ヴェルンドの歌」(Völundarkviða より正確には Vǫlundarkviða[1] は、古エッダの神話的な詩のひとつである。

ヴェルンドと2人の兄弟が白鳥乙女の水浴を見ている。イェニー・ニュストレム画、1893年。
覗き見る3人の鍛冶の若者。後に彼らは3人のヴァルキュリャの乙女と結婚する。フリードリヒ・ハイネ英語版画、1882年。

あらすじ 編集

この詩は職人のヴェルンドの物語と関連しており、詩の中で彼は「妖精(アールヴ)の王子(vísi álfa)」あるいは「妖精のリーダー(álfa ljóði)」と呼ばれる。ヴェルンドはまた、フィンの王の3人の息子のひとりであると言及される。彼の妻ヘルヴォル・アルヴィトはヴァルキュリャで、9年後夫を捨て去り、その後ヴェルンドは、彼の黄金に目が眩んだニャーラル(スウェーデン)の小王ニーズス英語版に捕らえられる。ヴェルンドは膝の腱を切られ、島にある王のための品を制作する工房へ入れられる。最終的にヴェルンドは逃げる方法を見つけ、ニーズスの息子を殺し、娘を妊娠させ、笑いながら飛び去る。

「ヴェルンドの歌」は、生き生きした描写を呼び起こすことに真価を認められる。

In the night went men,
in studded corslets,
their shields glistened
in the waning moon.
「ヴェルンドの歌」第6スタンザ、ソープ訳。
鋲打たれた甲冑の
男どもは夜を行く
欠けゆく月に
彼らの盾が輝いた
 
中央にヴェルンド、左にニーズスの娘、そしてニーズスの死んだ息子たちがヴェルンドの右側に配されている。ヴェルンドはタカの羽根で飛び去る姿のようにも見える。(アードレの絵画石碑英語版

ヴェルンドの神話は、ゲルマン族のひとびとの間に広く知られていたようである。この物語は『シズレクのサガヴェーレントの話)』とも関連しており、古英語詩「デオールの嘆き英語版」の中でも言及されている。また、7世紀のアングロ・サクソン族のフランクスの小箱英語版のパネルの1つと、ゴトランド島にある8世紀のアードレの絵画石碑英語版VIIIに描かれている。

この詩は王の写本の神話詩の中に完全に保存されているほか、散文による序詞がAM 748 I 4to断片にも見られる。

脚注 編集

  1. ^ 「ヴェルンドの歌」の英語化にはVölundarkvitha, Völundarkvidha, Völundarkvida, Volundarkvitha, Volundarkvidha, Volundarkvida などがある。

出典 編集

翻訳元

  • アーシュラ・ドロンケ (編訳) (1997). The Poetic Edda, vol. II, Mythological Poems. Oxford: Clarendeon. ISBN 0-19-811181-9.
  • ベンジャミン・ソープ(翻訳) (1866). Edda Sæmundar Hinns Froða: The Edda Of Sæmund The Learned. (2 vols.) London: Trübner & Co. 1866. Reprinted 1906 as Rasmus B. Anderson & J. W. Buel (Eds.) The Elder Eddas of Saemund Sigfusson. London, Stockholm, Copenhagen, Berlin, New York: Norrœna Societ. Available online at Google Books. Searchable graphic image version requiring DjVu plugin available at University of Georgia Libraries: Facsimile Books and Periodicals: The Elder Eddas and the Younger Eddas.

翻訳

  • V.G.ネッケル他編 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、p.93-98。

「ヴェルンドの歌」の完訳を収録。

外部リンク 編集

英訳 編集

古ノルド語版 編集