大都会』(だいとかい)は、1976年1月から1979年9月にかけて日本テレビ系列で毎週火曜日21:00 - 21:54(JST)に全3シリーズが放送された、石原プロモーション制作による連続テレビドラマシリーズである。

概要 編集

1962年の会社設立以来映画制作を活動の中心に置いていた石原プロが、初めて本格的にテレビドラマ制作を手掛けた作品である。渋谷地域を管轄する架空の警察署「城西警察署」管内を主な舞台とし、渡哲也演ずる刑事・黒岩頼介を主人公と位置付けている点は共通しているが、各シリーズ毎にほぼ完全に独立した世界観を構築しており、作品カラーも大きく異なるのが特徴である。

脚本家・倉本聰と石原プロとの共同企画によるシリーズ第1作『大都会 闘いの日々』は暴力団事件にスポットを当てた社会性が強い内容であり、事件記者ドラマやラブストーリー物の要素も組み込まれた作風は主に識者層から高い評価を得ていたものの[1]、視聴率は低迷。日テレの単独企画による第2シリーズ『大都会 PARTII』以降は事実上の原作者である倉本の手から完全に離れ、銃撃戦やカースタントなどのアクションシーンを前面に出した内容が人気を博し、『太陽にほえろ!』『熱中時代』『新五捕物帳』などとともに当時の日テレを代表する看板シリーズのひとつに成長した[2]

第1作にはエンディング主題歌はなかったが、第2作の途中から渡哲也歌唱の『ひとり』が使用されるようになった。主演俳優が主題歌を歌うパターンは『西部警察』にも受け継がれる事になる。また、たまにクラシックも劇中で使用することがあるが、特にJ.S.バッハの楽曲が顕著である。クラヴィーア組曲『パルティータ』の数曲が全シリーズのうち3度ほどBGMで流れたことがあり、劇的な雰囲気を演出している。後に『西部警察』にも使用された、ムソルグスキー作『展覧会の絵』の第1曲目・小人が第3作目にも2度ほど使用され、不気味な雰囲気を醸し出されている。

シリーズの終了とその後 編集

石原プロはかねてより『大都会』よりもスケールの大きな作品を望んでおり、そんな中でテレビ朝日から破格の条件(広告代理店を介さない、石原プロとテレビ局の直接契約)を提示された事を機に日テレでのドラマ制作から撤退し、本作の設定・キャスト・スタッフをほぼ受け継いだ新シリーズ『西部警察』の製作を発表。一方、『大都会』は『…PARTIII』終盤時点でも依然平均視聴率は20%を超える人気を誇っていたが、日テレは内部的な事情から続行を断念せざるを得ず[2]、『PARTIII』を最後に『大都会』シリーズは途絶えることとなった。

テレビシリーズ 編集

大衆文化への影響 編集

  • 本シリーズの後、日テレ火曜21時枠では『大追跡』『大激闘マッドポリス'80』の2作品で『大○○』というタイトリングが踏襲されている。また、『プロハンター』の企画検討タイトルも『大冒険』だった。これについてプロデューサーの山口剛は、「『大』を付けて時間枠のタイトルを統一しようという意図があったのではないか」と語っている[3]
  • 1978年に公開された東映映画『最も危険な遊戯』(主演:松田優作、監督:村川透)は、制作会社こそ違えど『PARTII』の流れを大きく汲むものであり、実際、“城西警察署”が劇中に登場しており、共通するスタッフ・キャストも多い。
  • ゆでたまごによる漫画『キン肉マン』原作第14話「恐怖のバスジャックの巻」には、『PARTIII』の黒岩、牧野、宮本らを模した「城西署の赤岩軍団」と名乗る刑事の集団が登場する。赤岩は劇中で死亡するが、後に“五分刈刑事”として日本テレビの1983年アニメ版のレギュラーとなる。
  • 『PARTIII』の後番組『探偵物語』第3話(制作第1話)「危険を買う男」では、クライマックスのアクションシーンにて工藤探偵が「おいおい、まるで『大都会PARTIII』じゃねえか」と呟くカットが存在する。
  • 瀬戸内シージャック事件をモチーフとした1982年松竹映画『凶弾』(主演:石原良純、監督:村川透)では、警察に逮捕された仲間を心配する主人公・荒木(石原)が「すごくいじめられてるぞ、『大都会』みたいに」と呟く。
  • 真船一雄による医療漫画『スーパードクターK』には、捜査第4課の刑事として、風貌が黒岩と酷似した「黒松丈助」というキャラクターが登場する。本作にはこのほか、「高品」「西城頼介」など、『大都会』のキャスト、登場人物、地名などを引用したと思われる名称が存在する。
  • 特撮ヒーロードラマ『特捜エクシードラフト』第25話「発進!超マシン」(脚本:宮下隼一)は、『PARTII』第37話「銀行ギャング徳吉」(脚本:柏原寛司)のプロットを流用した作品である。
  • 本作と同時期に日本テレビ系で放映されていたアニメ『元祖天才バカボン』第74回Aパート「凶悪犯人大追跡なのだ」では、バカボンのパパが目玉のおまわりさんに対し「手柄を立てて大都会の太陽にほえろの署長になるのだ」と言って奮起させるシーンが存在する。本作は『大都会』と同じ鈴木清司が選曲を手掛けていたため、BGMやイメージブリッジなどは『闘いの日々』のサウンドトラックからの流用も多い。
  • テレビアニメ『UN-GO』第2話「無情のうた」は、『闘いの日々』第8話「俺の愛した ちあき・なおみ」にオマージュを捧げた作品である(會川昇『UN-GO 會川昇脚本集』著者コメントより)。

二次放送・ソフト化・ネット配信 編集

  • テレビでは1986年から1987年にかけて日本テレビで行われた全シリーズの再放映以来、20年に渡って放送がストップしていたが、2007年よりスタートした日テレプラス(CS放送局)での再放映を境にサルベージ企画の動きが再び活発化。
  • 他、チャンネル銀河(CS放送局)、BS11デジタル(BS放送局)でもHDリマスター版が放送開始された(詳しくは各シリーズの項を参照)。
  • 2012年には石原プロ50周年記念プロジェクトの一環として、4月18日発売の『大都会 闘いの日々 BOX』(DVD-BOX、発売元:ポニーキャニオン、PCBP-62021)を皮切りに、初の全シリーズビデオソフト化が決定した。
  • 動画配信サービスでは日本テレビ系列のhuluで3作品が配信されている。

出典・参考資料 編集

  1. ^ 洋泉社映画秘宝』2012年5月号/山口剛インタビュー、『大都会 闘いの日々』DVD-BOX(ポニーキャニオン)解説書など
  2. ^ a b 日本テレビ出版部『青春ドラマ夢伝説岡田晋吉
  3. ^ 『大追跡 DVD-BOX』(発売:バップ)特典ディスク「アンソロジーメイキング」より

関連項目 編集

外部リンク 編集