワン(オルタネイト・テイク) - "I Ain't the One" (G. Rossington, R. Van Zant) - 3:52
    6. サーチング(オルタネイト・テイク) - "Searching" (A. Collins, R. Van Zant) - 4:13
    7. ギミー・スリー・ステップス(オルタネイト・テイク) - "Gimme Three Steps" (A. Collins, R. Van Zant) - 4:42
    8. コール・ミー・ザ・ブリーズ(オルタネイト・テイク) - "Call Me the Breeze" (J.J. Cale) - 5:43
    9. スウィート・ホーム・アラバマ(オルタネイト・テイク) - "Sweet Home Alabama" (E. King, G. Rossington, R. Van Zant) - 7:27
    10. クロスロード(オルタネイト・テイク) - "Crossroads" (R. Johnson) - 4:46
    11. フリー・バード(オルタネイト・テイク) - "Free Bird" (A. Collins, R. Van Zant) - 14:48

    参加ミュージシャン 編集

    • ロニー・ヴァン・ザント - ボーカル
    • ゲイリー・ロッシントン - ギター
    • アレン・コリンズ - ギター
    • スティーヴ・ゲインズ - ギター
    • ビリー・パウエル - キーボード
    • レオン・ウィルクソン - ベース
    • アーティマス・パイル - ドラムス

    アディショナル・ミュージシャン

    • ジョジョ・ビリングスレイ - バッキング・ボーカル
    • キャシー・ゲインズ - バッキング・ボーカル
    • レスリー・ホーキンス - バッキング・ボーカル
    • サム・マクファーソン - ハーモニカ(on "Tuesday's Gone")[1]

    脚注 編集

    注釈 編集

    1. ^ ジャケットでは『One More For From The Road』と記載されている。

    出典 編集

    1. ^ a b c d e Lynyrd Skynyrd - One More From The Road (25th Anniversary Deluxe Edition) (CD, Album) at Discogs
    2. ^ a b Lynyrd Skynyrd - Awards”. AllMusic. 2016年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月21日閲覧。
    3. ^ a b LYNYRD SKYNYRD | full Official Chart History | Official Charts Company - 「Albums」をクリックすれば表示される
    4. ^ Lynyrd Skynyrd - One More From The Road (Vinyl, LP, Album) at Discogs - オリジナルLPの情報
    5. ^ a b Drozdowski, Ted (2015年6月26日). “Gary Rossington Discusses 'One More for the Fans!' and His Life and Times with Lynyrd Skynyrd”. Guitar World. NewBay Media. 2016年3月15日閲覧。
    6. ^ Crowe, Cameron. “Lynyrd Skynyrd - L.A. Times”. The Uncool/Vinyl Films. 2016年3月15日閲覧。
    7. ^ a b c d e 2001年デラックス・エディション盤CD (MCA, 0600753278529)英文ライナーノーツ (Ron O'Brien) pp. 11-18
    8. ^ Travelin' Man by Lynyrd Skynyrd”. Songfacts. 2016年3月15日閲覧。
    9. ^ a b Milward, John (1976年11月4日). “Lynyrd Skynyrd One More From The Road Album Review”. Rolling Stone. 2016年3月15日閲覧。
    10. ^ Erlewine, Stephen Thomas. “One More from the Road - Lynyrd Skynyrd”. AllMusic. 2016年3月15日閲覧。
    11. ^ Gallucci, Michael. “Top 10 Lynyrd Skynyrd Songs”. Ultimate Classic Rock. Diffuser Network. 2016年3月15日閲覧。
    12. ^ Lynyrd Skynyrd - One More From The Road (CD, Album) at Discogs - 1987年再発CDの情報
    13. ^ Lynyrd Skynyrd - One More From The Road (CD, Album) at Discogs - 1996年再発CDの情報
    14. ^ レーナード・スキナード/ワン・モア・フロム・ザ・ロード (紙ジャケット仕様) (2CD) (限定)”. CDJournal. 音楽出版社. 2016年3月15日閲覧。

    外部リンク 編集