大阪高速鉄道2000系電車
大阪高速鉄道2000系電車(おおさかこうそくてつどう2000けいでんしゃ)は、大阪高速鉄道(現・大阪モノレール)が導入したモノレール車両である。
大阪高速鉄道2000系電車 | |
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2000系電車(沢良宜駅で撮影) | |
基本情報 | |
運用者 | 大阪高速鉄道(→大阪モノレール) |
製造所 |
日立製作所笠戸事業所(11~14・17・18編成) 川崎重工業(15・16編成) |
製造年 | 2001年 - 2009年 |
製造数 | 4両編成8本(32両) |
運用開始 | 2001年12月10日[1] |
投入先 | 大阪モノレール本線・彩都線 |
主要諸元 | |
編成 |
4両編成(3M1T相当) (将来の6両編成化に対応) |
軌間 | 軌道桁幅 850 mm |
電気方式 | 直流 1,500 V(剛体複線式) |
最高運転速度 | 75 km/h |
起動加速度 | 3.0 km/h/s |
減速度(常用) | 4.0 km/h/s |
減速度(非常) | 4.5 km/h/s |
編成定員 | 410人 |
車両定員 |
(2100形・2600形)98人 (2200形・2500形)107人 |
車両重量 |
(2100形・2600形)26.3t (2500形)26.0t (2200形)25.9t |
編成重量 | 104.5t |
全長 |
(2100形・2600形)15,500 mm (2200形・2500形)14,600 mm |
全幅 | 2,980 mm |
全高 |
(2100形・2600形)5,200 mm (2200形・2500形)5,140 mm |
床面高さ | 1,130 mm |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 |
鋼板溶接構造2軸ボギー跨座形台車 HAF-31形(動力)・HAF-32形(付随) |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 |
主電動機出力 | 100kW[2] |
駆動方式 | 2段減速直角カルダン駆動方式 |
歯車比 | 6.55 |
制御方式 | 3レベルIGBT素子VVVFインバータ制御(1C2M3群制御) |
制御装置 | 日立製作所製 VFI-HR3610G形 |
制動装置 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ・保安ブレーキ・駐車ブレーキ |
保安装置 | 車内信号式ATC |
備考 | 出典[1] |
同鉄道が導入している1000系には系列内でも製造年による相違点が多く存在しているが、この系列でも同様に製造年で多くの相違点が発生している。2001年8月に行われた朝ラッシュ時の運転間隔短縮に対応するために2001年に最初の編成が登場した[3]。その後しばらく運転間隔のさらなる短縮や路線延長が無かったために増備はなかったが、2005年になって彩都線延伸準備のため6編成が増備され、2009年にも1編成が増備されたため、現在は全8編成で運用されている。
概要 編集
- 車体は1000系に引き続いてアルミニウム合金製。
- 1000系と同じく4両固定編成だが、将来の6両編成化に対応している(ただし、2007年3月19日に開業した彩都線の豊川駅、彩都西駅のホーム有効長は4両分しか設けられていない)。
- 車両番号は2111 - 2611、2112 - 2612、2113 - 2613、2114 - 2614、2115 - 2615、2116 - 2616、2117 - 2617、2118 - 2618(300と400は欠番、以下11編成・12編成・13編成・14編成・15編成・16編成・17編成・18編成)が振り当てられている。
- 1000系では5編成存在する広告ラッピング編成は、2000系では長らく存在しなかったが、2010年9月に初めて部分ラッピング車両が登場した。
- 2010年代以降、前照灯が白色LEDに変更されている。
- 2017年、方向幕がフルカラーLEDに変更された編成が登場した。
- 2018年、LED式車内案内表示器を「案内情報画面」に更新した編成も登場した。
外装・内装 編集
2000系共通の外・内装 編集
- 外装については17編成以外は1000系21 - 25編成と同じくアルミ無塗装にマリンブルー、アザレアパープル、ホワイトのラインを採用し、ロゴマークは貫通ドアの右側に描かれている。また、側面には方向幕が設置されている。座席については1000系の01 - 06編成と同じく新造時からオールロングシートを採用している。シートカラーは1000系24編成までのようなピンク系から、25編成のロングシート同様の薄紫色に変更されている。乗務員室直後には前面展望用の2人掛け高床シートがあるが、ここだけは25編成のクロスシートと同様の青と薄紫の2色のシートである(ただし、最新の18編成だけはロングシートと同様の薄紫色1色である)。また、LEDによる車内案内表示器が2箇所に設置されている。車内非常通報装置は車椅子スペースに移動している。車椅子スペースの位置は1000系21 - 25、31、32編成と同じである。
2000系同士の相違点 編集
2000系は1000系と同様に、各編成ごとに細かい違いがあるため、編成ごとに記述する。
- 11編成:この編成は1000系21~25編成のロングシート車両に準じたものとなっているが、シートカラーは薄紫色となり、バケット式ではない通常のシートとなった。先頭車両と2両目間の貫通幌は、1000系から引き継がれた2両が1室に感じられるきわめて幅広のものである。蛍光灯カバーも1000系同様に取り付けられている。床敷物の色は1000系の25編成と同じ中央部がクリーム系の色で、両側が茶色のかかった灰色である。運転席も1000系の25編成と同じ濃い紫色である。このあと4年間2000系の増備はなかった。なお、同編成の床敷物は後に石材調のものに変更されドアブザーもチャイムに更新された。
- 12編成:この編成以降は11編成のロングシートの端部分の仕切りのポールが湾曲した形で荷棚までつながっている形になった。ドアチャイムは阪急9300系電車の音に準じたものに変更された。ドアチャイムと連動してドアの開閉を示す赤色の開閉予告灯がドア上部に設置された。また、視覚障害者のために盲導鈴が数秒に1回鳴るようになった。この編成以降にはすべての連結部分に貫通扉が設置されるようになった。ただし、従来の2両目と3両目の間の連結部の貫通扉は連結幌の両側に設置されていたが、この編成からは連結幌の片方1箇所だけの設置になった。またこの編成からドアの上部にどこを走っているかなどを知らせるLED式路線図が2箇所設置された。床の色は花崗岩を思わせる石材調のものに変更された。運転席は客席と同じ薄紫色に変更された。この編成から蛍光灯カバーが省略された。
- 13編成:これまでの編成でゴムの色がすべてグレーだったのに対して、この編成からはドアを閉じた時にドア同士が接触する部分のみ黒色化された。
- 14編成:この編成は13編成に準じている。
- 15編成:13編成ではゴムの色はドアの接触部分のみの変更だったが、この編成からはすべてのゴムが黒色化された。また、ロングシートの着席定員を2人分削って立ち席スペースを確保したうえで、扉間の座席着席人数10人が5人ずつになるように、ロングシートの中間にスタンションポールを設置した。このポールも湾曲して荷棚まで届いている。
- 16編成:15編成に準じる。
- 17編成:15編成からの仕様に準じているが窓ガラスがJR東日本E231系電車のような濃緑色の遮光ガラスのものにすべてが変更された。また、側面のラインがアザレアパープルからイエローに変更された。シートは薄紫色のカラーは変更ないものの、浅いバケット式のロングシートになった。この内装は1000系クロスシート車のオールロングシート改造や初期車(01 - 06編成)の車内更新に受け継がれた。
- 18編成:17編成の仕様に準じており、窓ガラスも濃緑色の遮光ガラスが採用されているが、側面のラインが16編成までの色に戻されている。1000系の01 - 06編成の改造後に採用された小型液晶ディスプレイの「案内情報画面」は採用されておらず、12編成以降の2000系と同様にLEDによる案内表示器が設置されている。
ドアチャイム 編集
走行機器など 編集
4両編成(Mc1 - M2 - M1 - Mc2)で全電動車であるが、先頭車の前位寄り台車は付随台車となっている[1](実質的なMT比は3M1T相当)。ただし、1000系と同じ加減速性能を確保している[1]。
主電動機はかご形三相誘導電動機(100 kW)で、大阪高速鉄道で初めてVVVFインバータ制御を採用した[2]。装置は日立製作所製の3レベルIGBT素子(2,000 V - 600A・形式 VFI-HR3610G)を使用したものである(1C2M3群制御、定速運転対応)[1]。
ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(ナブテスコ製HRDA-1形)で、VVVFインバータ装置により回生ブレーキは約 1 km/hまで作用する[1]。基礎ブレーキは空気圧をオイルコンバータで油圧に変換する空油変換式ディスクブレーキである。このほか、保安ブレーキ・駐車ブレーキがある[1]。空気圧縮機はレシプロ式のHS-10形を搭載する[1]。
補助電源装置はIGBT素子を使用した東芝製の静止形インバータ(SIV)である(定格容量 85 kVA・形式 INV104-Q0)[1]。空調装置は集約分散式のFTUR300-101B形(容量 18.6 kW・16,000kcal/h)を屋根上に1両あたり2台搭載しており、1両あたりの容量は37.21 kW(32,000 kcal/h)である[1]。
広告ラッピング車両 編集
2000系には登場以降長らく広告ラッピング車両は存在せず、2010年9月に初めて部分ラッピング車両が登場した。2015年にはハーフラッピング車両が登場した。2020年5月1日現在、以下の企業のラッピング広告がある。
- 国立大学法人大阪大学(大阪大学号・12編成・ハーフラッピング)
- 学校法人関西大倉学園(関西大倉号・13編成・部分ラッピング)
- イオン(イオン号・14編成・ハーフラッピング)9
- 大阪高速鉄道(1970年大阪万博50周年記念ラッピング車両・15編成・フルラッピング)
- ガンバ大阪(ガンバ大阪号・16編成・ハーフラッピング)
- パナソニックホームズ・タカラレーベン(茨木ファミリーシップ号・18編成・ハーフラッピング・先頭車の運転席付近はラッピングされていない)
過去に存在した広告ラッピング車両 編集
- アンダーツリー パチンコ&スロット キコーナ(キコーナ号・13編成・部分ラッピング)
- 大阪高速鉄道(大阪モノレール25周年記念号・17編成・パートラッピング)
- 阪急電鉄・阪急不動産(阪急彩都ガーデンフロント号・15編成・ハーフラッピング)
ギャラリー 編集
このギャラリーの車両画像は、方向により図柄が異なるデザインが多いため、基本的に両方向からの画像を掲載している。
現在のラッピング車両 編集
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15編成「1970年大阪万博50周年記念」
過去のラッピング車両 編集
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13編成「キコーナ号」
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13編成「キコーナ号」
製造時期とメーカー 編集
日立製作所製は山口県下松市の笠戸工場で製造された。川崎重工業製は神戸市兵庫区の兵庫工場で製造された。12編成 - 17編成は2007年の彩都線延伸と本線の増発を、18編成は2010年3月の「ゆとりダイヤ」[5] 実施をそれぞれにらんで製造されたものである。
編成名 | メーカー名 | 竣工 | 参考 |
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2000系 | |||
11 | 日立製作所 | 2001年12月10日 | |
12 | 日立製作所 | 2005年9月28日 | 大阪大学号 |
13 | 日立製作所 | 2006年10月7日 | 関西大倉号 元キコーナ号 |
14 | 日立製作所 | 2007年1月1日 | イオン号 |
15 | 川崎重工業 | 2007年1月1日 | 1970年大阪万博50周年記念ラッピング車両 元阪急彩都ガーデンフロント号 |
16 | 川崎重工業 | 2007年3月19日 | ガンバ大阪号 |
17 | 日立製作所 | 2007年3月19日 | イエローライン 元大阪モノレール25周年記念号 |
18 | 日立製作所 | 2010年1月20日 | 茨木ファミリーシップ号 |
改造 編集
- 安全性の向上における更新
大阪モノレール中期経営計画[6] において、1000系・2000系のうち13編成に対し、新型車両3000系に準じた改造を行うと発表され、2017年度に11編成・12編成、2018年度に18編成・14編成・15編成・16編成の順に改造が行われ、2019年度の17編成の改造をもって完了した。
- 先頭車両の一部座席を撤去し、非常用脱出シューターを設置。
- ATC装置の更新。
- 前面・側面の行先表示が幕式からフルカラーLEDに交換され、駅番号も表示されるようになった。
- 既存のLED式車内案内表示装置と12編成以降に設置のLED式路線図に代わり、ドア上に16:9サイズの案内情報画面が設置されたが、千鳥配置の1000系01 - 06編成や31編成と異なり4ヶ所全てに設置されており、案内のフォーマットも異なる。
脚注 編集
- ^ a b c d e f g h i j 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2002年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2002年版「大阪高速鉄道2000系」pp.152 - 153・166。
- ^ a b 『RAIL FAN』第49巻第4号、鉄道友の会、2002年4月1日、15頁。
- ^ 「RAILWAY TOPICS」『鉄道ジャーナル』第36巻第4号、鉄道ジャーナル社、2002年4月1日、93頁。
- ^ 音色は、新幹線700系電車後期車・新幹線N700系電車、大阪市営地下鉄30000系・新20系中後期更新車と同じである。
- ^ ラッシュ時の駅停車時間の延長により、大阪空港発門真市行きは所要時間が38分から41分に伸びる。
- ^ 大阪モノレール中期経営計画2017 – 2021 (PDF) - 大阪高速鉄道 2017年3月
参考文献 編集
外部リンク 編集
- 車両装備の紹介|大阪モノレール(車両諸元についての記載あり)
- ラッピング列車(大阪モノレール)
関連項目 編集