否認主義(ひにんしゅぎ、Denialism)とは、心理的に不快な真実を回避するために、現実否認するという人間の選択を指す。

そのひとつに歴史否定主義(Historical negationism)、ネガシオニスム: Négationnisme: Negationism)があり、具体的には過去に行われていたとされる大量虐殺ホロコーストの存在を否定する立場のことを指し、とりわけ第2次世界大戦ナチス・ドイツによって実施されたホロコースト(:Shoah)に関して用いられることが多い。ドイツなどヨーロッパの国ではホロコースト否認・ナチス賛美に関する主張・出版・公開について非合法化されている国もある(ドイツ刑法第130条第3項:民衆煽動罪)。ホロコースト否認の言論活動と、国境を越えた法規制の問題については戦う民主主義を参照。

現代における例 編集

AIDS否認主義 編集

AIDS否認主義は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因がヒト免疫不全ウイルス(HIV)であることを否認する[1]。 エイズ否認主義は「反科学運動の中で、最も声高い」とされている[2]。否認においては、ウイルスの存在自体を否認する者もいれば、無害なありふれたウイルスでありAIDSの原因ではないと主張する者もいる。AIDSという病気について認める者は、それはウイルス感染ではなく、娯楽薬の使用、栄養失調、衛生状態の悪さ、抗レトロウイルス薬の副作用、これらの組み合わせに起因すると主張している。しかしHIVがAIDSを引き起こすという証拠は科学的に揺るぎないものである。[3][4]

かつて南アフリカタボ・ムベキ元大統領は、AIDS否認主義を受け入れ、AIDSは主に貧困によって引き起こされたと宣言した。彼の大統領在任中に約365,000人がAIDSで死亡したが、しかしこれは適切な治療が可能であったならば、約343,000人の早期死亡を防ぐことができたと推定されている[5][6]

地球温暖化 編集

COVID-19 編集

進化論 編集

地球平面説 編集

歴史的な例 編集

脚注 編集

  1. ^ “AIDS denialism and public health practice”. AIDS Behav 14 (2): 237–47. (April 2010). doi:10.1007/s10461-009-9654-7. PMID 20058063. 
  2. ^ “"There is no Proof that HIV Causes AIDS": AIDS Denialism Beliefs among People Living with HIV/AIDS”. J Behav Med 33 (6): 432–40. (June 2010). doi:10.1007/s10865-010-9275-7. PMC 3015095. PMID 20571892. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3015095/. 
  3. ^ Institute of Medicine (US) Committee for the Oversight of AIDS Activities (1988). Confronting AIDS: Update 1988. Institute of Medicine of the U.S. National Academy of Sciences. doi:10.17226/771. ISBN 978-0-309-03879-9. PMID 25032454. https://www.nap.edu/read/771/chapter/2#2. "…the evidence that HIV causes AIDS is scientifically conclusive." 
  4. ^ The Evidence that HIV Causes AIDS”. National Institute of Allergy and Infectious Disease (2010年1月14日). 2010年10月8日閲覧。
  5. ^ “Estimating the Lost Benefits of Antiretroviral Drug Use in South Africa”. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 49 (4): 410–415. (October 2008). doi:10.1097/QAI.0b013e31818a6cd5. PMID 19186354. 
  6. ^ Nattrass N (February 2008). “Estimating the Lost Benefits of Antiretroviral Drug Use in South Africa”. African Affairs 107 (427): 157–76. doi:10.1093/afraf/adm087. 

関連項目 編集