一意性(いちいせい、英語: uniqueness)とは数学分野において、注目している数学的対象が「存在するならばただ一つだけである」或いは「ただ一つだけ存在している(つまり「存在して、かつ、存在するならばただ一つだけである」の意)」という性質である。

これら二つの主張は論理的な意味が異なるが、文脈によってどちらの意味かは異なる。

たとえば群論における「逆元の一意性」は前者の意味で証明されるし、整数論における「素因数分解の一意性」は後者が成り立つことを主張している。

また、一意的に存在することを記号「∃![1]、もしくは「∃=1」のように書くことができ、たとえば  

 

は、「 を満たすような自然数 がただ一つ存在する」という意味の論理式となる。

一意性の証明 編集

ある対象が一意性を満たすかどうかを証明する方法は、始めに目的の条件を持つ対象が存在することを証明し、次にそのような対象がもう一つあり(例:   )、それらが互いに等しいこと(すなわち  )を示すことで得られる。

例えば、方程式:   満たす解が1つであることを示すには、まず少なくとも1つの解、すなわち   を満たす解   が存在することを証明しなければならない。この証明は、単に下記の方程式が成り立つことを確認すればよい:

 

解が一意性であることを示すために、  を満たす解が、   の2つ存在することを仮定して解く。 このとき、

  かつ  

両方の方程式から等号の推移律により、

 

両辺から 2 を引くと、

 

となり、  を満たす解が 3 の一意に決まることが証明できた。

一般に、ある条件を満たす対象がただ一つ存在すると示すためには、存在性(少なくとも1つの対象が存在すること)と一意性(多くても1つの対象が存在すること)の両方を証明しなければならない。

一意性を証明する他の証明方法として、条件を満たす対象   が存在することを証明して、その条件を満たすすべての対象が   と等しいことを証明する方法がある。

述語論理 編集

述語(性質) P を満たす議論領域の対象 x がただ一つ存在するという命題∃!x P(x) と書く。これは述語論理連言 含意 存在記号 全称記号 などを用いて書かれる

 

という命題を指す。同値な別の表現(あるいは定義)としては、存在性と一意性を分離した

 

や短さに重きをおいた

 

などがある。

関連項目 編集

参考文献 編集

  • スティーヴン・コール・クリーネ (1952). Introduction to Metamathematics. Ishi Press International. pp. 199. doi:10.2307/2268620. OCLC 523942 
  • ピーター・B・アンドリュース (2002). An introduction to mathematical logic and type theory to truth through proof (2. ed.). Dordrecht: Kluwer Acad. Publ.. pp. 233. doi:10.1007/978-94-015-9934-4. ISBN 1-4020-0763-9. ISSN 1386-2790. LCCN 2002--3165 

脚注 編集

  1. ^ Patrick Keef, David Guichard. “2.5 Uniqueness Arguments” (英語). www.whitman.edu. Introduction to Higher Mathematics. 2019年12月15日閲覧。