嵐の使者

ディープ・パープルのアルバム

嵐の使者(Stormbringer) は、イングランドロック・バンドディープ・パープル1974年に発表したアルバム。第3期の2作目で最後のスタジオ・アルバムになった。

嵐の使者
ディープ・パープルスタジオ・アルバム
リリース
録音 1974年8月
ジャンル ハードロック
時間
レーベル イギリスの旗パープル・レコード(オリジナル盤)
EMI(リイシュー盤)
アメリカ合衆国の旗日本の旗ワーナー・ブラザース・レコード
プロデュース ディープ・パープルマーティン・バーチ
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 6位(イギリス[1]
  • 20位(アメリカ[2]
  • 22位(日本[3]
  • ディープ・パープル アルバム 年表
    紫の炎
    (1974年)
    嵐の使者
    (1974年)
    カム・テイスト・ザ・バンド
    (1975年)
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    解説 編集

    前作『紫の炎』から加入したデイヴィッド・カヴァデールグレン・ヒューズが持つ音楽性の比重がさらに増えて[注釈 1]ギタリストリッチー・ブラックモアが理想とする音楽との乖離が強まったため、様々な問題を抱えながらの製作となった。ブラックモアはイギリスのバンドであるクォーターマス[注釈 2]が取り上げた楽曲「ブラック・シープ・オブ・ザ・ファミリー」[注釈 3]を録音することを提案したが、他のメンバーはオリジナル作品に執着して彼の提案に反対した[4]

    レコーディングは1974年8月、ミュンヘンミュージックランド・スタジオで行われた[5]プロデュースはディープ・パープルとマーティン・バーチミックスダウンはバーチとドラマーのイアン・ペイスが行った。その後、ロサンゼルスレコード・プラント・スタジオで最終的な仕上げが行われた。

    1974年12月に世界同時発売され[6]日本では「嵐の女」がシングルカットされた。

    評価 編集

    本国イギリスでは6位、アメリカでは20位まで上昇しゴールドディスクを獲得した。

    ブラックモアは「最低のアルバムだ」と零し、一般の評価もあまり芳しいものではない。しかし従来のハードで直線的な曲よりも多彩な音楽性を加味した曲が増え、新しい試みも感じられる。前作『紫の炎』で見せた新たな方向性をさらに押し広げた作品に仕上がっている。

    第3期の終焉 編集

    ディープ・パープルは本作の発表に先駆けて、数年前から彼等の前座を務めていた「エルフ[注釈 4]と共に11月中旬から約一か月間、アメリカ・ツアーを行なった。ブラックモアはエルフのボーカリストであるロニー・ジェイムス・ディオを起用して、「ブラック・シープ・オブ・ザ・ファミリー」をソロ・シングルとして発表することにした。彼はツアーに参加しながらディオと「16世紀のグリーンスリーブス」を共作し、ツアー終了直前にフロリダのスタジオでディオ、エルフのキーボーディスト、ベーシスト、ドラマーとシングル「ブラック・シープ・オブ・ザ・ファミリー/16世紀のグリーンスリーブス」を録音した[7]。これが期待以上の出来だったため、彼はソロ・シングルを発表する代わりに、ディープ・パープルを脱退してディオ達と新しいバンドを結成することを決意した。

    彼は1975年2月から3月まで、ミュージックランド・スタジオでディオ達と新しいバンドのデビュー・アルバムを制作した[8]。終了後、ディープ・パープルのヨーロッパ・ツアーに参加して、4月7日のパリ公演を最後に脱退した[注釈 5]

    収録曲 編集

    サイド 1
    1. 嵐の使者 - "Stormbringer" (Ritchie Blackmore, David Coverdale) - 4:03
    2. 愛は何よりも強く - "Love Don't Mean a Thing" (Blackmore, Coverdale, Glenn Hughes, Jon Lord, Ian Paice) - 4:23
    3. 聖人 - "Holy Man" (Coverdale, Hughes, Lord) - 4:28
    4. ホールド・オン - "Hold on" (Coverdale, Hughes, Lord, Paice) - 5:05
    サイド 2
    1. 嵐の女 - "Lady Double Dealer" (Blackmore, Coverdale) - 3:19
    2. ユー・キャント・ドゥー・イット・ライト - "You Can't Do It Right (With The One You Love)" (Blackmore, Coverdale, Hughes) - 3:24
    3. ハイ・ボール・シューター - "High Ball Shooter" (Blackmore, Coverdale, Hughes, Lord, Paice) - 4:26
    4. ジブシー - "The Gypsy" (Blackmore, Coverdale, Hughes, Lord, Paice) - 4:04
    5. 幸運な兵士 - "Soldier of Fortune" (Blackmore, Coverdale) - 3:14
    35thアニバーサリー・エディション(ディスク1)
    1. 聖人(グレン・ヒューズ・リミックス) - "Holy Man" (Remix) - 4:32
    2. ユー・キャント・ドゥー・イット・ライト(グレン・ヒューズ・リミックス) - "You Can't Do It Right" (Remix) - 3:27
    3. 愛は何よりも強く(グレン・ヒューズ・リミックス) - "Love Don't Mean a Thing" (Remix) - 5:07
    4. ホールド・オン(グレン・ヒューズ・リミックス) - "Hold On" (Remix) - 5:11
    5. ハイ・ボール・シューター(インストゥルメンタル) - "High Ball Shooter" (Instrumental) - 4:30
    35thアニバーサリー・エディション(ディスク2)
    1. 嵐の使者(4チャンネル・ミックス)- "Stormbringer" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    2. 愛は何よりも強く(4チャンネル・ミックス)- "Love Don't Mean A Thing" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    3. 聖人(4チャンネル・ミックス)- "Holy Man" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    4. ホールド・オン(4チャンネル・ミックス) - "Hold On" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    5. 嵐の女(4チャンネル・ミックス) - "Lady Double Dealer" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    6. ユー・キャント・ドゥ・イット・ライト(4チャンネル・ミックス) - "You Can't Do It Right" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    7. ハイ・ボール・シューター(4チャンネル・ミックス) - "High Ball Shooter" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)
    8. ジプシー(4チャンネル・ミックス) - "The Gypsy" (Quadrophonic Mix; Stereo 48/24)
    9. 幸運な兵士(4チャンネル・ミックス) - "Soldier Of Fortune" (Quadrophonic Mix;Stereo 48/24)

    メンバー 編集

    脚注 編集

    出典 編集

    1. ^ ChartArchive - Deep Purple
    2. ^ Deep Purple - Awards : AllMusic
    3. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.205
    4. ^ Popoff (2016), p. 172.
    5. ^ Popoff (2016), p. 161.
    6. ^ Popoff (2016), pp. 165–167.
    7. ^ Popoff (2016), pp. 167, 174, 175.
    8. ^ Popoff (2016), p. 170.

    注釈 編集

    1. ^ 彼等は、ソウル・ミュージックやファンキー・ミュージックの要素をより多く持ち込もうとした。
    2. ^ 彼の旧友ミック・アンダーウッドが結成したトリオ。
    3. ^ スティーヴ・ハモンド(Steve Hammond)の作品。ハモンドはギタリストで、ノエル・レディングジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスに在籍中に結成したファット・マットレスに、脱退したレディングの後任として加入して同曲を提供した。ファット・マットレスが録音した原曲は、2000年に発表された編集アルバムに収録されている。クォーターマスは1970年に発表したデビュー・アルバムで、同曲を取り上げた。
    4. ^ ペイスと第2期のメンバーだったロジャー・グローヴァーが見い出したアメリカのバンド。デビュー・アルバムは2人、2作目と3作目(翌1975年に制作)はグローヴァーがプロデュースした。
    5. ^ 彼の脱退は、それ以後の方針が決定しなかったため6月まで公表されなかった。

    参考文献 編集

    • Popoff, Martin (2016), The Deep Purple Family Year By Year Volume One (to 1979), Wymer Publishing, ISBN 978-1-908724-42-7 

    外部リンク 編集