安田権守

在日韓国人3世の野球選手

安田 権守(やすだ こんす、1993年4月19日 - )は、日本埼玉県さいたま市出身の元プロ野球選手外野手)。韓国名は安 権守(アン・グォンス、: 안권수)。在日韓国人3世である[1][2][3]

安田 権守(安 権守)
群馬ダイヤモンドペガサス時代
(2014年4月20日)
基本情報
国籍 大韓民国の旗 韓国
出身地 日本の旗 日本埼玉県さいたま市
生年月日 (1993-04-19) 1993年4月19日(31歳)
身長
体重
175 cm
80 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 外野手
プロ入り 2020年 2次ドラフト10巡目
初出場 KBO/ 2020年5月5日
最終出場 KBO/ 2023年10月16日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
アン・グォンス
各種表記
ハングル 안권수
漢字 安権守
発音: アングォンス
日本語読み: あん・こんす
英語表記: Kwon-soo An
Gweon Su An
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経歴 編集

東京メッツ時代まで 編集

幼少期から水泳に打ち込み、さいたま市立高砂小学校[4]5年生のときには韓国全国少年体育大会の水泳自由形に出場し、3位入賞を果たしている[1]。小学6年生のときに野球部に体験入部したところ監督に才能を見出され[1]ヤクルトスワローズジュニアの選抜選手となり、2005年の第1回NPB12球団ジュニアトーナメントの優勝メンバーとなった[3]

さいたま市立岸中学校[4]進学後は「浦和リトルシニア」に所属[5]2008年の第14回日本リトルシニア野球全国選抜大会のベスト8のメンバーとなった[1][6]。中学時代は元阪急ブレーブス松永浩美が塾長を務める「M.B.A 松永少年野球教室」に通っていた[7][8]

早稲田実業高校に在籍していた2009年は1年生の時からレギュラーの座を獲得した[3]。主にポジションは中堅手として起用された。高校2年生の2010年に、第92回全国高等学校野球選手権大会に出場する。ポジションは中堅手で打順は3番、ベンチで験担ぎに腕立て伏せをおこなう姿から「腕立て王子」という呼び名もつけられた[2][3]。甲子園大会に出場したのはこの2年生の時のみで、甲子園通算記録は3試合に出場して15打数6安打4打点0盗塁[9]。同年秋からは主将に任命された[10]2011年全国高等学校野球選手権西東京大会では打率.573を記録した[11]

卒業後は早稲田大学に進学して野球部に所属。1年春の早慶戦から先発出場するものの、部内の上下関係が肌に合わず、1年夏に退部[2]東京六大学野球リーグでの出場記録は5試合で、3打数1安打[9]。退部後は自らチームを探し[8]、早稲田大学に在籍したままクラブチームのTOKYO METSに所属した[3]

日本独立リーグ時代 編集

2013年ベースボール・チャレンジ・リーグ(ルートインBCリーグ)の群馬ダイヤモンドペガサスからリーグのドラフトで指名され[12]、大学3年生時の2014年に入団した。同年は4本塁打をマークし、打率.351、リーグ3位となる長打率.498と結果を残し[13]、ベストナインに選出された[14]

同年オフ、武蔵ヒートベアーズおよび福島ホープスの加入に伴う分配ドラフトで「地元枠」として武蔵から指名を受けて[15]、入団する。武蔵では打率が.288に下落、本塁打も0に終わり[16]、初年度の2015年限りで退団した[17]。BCリーグでプレーしながら学業も両立させ、4年で早稲田大学を卒業したが[2]、結局NPBドラフト会議では指名を受けられなかった。

カナフレックス時代 編集

大学卒業後は建材メーカーのカナフレックスコーポレーションに入社、同社硬式野球部滋賀県東近江市)に入部する[2]2018年秋にはチームの主軸として3大会ぶりに第44回社会人野球日本選手権大会に出場[2]。カナフレックス所属時代は滋賀県野球連盟と京都新聞社が選ぶ滋賀県社会人野球ベストナインに、2016年と2018年の2度、左翼手部門で選出された[18]。カナフレックスでは「メンタルが鍛えられて、打てなくても感情を一定に維持できるようになった」と述べている[3]

斗山時代 編集

2019年8月5日、水原KTウィズパークで開かれたトライアウトに参加し、同月26日に開かれたプロ野球新人2次ドラフトの全体99番目で斗山ベアーズから指名を受けた[1][19]。在日3世のため、外国人選手登録ではない[3]在日僑胞選手のKBOリーグ球団への入団は、2011年の金村大裕(金大裕、元阪神SK)以来で、NPB球団未経験者では2003年の山田真裕(金真裕、LGに2005年まで在籍)以来とされる[3]

2020年は外野の控えとして68試合に出場し、10安打、3打点を記録。2021年は前年を上回る86試合に出場し、10安打、4打点をマークしたが、この年も控え選手止まりであった。

2022年は負傷した金仁泰の代役としてレギュラー右翼手に抜擢されるが、7月3日のKTウィズ戦でダイビングキャッチを試みた時にフェンスに激突して肩の靭帯を負傷し離脱した[20]。最終的に前年より少ない76試合の出場ながら、打席には5倍以上多く立ち、71安打、20打点、打率.297を記録するなど成績を向上させていたが、夏場以降は感染症の濃厚接触者扱いによる戦線離脱や、チームの若手育成への方針転換によって出場機会が失われていた[21]。さらに兵役問題[注 1]を背景に、同年オフ、斗山に「1年だけプレーして帰らなければならない選手より、若い選手に機会を与えたほうがよい」と判断されて戦力外通告を受け[22]、日本へ帰国した[23]

ロッテ時代 編集

2022年12月7日、ロッテ・ジャイアンツ2023年の選手契約を結び[24]、再び韓国でプレーすることになった。

2023年は主に1番打者として出場していたが、4月末より右肘が痛み始め、6月6日に右肘の遊離軟骨除去手術を受けることが発表されて戦線離脱。リハビリに3か月を要する予想に反し、7月28日には二軍戦で実戦復帰し、30日の対KIAタイガース戦で一軍に復帰した。10月11日のホーム最終戦では別れのラブソングである復活の「Never Ending Story」がファンによって大合唱され、涙をこぼす一幕もあった。

韓国でプロ野球選手として現役を続行するには軍へ入隊する必要があったが、家庭の事情もありそれもかなわず、2023年シーズン終了後にロッテを自由契約となり[25]、そのまま現役を引退した[26]

プレースタイル・人物 編集

50メートル走6秒0、遠投115mで、打球を広く打ち分ける[2]

中学時代におごってしまい、高校時代に十分な練習を行わなかったことによって大学時代は投手の球に対応できなかったと述べている[3]

斗山ではまだ通訳が必要だが韓国語の勉強は続けており、漫画を読んで理解を進めていると報じられている[27]

2020年12月21日にアイドルグループ・アキシブprojectの元メンバー・宮谷優恵と入籍[28][29][30][31]2022年10月17日に第一子となる男児が誕生している[32]

詳細情報 編集

年度別打撃成績 編集

















































O
P
S
2020 斗山 68 41 37 10 10 0 0 0 10 3 2 1 1 1 2 0 0 5 1 .270 .300 .270 .570
2021 86 46 41 17 10 0 1 0 12 4 3 0 2 0 3 0 0 3 0 .244 .295 .293 .588
2022 76 267 239 43 71 7 2 0 82 20 3 4 1 0 26 0 1 40 6 .297 .368 .343 .712
通算:3年 230 354 317 70 91 7 3 0 104 27 8 5 4 1 31 0 1 48 7 .287 .351 .328 .680
  • 2022年度シーズン終了時

独立リーグでの打撃成績 編集









































O
P
S
2014 群馬 68 245 48 86 14 5 4 42 38 39 0 5 0 21 1 .351 .498 .440 .938
2015 武蔵 64 208 35 60 8 4 0 18 41 47 2 3 0 22 4 .288 .365 .424 .790
通算:2年 132 453 83 146 22 9 4 60 79 86 2 8 0 43 5 .322 .437 .433 .870

記録 編集

KBO

背番号 編集

  • 8 (2014年 - 2015年、2022年)
  • 00 (2020年)
  • 23 (2020年 - 2021年)
  • 0 (2023年)

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 在日韓国人3世の安田は滞在日数を伸ばすと韓国国籍保有者と同様に兵役義務が発生し、2024年以降は軍に入隊しなければならかった。なお、オフシーズンの日本へ帰国していた期間も考慮されていた。後述の通り、2023年シーズン終了後、兵役の問題でロッテジャイアンツを退団することになった。

出典 編集

  1. ^ a b c d e “プロ野球夢舞台へ…在日3世の安権守選手、斗山ベアーズが指名”. 民団新聞. (2019年9月11日). https://www.mindan.org/news/mindan_news_view.php?cate=5&number=25596 2020年3月21日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g “韓国プロ野球 斗山ベアーズ指名の外野手・安田権守 回り道、韓国で夢実現 早大退部-独立リーグ-社会人”. 毎日新聞. (2019年10月25日). https://mainichi.jp/articles/20191025/ddf/012/050/009000c 2020年3月20日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g h i 室井昌也 (2020年3月8日). “エリートだった「早稲田の腕立て王子」が遠回りして韓国でつかんだプロ野球選手の座”. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4a41ba6a4613d4ee2e8bb6069d1abdac529003f3 2020年3月20日閲覧。 
  4. ^ a b 安田 権守”. BCリーグ. 2015年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月21日閲覧。
  5. ^ 浦和シニアOBの活躍”. 浦和シニア. 2020年3月21日閲覧。
  6. ^ 2008年3月31日(月)第14回日本リトルシニア野球全国選抜大会準々決勝”. 浦和シニア. 2020年3月21日閲覧。
  7. ^ スポーツコミュニケーションズ (2014年2月27日). “[BCリーグ]群馬・松永浩美コーチ「プレーの幅を広げる人間的成長」”. 現代ビジネス (講談社): p. 2. https://gendai.media/articles/-/38512?page=2 2020年3月21日閲覧。 
  8. ^ a b 早稲田大学 安田権守 挫折そして成長… | ネオスポーツ 2014/10/22(水)00:45のニュース”. TVでた蔵. ワイヤーアクション. 2020年3月21日閲覧。
  9. ^ a b “2015プロ野球ドラフト会議 安田権守”. 週刊ベースボールONLINE. (2015年). https://sp.baseball.findfriends.jp/?pid=draft_player&id=20153406 2020年3月20日閲覧。 
  10. ^ 佐藤大 (2011年7月31日). “【第93回全国高校野球選手権大会(2011)・西東京】<熱球譜>仲間を信じた3四球 早実3年 安田権守主将”. 東京新聞. https://www.tokyo-np.co.jp/k-yakyu/2011/ntko/list/CK2011073102100006.html 2020年3月21日閲覧。 
  11. ^ “고시엔 스타에서 두산행까지…'재일교포 3세' 안권수의 '기적'” (朝鮮語). STN SPORTS. (2019年8月27日). https://www.stnsports.co.kr/news/articleView.html?idxno=100500 2020年3月21日閲覧。 
  12. ^ 新入団選手会見 - 群馬ダイヤモンドペガサスオフィシャルブログ(2013年12月14日)
  13. ^ 過去の成績 2014年個人全打撃成績 - ベースボール・チャレンジ・リーグ
  14. ^ ルートインBCリーグ運営スタッフ [@bcl_staff] (2014年11月6日). "ルートインBCリーグベストナイン". X(旧Twitter)より2020年3月21日閲覧
  15. ^ 分配ドラフト結果のお知らせ - 富山サンダーバーズニュース(2014年10月24日)
  16. ^ 過去の成績 2015年個人全打撃成績 - ベースボール・チャレンジ・リーグ
  17. ^ 退団選手のお知らせ (PDF) - 武蔵ヒートベアーズ(2015年9月26日)
  18. ^ “社会人野球:県ベストナインを表彰 カナフレックスから6人 /滋賀”. 毎日新聞. (2018年12月25日). https://mainichi.jp/ama-baseball/articles/20181225/ddl/k25/050/210000c 2020年3月21日閲覧。 
  19. ^ “ドラフト結果” (朝鮮語). オーマイニュース. (2019年8月26日). http://star.ohmynews.com/NWS_Web/OhmyStar/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002565232 2020年3月19日閲覧。 
  20. ^ 조선일보 (2022年7月3日). “"인대 손상" 안권수, 부상 이탈…김대한 제대 후 첫 등록 '첫 안타 도전' [수원 리포트]” (朝鮮語). 조선일보. 2022年7月21日閲覧。
  21. ^ 室井昌也 (2022年12月7日). “安田権守、来季はロッテジャイアンツでプレー 「拾ってもらったのでチームの力になりたい」”. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1e16a304a0965f3ddc8167d395ca8360594b3962 2022年12月7日閲覧。 
  22. ^ “元早実の「腕立て王子」、打率.297でも自由契約に… レギュラー目前で兵役の壁”. Full-Count. (2022年12月3日). https://full-count.jp/2022/12/03/post1313903/ 2022年12月5日閲覧。 
  23. ^ ‘자유계약선수’ 된 안권수, 두산과 완전 결별?…“합의 하에 결정, 1년 더 KBO 생활 가능해.” [춘추 피플]” (朝鮮語). 스포츠춘추 (2022年12月1日). 2022年12月2日閲覧。
  24. ^ 롯데, 외야수 안권수 영입 - ロッテジャイアンツ(2022年12月7日、朝鮮語)
  25. ^ 안권수 결국 롯데 떠나 보류선수 명단 제외inews24 2023年11月27日
  26. ^ 本人instagram2023年12月14日
  27. ^ “スピードと守備に期待” (朝鮮語). NEWS1. (2020年3月20日). https://m.news1.kr/articles/?3879825#_enliple 2020年3月20日閲覧。 
  28. ^ “斗山 安権守、日本の元アイドル宮谷優恵と結婚” (朝鮮語). 스포츠경향. (2021年1月22日). https://sports.v.daum.net/v/20210122173825287 2021年1月27日閲覧。 
  29. ^ 韓国プロ野球の安田権守が元アイドルゆえちと結婚」『BBNews』、2021年1月23日。2021年1月27日閲覧。
  30. ^ 私事ですが先月2020年12月21日に宮谷優恵さんと入籍いたしました。”. 安田権守 Instagram (2021年1月21日). 2021年1月27日閲覧。
  31. ^ 遅くなりましたが あけましておめでとうございます🎍”. ❤︎ 𝐘𝐮𝐞 𝐌𝐢𝐲𝐚𝐭𝐚𝐧𝐢 ❤︎ Instagram (2021年1月21日). 2021年1月27日閲覧。
  32. ^ 𝑲𝒐𝒏𝒔𝒖 ❤︎ 𝒀𝒖𝒆 [@konsu_yue1221] (2022年10月27日). "ご報告!!". Instagramより2022年12月2日閲覧

関連項目 編集

外部リンク 編集